第7話 仲間
屋敷から出るとまたリロは話さなくなってしまった。 何でこんなことになるのか俺なりに考えてみたが、 結局わからなかった。
なので思い切って聞くことにした。
「なあ。 リロ。 なんで市長の前では話してたのになんで急に黙るんだ」
「別に。 そういうときもあるでしょ。 気にしないで」
「そういってもなあ。 気になるんだよ」
俺はまた考えてみることにした。 少しの間、 考えていたらある答えにたどり着いた。 そうか。 そうだったのか! そうかあれだったのか。
「わかったよ。 そうかあれだったのか。 言ってくれれば良かったのに」
「な、 何よあれって」
「反抗期だよ。 そういえば俺のほうが数か月早く生まれたもんな。 都年は同じだけど。 だからお兄さんに言ってみなさい。 なんでも。 相談に乗るから」
「な、 なによ。 反抗期じゃないわよ。 ただ単にヤードが羨ましいだけ」
リロは意外なことをいいだした。 俺は意外すぎて反応に戸惑った。
「大体、 気が利いたり強かったりするヤードなんてヤードじゃない。 あー羨ましい! あたしもチートほしい! あたしにもチートあったらこんな事件簡単に解決できるのに……悔しい!」
リロは近くにあった手摺を叩いた。 そんな様子をただ突っ立ってるしかできない自分が嫌になって俺は口を開いた。
「おいおい。 あんまりだろ。 一応、 この街を守ってんだぜ。 もう少し言い方があるだろ」
「じゃあ。 言うけどヤードはずっとこの街にいるわけ? ほかの街にもあいつらが来たらどうするの?」
「そりゃあ。 助けに行くだろ。 出来ることはしたい」
「じゃあ。 この街はどうするの」
「そ、 それは」
俺は言いよどんだ。 確かにその事態は考えてなかった。 そんな事が起きるとは考えてなかった。
もしかしたら、 既に起きているのかもしれない。 だからといってリロを戦闘員にするわけにはいかない。
これでも、 昔から付き合いのある幼馴染みだ。 危険な場所に連れて行くわけにはいかない。 しかし、 リロのいうことはもっともだ。
いつかほかの街も襲われるかもしれない。 だとしたらどうする?
俺はそんなことを考えながら、 リロが地団太を踏むのを見ているしかなかった。
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「採用ですね。 是非ともわが軍に欲しいです」
「いつ軍になったんだよ。 俺一人しかいないぞ。 真面目目に聞いてくれよ」
「至って真剣ですよ。 ヤードさん以外にも、 スキルを使える人がいるかもしれません。 探してみる必要があるかもしれません。」
「そうは言ってもどうやって探すんだい? 俺とか自覚症状ほとんどなかったぞ」
「そこですよ。 片っ端からヤードさんに使った魔道具を使うという手もあります。マナがある程度戻っているとすればスキルも使えるようになっている筈です。
流石に片っ端からやるのは効率的ではありませんが、 目立って活躍しているような人に試してみるのはいいかもしれませんね。 例えば、 料理人とかでもスキルを既に使っている可能性はあります」
「そんなことありえるのか? ふつう気づくだろ」
「わかりませんよ。 スキルを自分の才能だと思って使っている人は一定数いると昔から言われてましたから、 魔法も使えない今となっては昔よりもそう感じる人は多いのではないかと思います」
俺は自分でも考えてみた。 そういえばスキルを使えるようになってから、 恐怖心をあまり感じなくなったような気がした。 これは関係あるのかクロネに聞いてみた。
「恐らく関係あるでしょう。 絶対というわけではありませんが可能性は高いです」
「すると、 つまり料理が上手かったり、 恐怖心を感じないような奴が怪しいのか」
「あくまで例えです。 才能に秀でたり、 運動なので異様なパフォーマンスを発揮している人などを当たるといいでしょう。 誰か心当たりありませんか?」
俺の数少ない交友関係ではこれだといえる人がいなかった。 明日でも運動場にでも行ってみるか。 そう考えると俺はまたクロネの考えた訓練を始めることにした。
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