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Blood Spare of Secret : The story of Creeds  作者: 千導翼
第六章 ユーフォリア前編~暗殺教育学校~

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編入生3人組

 窓から日の光が差し込むのを確認すると、椅子からスッと立ち上がってクリードは武器や装備の手入れを始める。同時に目覚めたバンバはゆっくりと起き上がって顔を洗って持ってきた武器の状態を確認して鞄に入れて、朝御飯を作り始める。その少し後に鳥のさえずりで目覚めた青葉はひどい顔で起き上がり、しばらくジッとした後に立ち上がって学校に行く準備を始める。そうして周りの音が騒がしくなってくると、3人は学校に行く準備を終わらせて寮を出る。


 「おはよう。」


 「ああ。おはよう。」


 「...。」


 青葉が挨拶すると、バンバは少し遅れて反応し、クリードは何事もなく飛び降りて真っ直ぐ学校に向かった。その様子を見て2人は首を傾げると、後ろから欠伸をしながら出てきたクローヴンが青葉の背中を鞄で叩く。


 「なあにしてんだよ? 行こうぜ? あ、おはよう。バンバだっけ?」


 「ああ、よろしく。」


 「よろしく。一緒に行こうぜ。」


 クローヴンに言われるままに青葉とバンバは一緒に登校する。そうして、教室に到着すると他の生徒も続々と教室に集まってくる。それからは少し話した後、他の学校と変わらない授業と暗殺の極意などの授業が流れていく。そんなことでもう昼の時間だ。クリードは他の生徒を寄せ付けない雰囲気で教室を出て行き、バンバは無言で購買に行く。青葉は暇そうにしているクローヴンを誘って食堂に行った。


 「いやぁこの学校は人が少ないからいいよな。食堂の椅子座り放題。どこに座る?」


 「そうだなぁ...。窓際とかどうだ? 飯を食いながら外の景色を見れる。」


 「おっけい!」


 そんなノリで青葉とクローヴンは食堂の人に注文を出すと、トレーに注文した料理を乗せてもらってそれをテーブルまで運んだ。席に着くとクローヴンが唐突に質問する。


 「そういや青葉ってここの学校に入学するまで何やってたんだ?」


 そう質問されて少し悩むが妹の話ははぐらかしながら軽く話す。


 「数年前くらいに家族がいなくなってな。それ以来、集落を転々としてた。パン屋で働かせてもらったり、狩りをやったり...。」


 「ふぅ~ん。じゃあ社会情勢とかはほとんど知らねえわけだ?」


 不思議そうな顔をするクローヴンに苦笑いで頷く。


 「ああ。少し聞いたけど全然わかってない。」


 「はぁ~。じゃあ今日の授業とかわかったか?」


 俺の態度にクローヴンは頬杖をついて少し考えて訊く。


 「正直...あんまりだ。」


 「じゃあ今教えようか?」


 「いいのか?」


 「いいよいいよ。そもそも駄目なことねえし。」


 クローヴンはそう言いながら何かの機材を取り出してタッチパネルを操作して空中に画面を出す。


 「何だこれ?」


 「これにメモしてんだよ。調べた事とかな? 割とこういうの好きだから良くまとめるんだよ。ちなみに学校とか行ったことは?」


 「ないな。」


 「じゃあまずはこの世界を形作る要素についてだ。確実と言える情報だけを教える。」


 「ああ。だがその前に冷めるから食べようぜ。」


 「...。ああ~そうだったな。」


 クローヴンに教えてもらう前に青葉は昼食を済ませて、ノートとペンを取り出す。


 「じゃあ頼む。」


 「よし。じゃあ仕切り直して...この世界を形作る要素についてだ。この世には大きく2つの要素がある。」


 「2つ...。」


 「それが、科学と魔法だ。再現性があり、才能関係なく力を使える科学技術と再現性はなく、才能が大きく関与する魔法能力。今この画面を出してるのは間違いなく科学技術の賜物だが...。食堂の人が指を鳴らして火をつけてるあれは魔法だ。俺達の日常は大きくこの2つに支えられている。だがしかし、未だに魔法と科学が融合した道具や機械は存在してない。」


 その言葉に青葉が首を傾げると、その反応を予想していたかのようにクローヴンはニヤリと笑って、画面を次のページに進める。


 「科学技術を推進する科学大国シャインティアウーブと、魔法能力を推進する魔法大国シルヴァマジア。この2国が戦争を起こした。」


 「えぇ...!?」


 「これは俗に工魔戦争って呼ばれるもうそれはどでかい戦争だったらしい。両国の言い分はこうだそうだ。」


 ―――人知を遥かに超えた力を持つ人型の人ならざる者を排除するため


 「?」


 「同じことを言ったんだと。」


 青葉が更に首を傾げると、クローヴンは顎に手を当てて話す。


 「多分。恐怖心から排除するって考えに至ったんだろうな。道具もなしに特異な力を扱える魔法。道具で全く同じことを比較的簡単にできる科学。すぐに排除しなければ、先に襲撃に遭ったら勝てないとか考えたんだろうな。だが、結果はいたずらに死傷者を増やして、後々に戦いに意味がないと気づいた。だが、白旗を振るわけにもいかない。結果として両国は停戦協定を結び、戦争自体は落ち着いたが、互いへの恐怖心はどす黒い憎悪に変わり、両国間の問題は更に溝が深まってしまった。」


