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取り巻き令嬢たちのメタモルフォーゼ

取り巻き令嬢ラララの羨望と幸せ

作者: 城壁ミラノ

 ラァ〜……ですわぁ……


 歌う元気が出ませんわぁ……


 今から、リンク侯爵様のお茶会に行くというのに。


 取り巻きの一人として――今さら参加しても〜


 といった後ろ向きな気分ですわ。


 原因はハッキリしていますわ。

 一緒に取り巻きをしていたスイートピー様。

 私となんら変わりないと思っていた彼女が――

 美しきナルシストで有名なオルランド侯爵様と婚約したから。


 スイートピー様も含め私達取り巻きは侯爵様のナルシストな部分を敬遠していて――

 婚約者にしたい殿方候補から外していましたわ。

 そのはずだったのに……

 スイートピー様は取り巻きとしてではなく、個人的な出会いを通して侯爵様とお近づきになられたそうで。


 いつの間にか、婚約なさっていましたわ。


 それだけでも驚きですのに。

 婚約なさってから改めて私達の前に現れた侯爵様。

 他者の美しさにも厳しい方でしたから、今までは私達取り巻きにも容赦ない審美眼を向けてこられて、


「そのドレスは美しさが足りない」


 とか、


「無個性の集まりとは、私が求めている美はないな」


 とか、辛辣な批評を浴びせてきていましたのに。


「スイートピーから聞いたよ。君達の無個性さには重要な意味があるとね。美しい薔薇を引き立てる可憐なカスミソウのように、控えめな美しさのドレスを着た君達が取り巻くことで私の美しさを一層際立たせてくれていたのだと知った。今までの非礼は許してほしい、そして礼を言おう」


 などと、抜群の理解力を示してくださったうえに、


「今日の君達は美しい白ユリの陰にひっそりと咲く可憐なスミレのように美しい」


 などと高評価してくださり……


 私達はあまりの驚きに言葉を失い侯爵様を見送り。

 そして口が聞けるようになると、


「ちゃんと私達の美しさを認めてくださる方なのですね〜……」

「私達を花に例えていただけるなんて、嬉しいですわね〜」


 侯爵様の評価は一転して高いものになりましたわ。


 特にスイートピー様にかけられた、


「あぁ、スイートピー。私だけの美しき花!」


 なんて特別感溢れる褒め言葉は胸に刺さりましたわ。


 スイートピー様は私の隣で、私と同じようなドレスを着ていらっしゃったのに……


 侯爵様には特別美しい令嬢に見えている……


 スイートピー様が大事そうに侯爵様に肩を抱かれて帰っていく姿が目に焼き付いていますわ。


 特別美しい侯爵様から特別扱いを受けるスイートピー様……



 羨ましい!! ですわ〜!!



 侯爵様は貴族の中で一番美しいと評判で。

 お顔だけでなく姿も一挙手一投足まで美しくて。

 高位の侯爵家の跡継ぎで有能な方と評判で。

 幸せな将来を約束してくださる殿方ですわ――!


 取り巻きの私にも美しいと言ってくれる人だと知っていたら……


 ナルシストだから嫌ですわぁ〜! 


 なんて言わずに婚約者候補に入れていたのに!!


 あぁ〜〜!! 今さら後悔してももう!


 侯爵様はスイートピー様の婚約者ですわぁ〜……


 ……………


 ………


 ……


 私には侯爵様を奪うなんて無理ですわ。


 潔く幸せを祈りましょう。


 わかっていますの……


 侯爵様が取り巻きに理解力を発揮して美しいといってくれたのは、スイートピー様のおかげ。

 お二人だから婚約できたのたし、お似合いなのですわ。

 私では無理だったと、はっきりしているし。サッパリと諦めがつきましたわ。


 ですが、もうしばらくはショックから立ち直れませんわね〜〜


 お茶会の間だけでも、いつも通りこなしませんとね。



 気を取り直して来た、お茶会が開かれる庭園。

 取り巻きの皆さま、いつも通り集まっていますわ〜

 同じようにショックを受けていらしたからどなたかお休みしてしまうんじゃないかと思っていましたが強いですわね。

 そうですわよね……

 誰かの婚約に一々ショックで休んでいては取り巻きは務まりませんわよね。

 さぁ、元気に挨拶ですわ〜!


