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12-104 一触即発のアラディア王国と中国

 ――芳野幸信の視点から――


 帰り支度をしている最中、僕はリモートでの補習授業の合間に本当は良くないけどネットで見聞を広めていた。


『中国海軍の船がアラディア王国の客船に衝突 死傷者多数』

『日本人も乗船との情報』

「ほへー」


 やはり最大のトピックはこのニュースだろう。偽造電子マネーの事もあり、現在中国とアラディア王国の関係は修復不可能なレベルにまで達してしまった。


 記事によるとどうやら中国海軍の戦艦が上の命令を無視してアラディア王国の豪華客船に体当たりをし、船が沈没して多数の死人が出ているそうだ。また客船には日本の修学旅行生も乗っていたらしいから日本ともすぐに揉める事になるだろうな。


『アラディア王国政府武力介入を示唆』


 んで、大使館やアラディア王国の系列の企業も襲われているわけだからそれを口実にこんな話も出てきている。こりゃ近々小競り合いが起きるかもなあ。


 いや、実際にもう小競り合いは起きているだろう。さっきの海軍が暴走したというニュースは軍隊ですら歯止めが効かなくなっているという事を意味している。歴史上軍隊が暴走した事で多くの戦争が始まったけど今回もまたそうなるのだろうか。


 といってもこればかりは流石に僕らにはどうしようもない。それにいくら憂いていても海の向こうの話だからね。経済的にも安全保障的にも間違いなく巻き添えは食らうだろうけどさ。


「じー」

「ミヤタも気になるの?」

「うん……」


 パソコンをいじっているといつの間にかミヤタが僕の部屋に入ってきて、悲し気な眼差しでパソコンの画面を見ていた。心優しい彼女の事だ、きっとこの悲惨で陰鬱なニュースに心を痛めているのだろう。


 だけどこの悲しいニュースを見せるべきだろうか。映像の中には必死で溺れまいと海面でもがく人の姿も映っているし、半分沈んだ船の中から窓をバンバン叩いている人もいるし、正直トラウマ注意な映像ばかりだから僕は彼女に見せたくなかった。


 おそらく震災の映像同様にもう少しすれば自主規制で放送されなくなるのだろう。それの善し悪しは別として。


 ザ、ザザッ。


「ん?」

「ふに?」


 しかし突如としてパソコンの画面が乱れ新たな画面が表示される。僕は何も操作していないのに。まさかウィルスだろうか?


 学校の備品なのに怒られるかなー、やだなー、と思っていると、よくよく見るとそれはどこかの会議室を映し出したものだった。


「あれ? この映像って」

「アラディア王国の人たちだね。でもどうして」


 その映像にはなんとアラディア女王や宮澤劇団の幹部連中が映っていたので、僕たちはかなり驚いてしまう。だけど一体どうしてこんな映像が。


 いや待て、このパソコンには以前スパイによって盗聴器が仕掛けられていた。だとすればこれもスパイが仕込んだ何かだろうか。


 きっとそうなんだろうけど一体何が目的なのだろう。こんな国家機密の塊みたいな映像を見せて、何かしら企んでいるのは間違いないだろうけど。


「ねね、この人ってもしかして!?」

「ミドウ?」


 しばらく映像を眺めているとなんと部屋に白き帝の軍勢の幹部であるミドウが入室した。対立する組織の幹部である彼がこの場にいるなんてまずあり得ない事なのに。


「ミヤタ、すぐに他の皆も呼んで」

「う、うん!」


 僕はミヤタに指示を出すと彼女はぽてて、と走り去る。これはこの上なく重要な情報が手に入るだろうから片時も瞬きをしてはいけないだろう。


 なるほどねえ、スパイはきっとこの映像を見せたかったんだろうな。ならそいつの目論見通りしっかりと見物させてもらうとしようか。ここで何が行われるのかを……。

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