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魔神の受肉~悪魔が下界で貴族令嬢に擬態します~  作者: 烏兎徒然
ニ章 悪魔の冒険譚
24/25

格の違い

○  ●  ○  ●

sideエッダ


組合の受付嬢にオススメされた宿に着いて自室に入れば、サバイバルからの開放という緊張の糸が途切れ、ベッドに倒れ込む。


ルシル達のお陰でかなりの大きな臨時収入が入った。

最悪野ざらしも覚悟していたけど、今日ばかりは久しぶりにゆっくりとベッドで寝むることができる。


今日はとても良い一日だった。

こんなにも、心穏やかで過ごせる一日なんてものはしばらくなかった。

だからか突然の降って湧いた幸運に、どこか不安になってしまう。

それほど今日の出来事は、私にとってとても有意義な日だったのだ。

けれど明日も約束出来た事に、不思議と少し口角が上がってしまう。


その事に感謝しつつも、私はルシルという不思議な魅力を持った女性の事ばかり考えてしまう。

恐らくルシルと妹のミラは、偉い立場の人間なのだろう。

それはリアとフィーネという、護衛の対応から明らかである。


ミラは天真爛漫で、リアはルシルが大好き。

フェーレは言葉数が少なかったり、表情が変わらなかったり。

そんなところが少し私と似ていた。


そしてルシルは、常に自信に満ちあふれていて、わが道をいくような、少し怖いくらいに綺麗な女の子。

けれどどこか少し抜けた所があるような、愛らしい一面も。


子供っぽい態度を取ることもあれば、威厳のようなものも感じられる時があって。

そのちぐはぐなギャップに、惹かれてしまう。

カリスマ性というものだろうか。

彼女はそこにいるだけで人を惹きつけてやまないように思える。


見知らぬ土地で、最初に彼女たちと交流を持てたのは幸運だった。

みんないい人だった。

戦闘力も申し分ないどころか、下手したら私よりずっと強いと思う。

あくまで勘に過ぎないけれど、みんなどこか手抜きしていたような気がする。


今日はパーティーの連携の確認だったけれど、いよいよ明日からは本格的に冒険者の仕事をする。

そういえばルシルが明日、私に何か話があると言っていたけどなんだろう。


もしかして貴族様だと打ち明けるとか?

最初会った時から、正直大きな商家のご息女とか貴族のお忍びだという事は分かっていた。

上質なローブに美しい髪と手は、本業の冒険者ではないと察せられたし、腕の立つ護衛がいることからも、恐らくどちらかだろう。


もし私がお忍びだと、気づいていないのだと思っているのだとしたら面白い。

組合では誰から見てもバレバレであった。

五級以下の新人や見習いの子達は分かっていない子も多かったけれど、これでも私は冒険者としては一人前として数えられる四級の冒険者だ。


貴族は嫌いだ。

私から全てを奪ったのだから。

けど、ルシルがたとえ貴族だとしても嫌いになるところが想像つかない。

ルシルは、ルシル。

そこに肩書は関係ない。


もしも、私実は貴族なの、なんて言われたら『知ってた』といってやろう。

ちょっと意地が悪いかな?