「皆さま〜、ごきげんよう〜」

「あっ、ラララ様〜! ごきげんよう〜」


 皆さまと笑顔を交わせて一安心ですわぁ。


「これで、全員集まりましたわね〜」

「いつも通りですわね〜」

「スイートピー様が婚約なさって抜けた時は取り乱しましたけれど、気を取り直して参りましょう〜」

「そうしましょう〜」


 皆さまとそう決めると自然と心が軽くなりましたわ。

 私はまだ取り巻きの中に居るほうが落ち着くみたい……

 やっぱり、来てよかったですわ〜!


「さぁ、リンク侯爵様を取り巻きましょう〜」


 今日は、私の号令で取り巻き開始ですわ!


 一人抜けたことを感じさせないように立ち位置を調整して取り巻くのです――!


 侯爵様の前に取り巻きの綺麗な半円が完成。

 取り巻きの皆さまとはアイコンタクトさえ必要とせず自然とできましたわ。体の動きにも婚約ショックの影響を心配しましたが、動きの調子もいつも通りいいですわね。

 それでは、ご挨拶。


「リンク侯爵様〜、ごきげんよう〜」


 皆さまと同じタイミングと声のトーンで。

 これも上手に合わせられましたわ。


「レディ達、ようこそ」


 侯爵様も自然体で笑顔を返してくださいましたわ。


 次は、お客様の子息様方も取り巻いていって。

 皆々様、にこやかですわ。ほっと一安心。


 と思いましたら、一人問題を抱えた様子の方発見。


 リンク侯爵様の妹様ですわ。

 広い庭園でお一人だけ離れたところにいて、もうグラス片手にお酒を召し上がっていますわ。

 背中を向けていらっしゃいますが、ご機嫌ナナメなのは一目でわかります……


 ご令嬢様は私達と同じ、お年頃――不機嫌の原因は一つですわね。

 私だけでなく取り巻きの皆さまも気づき、確認の視線を交わしていると侯爵様もいらっしゃいましたわ。


「ヴィレッタは、オルランド侯爵が婚約を発表してから落ち込んでいてね。相手が自分ではなく伯爵令嬢だったものだから……」


 わかりますわぁ〜。

 侯爵令嬢様からするとショックも私達より大きいですわよねぇ。まさか、自分を取り巻いていた令嬢に侯爵様を取られるなんて……

 これは取り巻き令嬢として、深刻な事態ですわぁ。


「すまないが、みんなで元気づけてやってくれないか」


 取り巻き要請が出ましたわ。

 皆さまとアイコンタクトで確認してから、


「お任せください〜」


 侯爵令嬢様の取り巻き開始ですわ!


 簡単に受けたものの――

 取り巻きの皆さまから緊張と恐怖が伝わってきますわ。

 わかりますわ。

 今の侯爵令嬢様を取り巻くのは危険ですものね……

 オルランド侯爵様と婚約したスイートピー様と同じ取り巻き令嬢というだけで私達が憎まれてキツく当たられるかもしれませんから……

 上手に取り巻いて、ご機嫌を取れるといいのですが。


 さぁ、妹様との距離が近づいてきましたわ!

 内心の恐怖を悟られないように、笑顔で隠して。

 いつも通り足取りも軽やかに取り巻き〜ですわ!


「ヴィレッタ様〜、ごきげんよう〜」


 乱れなく合わせることができましたわ。

 声にも緊張や恐怖などは混ざっていません。

 しかし――

 ヴィレッタ様からは冷たい視線!

 恐れていた事態に……?


「あら、みんな。ごきげんよ」


 ヴィレッタ様の声はトゲトゲしく、素っ気ない。


 ツンと、そっぽまで向かれましたわ。

 その間に、私達は視線を交わして――恐怖と緊張で震える心を共有しますわ。

 そして気持ちを立て直すのですわ〜!

