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1-13 あっさり家族バレした事案野郎。さあ、皆も叫ぼう、ボマイェエエエ!

 ――ミヤタの視点から――


 その頃ヨシノ家にて。


 ヨシノくんのおへやで、わたしはぶたにくをひざの上に乗せてやくそくを守っていい子にしてたの。


 ぐー。


「おなかペコペコなのー」

「ぷひー」


 ヨシノくんから朝ごはんをもらったけど、昼ごはんをわたす事をわすれててわたしたちはみてのとおりおなかがペコペコなの……けどそんな時ぶたにくがぷひ、とある事を思いついたみたいなの!


「ぷひ!」

「ぶたにく?」


 ぶたにくはドアまで歩いてみぶりてぶりで何かを伝えようとしてるみたい。ぶたにくはあいぼうだから何が言いたいのかわたしはだいたいわかるの。


「え、ごはんをとってくるって?」

「ぷひ」

「うーん、でもへやの外に出たらダメって言われたし……」


 けどわたしがなやんでいると、ぶたにくはジャンプをしてドアノブを回しあっという間に外に出ちゃった。


「ぷひ!」

「あ、ぶたにく! うーん……」


 わたしはおいかけようか迷ったけどおなかがペコペコなのはかなしいの。本当はいい子にしていないとだめだけど……いいつけはちゃんと守らないとだめなのに。


 ――あの部屋に入ったらダメだ。お父さんとの約束を、守れるね。


 わたしは昔お父さんとそんなやくそくをしたことを思い出した。でもわたしはやくそくを守らなくて……。


 あれ、どうしたんだっけ。よく思い出せないの。


「ま、いっか。ヨシノくんもゆるしてくれるよね?」


 おなかがすいたわたしはそれ以上考えるのをやめちゃったの。わたしはとてもわるい子なの。



 ――ぶたにくの視点から(?)――


 その頃、ぶたにくは歴戦の傭兵になった気分でステルスミッションを行っていた。


「ぷひ」


 こそこそ、こそこそ。廊下を静かに、そして素早く歩き、段ボール箱を被って見つからないように移動する。


 目的はただ一つ。家族のため食糧を調達する事。最悪自分の身を差し出す方法もあるがそれは最後の手段だ。


「ぷひ!?」


 その時ビックリマークが出現する。彼女はすぐに物陰に身を隠すとヨシノの妹が廊下を歩いているのを視認した。


「?」


 ヨシノの妹は物音に気が付き不思議そうな顔をして周囲をキョロキョロと見渡す。トイレか、それとも水でも飲みに来たのか。いずれにせよ見つかるわけにはいかない。ぶたにくはより一層慎重に行動し危機を乗り越えた。


 さて、危険なエリアを突破しようやくキッチンに辿り着く。そこには非常食がいくらかあり、これを持って帰れば主の腹を満たす事が出来るだろう。


「ぷひぷひ」


 ぶたにくは早速食糧を探す。床に置かれた缶詰の入った段ボール箱を漁り、お尻をふりふり、ふりふりと。


 そしてようやく食べられそうなものを発見する。サバの缶詰だ。彼女はそれをくわえて意気揚々と部屋に戻ろうとした。


「っ」

「ぷひ」


 だが振り向いた時そこには物音に気が付いたヨシノの妹がいて、ぶたにくは驚き口を開けてしまい缶詰をカラン、と落としてしまったのだった。



 ――芳野紗幸の視点から――


「っ」

「ぷひっ」


 それはさながら未知との遭遇だった。お互いに後ずさり、ひどく警戒してしまう。


 わけがわからない。なんで、どうして、我が家にブタさんがいるのだろうか。私はただただ混乱してしまった。


 けれどそんな事がどうでもよくなるくらいブタさんはちっちゃくて愛くるしかった。そのつぶらな瞳も、もにゅもにゅしてそうな身体も。


 私はちょっと怖かったけどゆっくり近付きブタさんに右手を差し出す。相手もちょっと怖がっていたけど私はその手でそのまま頭を撫でてみた。


 なでなで。


 なでなで。


 なでなで。


「か、かあいい~!」

「ぷひ!」


 私はブタさんを抱きかかえこれでもかともにゅもにゅする。可愛ければ細かい事はどうでもいいのだ。


 とまあ、そんなわけで私は取りあえず居間に移動しブタさんと見つめ合う。つぶらな瞳でとても愛くるしい奴だ。


「でもなんでブタさんが……お兄ちゃんが拾って来たのかな?」

「ぷひ」


 侵入経路はそれくらいしか考えられない。けどイヌやネコならともかくブタがその辺にいるだろうか。あんまり段ボール箱に捨てられているイメージは無いけど。


 まあいいや、取りあえずお兄ちゃんの部屋に戻そうか。



 ――ミヤタの視点から――


「おそいのー」


 ぶたにくがへやの外に出てからわたしは帰りをまっていたけどぜんぜん帰って来ないの。まさか食べられちゃったのかな。


 わたしは不安でいっぱいになる。けれどその時とつぜんガチャリとドアが開いた。


「あ」

「あ」


 そこにはわたしよりもちょっと年上のパジャマを着た女の子がいてぶたにくをむねのあたりで抱きかかえていたの。ぶたにくはこぼれ落ちるみたいにうでから飛び出て、わたしのところにもどってきたの。


 女の子は何も出来ずに固まっていたの。だけどしばらく経ってからぎこちない笑顔でこう言ったの。


「は、はじめまして」

「はじめましてなの」


 わたしもとりあえずぺこりとおじぎをする。この人はまだわたしがヨシノくんのおうちにやってきた事を知らなかったんだっけ? ヨシノくんもそんな事を言っていたような気がするの。


「ええと、あなたは、どうして、ここに、いるの、かな?」


 あ、やっぱり話してないんだ。わたしは正直に、


「なんかねー、公園にいたらつれてこられたの」


 と、ありのままの事を話すと、


「我ァガ兄者ァアアアア! 貴様はついにやり遂げたなァアアアア!」

「ぷひー!」


 女の子は街中にひびきわたる大声で叫んだからぶたにくはふきとばされちゃった。大きな音におどろいたわたしはぽかん、とする事しか出来なかったの。


「えと、どうしたの?」

「ハッ! 違う違う、私はお兄ちゃんの無実を証明しないと! ほかに何か言ってなかった!?」


 女の子はおちついたみたい。むじつってなんかかんちがいしてるのかな。


「えとねー、ぼくのちくわを食べるかいってきかれたの」

「事案確定だヒャッホーイッッ!」

「いっしょにおふろに入ろうねとか」

「HAHAHAッ! こいつは疑いようがねぇ! マイブラザァー、感動して全身の穴から涙が出ちまうぜェッッ! てめぇは正真正銘のロリコンだァッッ!」

「入ってないけど。えーと?」


 よくわからないけど女の子はとてもおもしろいことになってたから、わたしも何だか楽しくなってきたの!


「ヒィッヤハー! 今日は特上のチェリーパイを焼いてお祝いをしねぇとなあッ! 条例クソくらぇだ、ボマイェエエエ!」

「ボマイェエエエ!」


 だからわたしもいっしょにはしゃぐの、いみはわかんないけど手をおそらにつき上げて!


「ぷひ?」


 そんなわたしたちを見てぶたにくは何だかいつもよりぽあっとした顔になってたけど、気にしない気にしない。


 だって楽しいからね! ボマイェエエエ!

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