「くすくす」


一人で幸せな明日を考えていた時、いきなり自室のドアが開かれた。


「ッ!?」


咄嗟にベッドから飛び退いて、臨戦態勢を取る。

まるで気配がなかった。

相当なやり手だと、瞬時に判断し、中距離の魔術攻撃が飛んでいく魔術陣が込められた短刀で牽制しようとする。

しかし、いつの間にか後ろの窓から侵入していた男に羽交い締めにされる。

この男も気配や匂いがなかった事に驚く。


物音一つ立てずに侵入を許してしまった私は最後の抵抗とばかりに、短刀に込められた魔術を発動する。

こういった場合、パニックになり魔法なら不発に終わる事が多いが、魔術ならばどんな状況でも同じ威力の魔術がすぐに撃てる。

ましてや魔術陣ならば魔力を込めれば済むだけで、詠唱も必要がない。


ドゴォンと大きな音を立てて、部屋の壁が崩れる。

それに焦ったのか正面の男は私から短刀を取り上げた。

それだけに留まらずまた窓から新たな男が現れ、私の手首に枷を付ける。

その瞬間体内の魔力が上手く練れなくなった。


後ろの男の羽交い締めに意識がだんだん朦朧としてくる。



――ごめんルシル。約束守れそうにもない。



気づけば、どこかの薄暗い屋敷の広いホールのような場所にいた。

既に日は落ちているようだった。

ところどころに魔石の明かりはついているが、どこか薄暗く。そして埃っぽい。

ホールは本来パーティーをするような部屋。

しかしそこに机や椅子などといった家具や調度品は見当たらず空っぽで、誰も住んでいない屋敷である事は明白だった。


「おい、貴様が虎人族の姫だな。貴様が聖獣を持っている事は既に知っている。素直に差し出せば痛い思いはしなくてすむぞ」


私を見下ろし、男――私を攫ったのとは別人と思われる――は言った。

言葉はネットリとした嫌悪感を掻き立てるような声。


「…………だれが貴方なんかに、渡すものか、です」


瞬間身体が放り出される。

頭が一瞬白んで、一拍おいて殴られた事を理解する。


怖い。怖い。

とても痛い。

聖軍とやらが執拗に追いかけてきた、記憶がフラッシュバックする。


カチカチとしたうるさい音は、何かと思えば自分の歯の噛み合う音だった。

これから私は死より辛い拷問の限りをつくされるのだ、そう思えば更に不安が掻き立てられていく。


私は魔法は使えない。

けど白虎(びゃっこ)は、私の指輪の魔導具にストレージに入っている。

この指輪の唯一の弱点は、指輪を取られると相手も使えるということ。

しかし、代々一族を守護してくれた式鬼神が、私を裏切るとは思えない。


いっそこの男に渡して、白虎をストレージから出して貰って、助けてもらえばいいのではないかと考えがよぎるが、目の前の男と、その部下らしき三人の先ほどの宿の襲撃犯の実力は未知数。


ましてや、式鬼神を寄越せということは、今両腕につけられている不思議な枷のように、なんらかの対策手段があるのかも知れない。

そう考えれば安易に、ストレージを開ける事はできない。

ましてやこの指輪と白虎は、代々一族に伝わってきたものだ。

プライド的に、やすやすと渡す事なんてありえない。

そんな事をすれば祖霊や、私を逃してくれた父や母に顔向けが出来なくなってしまう。


◇◇◇


しばらくの間、質問も軽い問いかけも何もなく、ただ黙って殴られ蹴られを繰り返される。

魄すら上手く機能していないようで、いつもより肉体強度が落ちているのか、ただの拳がとても痛い。

彼らは白虎が欲しいのではないのか?

