第8話 仲間2
更新時間を午後4時から午後5時の間に変更しました。
俺はその日、 クロネに言われた通り街で一番大きい運動場に行ってみることにした。 予想通りネクロマンサーが跋扈するような状況でも混雑していた。 単純に休みの日というのもあるけど、 何かに打ち込んで今の異様な状況を忘れようとしているのかもしれない。 俺は近くにあったマシンに乗って運動してみることにした。
既に運動場に入った段階で注目されていたが、 俺がマシンに乗ってからは更に注目が集まった。
俺はそれを意に介さずとりあえずやってみることにした。 それが悪かったのかもしれない。 いきなり全力でやったものだから、 急にマシンが壊れた。
そのせいで周囲にどよめきが広がった。
「あれを壊すとか一体どれだけ力があるんだ……」
「あれが英雄の力か俺たちとどれくらい差があるんだ……」
皆こに来る時点でそれなりに体力に自信があるが、 多くの人間が先ほどの光景をみて敵わないと思ったらしく散っていった。
「ちょっよ。 ヤードさん械壊さないでくださいよ。 いくら街の英雄でも、 機械壊すのは……」
「すみません……頑丈そうだったんで力入れすぎました」
「気をつけてくださいよ。 いくら街の英雄だって壊していいわけではないですからね」
「以後気を付けます」
俺はやってきた係員に謝罪すると、 聞き込みに専念することにした。 そのほうが効率がいい気がした。
普段。 あまり持ち歩かない鞄からクロネから借りた魔道具を取り出すと早速、 近くにいたここの常連に試してみた。
結果は外れ、 皆物珍しそうにその光景を遠巻きに眺めていた。 なので、 かたっぱしから試すことにした。
大体なんだこれは?とか何かの検査かと言うが誰もこれがスキルがあるかどうか試しているか気づいてなかった。 一応、 相方を探していると嘘の目的をでっち上げたが、 意外と俺なんかの相棒になりたい奴がいたようで、 行列が出来ていた。
俺としてはそのほうがありがたいのでそのままにしていたが、 他の利用者にしてみては邪魔になるみたいで迷惑そうにしていた。
クロネに貸しているだけですからね。 借りパクとか絶対無しですからねと釘を刺されているので、 使いすぎると壊れるのではないかと不安だったが行列に並んだ全員を検査したが大丈夫だった。
勿論、 結果はだめ。 全員外れだっった。 まあ、 そりゃあそうか。 スキル持ちがわんさかいたらネクロマンサーが出ても速攻撃退して終わっただろう。
このままだと無駄足だが、 ここにいても仕方ないので荷物をまとめて帰ることにした。 荷物をまとめている最中に気になる話を聞いたのでふと手を止めた。
「全員ダメだってよ」
「これじゃあ。 あの備品壊ししかチャンスは無いな」
「あいつ街のあちこちに出没しているらしいぞ。 いったい何が目的なんだろうな?」
俺は気になったので聞いてみた。 なんでも街中の備品を壊しまくっている奴がいるらしい。 そいつを備品壊しと呼んでいるらしい。
なんでも相当な力があるらしく、 街の備品を壊しているそうだ。
そいつなら俺の相方に丁度いいと俺は感じた。
そこで近くを通りかかった。 係員に詳細を聞いてみることにした。
「これですよこれ。 ひどいもんでしょ。 鉄棒が飴みたいになってる」
係員に案内だれた先には、 飴みたいにぐにゃりと曲がった鉄棒があった。
「こんなこと普通できます? ヤードさんみたいに超人並みの力がないと無理ですよ。 だから、 中にはヤードさんじゃないかって疑っている人もいるんですよ。」
俺は驚いた。
「俺がですか!? 確かに今日マシン壊しましたけど」
「自分は疑っていませんよ。 ただそういう人もいるっていう話です」
自分に嫌疑がかかっていることに憤慨した俺は、 なんとしてでも犯人をみつけそして俺の手伝いをしてもらわないと誓った。
ここにいても仕方ないので一旦、 事務所に戻ることにした。
事務所に着くと開口一番言われたのが備品壊しを探しているのかだった。
俺は正直に探していると答えた。
「備品壊しについてボルガ班長はどう思います?」
「あの壊し方でいうと大男だろう。 相当な力があるだろう。 それだともう少し、 目立ってもいいだがなぁ」
班長の言う通り。 俺も想像すような大男だと目撃者がいないのが変だ。
目撃者はまったく言ってもいいくらいだ。
街中の備品を壊しているのになんでこんなに目立たないんだろうか。
ふと、 資料を眺めている内にあるところに目が留まった。 それはリロがよくいく店でおいしいケーキが評判のケーキ店だった。
そこでリロに聞いてみることにした。
「なあ。 リロ。 リロが良くいくケーキ店に備品壊しが行ったそうだけどなんか怪しい人を見なかったか?
