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天使の愛の測り方  作者: えりなり
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第1話:恋愛成就のやり方

こんにちは!

初めて小説を投稿してみました!

 ここは天使達の住む天界。雲の上にデスクが並んで、雲の隙間から夕焼け色の日差しが差し込む。天使達が仕事を終え、帰ろうと片付けに入っている。周りが席を立つ中、一生懸命仕事をしている天使が1人。

「よしっ、今日も終わり」

周りを見渡し気づけば誰もいない。周りと関わりを持つこともなく事務仕事を順調にこなす日々、愛天音アテネはこんな無難な毎日に満足していた。帰ろうとデスクを片付けていると、1枚の手紙が書類の間から滑り落ちた。手紙には「人事異動通告」と書かれている。いつの間に届いたのだろうと開けてみると、「恋愛成就課へ異動」と書かれていた。愛天音アテネは、異動を希望した覚えも無く、なぜ急に異動させるのだろうと顔をしかめた。ただ、天使達を雇う神様の指示なら仕方がないかと、その手紙を鞄にしまい、今の部署のままが良かったと肩を落とした。

 翌日、早朝。職場への足取りが重い。新しい仕事というだけでも精神的な負担だと言うのに、チームワークが必須ということで有名な「恋愛成就課」で働かないといけないなんて、人付き合いが上手くない愛天音アテネにとって憂鬱でしかない。そう思いつつ、「恋愛成就課」の看板をくぐると、今までいた「学業成就課」と違い、デスクが無いひらけた空間が広がっていた。デスクの代わりに、弓を打つための射的台が並んでいる。


 「おはよう」

金髪カールのロングヘアでセクシーな服装をした香水のいい香りのする女性が話しかけてきた。胸元の露出が激しく、そこに目が入ってしまう。「学業成就課」ではあり得ない。

「おはようございます。学業成就課から異動して来ました愛天音アテネと言います。よろしくお願いします」気を取り直し、これからお世話になる先輩に嫌われないようにと真面目にお辞儀をする。

「私は天紫アマシ。分からないことがあったら何でも聞いてね。この部署に配属されて、数年間は、ずっとここにいるから、ある程度は答えられと思うわ。とはいえ、まずは、仕事全体を説明するから、質問はその後!」と天紫アマシは私にウインクした。タイムカードを手際よく切ると、自分のロッカーへ行き業務で使用する弓の矢を担ぐ。

「これが私たちの仕事道具。恋愛のキューピットが持つ弓矢みたいなものよ」と説明しながら、私の名前の入ったロッカーを探し、ロッカーからその矢を取り出して愛天音アテネにも差し出す。愛天音アテネは弓矢を受け取り、思ったよりも重かったため、お腹に力を入れてガニ股で受け取った。弓矢を背中に担ぎ、天紫アマシ先輩の後を小走りで追う。

 

 愛天音アテネは、弓矢台にて弓矢をセットした。周囲では他の天使達がどんどん弓矢を打っていく。早速、下界を見ながら天紫アマシ先輩から弓矢を射る対象について教えてもらう。

「私たちの仕事は至ってシンプル。仲の良さそうな男女を見つけ、恋愛成就させる対象を検討した後、円満な家庭を作ることができそうな男女2人に確信が持てたら、この運命の矢で射止めるだけ。そうすれば二人は結ばれ恋愛成就の成功。弓矢の技術がなくても心配はないわ。対象の名前を言いながら打てば弓矢は自ずと、その名前の主に刺さるようになっているから。」

 

 早速、愛天音も弓矢を打つ対象の男女を見つけ、その男女についての記録を手に取り弓矢で射止める対象の検討に入る。

「あそこの美男女2人組は仲が良さそう。」

2人について調べてみると幼稚園からの幼馴染らしい。天紫アマシ愛天音アテネの仕事を監視して言う。

「なかなか良いところに目をつけたわね。センスあると思う。でも、まだあの2人を恋愛成就させるには早いかもしれないわ。」そう言われ、しばらく対象2人の様子を見ていると、愛天音アテネが目をつけた男女の元にもう1人女子高生が校庭から走ってきて男子を間に挟み、3人で楽しそうに話を始めた。こうなると、確かに、どの女子高生と恋愛成就させるべきか再検討が必要だと納得した。最初の2人に加わってきた女子高生について調べてみると、高校から男子高校生のことを知るようになり、今年に入って、この男子高校生との恋愛成就を祈っていると分かった。愛天音アテネは、恋愛成就祈願をしているのであれば、3人目の女子高生を男子高校生を結びつければ良いのかと思い、記録を閉じ、弓を構えた。天紫先輩は、弓矢を射ようと焦点を定めている愛天音の肩を叩く。

「あれ、三角関係よね。」

「はい、三角関係ですね」お節介な天紫アテネ先輩に、業務を早く進めたい愛天音は焦ったく感じていた。

「三角関係の場合、どちらか一方の恋を成就させても、友情に亀裂が入ってしまい、恋愛が泥沼化してしまう場合が多いの、だから、私達はそういう場合は慎重に判断するようにしているわ。」愛天音は危うく自分がミスをするところだったのかと気づき、力を入れいた弓を緩め、元の弓矢台へ弓を戻した。引き続き、忍耐強く3人の様子を観察してみる。

 

 最初に仲良く話していた幼馴染の男女は住むところも近く方向も同じようで、後から話に加わった女子高生とは途中で別れた。別れた女子高生は、そのまま自分の家に歩くのかと思いきや、途中で振り向き、反対方向へ歩く二人の背中を見ている。そして、追いかけようと少し走り出したかと思えば、やめて下を向いていた。愛天音アテネは何をしているのだろうと気になった。

 

 地上まで降りて後ろからその様子を伺う。女子高生は下を向いたまま、両手を握り、その女子高生の肩が震えている。泣いているのだろうか。愛天音アテネが女子高生に話を聞こうと肩に手を伸ばすが、愛天音アテネの手は透けてしまい、女子高生に触れることができない。

「私じゃダメなのかな。」女子高生の涙声が聞こえた。


 女子高生は男子高校生と幼馴染の女の子が付き合う未来しか見えていないようだが、愛天音アテネが女子高生の思いを寄せる男子高校生に、この弓矢を打てば、目の前で泣いている女子高生と男子高校生の恋愛を成就させることができる。彼女の明るい未来は愛天音アテネが弓矢を討つかどうかで決まる。きっと恋愛成就した先は目の前の女子高生と男子高校生の笑顔溢れる未来が待っているだろう。逆に、ここで男子高校生と結ばれない未来が正しいとして、弓矢を打たなかったとしたら、その先に明るい未来はあるのだろうか。ましてや、幼馴染の女の子は男子高校生に対し幼馴染として気持ちしかないのであれば、愛天音アテネが恋愛を成就させるべきは目の前で苦しんでいる女子高生ではないだろうか。愛天音は覚悟を決め、手にした弓矢を思いっきり引き、男子高校生に向け放った。衝撃で目を閉じてしまう愛天音。放たれた弓矢のツルネの音が響き渡る。


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