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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
後日譚 太陽が照らす世界、未来に咲いた花【エピローグ】

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aft-5 我が子に託す想い

 震災、テロと釜牛鉄道は何かとトラブルに見舞われがちだけど、大災厄の際はそこまで路線に被害はなかったらしく釜牛鉄道は三日後くらいに復旧、再び復興の象徴として広く知られる事になった。


 僕らも何かとこの鉄道とは縁があり、そんな場所で人生の節目を迎えるというのは何とも感慨深いものがある。


 釜牛駅の役務室、ではなく新郎新婦の控室で僕らはその時を待っていた。傍らには白いウェディングドレスを身にまとったマリアがアスカを抱いていて、それはまさしく聖母と呼ぶに相応しい美しい姿だったんだ。


 今回の依頼は釜牛鉄道が新たに電車を貸し切って結婚式をするというサービスを始めたらしく、ウェディング列車を走らせる事になったのでお試しをして欲しいというものらしい。時々聞く鉄道婚という奴だね。


 まあそれは建前で実際は皆が裏で僕らのためにコソコソして用意してくれたらしい。僕らはそこまで挙式する事にこだわりはなかったけど、やっぱりその気持ちは嬉しかった。


「うんうん、綺麗ねぇ、ミヤちゃん!」

「えへへ、そうかな」

「そういうレイカも一瞬誰なんかわからんかったわ」

「そりゃ親友の晴れ舞台だもの、あたしだっておめかしをするわよ」


 控室にはかつての仲間たちが集結し和気あいあいと歓談していた。レイカとドーラもまた正装をしており元テロリストとは思えないくらい上品だったよ。忘れそうになるけどレイカってお嬢様なんだよね。


「すっかりご立派になられまして……オフィーリア・マクミラン、今まで生きてきてこれほど嬉しい事はありませんでした!」

「お兄ちゃんも良かったね、変態なのにちゃんと結婚出来て……!」

「紗幸、そんな事を言われたらなんか切なくなるよ。僕だってここ最近は大人しくなってるから」


 フィリアさんと紗幸はボロ泣きして僕たちを祝福してくれた。感動的なシーンのはずなのにギャグっぽいのは気のせいだろうか。


「でもこうしてまたかつての同胞たちと再会出来て嬉しいぞ。ここ最近は全員が忙しくて疎遠になっていたからな」

「ええ、私もこんな日が来るなんて思わなかったわ。ちくわ食べる?」

「あ、うん。本当にねー」


 チェルノは成長しすっかり大人びた女性になっていたけれど、彼女も流石に今日ばかりはちゃんとした服装だ。紅白の箱に入った贈答用のヤ○サちくわを用意していたセラエノは相変わらずだったけど、ひかげはもう何も言わず適当に受け流しそれを食べた。


「ばあ」

「ばあ」

「きゃっきゃ」


 メアとマタンゴさんはいないいないばあをしてアスカをあやしつつ戯れる。皆もすっかりこの愛くるしい天使に夢中な様だ。


「おじいちゃんとかぶたにくも来れたら良かったんだけどなあ」

「仕方ないよ、レイトンさんは前よりもっと忙しくなったし、ぶたにくも非公式だけど今はアメリカで大統領をして人類保管計画の実行中だし」

「そっかー、それもそうだよね」


 ただご時世がご時世なので流石に全員が来れたわけではなく、いろんな人にもう一度会いたかったマリアは紗幸と一緒に残念がってしまう。あのブタはきっと今頃グラサンを光らせ作戦会議をしているんだろうな。どの道式をする場所が場所だからそんなに大勢の来賓を受け入れる事は無理だけどさ。


「でもそっかー、これがハ、アスカかあ」

「だうー」


 アスカは微笑みながら顔を覗き込むひかげに興味を示し小さな手を懸命に伸ばした。二人はほぼ初対面だけど、会ってすぐになぜか親であるはずの僕らよりも懐いてそこがちょっとなんか寂しいんだよね。実は前世で友達だったりしたのかな、なんつってね。


「正直ここの所マリアの健康状態が不安だったけど安定して良かったよ。でも辛くなったら無理せずに言ってね」


 僕はそれだけが気がかりだった。メイクで上手く誤魔化しているけれどマリアの顔色はあまりよくない。彼女たっての強い希望で中止する事は無かったけど、僕はもし何かがあればただちに式を取りやめる事も覚悟していた。


「うん、ありがとね。でも大丈夫だから。幸信君、私とっても幸せだよ。こうして幸信君と結婚出来て、皆に祝福されて……私と家族になってくれてありがとうね」

「……ああ、僕もだよ。これからもよろしくね、マリア」


 けれどマリアは辛い素振りを一切見せる事無く幸せそうに微笑み、僕は改めて愛する彼女と娘を護り抜く事を決意した。たとえ残された時間が少なかったとしても、僕は最期のその時までマリアと共に生きていこう。


「ふふ、それは頼もしいわね。お母さん涙が出ちゃうわ」

「あっ!」


 そしてそう決意した時母さんと秀樹さんが現れる。彼はやせ細って車椅子に乗ってはいたけれど、娘の結婚式のためにスーツを着て精一杯オシャレをしてくれたみたいだ。


「遅れてすまないね、マリア、幸信君、アスカ」

「うん……うんっ!」


 マリアはもちろん、僕らは照れくさそうに笑う秀樹さんを快く迎え入れた。さあ、両家の親も揃ったところだしそろそろ会場に移動するとしようか。



 それから僕らはミナギさんが運転するレトロなウェディング列車に乗り、近しい人間だけでささやかな結婚式を挙げた。彼女もまたいつになく張り切っており、僕らに温かい祝福の言葉を送ってくれたんだ。


 僕は秀樹さんの車椅子を押してバージンロードを模した通路をマリアと共に歩く事にした。結婚式にはいろいろ作法とかがあるし多分違うっぽいけど一番いいと思う形で好きなようにやればいいだろう。それに何より僕がお義父さんの夢を叶える手伝いをしたかったし。


「幸信君。頼んだぞ」

「……はい」


 歩き始めた時全てを悟った様な表情の彼がどういう意図でそう言ったのかはわからなかった。だけど僕は深く頷き、お義父さんと一緒に一歩一歩歩いていったんだ。


 線路は分岐があるものの辿り着く場所は決まっている。僕たち人間の人生もまたそれとよく似ており、どうあがいても結局は決められた結末の中から選ぶ事しか出来ないのかもしれない。


 僕らは結局それしか出来ず、終焉を受け入れる以外に道はなかった。


 けれどアスカならば違う結末に辿り着けるかもしれない。僕たちの旅はそろそろ終わってしまうけれど、未来の事は彼女に託すとしよう。


「あ……」


 そして僕らは何やら外が騒がしい事に気が付き、ふと窓の外を眺めて驚いてしまった。


 そこには沿線を埋め尽くすほどのたくさんの人がいた。


 その人達は全て僕らが今まで出会ってきた人々で、笑顔で手を振り手作りしたお祝いのメッセージボードを持った彼らは世界が大変な状況にも関わらず僕らの門出を祝福するためだけに集まってくれたんだ。


 それを見て僕らは笑顔になってしまい、やっぱりこの世界はまだまだ捨てたものじゃないな、と実感してしまった。


 うん、諦めるのはまだ早いか。アスカのためにももうちょっとこの世界で頑張ってみよう。お父さんは闘い抜いたんだよって、人生の最期に胸を張って彼女に言い切れる程度に立派な父親になるためにもね。

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