拷問は情報を吐かせる事が目的のはず。

しかし、何も聞いてこない。


ならば、私はなぜいま殴られているのだろう――。


良い日だと思ったらこれだ。

私の人生にきっと、もう良いと思える一日なんてこないのかもしれない。

きっと私の心を折りにきているのだ、と頭では分かっている。

痛みと恐怖と未知を混ぜる事で、私をパニック状態にして正常な判断を行わせないようにしているのだろう。

そしてその先に待っているのは、さらなる拷問だ。


何度か気を失って起きてを繰り返していると、男の騒ぎ声で目を覚ました。

その内容に聞き耳を立てると、どうやら冒険者が助けに来てくれるそうだ。


一筋の光が見えた気がした。

これで、きっと私も助かるかもしれない。

しかし、そう考えた途端、重々しいプレッシャーがホール会場全体を支配する。


男の周囲に醜悪な姿の悪魔が十数体現れた。

初めて悪魔を見たが、おおよそ人間とも魔物とも呼べない醜悪な見た目に、凶悪なおぞましい魔力。

これだけで、その正体が悪魔であると確信が持てた。


――ああ、私の人生にはいつも暗闇にしか道がない。


誰か…………助けて。

気づかぬうちに涙を流して。

全てに絶望して。

けれど、想像だにしなかった所から希望の光は降ってわいてきた。


○   ●   ○   ●   ○



「さて、この屋敷ね」


古ぼけた屋敷はまったく整理されておらず、部屋中がホコリで満ちていた。


「けほっ、ルシフェル様、ここはなんの屋敷なのですか?」


ホコリで咳き込んだミーランに聞かれる。


「全くわからないわ」

「……え?」

「今、領地の運営をしているのはツォルンと、家宰のクーストースだもの」

「うーん……どこかの没落貴族の別荘だったとかですかね?」


キョロキョロと興味深そうに屋敷の中を見るミーラン。


「そんな事気にしてどうするの?」

「根回しがすんでいない状態で、壊していい屋敷かどうか把握するのは大切ですよ」

「……なるほど。たしかに」


ミーランの言葉は一定の理があるような気がするが、もしかして私が怒り狂って屋敷を破壊するとでも思っているのだろうか?

普通に人間を殺すだけなら、威力なんて必要ないのに……。


「さて、足跡はこっちのほうね――あら?」

「どうしましたルシフェル様」


長い廊下を渡ろうとして、今更気づいた。

屋敷の奥に悪魔がいる。

あまりにも慣れしたんだ雰囲気すぎて、逆に分かりづらかった。


「リアは気づいて?」

「……たしかに何か奥にいますね。魔物でも妖魔でもない……この感じは悪魔ですか。ルーナお嬢様を除けば、悪魔なんて存在に会った回数も少ないのですぐに感知出来ませんでした」

「まあ、リアは引きこもりだものね」


肩をすくめると、隣から好奇心の波動を感じた。


「悪魔ですか! 実物を見るのは初めてですね!」

「私は?」

「ルシフェル様は格が違いますから」


まあ、たしかに私は一般的な悪魔と比べられる存在ではないか。

でも歴とした悪魔なんだけどなあ。


「あら? 何匹か外に出て行ったわね?」


ミーランがうーんと少し小首を傾げて、もしかして、と。


「悪魔を街に放って、混乱している隙に逃げる算段なのでは?」

「……リアのお膝元で大胆な事するわね」

「ルシフェル様の完全調伏を相手が知っていれば、リア様は屋敷で完全に護衛に務めるでしょう。ルシフェル様がもしただの令嬢だったのなら、それもあり得たかも知れませんが」

「なるほどね。確かにまさか年若い貴族のご令嬢が、敵の本拠地にリアを連れて乗り込むとは考えないわね」

「ふふふ、王族の私もいます」


悪魔が召喚されたのに随分呑気なものだ。

あ、いい事思いついた。


「あんまり強そうな悪魔じゃないし、ミーランが相手しなさい」

「え!? 私がですかー……」


明らかに気乗りしなそうな表情。

信仰対象と戦いたくないのだろう。

けれど、奥にいる悪魔の魔力量的には下位悪魔か中位悪魔程度だ。


「下位悪魔程度を信仰してどうするのよ、貴方は私だけを信仰していればいいのよ」


そう言ってのけると、目に涙を蓄え、頬を赤らめるミーラン。


「まったくもってその通りでした。私はルシフェル様一筋です! 何か悪魔と戦うに当たって注意点などありますか?」


両手の拳を握り、ふんす、と先程とは対極的な姿勢を見せる。


「んー、下位悪魔の魔力量は本来ならば10万程度だけれど、下界に降りるための(ハク)――つまり肉体の役割を魂が半分受け持つ事になるから、下界での悪魔の力は半減するのよね。魔力量に換算して5万程度ってところね。中位悪魔は本来20万程度だから、下界では10万ほどね」

「10万……冒険者組合の敵性脅威度に当てはめるなら三級ですね。私なんかで勝てるでしょうか?」


たしか三級はベテランパーティー複数で討伐する案件だったっけ?


