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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
最終章 花咲く明日への物語【最終部】

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20-65 堕ちた大臣の末路

 ――チェルノ・プルミィースェツの視点から――


 吾輩はチェルノ団の同胞や協力者と共にゴビウス率いる機神兵部隊と戦っていた。溶岩のせいで地形が変わってしまったがここはおそらく火野國市内だろう。


 随所に街であった名残が確認出来るがバグと時空の歪みのせいであちこちにマグマ溜まりが出来ていた。無論あの場所に落ちてしまえば命はないと思ったほうがいいだろう。


『メノウさん、そちらをお願いします!』

「はい! 行くよ、キララちゃん!」

「了解っす! お手製ガリツキランチャーの特盛をどうぞ召し上がれ!」


 カナヤマビコに乗ったサヒメルはアテルイのメノウとキララとともに戦い、吾輩はその戦いぶりを感慨深く見つめていた。


「うむ、かつては敵対していたのに何とも美しい光景だ。それに引き換え貴様は……」

『下衆の極みだと言いたいのかな。うむ、わかるよ。私も昔は故郷で彼らに対してそう思っていたからね』


 ゴビウスの乗っていた機神は随分と重厚で護りを優先した機体だった。機動性はイマイチだがその分パワーや耐久性で勝負するつもりらしい。


『だがアラディア王国にやってきて、だんだん欲が出てなんやかんやで大臣にまで上り詰めちゃってね。もっともっと欲張りになったんだよ。やっぱり権力は人を堕落させてしまうんだね。だけど仕方がないさ、昔の知り合いに嫌われてももうお酒と女の味を覚えちゃったし。いやあ、たくさんの宝石とおっぱいに囲まれる生活はいいものだ、ハッハッハ。そこの君も食わず嫌いせずに豚肉を食べてみてはどうかね?』

「……お前みたいなクズにはなりたくねーカラ断固拒否するゾ」

『本当にお恥ずかしい限りです。私はこんな人間と一緒に仕事をしていただなんて』

『でもこれが私って人間だからねぇ。なんならサヒメル君も今からでも遅くないし愛人になるのはどうかな?』

『寝言は寝てから言っていただけますか?』


 中東出身の彼はムスリムどうのこうの以前に人としてあるまじき発言をしたのでジニは激しく嫌悪した。しばしば日本では宗教に対して悪いイメージを持たれがちだが、やはり結局のところは個々人の人間としての本質に由来するのだろう。


 少なくともアラディア王国への恩を仇で返し堕落しきったこいつに関しては、間違いなく正真正銘のクズだと言える。


「ふんッ!」

「せいッ!」

『無駄だよ、この機体は現存する機神兵の中で最も耐久性に優れているのだ。ミサイルであろうと余裕で耐えられる』


 だがカネヒラとジニの強力な一撃にもゴビウスは微動だにせず拡散ミサイルを解き放ち、吾輩たちは急いで回避行動をとった。人間性はともかくこいつが強敵なのは間違いないだろう。


「うおりゃあ!」

『おっと、この攻撃はまあそれなりだね』


 吾輩はダメもとでロケランを放ってみるがそれでもわずかにのけぞる程度でほぼ無傷だ。最大の火力を誇る吾輩のロケランでこれならば実質有効打を与えられる手段はないのだろう。


 ゴビウスは少し驚きつつも機銃掃射をして吾輩たちは再び回避に専念する羽目になった。敵は動きが遅いので避ける事自体はさほど難しくないが、やはり攻撃手段がない以上はどうしようもないな。


「どうします? どうやってもダメージが通らないっすよ、これ!」

「かたいよー!」

「もちー」

「僕の糸でも流石にこれはなあ……! 滅茶苦茶暑いし……」


 仲間たちは圧倒的な硬さを誇る敵に為すすべもなく右往左往する事しか出来なかった。さらに高温のバトルステージは容赦なく体力を奪い歴戦の猛者であろうとたちまち疲弊させていくので長期戦になれば成程不利になってしまう。ううむ、何か逆転の一手はないのか!


「むぐぐ……む? あんこ! ちょっと来い!」

「もち?」

「ごにょごにょ、やれるか?」

「もち!」


 だが吾輩はすぐに妙案を思いつき、作戦に必要不可欠なあんこを呼び寄せ耳元で作戦を伝え、大役を任されたもちはいつになくキリリとした顔つきになった。


 あんこは作戦を遂行するためぴょんぴょんと飛び跳ね持ち場へと移動する。後は吾輩が上手い具合にやるだけだ。


「お前たちは手出ししなくていい! さあとっとと来い、ゴビウス! うおりゃあ!」

『むう』


 吾輩はロケランを連発してゴビウスに攻撃、奴はノーダメージだったが鬱陶しかったらしくこちらに狙いを定めた。奴からすれば他のメンバーの攻撃は屁でもないので相手にする必要もないらしい。


「おい、チェルノ!? 何をするつもりだ!」

「ほらほらこっちだ! お前たちは雑魚を頼む!」

「う、うん!」


 カネヒラたちは何を考えているのかわからなかった様だが吾輩は動きが制限される場所に移動、冷え固まった溶岩をトーチカに変え上手く誘導した。


『動きにくい場所に誘い込んだつもりか? おっとっと』


 思惑通りゴビウスは機銃を撃ちながら追いかけ出来るだけ歩きやすい場所を移動した。既に術中にはまっているとも気付かずに!


『いつまで逃げているんだ! 全く!』


 鬼ごっこはさらに続きゴビウスは最初にいた場所から大分離れてしまう。うむ、このあたりでいいだろう。吾輩はニッと笑いずっとスタンバイしていたあんこに指示を出した!


「あんこ!」

「もち!」

『む? なああ!?』


 吾輩があんこの名を叫ぶと岩を食べ黒い地面に擬態していたあんこは元の姿に戻り――彼の下にあった灼熱のマグマの海が姿を見せ、ゴビウスは溶岩の中に即座に落下してしまう。


『な、クソッ!?』


 彼は必死でもがくも巨大過ぎる機体のせいでどうにも出来ず、彼に出来た事は徐々に沈んでいくのを待つだけだった。


『わ、私が悪かった! 取引をしようじゃないか! 欲しいものは何でも君にくれぎゃああ熱い、アツイィィイッッ!?』

「いくら耐久性があってもそんな場所ではどうにも出来まい。見たところある程度は熱には耐えられるようだが、早めに死ねるといいな」


 ゴビウスは見苦しく命乞いをした後、半分ほど沈んだ所で苦悶の声を上げるがその高性能な耐久が仇となりすぐに死ぬ事が出来なかった。おそらくこれでは完全に沈んでもしばらくは生き続ける事だろう。


 向こうの宗教では堕落した人間は最後の審判の後地獄の業火で焼かれるそうだが、なるほど暴政に加担した上にアラディア王国も裏切った彼には相応しい末路と言える。


 だが吾輩も一歩間違えれば彼の様になっていたはずだ。権力はどのような人間も変えてしまう。決して他人事とは思わず引き締めなければいけないだろうな。


『アアアァァアッ! だずげでぇええッ! おゆるじぐだざいぃいいッ!』


 吾輩は絶叫し続けるゴビウスを無視して仲間の待つ戦場へと戻る。もうあのような人間に関わるだけ無意味だろう。

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