 もう一度、笑顔で……


「ヴィレッタ様〜、今日もお綺麗ですわ〜!」

「今日のドレスもお似合いですわ〜!」

「今日の主役ですわ〜!」


 持てる力の限り盛り上げていきますわ。

 どうですか〜? ヴィレッタ様〜?


「ふん、綺麗なんかじゃありませんわ」


 また冷たい反応!


 剣の切っ先のように鋭く心にきましたわ。

 一人だったらズバーンと成す術なく切り裂かれていましたが、取り巻きの皆さまと一緒だからなんとか切られずに済みましたわ……

 皆さまも同じ思いなのか。

 冷や汗をかきそうな笑顔を浮かべていますわ。


 そんな私達から視線をそらしたまま。

 ヴィレッタ様は俯いてしまいましたわ……


「私が綺麗だったら今頃、私がオルランド侯爵様の婚約者に……そうではなくて?」


 うっ、何も言えませんわ。


 そう……ここは何も言わずに受け流しですわ。

 皆さまとアイコンタクト、沈黙……


「うっうっ……」


 ヴィレッタ様が泣き出してしまいましたわ!


 沈黙するしかなかったとはいえ、最悪の結果に。


「私なんて私なんてっ! ひっく! うぃ!」


 どうやら、お酒が入っているのもあるようですが。


 私達は責任を共有するとすぐさま取り巻きの距離を縮め、ヴィレッタ様を今度こそ慰めるのです!

 ハンカチで涙を拭いて差し上げながら、そっとグラスを取り上げて……


「ヴィレッタ様、泣かないでくださいませ〜! 綺麗なお顔が台無しですわ〜」

「そうですわ〜」

「ヴィレッタ様はオルランド侯爵様より美しいですわ〜!」

「そうですわ〜」

「ヴィレッタ様ならば、侯爵様のさらに上の公爵様とも殿下とさえ、ご婚約できますわ〜!」

「そうですわ〜」


 あらん限りの励ましの言葉が出ましたわ。

 もちろん、心から思っていることです。

 ヴィレッタ様は静かに聞いていて、受け止めてくださっている様子。

 伝わった……?

 と思いきや、またまた冷たくトゲトゲしい視線!


「公爵様に殿下と婚約ね……あなた達の中からまた、私を出し抜く者が出るのではないかしら?」


 あらぬ疑いがかけられましたわ!


 ……当然ですわね、スイートピー様の後では。


 きっぱりと否定しましょう。


「そんなこといたしませんわ〜っ」

「そうですわ〜」

「私達がヴィレッタ様を出し抜いて公爵様や殿下と婚約なんて、できませんわ〜!」

「そうですわ〜」


 悲しいですが公爵様と殿下は諦めましょう。

 元々無理な方々ですから未練もありません。


 ヴィレッタ様は真実の言葉か確かめるように私達一人一人の顔を見ていきますわ。


「ふん、どうかしらね?」


 そう簡単に信じてはもらえませんわよね〜!


 ですが、これ以上、疑いを晴らす手段はありません。

 ならば――


「ヴィレッタ様、少し向こうでお休みになってください」


 そっとお体を押して、ご誘導ですわ。

 テラスの揺り椅子に座っていただき、お水を差し上げて、濡らしたハンカチで目元を冷やしていただく。

 無言の取り巻き行動というものですわ。


「ありがとう、落ち着いたわ」


 静かな取り巻きが功を奏したようですわ。

 ハンカチから覗くヴィレッタ様の目、穏やか〜。


「私はここにもう少し居ますわ。みんなはどうぞ、お茶会に戻って楽しんできて」

「ヴィレッタ様、ありがとうございます」


 心根は優しいご令嬢ですわ。

 きっと、公爵様でも殿下でも婚約できます。

 完全復活と幸せをお祈りいたしますわぁ〜



 それでは、お言葉に甘えて庭園に戻りまして。

 皆さまと輪を作って、


「よかったですわね〜、一安心ですわ〜」

「ええ、ですが、まだ心配は残りましたわね〜」

「しばらく、公爵様と殿下を取り巻くのは控えたいですわね〜……」

「ええ、危険過ぎますわ〜……」

「ヴィレッタ様には早く、ご婚約していただきたいですわねぇ〜」

「ですわね〜」


 あ、侯爵様がいらっしゃいましたわ。


「みんな、妹を慰めてくれてありがとう」


 優しい笑顔をくださりましたわ。

 取り巻いてよかったと思えますわ〜!