「い、 いや。 見なかったけど! 怪しい人なんて見たことないけど」
リロは返事をするとまた書類の整理に戻っていった。
こままだと捜査が進まないのでまた改めて、 資料を眺めた。
俺が読んでいる資料は備品壊しが手摺を壊したことに関する資料だった
そこで俺はあることに気が付いた。
あれ?ここ市長のお見舞いに行ったところだよな?
確かあの時、 リロはやたら手摺叩いていたがまさかな……。
リロをみるとやたらそわそわしていた。
直接聞いてみるか……。 まさかリロなわけないし。
「なあ。 リロ相談があるんだけど……」
「ひ、 ひゃあ。 脅かさないでよ」
「いや、 至って普通に接してるけど……」
「そ、 そう。 で、 何の用?」
平静を装っているが、 今日のリロは特におかしい。
まるで別人みたいだ。 ただ、 その反応でわかった。
「リロだったのか。 備品壊し。 意外だったよ。 本当に」
リロはビクッと体を震わせた。 その反応で察しの悪い俺ですらわかった。
「な、 なに言ってるの。 今日のヤードおかしいよ。 仕事あるからじゃあね」
リロは俺の発言を無視してまた作業に戻っていった。
「別にいいよ内緒で。 誰にも言う気ないし。 俺だけでなんとかなるし」
リロは相変わらず書類整理をしていたがそれでも続ける。
「力を制御できないんじゃ危なくて連れていけないしな」
またリロは背中を震わせた。 これも図星だったようだ。
長い付き合いだリロが遊びで備品を壊していたとは思えなかった。
つまりそれは力を制御できていないという事だった。
それでは一緒に戦うことはできない。
「でも、 もしもこの街が俺だけではだめになった時みんなを守ってほしい。 そのためにその力取っておいてくれ。 わかったな」
「わかった」
リロは小さいが心のこもった声で了承した。
これ以上は余計な詮索する気を無くしたので、クロネのところに行くことにした。
この事件の真相を話しておきたかったからだ。
事務所から出るときちらりとリロをみたが、 特に変わりは無かったのでそのまま事務所を後にした。
「驚きましたね。 事務所荒らしが幼馴染みのリロさんだったなんて」
「俺も驚いたよ。 壊し方が尋常が無いから相当力のある大男かと思ったよ」
クロネに話したらクロネも驚いていたようだ。 身近な人間からこうもスキルを持った人間が現れるなんて驚きだ。
「でも、 残念ですねえ。 せっかく戦力が増えると思ったのに……」
クロネにその分俺が頑張るからさと言おうとしたが、 その前に突然リロが現れた。
「やっぱりここだったんだ。 探したよ」
リロの姿を見て覚悟してきたんだなと、 一瞬で分かった。
その証拠に見えているはずのクロネをみても驚かなかった。
「お前見えているのか?」
「女の子でしょ? 見えているよ。 別に幽霊なんて怖くないし」
そうか。 と、 短く呟いた。 もう覚悟しているなら何も言うことは無い。
クロネが言葉巧みに勧誘していても何も言も言わなかった。
こうして俺にも今日から一人仲間ができた。
気に入りましたらポイントブクマお願いします。