異世界お弁当コンテスト グルメ皇太子の胃袋を掴むのは誰か?
なろうラジオ大賞6 参加作品
テーマは「お弁当」です。
自然豊かなこの王国では野菜や魚、肉と、あらゆる食材が入手可能で、その貿易のお陰で国はとても繁栄しておりました。
この国の皇太子様も、とても聡明で人民からの信頼も厚い方でした。
ただ一つの問題を除いては……
皇太子はとてもグルメな方で、毎日豪華な食事を作らせるのでした。
そのため料理人や女中だけでも、100人ほどの存在していました。私もその中の一人です。
ある時、皇太子様が農家へ視察に向かわれるとのこと。そこで私たちに携帯用の料理を作るように御達しが下りました。
そこで素晴らしい料理を提供できた者には褒美を与え、更には陛下専属の料理人にまでなれると。
これを聞いた女性たちは、
「ここで陛下のお目に止まれば!」
「婚約も夢じゃない!」
みな血眼になり、お弁当作りに励むのでした。
私もお役に立てれば。
でも、お弁当とは、一体なにを?
「私はパンの中に食材を挟み込んだものを作るわよ」
「きっと陛下はライスのほうが」
「高級牛肉と野菜を!」
やはり外出するのであれば、日持ちするものを。
毒見の者もいるので。
携帯性と衛生面を考えて……
そして当日の早朝。
私がキッチンへ向かうと……満員!?
「遅かったわね、あなたの作る場所、ないから!」
我先にと奪い合う始末。
ようやくキッチンが使える頃には、残り時間もなく、更には食材も尽き果て、器具も壊れていました。
あぁ……どうしょう。
これじゃ、なにも作れない。
せっかく考えた私のお弁当、陛下に召し上がっていただきたかったのに。
私たち一行は陛下に伴い、視察現場に向かいました。
そしてお昼になり、皆が出し合ったお弁当を一つ一つ陛下が吟味されます。
豪華絢爛な料理の見た目と味に、陛下も大変感心されます。
そして最後、私の番。
「君は、なにも持ってこなかったのか?」
「私のは、こちらです」
献上した物は、木製の水筒一本。
「これは?」
周囲がざわめきます。
「薬草を煎じたお茶でございます。
お優しい陛下のこと、全ての料理を召し上がるはず。それでは健康面で体の負担もかかります。このお茶は消化を助け、血の巡りを良くさせます。
どうぞご自愛ください」
陛下はこの事を大層お気に召していただき、以後慎ましい食生活を送るようになりました。
そして私は……
陛下から全幅の信頼をお寄せ頂き、料理は私一人に一任されました。
今では食事だけでなく、お側で私生活のお伴も。
今日は私達の子どもを連れてピクニックです。
もちろんお弁当は、私の手作りで!