012話 俺だけ小さなメダル無限増殖バグ
▽【前回の山田】
バールゲットからの圧死。
メダル⇒ビン⇒アラーム⇒ゾンビ⇒圧死の5コンボ達成!新記録だドン!
自室でエナドリを補充する俺。冷たいカフェインが体中に染み渡る。
ふう。
小さなメダルは貴重品だ。
たった一つとは言え、アイテムロストした。
コンプリート癖のあるゲーマーにとっては痛い。痛すぎる。
小指責めを受けたアイツよりも痛いよ、おれ。
自棄になってゲームに逃避し、5回ほど空爆死を挟んだのは内緒だ。
失ったモノは仕方ない。前に進もう。
冷静に考えて、だいぶ攻略が進んできた気がする。
気分だけは“中盤入ったRPGプレイヤー”である。
UIのミッションタブを確認した。
ミッション1:72時間生存せよ.
ミッション2:ゾンビ1体撃破せよ(達成)
ミッション3:バールのようなものを手に入れよnew!
(以下、空欄)
「なるほどね……」
俺は画面を凝視する。
そして察した。
「フォントサイズ……UIの空欄……つまり、残りミッションはあと2つってことだな」
空欄の範囲が、明らかに“あと二段”分の文字列を入れる前提で組まれている。
UIって、ほんとうに誤魔化せないよね。
いい加減なゲームは読めないが、“この世界”はいい加減ではない。
俺の読みが成立する神ゲーだ。いろいろガバいが。
「ミッション4は、たぶん10階に戻れば表示されるだろ。
よし、サクッと行きますか」
ゲームでリフレッシュした俺は、この世界もサクサクプレイしてやる。
________________________________________
■ サクサク攻略、開始
今回の俺は違う。
死に戻り慣れしたせいか、フットワークが軽い。
廊下 → ゾンビ誘導回避 → 階段
この一連の流れを、ノーダメでこなし──
「はい10階到達〜。楽勝……ん?」
そこには、またアレがあった。
“バールのようなもの”
「……バール……二本目……だと?」
俺は拾い上げた。
<ミッション3達成:報酬「小さなメダル」を与えます>
「達成!?おい、達成!?
もうバールは持ってんのに!?」
しかし喜びは止まらない。
「よっしゃ!今度こそメダル回収するぞ!!」
俺は両手を広げ、まさに愛しい娘をキャッチするかの如く、全身で構えた。
________________________________________
■ しかし、そこに宝が……
金色の光が視界に差し込む。
空間から、小さなメダルがゆっくりと出現する。
「よし……来い……今回こそ……!」
俺は両手を大きく広げ、完璧なキャッチ体勢で待ち構えた。
コインはスローモーションのように落ちてくる。
ポスッ。
両手の中心に、きれいに収まった。
「……取れた。俺、ついに取れた……!」
深呼吸しながら、そっと手を閉じる。
その瞬間──視界の隅がキラッと光った。
「あれ……?」
床の向こうで静かに光る金色の粒。
前回、落としていった“残留メダル”が、まだそこにあった。
「前の……残ってる……?」
一秒の沈黙。
二秒の静寂。
三秒目に、俺はふっと笑った。
──気持ち悪い笑顔で。
「……なるほどね。
“無限増殖バグ”って、こうやるんだ……?」
俺はわざと両手を開いた。
コロッ……
コロコロ……
カランコロンカラン!!
「アハハハッ!!」
腹の底から笑い声が漏れ出した。
廊下の奥、部屋の扉の隙間、階段の闇。
四方からゾンビが一斉に飛び出してくる。
「はいはい来ました大群~ッ!!」
俺は迎え撃つどころか、むしろ誇らしげに胸を張った。
「増殖あるところに死あり……!
これが検証勢の仕事だ!!」
ゾンビが迫り──
視界が白く弾ける。
──死亡。
________________________________________
■ そして、いつものベッドへ
目が覚めた。
天井のシミもいつもどおり。
俺はぽつりと呟く。
「……これ、無限増殖できるんじゃね?」
胸が高鳴る。
あの金色のコインが、無限に手に入るかもしれない。
そしてその度に、ゾンビに囲まれて死ぬ。
つまり──
「小さなメダル無限増殖編、開幕だ!!」
◇今回の成果◇
・死亡回数:30
・獲得スキル:なし
・メモ:ガバい。デバッグもテストプレイも甘いぜ。




