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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
最終章 花咲く明日への物語【最終部】

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20-70 石巻山にある災禍の中心へ

 ――宮田明日花の視点から――


 私とひかげちゃんとメアちゃんは石巻山を目指し豊巻エリアでゾンビの群れと交戦していたけど、不思議な事に戦っていたすべてのゾンビが擬態を解除、泥になって消滅してしまったんだ。


「ンゾ? ゾンビがいなくなったぞ!」

「ひろーい。わーい!」

「うぱー」

「どうしてなのら? 何が起こったのら?」


 サバトたちは戦いが終わり喜んでいたけれど、あまりにも突然の事だったのでメアちゃんはむしろ戸惑いのほうが勝っていたみたいだ。これは何か悪い事の予兆ではないか――そう思ったのかもしれない。


「これは……どうやらミヤザワをミヤタさんが倒してくれたみたいですね。それによって彼女が操っていたゾンビがすべて消滅したようです!」

「お、それってつまりここからは楽出来るって事? 良かったじゃん!」

「んだー、焦らずにのんびりいくだんべぇー。ん? どのみち急がないといけなかったんだんべぇ?」


 でもきぃちゃんがすぐにその理由を嬉しそうに教えてくれたおかげで一気に勝利ムードが漂い、目的地まですんなり進めるとわかったひかげちゃんたちは大喜びしてしまう。


「そうだね。世界の再構築はどんどん進んでるし時間制限はあるから急いだほうがいいかな。でも……良かったのかなあ。ミヤザワさんは死んじゃったのか」


 ただ私はミヤザワさんが、荒木恵という運命に翻弄された人間の人生を知っていたから素直に喜べなかった。確かに喜ばしい事かもしれないけど、私たちのした事は彼女の願いを打ち砕いた事にほかならなかったのだから。


「その辺は割り切るしかないのら。ホレ、囚われの王子様が待ってるからさっさと進むのら!」

「時間はきっともうそんなにないし急いだほうがいいかな。そりゃ私だって思う所はあるけどさ」

「……うん、行こう! 皆を護るためにも今は進むしかないからね!」


 けれど迷っている時間はない。私たちは想いを踏みにじったミヤザワさんのためにも、最期の決戦の舞台へと駆け出した。



 石巻山はやはり山というだけあって険しい道のりであり、至る所に泥の塊や通行出来ないバグ空間が存在していたのでなかなかハードなハイキングとなってしまう。


「ひーふー」

「大丈夫、メアちゃん? なんなら私がおんぶしようかハァハァ。太ももで挟む肩車スタイルでね」

「平気なのら。ここの太陽は偽物っぽいしむしろいつもより楽なのら。あと下心は隠すのら」

「あはは、バレた?」


 私はしんどそうなメアちゃんを気遣うと彼女は気丈に振舞い一生懸命歩いてくれる。私はおんぶしても全然いいんだけど彼女はすぐに良からぬものを察知して断ってしまった。うーん、残念。


「つーかテメェはズルするな」


 メアちゃんはアミンゴさんに運んでもらっているひかげちゃんを恨めしそうな目で見てしまう。まあまあ怖いから緊急時以外はこうする事は無いけど、流石にこの山道では彼女は恐怖よりも楽なほうを選択したらしい。


「ズルって、別に頼めばいくらでも運ぶのに。むしろなんで今まで言わなかったの?」

「じゃ頼むのら」

「まかせんしゃーい」


 ひかげちゃんはメアちゃんにお願いされてアミンゴさんを派遣、彼女を掴んで空を飛ぶ。ううむ、それにしてもここから見たらなんだか羽が生えた妖精さんみたいでちょっぴりキュートだ。


「こっちこっちー」


 行軍のスピードが増した所で先行していたアミンゴさんが現れ私たちを目的地に案内してくれる。


 その場所はとりわけ原初の泥が多く、毒沼の様にゴプゴプとうごめきかなり禍々しい洞窟だった。なんだか昔話に出てくる大蛇が住んでいそうな不気味な場所だなあ。


「なんかあからさまにヤバそうなのがあるんだけど……」


 そしてその洞窟にはブラックホールの様に渦を巻く時空の歪みがあり、目視ではその先に何があるのかはわからない。


 ただ命ある存在が決して近付いてはいけないものであるという事は否が応でも理解出来たので、ひかげちゃんはその先に進む事を躊躇してしまう。だけど彼女でなくとも真っ当な思考回路を持つ人間なら誰でもそのような反応をするだろう。


 それはもちろん私も。もしかしたら入ったら二度と戻って来られないかもしれない。何も出来ずに時空の闇に飲み込まれてしまうのかもしれない。


「いよしッ!」

「ハナコ!?」

「ちょおい!?」


 だけど父親からしっかりサイコパスのメンタルを受け継いだ私はほんの一瞬迷った後ずんずんと突き進んで時空の歪みに突撃していく。


 この先にはきっとシオン君がいるはずだ。私たちはシオン君に会うためにここまでやって来て、チーム明日花の英雄たちもまた死に物狂いで道を切り開いてくれたんだ。


 大切な家族を助けるためにも、私は逃げ出すわけにはいかない。意識は遠のき、私という存在はここではないどこかへと旅立っていった。

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