2-6 被災写真を修復するために
そんな感じで梱包作業は滞りなく終わり、非力な僕は段ボールを台車に載せ近くに停めてあった軽トラに運んでいたわけだけど。
「えっさ、ほいさ」
「あらあらまあまあ」
「お、おお!? なんか凄い事になってる!」
おばあさんとヤオは重いタンスと冷蔵庫を一人で両肩に担ぎ運ぶミヤタに驚愕していた。さらにその後ろをレイカが段ボールを五つぐらい積んで普通に歩いていたのでもう笑うしかないだろう。
「なんじゃこりゃ!?」
「すげぇパネェ!」
作業員や近所の方もその雄姿に感嘆する。ゾンビと知られたら差別されるかもしれないから出来れば目立ちたくないけどさ。
あれ、でもボランティア団体として活躍するには知名度があったほうがいいのかな。うーむ、悩ましい。
「はこんできたよー!」
「お、おう」
ミヤタはズシンと数十キロクラスの荷物を涼しい顔で荷台に乗せたので、軽トラの運転手であるおばあさんの近所に住むおじさんはかなり動揺していた。
そして彼は続けてやってきたレイカの五箱にちょっとびっくりして、僕が台車で運んだ段ボール三箱、ついでにヤオの一箱を見て安心する。なんというかこれが人間として普通なんだけど子供に負けるのはちょっと情けない気がするなあ。
まあいいや、作業を続けてと。あれ?
僕は仮設住宅に戻り部屋の片隅に先ほどのアルバムがぽつんと置かれている事に気が付く。段ボールにしまい忘れたのかな。僕はそれを適当な箱に詰めようとしたけど、
「あ、まって、ヨシノくん」
「?」
戻ってきたミヤタがそれを制止したのだ。僕はその理由がわからず少し困惑してしまう。
「えとね、そのアルバム、きれいにしておばあちゃんにわたそうと思って」
「きれいに? でも、うーん、どうやって?」
ミヤタの意図はわかった。けれど写真の修復は素人に出来るものではないだろう。そもそもどうやって修復するのかもわからないし。
「わたしもわかんないけど……」
やはり知識もないままにやる気だけが先行したようだ。
彼女はしょんぼりとした顔になり僕は無性に心をかき乱されてしまう。力になってあげたいのは山々だけど。
「ああ、写真を直したいの? 方法に心当たりがないわけじゃないけど」
そこに段ボールを運び終えたヤオがこちらに近付いてそう言った。どうやら今の会話を聞いていたらしい。
「え? 本当なの!?」
「うん、まあ、あるにはあるんだけどさ。作業が終わったら駄目もとで行ってみよっか」
光明が差し込みミヤタは嬉しそうにするもののヤオの答えは歯切れが悪いものだった。どうやら何かしらの問題があるようだ。
「お嬢ちゃんはこの写真を直してくれるのかい?」
「うん! まっててね、おばあちゃん! ちょっと借りるから」
「そう、けど無理はしなくていいからね?」
おばあさんは深い事情も聞かず笑顔でアルバムを貸す事を快諾する。だがおそらく彼女も修復が無理だと思っているようだから、もしかしたらその方法を既に調べたのかもしれない。
ミヤタが悲しむ顔を見るのは嫌だけど取りあえずここはヤオの話を聞こう。判断するのはそれからでも遅くはないし。




