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1-24 ロリコンとお疲れ様のなでなで

 岩巻の街で再び逃避行を繰り広げるヨシノたち。現在は市内を流れる見晴らしのいい川沿いの道を走っているところだ。


 そして向こう岸。赤く染めた長いおさげを揺らし一人の不良少女が憂鬱な気分で歩いていた。


「……え?」


 少年が幼女を抱えブタを頭に載せて逃げるその奇妙な姿は彼女ならば遠くからでもはっきりとわかる。あまりの出来事に彼女は自分が何を目撃したのか最初は理解出来なかったが、すぐに全速力で駆け出したのだった。


 ……………。


 さて、視点を僕に戻すよ。とにかく当てもなく逃げて逃げまくった僕は市内を一望出来る高台にある公園に辿り着いた。


 ここまで来れば大丈夫か。僕はミヤタとぶたにくを地面に下ろしてあげた。


「ぜひー、ぜひー。ふう、疲れちゃった」

「よくわかんないけど、おつかれさまなの!」

「ぷひ」


 どうして僕が逃げたのか、ミヤタたちはやっぱりわかってないみたいだったけどあえて説明する必要もない、というか説明しにくいし黙っておくとしよう。


「ちょっと一休みしようか。ジュースでも飲む? だから逃げた理由は聞かないでね」

「わーい!」


 僕は休憩と買収のために自販機を探す事にした。そして割とあっさり見つかったところで何が欲しいかと尋ねると彼女はミックスジュースを選んだ。考えるのも面倒なくらいへとへとだったので、僕も取りあえずミヤタと同じものにする。


「ぐびぐび」

「ふう」


 ベンチに座った僕はキャップを開けてすぐに一気飲みをする。東北六県のフルーツを使って作られたミックスジュースは疲れた五臓六腑に染みわたるね。


「さて、色々あったけど休んだら帰ろうか。不良やクマや世間の目と戦って疲れちゃった」

「そだねー。あ、そうだ!」

「ん?」


 同意したミヤタはにこにこと笑いながら僕の頭をよしよしと撫でる。ちょっと驚いたけれど僕はそれを受け入れてしまった。


「おつかれさま、えらいえらい、なの!」

「ぷひ」

「どもー」


 子供みたいで恥ずかしいけどこれは癒される。ああ、変な意味はないよ、ロリコンじゃないよ。でももし僕がロリコンなら勃起していただろうな。


「でもお疲れ様なのはミヤタのほうだよ。ごめんね、あんな事を言って」

「クマさんのこと?」


 僕はその事が気がかりだった。たとえ仕方がない状況だったとしても僕は彼女に生き物を殺すように指示したのだ。それは小さな少女には酷な話であろう。


「んー、わたし、そのへんはだいじょうぶかな。おじいちゃんがつかまえた畑を荒らしてたイノシシとか食べたことあるし。やっぱり、ちょっとかわいそうだって思ってクマさんをころせなかったけど」

「そっか」


 僕は改めて後悔する。こんな心優しい少女にあんな指示を出してしまった事を。だけどやっぱり彼女の言うとおりあれが最善だったと割り切るしかないんだろうな。こんな状況がそう何度もあるとは思えないけどさ。


「だいじょーぶ、かなしまなくていいの」


 彼女は優しく僕の頭を撫で続ける。その聖母のような愛に僕の罪悪感は次第に消えていってしまったのだ。


「ミヤ、ちゃん」

「ふに?」

「?」


 少し重苦しい空気の中、何処からか聞き覚えのある声が聞こえたので僕は音のした左側に振り向く。


 そこには僕の数少ない友人、同級生のレイカがいたのだ。


 目が隠れているため表情はハッキリとはわからない。だけどまるで幽霊を見ているような、信じられないものを見ている様子だった。

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