赤青カエルとオムライス屋さん
森に赤と青の二人のカエルが住んでいました。
二人は食べることが大好きでおいしい物をいつも探しています。
ある時、街に行くととってもおいしいオムライス屋さんがあると街の人に聞きました。
そのお店に二人で行ってみることにしました。
でも、そのお店はガラガラとしていて誰もいません。
主人はしょんぼりと元気がありません。
「どうしたの?」赤いカエルが訪ねると。
食材がなくて、オムライスが作れないといいます。
オムライス屋さんはいつもは行列ができるくらい、大人気のお店でした。
でも、自慢のオムライスの材料がなかなか手に入らないのです。
「お店のオムライスはとってもおいしいんだね」カエルさんがそう言うと、
主人はじまん気に「世界で一番おいしいオムライスだ」と答えました。
二人はじゅるりとおいしいおいしいオムライスを頭の中で思い描きます。
どちらかとなく、二人は顔を見合わ頷きます。
1匹はいいました。「オムライス食べたいなぁ」
もう1匹も「そうだね。もうすっかりオムライスのおなかだよ! だから......」
二人は主人にぐっと顔を近づけます。
「「食材とってくる! だからオムライス食べたいっ!!」」
主人は二人のいきおいにびっくりしましたが、苦笑いして「じゃあ、お願いしようかな」と言ってくれました。
少し遠いところにあるといい、町までの地図を書いてくれたのです。
二人は地図を受け取ると、荷物をもって町に急いで向かっていきました。
二人山や谷をグングンと飛ぶように走っていきます。
時折、休憩をはさんだりして順調に向かっていき、日が暮れはじめる頃には町についたのです。
でも、町に入るための橋が壊れてしまっています。
門番の人に二人は聞いてみました。
「3日前にひどい大雨があってね。 川の流れで壊れてしまっんだよ。おかげで荷物がね
......。 まぁ、いろいろとたいへんさ。」
困った顔で教えてくれました。
これじゃあ、入れないと二人はうんうん、うねります。
そこで青いカエルはピコンとひらめきます。
「ロープをくくりつけて、カゴで物を運ぼうっ」
赤いカエルもウンウンとうなずいてくれました。
青いカエルがロープをもって、向こう岸に泳いでいきます。
その間に赤いカエルが近くの木の高いところにロープをくくりつけていきます。
青いカエルが川から出たところで、カゴをびゅーっとロープづたいに向こうにすべらしていき、それを受け取った青いカエルが町の中に運んでいきます。
主人が話していた、お店にいって材料をお願いします。
お店の人は「ああ、あの店の人か。 材料はあるけど、どうやって運ぶの?」と不思議そうにしています。
「ロープで道を作って、それで運ぶんだ」と青いカエルは教えます。
「それなら、たしかに運べるな! うちも橋が直るまでの間、その方法を使わしてもらおうかな」とお店の人はいいました。
なんだかいいことをしたみたいで青いカエルは嬉しい気持ちになりました。
お店の人も手伝ってくれることになり、一緒に橋のところまで戻りました。
今度はロープを門にくくりつけて、少しづつ送って運んでいきます。
何度も同じように運んで、ようやくすべての材料を運び終わりました。
手伝ってくれたお店の人にお礼をいって、青いカエルは向こう岸に向かって泳いでいきます。
ロープを片付けようとすると、門番やお店の人に「橋が直るまでそのままにしてほしい」とお願いされました。
カエル達はロープをそのままにして、急いでオムライス屋さんのいる町に戻っていきます。
二人の頭の中はおいしいオムライスを食べることでいっぱいになっていたのでした。
町に着くころには、あたりはうす暗くなっていました。
町に入すときに門番の人に声をかけられます。
「ずいぶん急いでいるようだけど、どうしたんだ?」
「オムライス屋さんの材料を取りにいってたんだぁ」
そうってばっと門番に腕いっぱいの食材を見せます。
「おお、あのオムライス屋さんのか。 食材を運んできてまで食べたいだなんて、主人もきっと嬉しいだろうな」
「ほら、オムライス屋さんのためにも急いで行った方がいいぞ」と言われて、二人もトテトテと街の中のを走っていきます。
店の前に行くと、主人がいました。
トテトテという音で顔をあげた主人は二人の姿と食材を見ました。
「お、ずいぶんと早いな。 道にでも迷ったのか。 あれ、もう運んできたの?」
「「オムライスおなかいっぱい食べたいからとってきたいよっ! だから早く作って!!」」
二人は主人に食材を押しつけて、オムライスを作ってほしいとお願いします。
「準備するからちょっと待っててくれ」
そういって主人は厨房に向かっていきます。
「これでおいしいオムライスを食べれるね。」
「うん。 もうおなかペッコペコ」
二人のおなかがぐ~っと大きな音をたてて鳴っています。
まだかなまだかなとそわそわしているとこ気味いいトントンと包丁の音や、ぐつぐつとソースをにこむ料理の楽しい音がしてきます。
カエルたちはがまんできずに厨房をのぞきます。
ライスがきれいなケチャップ色になっていて、となりの卵はクツクツと泡だってまるで踊っているようでした。
卵がきつね色になると、主人はフライパンをポンっとふるいます。
すると卵はひらひらと宙をまい、さかさまになってくるっと着地します
そのあざやかさに二人は「おお~っ」と声をあげました。
最後にお皿にライスをお山さんにもりつけて、卵で包んであげます
上にケチャップで可愛い絵を描いて二人の机にそっと運びました。
「さっ、めしあがれ。 じまんのおいしいオムライスだよ」
目の前のオムライスはぽかぽかと湯気がたっていて、おいしいにおいが広がっています。
スプーンを手にとり、そっとオムライスを一口乗せて、パクっとほうばりました。
すると口いっぱいにやさしい味が広がっていきます。
もう手が止まりません。
食べれば食べるほど、お腹に幸せがポンポンたまってゆき、体も心も元気いっぱいになっていきます。
二人は何杯も何杯も食材がなくなってしまうくらい食べました。
それをみながら主人は嬉しそうにオムライスを作り続けます。
いっぱい食べた二人はコテンと横になります。
「ああっ、もうおなかいっぱ~いっ! えへへー」
お腹をさすさすとしながら、うっとりと満足気なカエル達。
「いや~。 いい食いっぷりで作ってる俺も気持ちよかったよ。 また食べたい時には、た~んと食わせてやるからな」
カエル達の満足げな姿を誇らしげに見ながら言ってくれました。
まぶたがぽとぽとっと落ちて、二人は深い眠りにつきました。