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ゾンビのミヤタさん~英雄が敗北した未来を変えるために、勇者の剣と愛と勇気と豊橋名産のちくわを携えやって来た二回目の世界、東北には太陽が昇り、花咲く明日への物語が始まる~【完結】  作者: 高山路麒
第十二章 失われた理想郷【第二部3】

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12-87 VS 道化の英雄 久我柊弥

 ――ハナコの視点から――


 黒鬼さんたちが離脱した事により、私はフィリアさんと二人だけで久我さんとビッキーさんと戦う羽目になってしまった。歴史に名を残す七大派閥の英雄、大魔術師久我柊弥と。


 私は唯一の遠距離攻撃技である飛ぶ斬撃で空中に浮遊する久我さんを撃墜しようとするけど、大ぶりな攻撃は余裕で避けられてしまう。せめて律子さんがいれば鎖で捕まえられるんだけどなあ。


「ハハハッ、君の力はそんなものかい、ハナコちゃ~ん!」

「むぐぐ~!」


 久我さんはなかなか憎たらしい笑みで煽ってくる。彼のウザキャラは正史にも記されており私からすればある意味ご褒美だけど、フィリアさんもいるしここは一応悔しがっておいたよ。


「うちもおるんやけどなあ!」

「ハナコさん!」


 彼に夢中になっている隙にビッキーさんは踏み込んで私に斬りかかる。フィリアさんがすぐに庇ってくれたけどこっちにも気を付けないといけないな。


「ありがとうございます、フィリアさん!」

「挑発如きで熱くなってはいけません、敵は彼だけではありませんよ」


 むむ、フィリアさんに怒られてしまった。ともかく一旦仕切り直して、っと。


 黒鬼さんが戻ってくるまで耐えるという手もあるけど、いつ助けに来てくれるかわからないしいないものと考えたほうがいいだろう。つまりこの状況を打開出来るのは私たちだけという事だ。


 久我さんだけでも大変だけどビッキーさんのかく乱も地味に厄介だ。荒木の一族って全体的に優秀なサポートタイプが多いからなあ。


 ただビッキーさんは殺してもすぐ復活するとはいえその際数秒程度の隙が生まれる。


 わずか数秒、されど数秒。その数秒の間だけは少なくとも数の上では有利に立ち回れる。


 ちょっと気が引けるけど不死身のビッキーさんはこの際殺しても構わないだろう。フィリアさんに護ってもらいつつ力押しで、うん、この作戦で行こう。


「とおーッ!」

「おわっ!?」


 私は早速油断しきっていたビッキーさんを真っ二つに切り裂き、闇雲に斬撃を飛ばして久我さんの迎撃を試みる。いくら相手の回避力が高くても何発かぶっ放せば一撃くらいは当たるだろう。


「ふーん、その一線は越えられたか。最初のテストは合格だね。じゃあ次のテストだ。ちょっと本気を出すから死なないでね~?」

「ッ!?」


 けれど考えが甘かった。久我さんはビッキーさんを殺されたせいでほんのり怒りモードになったらしく攻撃が五割り増しくらいで激化する。何となくそうだとは思っていたけどやっぱり本気を出していなかったか……!


「ハナコさん、私から離れない様に!」

「は、はい!」


 そのあまりの攻撃の激しさに逃げるのを諦めた私は身を縮こまらせてフィリアさんの陰に隠れて攻撃をやり過ごした。というかこの攻撃を盾だけで普通に耐えれるフィリアさんも結構化け物な気がするんだけど。


「おお、なんかめっちゃすごい事になっとる!」


 しかもビッキーさんも時間経過で復活してしまう。うう、さっきの攻撃で決めればよかった。もっと思い切ってぶっ放すべきだったかなあ。


「どうして! どうしてあなたは自分の故郷を滅ぼすような真似が出来るんですか! あなたは何がしたいんですかッ!?」


 ああもう、おうちに帰りたい。帰って幸子さんの作ってくれたカレーが食べたい。私は泣きそうになってしまい、逆切れ気味に叫んでしまった。


「俺が何をしたい、か」


 ただその口撃はその時の私が出来る最良の選択肢だった。久我さんはその質問に食いつきうーん、と考え込んでしまう。


「ぶっちゃけ別にこれといった目的があるわけじゃないんだよねー。強いて言うなら俺はただ物語を終わらせないためだけに戦っているだけでさ」

「終わらせないために……?」


 私はすぐにはその返答が理解出来なかった。だけど次の言葉で私はすべて理解してしまったんだ。


「本物のビッキーはあの日に死んだんだ。『本物の世界』の『神戸』の街を襲った震災でね」

「ッ!?」

「コウベ……?」


 フィリアさんは聞き慣れない単語に訝しげな顔をするけど、彼は確かに今神戸と言った。神渡ではなく、この世界には存在しないはずの神戸という地名を。

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