高々と空へ
高々と空へと打ち上げられた鳥鬼は、雲を突き抜け何とか止まり下を見る。
「くそ!
あのバカさ…」
ドカァ!
下を見た鳥鬼の顎を下から筋斗雲に乗って上がって来た、孫の如意棒が打ち上げた。
「ぐぁ!」
仰け反る鳥鬼の腹を思い切り、孫は如意棒で突く。
鳥鬼はその場から大きく後ろに吹き飛んだ。
桃太郎が地上で虎鬼と戦っている、まさにその時の出来事だった。
「お、おまえぇ!!」
鳥鬼は口端の血を拭いながら孫を睨み付ける。
「へぇ、式神でも血は出るんだな」
バカにしたような自分の肩にトントンと如意棒を当てながら孫は言った。
「絶対に許さん!」
鳥鬼が大きく翼を広げた。
「吹き飛んでしまえ!」
鳥鬼が広げた翼を振るうと、凄まじい風が孫に向かって放たれた。
孫は顔色も変えずに目の前で如意棒を回す。
風は如意棒に当たりあらゆる方向に流されて、威力を失った。
「な!
只の風じゃないんだぞ」
驚く鳥鬼。
確かにその風は特別な力で作られていた。
只の棒で防げる筈はない。
しかし、孫が持つのは神の棒。
使う孫が強力ならその持つ棒も規格外へと変わる。
「涼しくもないな。
こんなそよ風」
風を無効化して孫は平気な顔だ。
そんな孫の顔を見て、鳥鬼は激怒した。
鳥鬼が大きく息を吸い込み始めた。
辺りの雲が鳥鬼の口へと吸い込まれ、風もまた鳥鬼へと流れ込んだ。
「な、なんだ」
孫は筋斗雲を守るように如意棒を回すが、徐々に鳥鬼へと引き寄せられる。
ふと、鳥鬼が吸い込むのを止めた。
孫は如意棒を構えて、鳥鬼を見た。
パンパンに膨らんだ腹。
そして、鳥鬼はニヤリと笑った。
膨らんだ腹から、体全体へと膨らみが広がる。
鳥鬼の体はまるで風船のように全体的に膨らんだ。
「かはぁ~」
数十倍に膨らんだ鳥鬼は、小さくなった孫を見る。
「これで俺の力は数十倍だ!」
鳥鬼は方翼を孫に向かって振り下ろした。
先程とは比べられない程の風が孫を襲う。
「く」
孫は如意棒を目の前で回すが押されていた。
「!」
そんな中、肩に痛みを覚えた孫がその場所を見ると、何かに斬られたように切り傷が出来ていた。
(岩猿と呼ばれた俺の体に傷だと)
孫は内心驚く。
その直後、今度は頬に何かがかすった。
痛みがある。
(切られた?)
鳥鬼からの風が止み、孫は如意棒を構える。
ニヤリと笑っている鳥鬼。
「今度はその体を切り刻んでやる」
両方の翼を広げる鳥鬼。
そして、その羽を振り下ろす。
先程より激しい風。
孫は如意棒を回さずに鳥鬼を見ている。
吹き飛びそうになる筋斗雲だが、孫が呼び出した雲だ。
霧散することなくその場に止まる。
ブン!
孫は如意棒を振った。
キン
如意棒が何かを弾く。
そこから、孫は凄まじい速度で如意棒を振り回した。
キンキンキンキン
振り回すと同時になる音。
孫が弾いたそれは力なく下へと落ちていく。
それは羽だった。
「なんだと…」
鳥鬼は驚く。
激しい風の中に忍び込ませた羽を孫が確実に弾いている。
それは鳥鬼が予想できない事だった。
「なるほどな。
何が飛んできてるのかと思ったが、こういう事か」
孫は如意棒を腰に構える。
「如意百烈弾」
鋭い突きが鳥鬼に向かって放たれた。
「は、なんだそれは棒っ切れでいくら突いても効かんなぁ!」
鳥鬼は胸を張って孫の突きを受け止めた。
確かに今の鳥鬼は元の姿に比べたら巨大だ。
如意棒が棒っ切れに見えるのも間違いなかった。
「だったら!
大きくなれ如意棒!」
孫の声に如意棒がその大きさを数十倍にする。
「なに!!」
孫は抱えるように如意棒を持ちながら、無数の突きを放った。
「ぎ、が、ぐぁ!!」
先程までとは違う巨大な如意棒は、鳥鬼の身体中を打ちのめす。
嘴から涎を滴しながら白目をむく鳥鬼。
「終わらせようか」
孫は如意棒を元の細さに戻し振りかぶる。
「棒でも斬れるんだぜ」
ブン!
