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第1話

 調子はどうだい?


 やたらと空腹を覚え、コンビニで数分悩んだ末大盛りペペロンチーノを選んだ。アルバイトの昼休み。空調が機械の熱で相殺された中で汗を拭いながら動き回った後、外へ開けたドアは勢い良く熱風を吸い込んだ。重い足取り一歩。途端にのしかかる陽光とアスファルトからの熱い上昇気流に目が眩む。公園。派遣の小柄な若い男が東屋で飯を食っている。先客、ツイてない。まあ、ツイてた事なんて今までなかったんだから。ふっと笑いみたいな吐息、車へ戻ろうか?エンジン掛けて来たけどクーラー効いてるだろうか?そっちへ足を向けかけた時、男が立ち上がった。ねつらったみたいな体にならない様にと努めてゆっくり歩く。ゆっくり、ゆっくり。その間にも陽射しがじりじり肌を焼く。東屋の屋根の下、どうにか自然に滑り込む。十分変だったか?どうせ何をしてもぎこちない奴だよ、お前は。嘘みたいに涼しい。風が日陰に吹き込んで、天然の扇風機みたいに心地よい。腹が減っている。ペペロンチーノを空けかけたその時、一人のおそらく若い女の、やはり派遣であろう、不意な同席を受けた。車が停まり、クーラーボックス担いで真っ直ぐにこちらへ向かって来たその女を一瞥、ああ、さっき僕と深夜バイトが一緒な男と楽しげに喋りながら働いてた女だ。僕みたいに変に気を遣うことなんてない。どうぞ。みんなの東屋だ。薄く微笑みを浮かべて「お疲れ様」いや、無言でちょこんと頭下げるくらいが良いかな?話が弾んだらどうしよう。熱さに仕事、幸い話題はいくらかある。さっき彼女が話してた男はお世辞にも人格者とは言えないし、僕より随分若いのに髪が薄い。愛想だって良くない。深夜のバイト先ではみんなに嫌われている。そんな彼に彼女は業務の範疇を越えた談笑を、彼女の方から積極的に誘っていた。社交的な性格なのかもしれない。すぐ隣のセクションで働いてるから僕の事も認知してる筈だ。若い女は苦手だけれど、不快感を与えないようにしなくちゃ。

 すべて杞憂に過ぎなかった。彼女はクーラーボックスをベンチに置くと、その向こう側に僕に背を向けて座りスマホをいじりながらクーラーボックスから取り出したサンドイッチみたいなのをかじり始めた。羞恥。自意識過剰。居ても居なくても同じ。僕は急いでペペロンチーノをすすり込み、逃げるみたいに東屋を去った。

 戻った車のエアコンは全然効いてなくて、逃げ込んだその中でじっとりと汗を滲ませながら、急いで詰め込んだせいで出たゲップはすごくにんにく臭かった。

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