「ヴィレッタは私が慰めたときより元気になってくれたよ。安心してお茶会を続けてくれ。ケーキももっと用意しよう、好きなだけ食べてくれたまえ」

「ありがとうございます〜!」


 では、遠慮なく〜

 喉が渇きましたら、お茶を頂いてから〜

 美味しそうな一口サイズのケーキを沢山。

 食べるたびに取り巻き疲れが癒やされていきますわ、今日は大変だったからいつもより量が増えますわね〜


「美味しいですわね〜」

「癒やされますわ〜」


 ラララ〜、いつもの感覚が戻ってきましたわね。



「やぁ、やっとケーキを食べているんだね」


 あっ、殿方達!


 ノア•バックス伯爵様とルーク•パステル伯爵様。

 お二人共お年頃だから意識してしまいますのよね〜。

 ケーキは後にして、お話に集中しましょう。


「ヴィレッタ様がオルランド侯爵の婚約にショックを受けておられるようだね」

「そうなんですの〜」

「私達伯爵では慰め役に足らないから、君達に任せていたよ。すまない、ありがとう」

「いえ〜〜」


 お気遣いいただけて、嬉しいですわ。


「君達もショックで落ち込んだんじゃないか?」

「ナルシストと敬遠していたようたが、実はオルランド侯爵の美しさに魅了されていたりしたとか?」


 ギクッ、ですわ〜

 意外に鋭い殿方達ですわね、取り巻きの皆さまと視線で共有して……


「そんなこと〜ほほほ〜」


 笑って誤魔化すのみですわ〜!


 なんとか何事もなく笑顔を返してくださったノア様とルーク様は、苦笑いになると顔を見合わせましたわ。


「全く、オルランド侯爵には困らされるな」

「そうだな、だが、婚約してくれてよかったよ。彼がナルシストなまでに自分の美を誇って言いふらしていたのは令嬢へのアピールもあったようだからな。婚約者が出来て、あの強烈さがなくなったよ」

「あぁ、彼の美意識には巻き込まれて大変だった。いつ自分を批評されるか冷や冷やしたし、つい自分も張り合う気は無いのに美を意識してしまったりしてね」

「そうそう。柄にもなくね」


 侯爵様の美しさと美意識には叶わないかもしれませんが。


 お二人共、私からすれば――


「ノア様もルーク様も、お美しいですわ〜」

「美しいですわ〜」


 取り巻きの皆さまも、そう思うのですね。


「ありがとう」


 お二人の驚いたような瞳と嬉しそうな笑顔。

 ほのぼのとしたやりとりですわ。

 巨星が去った後の小さな星々だけが輝く夜空のように、ささやかで平穏な空気が流れていますわぁ。


「ルーク、私達もみんなとケーキをいただこうか」

「そうしよう」


 お二人も加わって、ケーキ堪能再開ですわ。

 ここはもう遠慮なく頬張りましょう〜

 と思ったら、ルーク様が近づいてまいりましたわ!


「ラララ嬢、ケーキが好きだったね」

「はい〜」


 ルーク様とは何度か他愛なくお話してきましたけど。

 覚えていてくださったのですね〜

 ――ルーク様、赤銅色のふわふわした髪と金色の優しいタレ目、柔和だけど体つきはシュッとしなやかで、落ち着いた灰色のスーツも着こなしていますわ。

 オルランド侯爵様の評するところの「まだ子供っぽさは残るが汚れなき美しさは感じる」というものですわね〜特に話す時の笑顔が可愛いくて好きですわ〜!

 あっ、どうしましょう〜、好きなんて〜!?

 私ったら……!?