「今のミーランなら余裕とまではいかないかもだけれど、倒せない敵ではないわ。精神生命体は魔術や魔法なんか使わずに、法術を使ってくるわ。けれど魂のみで扱う法術を使えば使うほど、自信の存在が弱まっていくから長期戦を視野に入れれば何も問題ないわ」

「わかりました! 頑張ってみます!」

「もし危なくなったら助けてあげるから、心配しなくていいわ」

「はい、ルシフェル様の期待に答えてみせます!」


なんだかやる気満々だなあ。



長い廊下で精神生命体と戦う際のイロハを伝授しながら歩き、ようやく悪魔とエッダと誘拐犯がいるであろうホール前の扉前についた。


「リア」

「はい」


名前を呼ぶだけで、何をすればいいか分かる。

完璧な意思疎通。

主従の理想がここにはある。


リアが扉に手のひらを向けて、単純な魔力放出で大きな扉を木っ端微塵に吹き飛ばす。


「開けてって意味だったのだけれど……」

「あ、開けはしましたよ……?」


主従の理想は幻想だった。



○   ●   ○   ●


「お姉様とミーラン様大丈夫かしら……」


ミーランの護衛は既にミーランを追って屋敷を出ていったため、今ティエラは自室に戻っていた。

部屋にいるのはティエラとシーたんの二人だけである。


自室のバルコニーから姉であるルーナの去った方を見つめていると、遠くから何かがこちらに近づいてくる。


「主殿ッ!」

「えっ!?」


シーたんの焦り声とともに、ティエラは急に部屋の奥へと魔法で引き寄せられる。

数拍置いてバルコニーの窓を割って現れたのは〝下級悪魔〟であった。

()()悪魔と違って、()()悪魔は自我をまだ獲得していないもっとも若い悪魔。

いや獣である。


「ゲヒヒヒヒヒヒッ!!」


おおよそ生物の出す声とは思えない不快な音。

細長い手足に、コウモリのような羽。

小さな猿顔には、捻れた短い角が額に一本生えている。


「主殿は下がっておるのだ! こやつ下級悪魔だにゃ」

「シーたん!」


シーたんはすかさずティエラをかばうようにして前に出る。


「ふむ。我より魔力量は遥かに上にゃ」

「シ……、シーたん、じゃあ! に、逃げようよ!」


ティエラは突然の状況に対応出来ず、部屋の隅で腰を抜かしていた。


「主殿、少々我を見くびりすぎであるぞ」


シーたんが、レイピアを魔法で生み出す。

無から有を生み出す魔法。

しかしその際、魔法音は一切ならない。


「格の違いというものを教えてやろうではにゃいか」


レイピアを構えると、頭上の王冠が光輝き、シーたんが十匹に分身する。

そして各々が別の動きを取り、悪魔の動きを翻弄しつつ着実にダメージを与えていく。


「す、すごい……」

「世界中の猫を統べて、それらを統括できるということは、それだけ意識が分離してもなんら問題ないということにゃ。我の脳は偉大に出来ておるのだ! 更に倍にゃ!!」


十匹だったシーたんが更に増え二十匹になる。

その分身に驚いた悪魔の隙をついて、一斉にシーたん達がレイピアを突き刺す。


「内側から燃えるがいい!」


二十の風穴を開けて、そこから魔法の火を流し込む。


「ギィィィィィ!!!」


断末魔を上げて黒い粒子となって消えていく下級悪魔。


「所詮自我のない悪魔なぞ、我の敵ではないのにゃ!」


レイピアを消して腰に手を当て、胸をはるシーたん。

そんなシーたんの脇に手を入れて、ぐるぐると回ってはしゃぐティエラ。


「すごいすごい! シーたんとっても強い!!」

「や、やめめ。目が回るにゃ、主殿!!」


そうしてはしゃいで喜ぶ二人に、冷水が被せられる声がする。


「ふむ、眷属がやられたから来てみたものの、人間にしてはなかなか強い魂を持っている。よい糧になりそうだ」


バルコニーの外。

宙に浮かぶ一人の悪魔。

自我を獲得していることから下位悪魔以上である。

先程の下級悪魔と違ってまだ人間味のある姿をしているが、黒い羽やしっぽ、そして真紅の輝く瞳が彼を悪魔だと物語っている。


「主殿ッ!」


シーたんがすかさず浮遊魔法で、ティエラと共にボロボロのバルコニーから庭へと出て距離を取る。

しかしそれをまったく意に介さず、ふん、と一瞥した悪魔がティエラ目掛けて突っ込んでくる。


――まずい。この悪魔、速いにゃ。


猛スピードで突っ込んでくる悪魔に、為すすべがないシーたん。

絶望的かと思ったその刹那。


――横から更に速い勢いで突っ込んでくる二つの影。


ドゴンと重たい大きな音が鳴り響き、悪魔が吹き飛ばされた。


影の正体は、拳を鳴らすクーストースと、二本のナイフを携えたノンナであった。


「この感じは中位悪魔でしょうか? 下位なら流石にもう少し柔らかいでしょうね」

「クーストース様は悪魔との戦闘経験がお有りなのですね。私もそこそこ長く生きていますが悪魔と戦うなんて初めてですよ。……そして残念ながら魔力から見るにやはり中位で間違いないかと」

