001話 ゲーム三昧のはずが、世界がゾンビになっていた件
「よっしゃー! 定時脱出!」
金曜の夜、俺はスーパーのレジ袋を両手に提げて勝ち誇っていた。
「冷凍ピザ六枚、カップ麺十個、塩系と甘い系お菓子、エナドリ十本完備……完璧だ。これで三連休の完全ひきこもりゲーム漬け計画は万全だ!」
親父の遺した自宅マンションの六階に戻ると、即座に冷蔵庫へ戦利品を突っ込む。あとは風呂入ってゲーム起動するだけ。
「現実なんてチュートリアルすらクリアできねぇんだ。俺の本番はここからだな」
俺、山田篤志はブラック勤め8年目の32歳だ。
1週間のうち、俺が生きているのは土日の2日だ。それが3連休なら、寿命が1.5倍!神イベント到来!
コントローラーを握り、20時に新作ゲームをスタート。フルダイブ型VRアクションゲームの最新作だ!世界最速クリアを目指してやる。
──四時間後。
「……ん? なんか声した?」
耳の奥で、女神様みたいな声が響いた気がする。でも今はボス戦。雑音に違いない。
「集中集中……。あ、なんか視界の端にアイコン出てる。新しいUI? アプデ早くない?」
俺は一切気にせず、ポーションを連打した。
──深夜四時。
トイレに立ったとき、ドンッと玄関の向こうから鈍い音がした。
「……え? なに今の」
耳を澄ますと、上の階からもガヤガヤと騒がしい声。悲鳴っぽい? いや、銃声っぽい?
「うわ、絶対飲み会かホラー映画だろ……。ったく、こっちは真剣に攻略中なんだぞ」
チェーンをしっかり掛け直し、俺は再びゲームに戻った。
──そして月曜の朝。
「……ふぅ、クリアしたぁ! 寝不足だけど、最高の三日間だった……ラスボス手前の謎解きが無理ゲーだったな。俺じゃ無ければ解けなかっただろう」
満足感に浸りながらスマホを起動。既にクリア者がいないか確認したかったが、ネットが繋がらない。
「マジかよ? また回線障害? 社会復帰のタイミングでこれは勘弁して……」
朝日を求めてカーテンを開けた瞬間、息が止まった。
道路には事故車両と黒煙。血まみれの人間が這いずり回り、倒れた死体に群がって──。
「……ゾ、ゾンビ?」
玄関へ走り、冷たいドアに顔を寄せる。恐る恐るドアスコープを覗くと、廊下に立っていたのはうめき声を上げる青白い顔。血まみれの手で壁を引っかいている。
「ちょ、ちょっと待て! 俺ホラー超苦手なんだけど!? え、これ現実? ドッキリ番組?」
脳内に声が響いた。
《ミッション:72時間生存せよ.》
「……え?」
視界の右上で、あのアイコンが点滅していた。
タイマーが56時間2分と表示されていた。