「ラララ嬢、前から聞きたかったことがあるんだ」

「えっ、はい〜?」


 落ち着いて聞かなきゃ〜――


「ラララ嬢は歌や音楽も好きかな?」

「ええ、大好きですわ〜!」


 好きなものを当てていただけて、つい、跳ねそうになりますわ〜


「そうなんだね、名前がラララだからもしかしてと当てずっぽうで聞いたんだが。やっぱり?」


 やっぱり、名前で気づきますわよね〜

 取り巻きの皆さまにも聞かれてきましたわ〜


「はい〜、お母様が歌が好きでこの名前をつけてくださったんです。私も小さい頃から歌も音楽も好きになって自分の名前をラララ〜っと口ずさんでいまして〜」

「可愛いね」

「か、可愛いだなんて〜ありがとうございます〜」


 これは奇跡ですわ!


 そんな風に殿方に言ってもらえる日を夢見ていましたの!


 ルーク様がまさか私の……?


「それならば、今、王都ホールで開かれている音楽祭に私と一緒に行っていただけないだろうか? お近づきの記念によかったら」


 ええっ!?

 夢の続きがこんな簡単に〜?

 これは……っ、一度冷静になって確認!

 ――取り巻きの皆さまも殿方と楽しそうに話しているし……ルーク様は伯爵様だからヴィレッタ様にも睨まれない……いいですわよね!? 

 これは、私も楽しみましょう〜!


「ええ、もちろん喜んで〜!」


 ラララ〜! ですわ!



 音楽祭、私も行く予定でしたの。

 お母様とお父様と。

 ですが、ルーク様にお誘いいただいたから喜んで見送ってくださることになりましたわ。

 ドレスアップも殿方と行くものに変えていただき。

 こんなこと初めてでドキドキですわ〜!


「ルーク様〜!」


 屋敷まで馬車で迎えに来てくださって。

 取り巻きの時より足取りがはしゃいでしまいますわ。

 私だけ笑顔で迎えてもらえて、二人で隣に座って。

 スイートピー様は侯爵様と仮面舞踏会で出会い、ご自分でデザインしたドレスを褒めていただいて仲を深めていったとか。

 私にも同じようなことが起こるなんて――


「ラララ嬢、すまない」

「え?」


 ルーク様の申し訳なさそうな笑顔……

 私には問題が発生!?


「な、なんでしょう?」

「美しい音楽を聴いていたら途中で寝てしまうかもしれないんだ……」


 あっ、そんな問題ですの〜


「私もですわ〜、気づくと寝ていることがありますの〜!」

「そうなのか? よかった〜」

「一緒に居る方には目を閉じて聴いていたと言っていますわ〜」

「私もだよ〜!」


 こんなところが合って笑いあえるなんて!


 ルーク様はますます私の運命の……?

 そう思ってしまいますわ……



 気持ちいい眠りに誘ってくれる音楽祭から帰宅。

 ルーク様と共に大満足でしたわ〜!


「素敵な音楽祭でしたわ〜ラララ〜」

「おかえりなさい、ラララ」

「あ、お母様〜」

「楽しかったようで私も嬉しいわ。ルーク様は素敵な方のようですわね」

「はい〜、り、理想の方ですわぁ」


 こんな話、私がする日が来るなんて。


「音楽が好きな方に悪い人は居ませんものね。家柄も丁度良いし、このまま上手くいけばいいけど。お父様もお母様もそう祈っていますわ」

「は、はい〜」


 どうか、上手くいきますように。

 私も祈るしかありませんわ〜


「そうでした、あなたのお友達から、お先に結婚式を挙げるとのお知らせが届いていますわよ」


 招待状。

 スイートピー様とオルランド様の結婚式!

 これは取り巻き仲間として喜んで参列ですわね〜!