「なるほど、只者ではないと常々思っていましたが、魔眼の類ですか。しかも薄いグレーの瞳とは……眉唾の噂話かと思っていましたが」


クーストースはかつて、薄いグレーの瞳は魔眼の中でも特別強力な〝天眼〟を宿すという噂話を、はるか昔に聞いた事があった。

ただの噂話だと信用してはいなかったが。


「緊急時なので明かしましたが、王命として他言無用ですよ」

「もちろんです」


しかし、これはルーナ様が王族から厚くもてなされているという認識でいいでしょうね。

ルーナ様の味方であるのならば、私としても他言するつもりはないとクーストースは考える。

戦闘中に限って余念がすぎるな、と自重する。

かぶりを軽くふって意識をすぐに吹き飛んでいった悪魔に切り替える。



いきなり物凄いスピードで現れた頼れる援軍に歓声を上げるティエラ。

かつて姉からクーストースは強い、という事を軽く聞いた事があったのだ。

自身が敬愛する姉が強いというのなら、それなりの実力なのだろう、と。


「クーストース!」

「ご無事で良かったです。ティエラお嬢様。お怪我はありませんね?」


チラリとティエラの無事を横目で確認するクーストース。


「ええ、シーたんが守ってくれたので。それよりなんで悪魔が?」

「それは私にも分かりかねますが、どうやら街中に悪魔が現れているようで」


悪魔は先の攻撃で吹き飛ばされ、屋敷に衝突したため壁の一部が崩れていた。


――しかし、黒い粒子は発生せず。

つまり瓦礫に埋もれた中位悪魔は、まだ消滅していない。


チッっと苛立ったような舌打ちが聞こえ、瓦礫から這い出てくる悪魔。

憎々しげに立ち上がった中位悪魔と、臨戦態勢のクーストースとノンナの間に重いプレッシャーが掛かる。


「これは厳しいかも知れませんね……私は魂は平均的ですが体内魔力量は5万ほどのハクに寄った一般型の魔闘士です」

「私も似たようなものです。しかし天眼があるぶんどんな連携にでも合わせられます。自由に戦ってくれて結構ですよ」

「それは頼もしいですね。それはそうとティエラお嬢様早くお逃げに――」


そこまで言ったところで、目の前の悪魔から魔力が集まる気配が高まる。

対峙した両名の頬に冷や汗が流れ、緊迫した空気が漂う。


「不意打ちを当てた程度で偉そうに。貴様らの魂も纏めて食らってや……」



――しかし中位悪魔は、そこまで言うと途端動かなくなった。



「やはり、コカトリスの瞳術も悪魔に効くのですね。コラくん、また遠慮せず食べちゃってください」

「ッ!?!?」


大型の式鬼マンティコラが悪魔に近づきその頭部を噛み砕く。

すると中位悪魔は、あっけなく黒い粒子となって消えていった。


「これで二体目ですね、コラくんの魂魄も多少上がったでしょうか」


三匹のキメラを連れたフェーレが、クーストースとノンナの後ろから現れる。

呆然とするクーストースとノンナ。

対峙していた相手が強大だったため、他に意識を向けていられなかったため、フェーレの接近に気付けなかった。

そんな二人とは対照的に能天気な声でフェーレは、よしと頷く。


「では私は他の悪魔も探して来ますね。行きますよコラくん。もっとレベルアップです」


そういってマンティコラの上に乗り、颯爽と駆けていくフェーレ。


「……どうやら我々の見せ場は取られてしまったようですね、ノンナ」

「まったくです。どうしてあんなお気楽な調子で悪魔を狩っているのか――」

「…………まあ、結果的にカルローネの悪魔被害が減るのならば良いのですが」



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