 「? そもそもなぜ戦争が起こる? 魔法も科学も元からあったものなんだろ?」


 青葉は話を聞きながら素直に疑問に思ったことを訊いてみる。


 「いや...それが少し厄介な話でな?」


 クローヴンはポリポリと頬をかきながら返答すると、青葉は更に首を傾げる。


 「厄介...?」


 「うん。元は科学技術が発展した説と元々は魔法能力が主だった説の2説が存在する。つまり、どちらが元々だったのかが全くわかってないんだ。過去の歴史書をいくら漁っても、魔法能力も科学技術も載ってるんだ。だが1つ面白い点がある。」


 クローヴンはニヤリと笑って青葉に話し始める。


 「面白い点?」


 「それが、1000年前以前の歴史書には魔法能力と科学技術が同時に出ることがほとんどないんだ。ここからめちゃくちゃ突飛な推察をするに...俺は世界が〝2つ〟あったんじゃねえかなと思ってる。」


 「世界が2つ?」


 「そう。それが、科学技術の発展した世界と魔法能力の発展した世界。それら2つの世界が今から1000年前をさかいに何らかの影響で融合したと思ってる。事実記録として、1000年近く前の歴史書などには世界の拡大現象なる記述がある。丁度2倍になっていると言われている。星の大きさも倍になってるという推論もある。これらをまとめていくと、2つの世界が融合し、その分だけ星の質量、陸地、海面が倍になったと考えたら、それまで全くと言っていいほど、お互いの世界にはなかった能力や技術を目にして、恐怖を覚えたのにも納得がいくと思うんだよ。そして何より、両国の戦争理由である。人知を遥かに超えた力...人型のならざる者。これは...本当の意味で同じ人間と思えなかったからじゃねえかなと思ってる。」


 「本当に突飛だな...。」


 「はは...だよなぁ~。」


 青葉の信じられないと言った態度を見て、クローヴンも頷きながらもやっぱりと言った態度でテーブルに突っ伏して二の腕に頭を乗っける。そんな時にチャイムが聞こえる。


 「あ、昼休みお終いか。食器返して教室に戻ろうぜ。」


 「ああ。」


 青葉とクローヴンは食堂の人にお礼を言って食堂から出た。そうして教室に戻るとまた同じように授業を受けていつの間にか放課後になる。


 「青葉。この後なんか用事あるか?」


 「ああ、ちょっとな。」


 「...? 実務か?」


 青葉が曖昧な答え方をすると、クローヴンはその態度に違和感を覚えて少し考えた後にこの後の事を言い当てる。


 「何で知ってる?」


 「いや俺今回の断ったからさ。この後用事つったら実務くらいかなと思っただけだ。そっかぁ~実務かぁ~。まぁ頑張れよ。死なない程度にな。」


 クローヴンは青葉を鼓舞するように背中を叩いて自分の鞄を背負う。


 「ありがとう。」


 「じゃあまた明日な。絶対明日会うんだぞ?」


 「はは。わかってるって。」


 青葉が答えると、クローヴンは教室を後にする。そうして、次々と生徒がいなくなっていくと教室に残ったのはクリード、バンバ、青葉の三人だけとなった。


 「(この2人が今日俺と実務を受ける人たち...。)」


 「(実務。死ぬ可能性もあるだろう...。慎重に臨まなければ...。)」


 「(殺しに切り替わったら女子供容赦せず皆殺し...。)」


 クリードとバンバの静かさに話しかけられない青葉も黙って席について時間になるのを待っていると、教室に林明と富士浪花、ダリウス・フェイクラットが入ってきた。


 「これから実務に向かう。実務とは言っているものの、内容は普通の任務と何も変わらない仕事だよ。気を引き締めて取り掛かってくれ。相手は曲がりなりにもプロ。一瞬でも気を抜けば殺されると思ってくれ。」


 「あと、殺しが大前提の任務じゃないから交渉が決裂しない限りは戦闘行動は控えて。戦闘開始してもやむ負えない場合以外...殺しは控えて。」


 「しかしやむ負えない場合は...女子供容赦せずに殺せ。」


 ダリウスの指令に富士浪花が何か言おうとするが、林明が制止させる。


 「では到着した際の命令を言い渡す。クリード。」


 「はい...。」


 「君は外で待機して戦闘開始を知らせる赤の信号弾を発見しだい行動を開始してくれ。」


 「了解...。」


 クリードのあまりにも無機質な声と態度に戸惑う青葉を他所に次はバンバに命令が下される。


 「バンバ。」


 「はい。」


 「君は中で待機して交渉する場の扉の前で立っていてくれ、戦闘開始の合図である信号弾の銃声が聞こえたら行動を開始してくれ。」


 「了解。」


 「青葉。」


 「はい!」


 「君は今回の交渉を担当する富士浪花先生の護衛だ。相手が妙な動きをしないように注意深く見張っていてくれ。」


 「了解!」


 青葉のハキハキとした返事に林明は少し口角を上げて頷く。全員で目的地に向かうと、途中でクリードやダリウス、林明とは分かれ部屋に到着する。そこでバンバと分かれて富士浪花と青葉は部屋に入っていく。部屋には男とその後ろに首輪をつけた双子の姉妹らしき少女が立っている。