 結婚式会場は国で一番大きく豪華なところ。

 お城のように巨大なチャペルに華やかな庭園。

 国中の貴族が招待されているようで見たこともないほど盛大ですし。

 令嬢達の憧れが現実のもになっていますわね〜

 ここに来てみるとわかりましたわ……

 私には、ここで花嫁になるのは似合わなそうだということが……


「スイートピー様はご自分でデザインした花嫁ドレスを着るそうですわね〜」

「いいですわね〜〜」


 いつも通り集まった取り巻きの皆さまと羨ましがるのが精一杯。


 実際、ご登場したスイートピー様は……


 見たこともない美しいドレスを着ていて――

 この会場とも――

 美しいオルランド侯爵様ともお似合いですわ。

 私は……大勢の招待客の一人として祝福しますわ。


 お待ちかねのブーケトスも参加。

 ですが、今回はヴィレッタ様がブーケを取れるように取り巻きの皆さまと手でブーケを弾いて誘導ですわ!

 見事、ヴィレッタ様がキャッチ!

 役目を終えた達成感で満たされていく〜――


「おめでとう、ヴィレッタ」

「あっ、殿下!」


 殿下のご登場〜!?

 主役のオルランド様にも匹敵する美しさですわ!


「向こうで一緒に乾杯しないか?」

「は、はい。喜んで――!」


 ヴィレッタ様〜!

 本当に殿下と婚約なさるかも……

 お幸せにですわ〜〜あ、お酒はほどほどに〜


 取り巻きとしても充実した結婚式となりましたわね。


「ラララ嬢、私と乾杯しよう?」


 あっ、私はルーク様と乾杯ですわ!


「喜んで〜」

「オルランド侯爵とスイートピー様に、乾杯!」

「乾杯ですわ〜!」


 最高の美酒ですわね〜


 ん? ルーク様が私の姿を改めて見ていますわ……


「ラララ嬢も今日は特別美しいよ」

「そ、そんな〜!? ありがとうございます〜」


 花嫁ドレスを引き立てるドレスでも、気合いを入れて選んだだけに嬉しいですわね〜


「ルーク様もブラックスーツもお似合いで、今日は特別格好いいですわ」

「ありがとう。この結婚式場も美しさで評判のようだね、少し一緒に歩いてみないか?」

「ええ、見て回りたかったですわ〜」


 本当にルーク様とは気が合いますわね〜


「美しい会場によく似合った、素晴らしい結婚式だったね」

「はい〜、とっても〜!」

「ラララ嬢は――どんな結婚式を挙げたいと思っている?」

「えっ」


 私の結婚式のお話!?

 聞かれるなんて夢の続きが止まりませんが。

 し、心臓がときめきのショックで止まるところでしたわ……!


「よければ聞かせてくれ」


 ルーク様。

 微笑んでいらっしゃるけれど、眼差しは真剣……

 私も本音を話さないと……!


「私は、もっと小さな可愛い結婚式場で、一緒に取り巻きをしている皆さまや親しい方だけを招いて結婚式を挙げたいですわ」


 優しくうなずいてくださっていますわ……

 ルーク様には知ってほしい、全部。


「それから、結婚式にぴったりの音楽を選んで流したいですわ」

「素敵だね」


 そう言ってくださると思っていましたわ。


「ラララ嬢」

「はい?」


 いつの間に、前に来て――

 そんな訴えかけるような揺れる瞳で何を……

 この、胸の前で握られた手は?


「私と婚約して、結婚式で流す音楽を選んでくれないか?」



 私も婚約!? 結婚式!?


 ――こんな風に突然夢が叶うなんて!


 人様の盛大な結婚式の片隅でささやかに……

 おこぼれとはいえ、こんな綺麗な庭園で。

 スイートピー様を羨んだ時もあったけど。

 私だから叶う夢――私のために叶えてくれる方――

 これが、私の求めていた結末ですわ。


「ええ、喜んで〜!」


 私も無事婚約成立!


「ありがとう!」


 ルーク様の可愛い笑顔も弾けて幸せですわ〜!


「すまない、いきなりこんなところで言ってしまって驚かせたね。気持ちが盛り上がってしまって!」

「わかりますわ〜!」


 気持ちが盛り上がって高ぶり過ぎて。

 感涙で言葉になりませんが……


 こういう時はやっぱり――


「ラララ〜!」

「ラララ〜!」


 これからはルーク様と一緒に〜ですわ〜〜〜!!

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