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12-103 アラディア王国の経済テロ

 偽造電子マネーの存在が明るみになった数時間後。


 そのたった数時間で人民元は大暴落してしまった。多くの国は人民元による取引の中止を表明し、中国が長年築き上げたものはわずか数時間で一瞬にして失われてしまったのだ。


 人民元は数日もしないうちに紙切れになるだろう。これから産業、食糧、防衛、そうしたものに深刻な問題が生じるに違いない。


 アラディア王国が台頭する中、中国が諸外国を繋ぎ止めていた最大の要因は金である。だがその最後の糸が切れてしまった。そしてそれらの国の多くは既にアラディア王国と緊密な関係になっている。


 憎き千年女王は中国から利権だけでなく誇りも全てを奪い去った。激怒した中国国民は連日大規模な反アラディア王国のデモを行い、シュプレヒコールとともに国旗を燃やし、それはやがて暴徒となり国内にあるアラディア王国系の行政機関や企業を襲撃した。


 その様な未曽有の国難を前に袁国家主席は執務室で情報収集にあたっていた。だがもうこうなってしまっては何もかもが手遅れであると、彼も薄々理解していた。


「(偽造電子マネーについての広報はどうなっている)」

「(はい、これらは全てアラディア王国が起こした経済テロだという声明を出しました。国民の大部分はそれを信じて各々我が国を護るために勇猛果敢なる行動をしております!)」


 部下は決して袁国家主席の機嫌を損ねないため、直立不動で声高に成果をアピールする。だがそれはかえって彼を不愉快にさせるものだった。


「(勇猛果敢なる行動か。だが他国からはただの暴徒と認識されているのだろうな。それで? 国外でその主張を信じている人間はどれだけいるのだ)」

「(……アラディア王国に近い国は信じておりません)」

「(つまり大部分の国は我が国の主張に耳を傾けていないというわけだな)」

「(ッ!)」

「(今はまだいい。だがもしこの状況で愚か者が一線を越えたのなら取り返しのつかない事態になる。暴徒が過激化しない様にくれぐれも気をつけろ)」


 普段は獅子の如く豪胆な袁国家主席は部下が驚くほど弱気な事を言った。だが今だけは国父である自分だけは慎重にならなくてはいけないという事を理解していたので、どのような理不尽な仕打ちに対してもそうせざるを得なかったのだ。


「(た、大変です!)」

「(貴様、ここは国家主席の部屋だ! ノックぐらいしろ!)」

「(す、すみません!)」


 だがそう思っていた矢先、一人の部下がひどく慌てた様子で部屋の中に飛び込んでくる。彼の上司は左遷されかねない無礼な振る舞いを叱責するが、


「(我が国の戦艦がアラディア王国の客船に突撃して……客船が沈没してしまいましたッ! 現在救助活動に当たってはいますが多数の負傷者が出ている模様です!)」


 部下が次に放った言葉にその場にいる全員が絶句してしまったのだった。

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