凄まじい風斬り音が鳴り、如意棒は鳥鬼を通り抜けた。
そして、静かに鳥鬼は2つに別れて虚空へと消えた。
「なんだ?」
孫は虚空に消える鳥鬼の場所から1枚の紙が宙に舞うのを見ました。
直ぐにそれを手に取ります。
それは孫にはよく分からない文字が書かれたお札でした。
孫はその札を懐にしまいます
そして、一息つきました。
如意棒を小さくして耳の中へと片付けます。
「さて、下のあいつらは終わったのか?」
孫は筋斗雲から下を覗き込みました。
「は、は、はぁ~
よくついてきてるな、いぬっころが!」
猿鬼は森の中、木から木へと飛び移りながら、こちらを追ってくるケンに叫んだ。
確かに木から木へと飛び移る猿鬼に比べて、ケンは木や根っこ等の障害物が多い、それでも追い付いてきている。
猿鬼が少し他より大きい木へと飛び移りその足を止めた。
「どうした?
鬼ごっこは終わりか」
ケンは猿鬼を見上げながら言った。
「あぁ?
目的の場所に着いたんだよ」
猿鬼はケンを見下ろしながらニヤニヤしている。
「ほれ、これでも喰らえ」
猿鬼は木の上からケンに向かって気弾を投げつけた。
「ふん」
ケンは鼻を鳴らしながら軽くそれを避ける。
避けた気弾は地面を抉った。
当たればケンといえどもダメージは避けられない威力だ。
しかし、あのぐらいならケンなら簡単に避けられる。
「その余裕、どこまで続くかなぁ!」
猿鬼はニヤリと笑う。
猿鬼は気弾を胸の前に多数産み出し片手で抱える。
「ほら、行くぞ!
喰らえ!」
猿鬼はその気弾を1つ取っては下にいるケンに投げ始めた。
「ほらほらほらほら!」
だんだんと投げる数が増えてくる。
ケンはそれを紙一重で避けてはいるが、これ以上投げつけられる数が増えれば、避けられなくなるかもしれない。
ケンは木の上で笑いながら投げつける猿鬼を睨む。
そして、大きく息を吸った。
「ワォーーン!」
「当たるかよ!」
ケンの遠吠えを猿鬼は違う枝に飛び移って避ける。
間髪いれずにケンは次の遠吠えを猿鬼に放った。
「ほほいのほいっと!」
また、猿鬼は軽く避けながら枝に飛び移る。
その間にも気弾をケンに向かって投げている。
ケンも負けじと避けながら、遠吠えを放つ。
両者1歩も引かずに遠吠えと気弾を撃ち合った。
「そろそろ喉が疲れただろう。
これで終わりにしてやるよ」
猿鬼は抱えた気弾を上に投げあげる。
「ほら、全部喰らえ!」
猿鬼の言葉に反応して、気弾が雨のようにケンに向かって降り注いだ。
「終わりにするのはこちらも同じだ」
ケンはそう言うと、猿鬼がいる木に向かって突進した。
「自爆か」
猿鬼はそう言って飛んだ。
木が揺れる衝撃を避ける為に他の枝に飛び移る為だ。
「おいおい、飛び移る先を確認して飛べよ、バカ猿」
ドゴン!
ケンが木に体当たりする。
「はぁ?」
猿鬼はケンの言葉に辺りを見た。
そして、驚きの顔に変わった。
いつの間にか飛び移れるほどの大きい枝がなくなっていた。
「ただ、遠吠えしてただけじゃないんだよ」
ケンは足場が失くなり下へと落ちてくる猿鬼を見上げる。
「見下すだけのお前に、見上げて進む者の強さは分からんだろうな」
ケンは足を踏ん張り大きく息を吸う。
「ま、待て!
こんな簡単に…」
「神切り!」
ケンが甲高い声の咆哮を放つ。
それは神をも切り裂くケンの必殺の技。
猿鬼は何も言えず空中に切り裂かれ消えていった。
「流石に使いすぎたか」
カハっとケンは地面に血を吐きました。
連続の遠吠えに必殺の技です。
喉への負担はかなりのものでした。
(さぁ、戻るか。
桃殿が心配だ)
ケンは来た道を急いで戻りました。
お久しぶりです
なかなか筆が進まずかなり時間がたちましたが、また細々と続けていこうと思います。
間隔は空くと思いますが、気長にお相手くださる方は、たまにお立ち寄りくださいませ。
では、また次回に




