「な、なんだなんだ?」
「な、なんだなんだ?」
「久しぶりだな、竜神」
驚く桃太郎と孫の横でケンは懐かしそうに、頭を上げて竜神に言いました。
「はは、お互いに無事で何より。
おっとこの姿では首が痛いか」
竜神はそう言って笑った後、光に包まれます。
そして、いくらか大きさが縮小しました。
空を見上げる大きさから、少し顔を上げるくらいに。
「すまないな、これ以上小さくはなれなくてな」
竜神はすまなそうに桃太郎達に言いました。
「いえ、構いません。
お気になさらずに」
桃太郎は手を振りながら答えました。
「それより、どうしてここに?
八咫烏殿も一緒にとは?」
桃太郎に優しく微笑みながら竜神は不思議そうに聞いてきました。
桃太郎はケンの顔を見ます。
ケンはゆっくりと頷きました。
それを確認して桃太郎は竜神に向かってこれまでの事を話しました。
「というわけで桃源鏡を譲ってもらえないでしょうか?」
「なるほど、鼠神がそのように…
確かにここ数ヵ月で、我ら十二支神の力が弱ったように感じていた」
竜神は黙り込み、少し考えているようでした。
「分かった。
力になろう。
ただし、我は竜だ。
収集した物をはいどうぞと渡したとなると、竜とは言えぬ。
なので、ここは1つ試練といこう」
竜神はそういって空に向かって吠えた。
すると、奥の方から凄まじい雲ぼこりあげて、何かがこちらに向かって走ってきました。
「どうした。
親父殿」
走って来た者が竜神を見上げて言いました。
その人物は、立派な体格の青年で少し体に赤みがかかっていました。
「竜神。
おまえ、子どもがいたのか?」
ケンは驚いきながら聞きました。
「ああ、ちょっとあってな。
大きくなってからは、たまにこうやって遊びに来てくれる」
竜神は嬉しそうに言いました。
「それで試練だが、息子は大の相撲好きでな。
そちらから1人、我息子と相撲して勝ったら、桃源鏡を渡そう」
竜神はそういうと雲の上に土俵を作り出しました。
「ちなみにこの土俵の上では、どんな術も使えない。
自力のみが勝敗を決する」
竜神の息子は上の服を脱いで半裸になり土俵へと上がりました。
「おい、竜。
少し試しをさせろ」
孫は竜神に向かって言いました。
「試し?」
「ああ、そっちの土俵で戦うんだ。
試しぐらいいいだろ」
孫も服を脱いで上半身裸になりました。
竜神は土俵の上の息子を見ます。
息子はにかっと笑い頷きました。
「いいだろう。
なら、試しはお主がするのか?」
「当たり前だ」
「おい、孫」
「ま、あの土俵に何かされてたらヤバイしな。
それにあの息子ってやつの力も知りたい」
「本当はそっちが目当てだろう」
ケンはあきれ顔で言いました。
「猿はあの息子が強そうだから戦いたいだけですよ。
好きにさせましょう」
ケンは桃太郎に言いました。
「分かった。
孫、頑張ってな!」
孫は桃太郎の声援を受けて土俵に上がりました。
「お、なるほどな」
土俵に上がった孫は自分の体を眺めます。
確かに竜神が言うように自分を包む仙力がなくなったように感じました。
「では、ワタシが行事を勤めさせていただきます」
いつの間にか八咫は土俵の上がり、2人の間をホバーリングしていました。
「では、両者準備はよろしいか?」
孫と竜神の息子が向かい合って、両手の拳を地面に付けました。
「はっけよい」
両者がじっとにらみ合います。
「のこった!」
ドオン!
八咫の声と同時に凄まじい音がして、2人はがっつり組み合いました。
「ほう、息子のぶちかましでぶっ飛ばないとは、そちらの猿もやるなぁ」
竜神が感心するように言いました。
お互いに腰紐をがっつり掴んでの押し合い。
外から見ている桃太郎達からは互角に見えました。
「のこった、のこった!」
八咫は2人に声をかけます。
「くそ、なんだおまえ」
孫から苦しそうな声が聞こえてきました。
(くそう、仙力がなくても、俺様は天上界の桃を食べ、太上老君の仙丹もたらふく食った。
数多の妖怪どもを倒してきた自力がある!)
孫は真っ赤な顔で竜神の息子を押しますが、びくともしません。
「かなりの強者で、楽しいです。
でも、親父殿に恥はかけたくない」
そういうと先程まで力を抜いていたかのように、息子の方の力が増しました。
「お、おい!」
そして、そのまま孫はぽ~んと土俵の外へと投げ出されてしまったのです。
「な、なんちゅうばか力だ」
孫は腰を擦りながら起き上がります。
「今までで一番強かったです」
土俵の上の息子は楽しそうに孫に言いました。
「ありゃ、相当だぞ」
孫は桃太郎の側にきて言いました。
「でも、負けられない」
桃太郎は腰の袋をケンに渡し、上半身裸になってゆっくりと土俵に上がりました。
「では、試練の本番といこうか」
竜神は桃太郎に言いました。
「もちろん。
お願いします」
ぐっと体に力をいれます。
そして、竜神の息子と向き合いました。
「一番強かった相手をすぐに更新してくれるかな?」
息子はゆっくりと屈みます。
「期待にそえるかどうか分からないけど、全力はだすよ」
桃太郎も屈みました。
「では、両者見合って!」
八咫の声に2人はゆっくりと拳を地面に向けます。
「はっけよい」
トン
両者の拳が地面に着いた瞬間。
「のこった!」
ドゴン!
