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12-105 ミドウとアラディア王国の接近

「またお会い出来て光栄です、アラディア女王陛下」

「ええ、こちらもあなたに会えて嬉しいですよ、ミドウさん」


 アラディア王国の中枢にいる人物が集まっている会議室に現れたミドウは、恭しい挨拶もそこそこに本題を切り出した。


「では早速ですが、女王陛下は退出していただけるでしょうか。私がお話をしたいのはあなたではございませんので」

「貴様何のつもりだ! この無礼者めが!」


 護衛官のサヒメルはその常識はずれで無礼極まる発言に激怒する。しかしミドウは笑みを崩さず言葉を続けた。


「女王陛下。私たちはあなたが傀儡に過ぎない存在である事を知っています。あなたの背後にいる宮澤劇団のトップ、ミヤザワこそがアラディア王国の真の支配者であり、全ての政を執り行っている事も」

「っ」


 ミドウが王国の最重要国家機密を知っていた事にサヒメルは驚愕する。その真実は王国の中でも限られた人間しか知らないというのに。


「ご存じでしたか。なら隠し立てをしても無意味ですね。ミヤザワさん」

『はいはいは~い』


 この男には嘘をついてもすぐに見抜かれる。観念したアラディア女王はミヤザワを呼ぶとモニターの画面が切り替わり、そこにボイスオンリーと書かれた画面が表示され能天気な声が響き渡った。


『よくご存じでしたね、ミドウさん。ご褒美に最近我が国で売り出し中の生ジンジャーエールをプレゼントしましょう』

「ありがとうございます。それはそれとして商談をはじめたいのですがよろしいですか?」

『ええ。そもそも白き帝の軍勢の幹部であるあなたがどのようなご用向きで? まあうちの子たちからおおよその話は聞いているのでこうして招いたわけですが』

「はい。我々は傘下の組織と共にアラディア王国の軍門に下りたいと思っています。最大の対価はゾンビ兵器とその生産のノウハウ……関係が悪化したアロウレスの代わりに汚れ仕事も出来ますし悪い話ではないかと」

『あ、はい、いいですよ』

「ミヤザワさん!? そ、そんな簡単に……この者が釜牛でした事を忘れたのですか!」


 ミドウがそう提案すると、ミヤザワは詳しい話も聞かずに快諾したのでサヒメルは慌てふためく。だが彼女は続けてこう言った。


『言ったでしょう、サヒメルさん。おおよその話は聞いていると。私は最初からこの申し出を引き受けるつもりでした。既に水面下での交渉も済ませています。その気がなければ彼をここに招いていません』

「サヒメル君、国際会議とは大体そういうものだぞ。今更ではないか」

「……そうですか。なら私からは何も言いません。出過ぎた真似をして申し訳ありませんでした」


 同席していたゴビウスからもそう窘められ、サヒメルは今度は自分が無礼な行いをしたと気付き謝罪する。


『では早速ですがミドウさん、一つお願いが』

「はい、何なりと」

『ちょっと戦争をしたいのでよろしくお願いしますね』

「承知いたしました、ミヤザワさん。もちろん既にゾンビ兵器は使える様に準備はしております。お望みとあらば今すぐにでも」

『さすが、一流のビジネスマンは仕事が早いです』


 そしてミヤザワはひどく愉快そうに悪魔と取引をし、ミドウもまた狡猾な笑みを浮かべる。


 ミドウは思っていた。信頼を勝ち取るために最初の仕事を失敗するわけにはいかない。軍人や民間人問わず可能な限り殺して成果を出さなければ、と。


 そして自分はその先にあるものを神から奪い取り、全てを手中に収め野望を達成する。自分の底知れぬ飢えと渇きを満たすには、弱者を虐げその血肉を喰らうよりほかないのだから。

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