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1-71 VS暴走体アマイモン

 ミヤタは激戦の後だというのに一切バテておらず僕とホンジョウの前をタッタと走っていく。本当に子供って元気だね。


「はやくはやくー!」


 彼女は走りながらこちらに身体を向け声援を送ってくれる。その声を聴くと不思議と疲れもどこか行っちゃったよ。


「で、そもそも君にはどんな妙案があるんだい?」

「てっぺんまでのぼってアマミちゃんに話をきいてもらうの!」

「え、それだけ?」

「それだけなの!」


 それは誰でも思いつくだろうけど常識的に考えてすぐに却下する案だった。だけどそんな無茶苦茶な作戦をミヤタは自慢げに主張したのだ。


「だそうだけど、ホンジョウはどうする?」

「ハッ! やってやんよ!」


 だがホンジョウは即決した。恋って本当に人を盲目にしてしまうなあ。僕は苦笑する事しか出来なかった。


「ああそう。君にもミヤタのバカがうつったのかい?」

「バカじゃないの! バカって言ったほうがバカなの!」

「バカって言ったほうがバカって言ったほうがバカ、このネタはもうやったね」


 僕はクスッと笑いアマミ目掛けて走り出す。クライマックスなのになんともしまりがなかった。


 戦場と化した東京の街を僕らは駆け抜ける。大砲やミサイルの音が喧しくて仕方なく鼓膜がおかしくなりそうだ。


「わたわた!」


 流れ弾が頭上のビルに命中しガレキの雨が降り注ぐ。ミヤタは可愛らしく慌てふためくけどこれは普通に死ぬレベルである。並みの人間なら恐怖で足がすくみ一歩も動けないだろう。


 でもここにいるのはおバカとサイコパスと色ボケだけだ。死の危険など恐れる人間はいない。


 壊れた放置車両を足場に僕らは倒れたビルの側面に飛び乗る。迂回している暇はない、最短ルートで真っ直ぐだ。


 そして銃弾の雨嵐を潜り抜け僕らはアマミのところに辿り着く事が出来た。到着と同時にホンジョウは力の限り叫ぶ。


「アマミさん! 話があります! 聞いてください!」


 しかし当然アマミは反応しない。大砲の音がうるさいとかそれだけではないだろう。


「ここからじゃ無理だって。そもそも存在を認識すらしてもらえないよ。ゾウが足元のゴキブリに気付くと思うかい?」

「そのネタをまだ引っ張るのか、お前は。けどならやっぱり登るしかないよな!」

「なの!」

「え、やっぱり登るの?」


 泥の肉塊はぶよぶよしており、なんだかばっちくて触りたくない。骨のような突起や捕食したビルのガレキがいい感じに掴めそうだけど、でも、やっぱりねえ。


「じゃ、お先!」

「なのー!」

「えー」


 ホンジョウとミヤタは一切躊躇せずにボルダリングの壁となった肉塊アマミを登っていく。僕は渋々その後を追う事にした。


 ただ、このボルダリングはかなり上級者向けのコースだ。なんてったって壁が動くし、砲弾やミサイル攻撃があるたびに激しく揺れる。こんなステージはプロでも経験したことが無いだろう。


「えっほ、えっほ!」


 まあミヤタはいつも通りそのチートな身体能力で簡単に登っていくんだけどね。今度はかつて赤いヒゲの敵キャラだったおサルさんみたいだ。


「アマミさーん!」


 一方ホンジョウも負けていない。彼は平均以上程度の運動神経だがラブパワーで頑張っていた。愛さえあれば何でも出来るんだね。


「二人とも頑張ってるなあ。うーん、僕は……うん」


 壁登り開始一分弱。やる気も体力もない僕は早くも引き離されポツンと下層に取り残される。独りぼっちは寂しいなあ。


「仕方ない、僕は僕に出来る事をしようか」


 僕は安定したコンクリートの足場に移動し、左手で骨を掴み、右手だけで銃を構え攻撃してくるヘリや戦車に発砲する。狙いはブレるけど、そもそも命中させる必要はないのだ。


 命中しても拳銃程度では装甲に傷をつける事すら出来ない。対物ライフルでもあれば別だろうけどさ。


 ズドン、ズドン、ズドンッ!


 闇雲に撃ちまくったわけだけどそのうちの一発が偶然ヘリの撃ったミサイルに命中、派手に爆発する。たまたまだけど、こういう事本当に出来るんだ。


 だからといって大した役には立っていない。けれどこうする事でこのミッションの成功率を一パーセントでも上げられたならここにいる意味はあるだろう。


 僕は無心で銃を撃ちまくる。二人の勝利を信じてただひたすらに。



 ――ミヤタの視点から――


「よいしょ、ほいさ!」


 アマミちゃんの体はなんかグニグニして登るのがむずかしい。もしこれがあそびだったら楽しいの。けど、これはあそびじゃないの!


「ホンジョウくん、だいじょうぶ?」

「あ、ああ、なんとかな!」


 わたしのちょっと下のほうにいるホンジョウくんは笑っていたけど、なんだかつかれて苦しそうなの。でもホンジョウくんは人間だからしかたないの。


「ふにゃー、高いの」


 わたしは思わず下を見ちゃったの。すっごく高いの! ヨシノくんがあんなにちっちゃいの! もし落っこちたら……ぴゃあああ。


 だけどわたしたちはまだ半分くらいしか登ってないの。急いだほうがいいかな?


「ま、まだ……!」


 わたしにおいついたホンジョウくんは、全部のやるきをエネルギーにかえちゃったからもうバテバテだったの。これ以上はむりかもしれないけど、いまさら戻る事もできないの。


 でもその時アマミちゃんがうごいて、グラッとゆれちゃったの!


「おわっ!?」

「ホンジョウくん!」


 ホンジョウくんは足をすべらせて落ちちゃいそうになったの! わたしはすぐにホンジョウくんのみぎうでをつかんだの!


「すまん……! けどもう俺は無理だ……!」


 ああもう、仕方ないの。あれをやるしかないよね!


「そこはどこんじょーでてきとーに! とにかくがんばってコクってこーい!」

「へ、のわあああ!?」


 ぶん! わたしは力を込めてホンジョウくんをてっぺんに投げつけたの! ちょっと危ないけどみんなが助かるにはこれしかなかったから。


「ふぎゃー!」

「おお、うまくいったの!」


 高さはギリギリだったけどぶじにホンジョウくんはてっぺんに着地したの。なんだかんだ言ってもこんじょーがあればなんとかなるもんなの!


「あとはよろしくなの!」

「おう、任せろー!」


 ここからじゃよく見えないけどきっとホンジョウくんは笑っていると思うの。がんばってね、ホンジョウくん!

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