011話 小さなメダルで死亡しました
▽【前回の山田】
ゴミ山グラから考察を膨らませる俺、相棒バールとゾンビに対峙!
10階の廊下で睨み合う俺とゾンビ。
まずは落ち着いて、UIを開く。
「……はい、きた。
やっぱり“バールのようなもの”、重要アイテム扱いだよな」
アイテム欄に光る“重要”の文字。
つまり──耐久力バーが無い。
これはすなわち、“壊れない武器”。
「じゃあ、遠慮なく……!!」
俺はズボンのお尻で手を拭いてからバールのようなものを握り直す。
「バールがすっぽ抜けて死亡パターンは回避したぜ」
素早いステップでゾンビの背後の周り、
黒光りするバールを、既にひび割れているゾンビの頭めがけて思い切り振り下ろした。
ガンッ!!
強烈な金属音が廊下に響く。
紫の液体があふれ出す。
ゾンビはよろめき、怒り狂ったようにこちらへ突っ込んできた。
「うおっ、怒らせた……いや、それはそうか」
俺はゾンビを躱し、バールを抱えたまま上ってきた階段へ全速力で走る。
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■ 階段は合法バグ地形
階段の踊り場に飛び移り、上段のゾンビを見上げる。
案の定、ゾンビは階段を降りる。
が、ゾンビと俺の位置が一段でもズレていると、攻撃してこない。
上下方向への攻撃判定が甘いのか、あるいは存在しないのか。
どちらにせよ──
「うん、これはバグ地形です。利用しない手はない。」
俺は5段ほど段差をつけ、階段下から、ゾンビの足の指に狙いを定めた。
「ほいっ、ほいっ、ほほいほいっ!」
階段の段差に張り付いた足指を、
バールでひたすら叩く。
親指、小指、人差し指。小指、中指、もう一回小指。
薬指とみせかけて、また小指。からの小指!
なんというか……
痛そう。めちゃくちゃ痛そう。
「俺なら泣くぞこれ……」
ゾンビの下半身はじわじわ削れ、
最後の一撃で──
バキッ……!
ゾンビは後ろに倒れ、そのまま消失した。
気のせいか、涙目だった気がする。南無三。
「よし、ノーダメ撃破2回目!
うん、強い。段差、強い」
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■ そしてアイテム欄へ
俺は再度UIを開き、バールの説明文を確認する。
〈バールのようなもの:重要アイテム。開かない扉をこじあけることができるかも……?〉
「やっぱりな。
重要アイテム=耐久力なし。
壊れない。つまり──」
思わず笑う。
「最強の武器、爆誕。」
対して、木製バットの方はというと……
〈木製バット:小谷昇平モデル。軽くて使いやすいが、武器としては耐久力が低い〉
説明の横には青いゲージ。既に減っている。
ああ……いつ壊れてもおかしくないやつ。
お前は……その……うん、味はある。
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■ ミッション達成確認!
そして気づく。
そういえば今のでミッション達成したんだよな。
UI右上のミッション欄が点滅している。
俺はタブを開く。
<ミッション達成:報酬「小さなメダル」を与えます>
「…………お?」
目を疑った。
いや、画面を二度見した。
「おおおおお!?
小さなメダル!?
あれじゃん、あの国民的RPGの!」
思わずその場で小躍りしそうになる。
いや、実際に片足は浮いた。
すると、何の予兆もなく、目の前の何もない空間から、金色のコインがふわりと出現した。
■ しかし、そこで事件が起きた
チャリン、と軽い音を立てて床に落ちる。
コインは──
ころころころ……
……ビンの方へ転がっていく。
「あ、待て……!
おい、そこはダメ……!」
そして。
カランコロンカラン!
「いやいや、そんな音出ないでしょおおおお!!」
音から0.5秒で10階に緑色の瘴気が充満し、腐臭と呻き声が隙間を埋めた。
廊下の奥、階段の下、横の部屋のドア、
四方八方から、ゾンビの群れが飛び出してきた。
完全に、アラーム判定:最大級。
「なんで小さなメダル、一番危ない方向に転がるんだよ!!
これ絶対、女神の陰謀だろ!!」
ゾンビが迫る。
咄嗟に俺はコインへ手を伸ばし──
「回収できるか、ぼけええええ!!」
叫んだ瞬間、視界が白く染まった。
──死んだ。もちろん圧死。
■ そして、いつものベッドへ
◇今回の成果◇
・死亡回数:24
・死亡コンボ数1
・獲得スキル:なし
・メモ:小さなメダル発見。SHOP的な存在の証拠だ。




