016話 最終ミッション発動!NPCがラジオ体操筋で主人公の席が危ない件
▽【前回の山田】
ゾンビ世界でNPC夫婦に浄化され人生初の「幸福な寝落ち」を経験した山田。
・・・・・・なお、現実は待ってくれない。
<ミッション4達成:報酬を選んでください>
<新スキル獲得
または
獲得済みスキルのレベルアップ>
「うーん……これは悩む。」
俺はソファに座ったまま天井を見上げた。
ついさっきまで感涙で人生初の“人間らしい朝”を味わっていたのに、UIの無情な光がそれをぶった斬る。
ていうか、どう考えても──
ここが普通のプレイヤーなら“初スキル獲得地点”なんだろ?
でも俺はというと……
・圧力耐性Lv.2
・体力自然回復Lv.1
・飛行石Lv.--/--
……とかいう意味不明な状態だ。
完全に時期外れの修羅。
「いや、ランダム新スキル……魅力的すぎるんだよなあ!」
ランダム。ガチャ。
脳がドパミンをドパドパしてる!指が震える。
でも、ここでガチャを回すほど運営を信じられるか?
アストレアの顔を浮かぶ。呆れ顔で「きも」と言ってる。
想像上のイリスたんの顔も浮かぶ。にっこり笑ってる。
…うん、無理。
「保留で。」
俺は深呼吸し、ミッションタブに視線を移す。
すると、ミッション1が達成可能の状態になっていた。
<ミッション1達成:……報酬なし>
「なし!?なんでだよ!!」
抗議しようとした瞬間、ミッション5が点滅する。
<NPCを連れてマンションを脱出せよ!>
「……おお。来たか。ついに本編っぽくなってきたな。」
そう呟いた瞬間だった。
床下から、ぞわ……と空気が震えた。
「え……ゾンビ増えた?」
背中に変な汗がつうっと流れる。
じわじわと“音”が、迫ってきている気がする。
「うぉぉぉーー!」
バンッ!!
「ひぃっ!!」
変な声出た。完全に裏返った。
寝室の方から聞こえた!ジョン!カレン!
「大丈夫か!?」
慌てて寝室のドアを開けると──
ジョンとカレンが、ハイテンションでラジオ体操をしていた。
ラジオ体操第一!最高潮だな、ジョン!
ラジオ体操第二!キレてるよー、カレン!
「おまえら・・・・・・!!ゾンビより怖いわ!!」
怒りのあまり、俺はついに禁断のセリフを投げつけることにした。
人生で一度は言ってみたいセリフ19位、実績解除。
「ゆうべはおたのしみでしたね」ニチャア。
ジョンが爽やかな微笑みで返事する。
「おおきに〜!ぼちぼちでんな〜!」
絶対意味わかってない。
でも爽やかすぎて何も言えない。
※ちなみに1位は「おかしいですよ!カテジナさん!」だ。(狂気の名シーン)
朝食をつつきながら、俺は二人に事情を説明した。
(もちろん“死に戻り”部分はカット。信じられるわけがない)
・72時間後に空爆
・このままだと全滅
・マンションから脱出必須
・ゾンビは“音”に反応する
二人は黙って頷き、
ジョンはナタを、カレンはハンドガンを構えた。
よく見ると──
ジョン:肩幅ゴリラ系バケモン
カレン:引き締まったプロアスリート体型
「え……普通に俺より強くね?」
俺は軽く絶望した。主人公より高レベルの序盤の頼れるNPCみたいだ。
あれ、でもそういうキャラってだいたい、その後
・・・・・・嫌な想像がよぎる。
「わてら、毎日ラジオ体操してきたねん。気づいたら身体引き締まったヨー!山田も一緒にやりまんねん!?」
俺の想像をヨソに、ジョンが爽やかトークを繰り広げる。
「あ、ソですね・・・・・・デュフフ」
毎日ケツで椅子をすり減らし続けて10年以上なんだが、俺のケツは赤ちゃんだ。
そして赤ちゃんは立てない。
三人で作戦を練った結果、
やはり“階段”で1階まで降りるしかないことが判明。
ビン・アラームの仕様を説明して細心の注意を促した。
翌朝、日の出と同時に脱出作戦を開始することに決めた。
俺たちは、いよいよマンション最終局面へ踏み出そうとしていた。
俺は、少し、いやかなり浮かれていた。
◇今回の成果◇
・死亡回数:39(最近死んでないね。By I)
・獲得スキル:なし
・メモ:ゾンビ大量発生?NPCの戦力は未知数




