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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第二章 チーム明日花、始動【第一部2】

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2-3 ヤオからの初めての依頼

 んで。


 僕らは東北を中心に展開する和風のファミレスに集まり作戦会議を始めた。僕はさっき朝ご飯を食べたばかりなのであんみつだけにしておいたけど、ヤオは躊躇なく朝っぱらからパフェを注文していた。


「んまー」

「会議そっちのけで本当に幸せそうに食べていますね、あなたは」


 ちなみにこの場にいるのは僕の両サイドにミヤタ、レイカ。向かいの席にヤオ、ナバタメだ。レイカとナバタメを同席させるのは迷ったけどギスギスしてなくてよかったよ。もっともかなり気まずそうで対角線上に座り目を合わせないようにしていたけどね。


「えーと、この間は、その……」

「えと……」


 お、二人ともなんか勇気を出したぞ。今後の事も考えるとここで仲直りして欲しいな。いや子供の喧嘩じゃなくてテロリストと加害者だから常識で考えれば無理だろうけど。


「「ごめんなさい!」」


 んで、二人同時に謝った。あれ、同時に?


「ど、どうしてナバタメが謝るの?」

「いえ、その、そちらこそ」


 お互いどうして相手が謝ったのかわからずおろおろしてしまう。だけど僕はそんな事気にせず今のうちにあんみつを食べる事にした。


「いや、その、わかるでしょ? あたしが何をしたのか、その、取り返しのつかない事を」

「私も……いえ、はい、私の家だって安易にあのような団体に力を与えてしまって」

「ま、いいんじゃない、何があったのかよくわかんないけど」


 そう話に割って入ったのはヤオだった。彼女は埒が明かないと判断し、のん気にグラノーラをまぶしたパフェをザクザクと食べ続ける。


「……それもそっか」

「……ええ、お互い悪かったという事で」


 馬鹿馬鹿しくなった二人は照れ臭そうに笑い合う。謝って済む問題でもないけど当人同士が納得しているならこれで良かったのかな。


「でも招待してないのにどうしてヤオはここにいるの?」

「なんか面白そうな気配がして!」

「はあ」


 まあいい、アホの知恵でもないよりはマシだろう。それにムードメーカーとして優秀なのはたった今証明してくれたし、僕はとっとと会議を始める事にした。


「ボランティアを岩巻に限定して、パッと思いつく仕事はやっぱり土木だけど」

「ヨシノには無理でしょうね。ミヤちゃんは問題ないけど、小学生を働かせたら一発で労働基準監督署から文句が来るわよ」

「だろうね」


 僕の意見をレイカは即座に否定する。うん、わかっていたけどさ。


「ふにー、むずかしいのー」

「もひゃもひゃ。なら引っ越しの手伝いならどう?」

「引っ越し?」


 ヤオはパフェを食べながら案を出した。とりあえず聞くだけ聞いてみようかな。


「ほら、今は東京オリンピックの中止でかなり復興のペースが早まってるでしょ? だからさ、商店街も仮設住宅も空前の引っ越しラッシュなわけ。あそこに住んでいる人には重い荷物を運べないようなお年寄りも多いしとにかく人手が足りていないの。土木作業は出来なくても引っ越しならヨシノやレイカちゃんでも出来るでしょ?」

「……………」


 彼女の説明に全員がポカンとしてしまう。しばらくしてようやくナバタメが最初に口を開いた。


「驚きましたわ、あなたがそんなまともなアイデアを出すなんて。それでその話のオチは?」

「ないよ? 私だっていつもボケてるわけじゃないし」

「ふーむ」


 僕は考えてみる。引っ越しの手伝いか。初クエストにしては悪くない難易度だ。


「引っ越しはそれなりに重労働ではあるけど土木作業ほどではない。ミヤタとレイカがメインで働くとして僕がサポートに回ればいけるかな」

「わたし、力もちだからだいかつやく出来そうなの!」

「そっかー、頼もしいねー」


 力こぶを作る仕草をしたミヤタにヤオは微笑ましそうな顔になる。実際に人外の怪力を目の当たりにした時の彼女の顔が見ものだね。


「あたしも人数に入ってるのね。いいけど」


 レイカは苦笑したけど彼女もかなりの力持ちだ。段ボールを運ぶくらいわけないだろう。


「ああそうそう、私も参加するから」

「ありゃ、いいの?」


 ついでにヤオも名乗りを上げる。彼女は普通の女の子だから戦力としては微妙だけど細かい作業なら任せてもいいかな。


「うん。いやー実はね、知り合いが仮設住宅から引っ越す事になってさ、そもそもはそれを私一人と近所のおじさんだけで手伝うつもりだったんだ」

「ふむ、つまりあなたは自分が楽したいがためにこの提案をしたと?」

「ま、ぶっちゃければね」

「まったく」


 てへ、と舌を出して笑うヤオにナバタメは呆れた顔になってしまう。いいように使われるのはちょっと癪だけど人のためになるなら別に構わないか。


「それじゃあスイーツを食べたら早速仮設住宅に向かう?」

「そだね」

「うん!」


 さて、これで何をすべきかは決まった。重労働になるだろうし今のうちにカロリーを補給しておこうか。ミヤタはパンケーキをもひゃもひゃと食べて、人の役に立てることを楽しみにしているようだった。

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