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1-63 反ゾンビ団体の拠点へ突入

 車を走らせる事三時間――すっかり日も暮れたころ僕らは東京周辺に辿り着いた。あたりには至る所に警察や自衛隊の車があり戦争でも始まるのではないかというほど物々しい空気になっている。


 このあたりまで来ると道路は東京を脱出しようとしている人で大渋滞になっており、警察により封鎖されている道もあってこれ以上は車で進めそうにない。むう、あまり時間が無いんだけど。


「東京か……まさかまた来る事になるとはね」

「ふに? ヨシノくんは東京に来たことがあるの?」

「いや、今回の騒動とは関係ないから気にしないで」


 僕は掘り下げられる前にその話を打ち切った。関係ないのは事実だし、あんまりいい思い出じゃないからなあ。


「それよりもチョコ、早く反ゾンビ団体の拠点に向かおう。車から降りたほうがいいかな」

「見てのとおりあちこち道路が混んでいるけど裏道を通ればいけるニャ。狭くて回り道になるけど我慢して欲しいニャ」

「それでも構わない」

「わかったニャ!」


 チョコは交通量の多い幹線道路を避けて人気のない道に進む。通り抜け禁止のエリアや明らかに個人の私有地であろう場所も通ったけど人命がかかっているからセーフだ。



 警察をかいくぐり回り道をする事十数分。僕らはようやく目当ての場所に辿り着いた。


「あれが反ゾンビ団体の拠点です!」

「随分と立派な、いや立派だったんだろうね」


 都内にあった反ゾンビ団体の拠点の会館はなかなか立派なもので、どことなく宗教臭さを感じ会館というよりもお堂のようだ。すでに辿り着いたドーラたちの仕業なのか建物はあちこちから火の手が上がっている。


 入り口を警備していた反ゾンビ団体の人間は首を裂かれて既に事切れており警察の姿もちらほら見かける。しかし事の重大さに対して人数は少なく人手が足りていないようだ。そりゃまあ、こんなものよりも優先して対処すべき大惨事が目前に迫っているわけだからね。


「それじゃあ突入だニャ! 衝撃に備えるニャ!」

「いっくのー!」


 アクセルを全開にして車は急加速する。警官は身を挺して慌てて制止しようとしたけど跳ね飛ばされそうになりやっぱり直前で逃げてしまう。ごめんなさいねー。


 ズン! 高そうな入り口のガラス戸を突き破り車は施設の内部に突っ込んだ。僕らはすぐに車から降りて周囲の状況を確認する。


「生きてる人いないのー!?」

「山猫一家の皆さんもいますから、あまり大きな声を出さないほうが……」


 ミヤタは考えなしに叫んで生存者を探したのでシャロが注意する。といってもどのみち今さっき車で派手に突っ込んだからバレているだろうけど。


「火災も起きているしあまり時間はかけられない。さて、ノープランだけどどうしようか」

「まずは……あいつの相手じゃないか」


 ホンジョウの視線の先の通路には目を丸くしたドーラ、それにうめまると平八がいた。彼らが手にしている曲刀やナイフはべったりと血にまみれており既に何人も殺したのだろう。


「ホンジョウ、なんでここに! お前生きとったんか!?」

「……ま、俺らの手助けに来たって感じじゃなさそうですがね」

「みたいだなあ。残念だなあ」


 平八はナイフをペロリ、とざらざらした舌で舐めて不敵な笑みを浮かべる。うめまるはやっぱり穏やかな困った顔をしておりちょっとほっこりしたけれど。


「ここは俺たちに任せろ。まずはこいつを説得してみる」

「同じ山猫一家だし、そうするのが筋だニャ」

「お二人は急いで取り残された人の救助に向かってください!」


 どうやらここは知り合いの一人と二匹が担当してくれるらしい。ドーラたちに構っている余裕はないからここはお言葉に甘えよう。


「おっけ、死ぬんじゃないよ」

「気をつけるの! むりしないでね!」


 僕とミヤタはドーラたちを無視して通り抜けて通路を突破する。てっきり向こうも妨害してくるかと思ったけど彼らは僕らの事なんて眼中になかったようだ。


「まあええわ。あいつがようやく来てくれたおかげでもう儂らの出番もなさそうやしのう。恩を仇で返したボケどもにしっかりと躾をせんとなあッ!」

「胸を借ります、親ビン!」


 キィン! 後ろから刃がぶつかり合う音が何度も響く。後々彼らの間にしこりを残さないためにもここは思う存分喧嘩させてあげよう。この戦いに僕たちは介入すべきじゃないから。


 でもあいつって誰だろう。まだ来ていない肉塊アマミじゃないとは思うけど。


 ああ、そっか。多分だけど赤ゾンビのリーダーだろうな。とするとやっぱり戦う事になるんだろうなあ。気が進まないけど……。

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