先程よりも凄まじい音が響きました。
土俵の上では、両者のけぞるような形で半歩下がっていました。
しかし、直ぐ様お互いに腰紐を取りに行きます。
両者凄まじい攻防。
腰紐を取られまいと払い、腰紐を取ろうと腕を伸ばします。
両者の攻防は続きましたが、とうとう両者とも腰紐を掴みました。
そして、がっつり組み合いました。
「くぅー」
「うぬぬ」
2人はお互いに自分の力を使って押し合います。
技を仕掛けようと体勢を変えると、すぐに対応。
両者とも一歩もひきません。
「あんなに強かったのか桃のやつ」
孫は土俵の桃太郎を見て言いました。
「前に聞いた事があります。
子どもの頃、山には人の遊び相手がいなかったからよく山の獣と相撲を取ってたと」
「それであんなに強くなるのか?」
「なんか、やたら相撲に詳しい熊がいたそうだ」
「相撲に詳しい熊?」
ケンと孫の雑談をよそに、土俵上では八咫の掛け声と2人の苦しそうな声が響いていました。
(く、師匠(熊)より強い)
(く、熊より強い)
2人はお互いにある人物?を思い浮かべていました。
(だけど!!)
そんな中、桃太郎は動きました。
師匠が言っていた師匠の相手の強者。
純粋過ぎるが故にきく技。
「おらぁ!!」
桃太郎は右に仕掛けると見せかけ、素早く左から腰投げを放ちました。
「う、うわぁ」
普通なら虚をつかれても、自力の強い竜神の息子ははねのけてしまいますが、相手は桃太郎。
自分と同じかそれ以上の力と技術を持っていました。
息子はなんとかのころうとしましたが、最後は土俵の雲に背中を付けてしまいました。
「おお~!」
孫とケンからの歓声。
竜神は何やら満足そうに桃太郎と息子を見て頷いていました。
「すごく楽しかった」
息子は体をお越しながら桃太郎に手を差し出しました。
「こちらこそ」
桃太郎はその手をとって息子を立ち上がらせました。
「相撲はどこで?」
「山で熊に教わりました」
「熊に?」
「ええ、その熊が言うには、前に人の子と相撲をとっていたけど、その子が大きくなるにつれて相手になってやれず、山を離れてここに来たと言ってました。
あの虚実腰投げも、その時に考え付いたようですが、力が離れすぎて実践できなかったらしいです」
「それでそれを僕に?」
「師匠が言っていた純粋な強者によく似ている感じがしたので」
「そうですか」
息子は懐かしむ顔をしながら目を閉じた。
「本当にありがとうございます。
昔を思い直す事もできました」
「いえ、私も師匠の技が使えて嬉しかった」
桃太郎と息子は笑顔で、もう一度握手に力を込めました。
「あっぱれ」
竜神はそんな2人を見ていいました。
「息子は我の力を色濃く継いだおかげで、全力をここまで出せずにいた。
それをお主殿と猿殿のおかげで出すことができた。
礼を言う」
竜神は頭を下げました。
「そして、これは約束の物だ」
竜神がそういうと、桃太郎のところに綺麗な鏡が現れました。
「約束の桃源鏡。
それはこの世界とは違う桃源郷へと行く事のできる鏡。
いや、門だ。
別次元を繋げる物ゆえ、それを使って武器を作れば触れない物、攻撃できない者を攻撃する事もできるだろう。
ただし、桃源郷に行けなくなるがな」
「桃源郷…理想郷」
「それでも構わぬのか?」
「私の理想郷は父上、母上、そして、かぐやと仲間がいるこの世界です」
桃太郎ははっきりと竜神に言った。
「うむ、その言葉に偽り無しと感じた。
では、持っていくがいい」
桃太郎は桃源鏡を手に取る。
「ありがとうございます」
桃太郎はその鏡を持ってケン達のところに戻った。
「では、私達はこれで」
「竜神も式神には気をつけて」
「あい、分かった」
桃太郎達は竜神達と別れて、元の場所へと戻ります。
そして、来た時同様に舟であの海岸へと戻りました。
舟は貸してくれた女性にお礼を言って返し、その後桃太郎達は、近くの鼠穴から籠鼠を呼び、亥神の近くの入り口へと運んでもらいました。
そして、桃太郎達は無事に桃源鏡を亥神のところへと持って帰る事ができました。
桃竹伝 9話になります。
これまでもどこかで聞いた人物が出てきていますが、その人とはいっておりませんので、よく似た人と思ってください。
さて、無事に桃源鏡を持って帰った桃太郎ですが、これで刀が無事にできるとは限りません。
彼らに迫る新たな式神。
次回は戦いになるかも




