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2-21 ボランティア団体の本格始動に向けて

 そして居酒屋を出た僕らは、歩きながら今後の事を話し合った。


「とりあえずひかげちゃんを家につれて行って、じむしょを直して。やることがたくさんあるね!」

「はい! 忙しくなりますねー!」


 ハナコはすっかりミヤタの腰巾着となりやる気に溢れた彼女を持ち上げている。別にいいんだけどこの崇拝にも似た尊敬はどこから来るのだろうか。彼女は普通の小学生のゾンビなのに。


「事務所の修繕かあ……知り合いに頼んで安くしてもらおうかしら」

「あれ? 自分で直さないの? わたし、おうちを自分で作ったことあるよ?」


 ミヤタはすっかりそのつもりでいたようだけど、レイカがそう言ったのでちょっと不満そうな顔になる。まるで危ない遊びを禁止された時みたいだ。


「あはは、ダンボールハウスとは違うわよ。伝手はあるから試しに声をかけてみるわ」

「えー、作りたいのにー。ぶーぶー。ま、いっか。それじゃあおねがいするね!」


 だけどミヤタはレイカの提案を受け入れる。費用がどうなるかはわからないけどひとまずはこれで目途がついただろう。


「あとはそうだね、いくら拠点があっても仕事が無かったら意味がない。引っ越しのボランティアもヤオの紹介があったから出来たわけだし。一応聞くけどヤオはこれ以上依頼する予定はないよね?」


 僕はそう意見を出しヤオに質問すると、彼女は少し困った顔をした。


「うん、おばあちゃんに頼めば引っ越しをする人を紹介してくれるかもしれないけど、いくら引っ越しラッシュだからといっても知り合いの皆が引っ越しするわけじゃないからね」

「そうだよね。だから宣伝というか窓口も考えないといけない。どういう手段をとればいいか意見はある?」


 僕は皆に意見を求めた。そしてミヤタは自信満々な様子で提案をする。


「それじゃあ、学校のしょくいんしつの前にあるやつみたいなのを作る?」

「投書箱の事? まあ無いよりはマシでしょうね」


 レイカの言うとおり投書箱は悪くないアイデアだけど効果的かどうかと言われれば微妙だ。けれど最初にとる手段としては手間もリスクも少なく何より自分たちでもすぐに実現可能だ。取りあえず設置するだけ設置してみようかな。


「皆様、私の存在を忘れていませんか? 私は言いましたよね、力を貸すと。遠慮なく借りてもいいんですよ?」


 そんなふうに意見を出し合っていると話に混ぜてもらえなかったナバタメがしかめっ面をしてしまう。だけど僕は正直気が進まなかった。


「でも家と金の力よね? ボランティアって言ってもあんまり乱発するものじゃないわよ。あんたの立場もあるしあまり使い過ぎるとね。あの物件もナバタメ家が所有する物件であってあんたの所有物じゃない。説得するのにかなり無理したんでしょう?」

「……ま、それもそうですわね」


 レイカの批判にナバタメはもう少し食い下がると思ったけど、彼女は意外にあっさり引き下がった。名家だからこそその辺りの事情は身をもって知っているのかもしれないな。庶民にはよくわかんないけどさ。


「それにこういうのは自分たちの力でやるからこそ楽しいんです! 何だかワクワクしてきましたよー!」

「うん、がんばろうね、ハナコちゃん! ひかげちゃんも、ほら!」

「え、あ、はい」


 ミヤタはずっと発言しなかったひかげにもコメントを求める。もちろん彼女はおどおどとどもって、そんな発言とも呼べないリアクションをしてしまったけれど。


 うん、このあとの方向性は大体決まったね。もうこの場は大丈夫と判断した僕は所用を済ませるために身を翻した。


「さて、皆はこのまま家に帰ってくれるかな。僕はちょっと寄る場所があるから」

「あれ、ばんごはんの買いもの? ならわたしもいっていい?」


 だけどミヤタは僕について行こうとする。手伝いではなく多分食べたいものがあるからこう言ったんだろうな。


「いや、夜のおかずを求めて。こんにゃくを買うだけでミヤタが欲しがるものないよ」

「そっかー、ならいいや」

「最低ですね」


 一人で行きたかった僕はそんな嘘をつくとミヤタは素直に信じてくれた。ハナコは凄い不快そうな顔をしていたけどね。


「ま、まあ、では私たちはこれで」

「こんにゃく……?」


 ちなみにナバタメは上手に笑顔を取り繕っている。ヤオは意味がわかってないな、こりゃ。


 さて、それじゃあさっさと用事を済ませようかな。さっきから僕たちの後をつけている人に色々と話を聞かないとね。

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