 「お~よく来た。そちらの小僧はあんたの護衛か?」


 「はい。見た目はこうでも腕が立つのですよ?」


 不遜な態度の無精髭を生やした男は青葉と花を値踏みするような目で見ながら花を席に座らせる。


 「では早速本題に映らせてもらいます。兵器売買を止めてもらえますか?」


 「兵器売買? 何のことだぁ?」


 とぼける男に花は穏やかな顔で応対していく。


 「あなた方が大国に大量に兵器を売り渡している裏どりは既に取れています。シャインティアウーブの科学者やシルヴァマジアの魔法師と協力して兵器を製造して死刑囚を実験体にしていることもね。」


 淡々と述べられる事実に男の静かに睨みつけるように花を見るが、全く動じない。それを見て男は少し前屈みになって話し始める。


 「そこまで調べたのか...。じゃあなぜ今回の交渉の場を設けたんだ? 暗殺者だろ? 闇に紛れてぶっ殺しに来るもんじゃねえのか?」


 「我々はそのような単なる殺し屋稼業を営んでいるわけではありません。殺す必要なく話し合いで解決できるのならそれを一番だと考えています。」


 「へぇ~? お優しいんだなぁ? だが生憎と兵器売買を止める気はねえ...。」


 花と青葉の顔色が少し曇る。それを見て男はニヤリと笑う。


 「何故です?」


 「俺達が売ってるのは兵器。つまり命を殺す代物だ。戦争が起きれば兵器は飛ぶように売れる。しかも高性能且つ高威力で比較的安価だ。俺達の目的はな? 大国間での戦争を誘発して兵器を売りさばくこと。そしてそこで得た金を使って新たなを戦争を起こす。こんなうまい話を...止めろだと? 笑わせんなよ。これから大金持ちになるってのに...今更止められるかぁ!」


 その自信満々な態度を見て、花を目を細めて声のトーンを落とす。


 「...この情報を他国に売れば...あなた方は捕まりますよ?」


 「脅しか? 今更そんなもんに屈するとでも? それに、他国に売ったところで、まず事実確認をしなくちゃならない。そこで時間を取られてる間に兵器が他国にある可能性を考慮し始めたら、どの道奴らは戦争をするしかない...。だって国が襲われる〝可能性〟があるからなぁ。そんなことわかりきってる影に徹する組織のあんたらが...そんな情報を売れるのか?」


 見事に言い当てられたのか、花は残念そうな顔をしてため息を吐く。


 「流石ですね。ではこうしましょう...。兵器売買をこの場で止めると約束をしなければ...〝あなた方に未来はない〟。」


 「おぉ~? ストレートに脅してくるとは...意外だなぁ? ...だがあんたら俺達の事を舐めすぎだぁ...。俺たちは...〝戦争屋〟...だぜぇ?」


 「関係ありません...。私たちは...〝暗殺者〟ですよ...?」


 男の自信たっぷりな態度に花は怖いくらいの満面の笑みで男を見る。


 「どうします?」


 「断る。兵器売買を止める気はねえ...。」


 その瞬間、空気が凍り付き花は静かに言う。


 「残念です...。」


 その瞬間、男はテーブルを飛び越えて信号弾を引き抜く花の喉元を掻っ切ろうとしたが、青葉が鎖鎌の分銅を投げて腹部に巻き付けて勢いよく壁に叩きつける。と同時に信号弾が撃たれその銃声を聞いたバンバが扉を蹴破って侵入し、男を投げ飛ばした青葉に襲い掛かる一切表情を変えない双子の姉妹を蹴り飛ばす。そして、信号弾は窓を割って天高く上る。それを見たクリードはゆっくりと瞬きをしてその場から消える。


 「花先生を護衛を!」


 「了解!」


 花を連れて青葉は部屋を出る。それを見届けたバンバは双剣を構えて立ち上がる男に見据える。が、先ほど蹴り飛ばした双子の姉妹が戻ってきて男の前に立つ。


 「お前ら襲ってきたやつらを1人残らず殺すんだ。いいな?」


 「「了解しました...。ご主人様...。」」


 逃げる男を追おうとすると、双子の姉妹が立ちふさがる。片方のポニーテールの方は自身よりリーチの長い2本の剣を構えている。もう片方のツインテールの方は身の丈より長い棒を構えている。両方共バンバより微妙に年下に見える。


 「暗殺者が正面から2対1で戦うなんて...したくないんだが...。」


 バンバはそう言いながら双子との一定の間合いを保った状態で動きを見ている。


 「...!」


 しびれを切らしたツインテールの方が、一気に間合いを詰めて棒を振り下ろしてくる。バンバは後ろに跳んで避けるが、そこを回り込んだポニーテールの方が攻撃を仕掛けてくる。バンバは片方の短剣でそれを受け止めて、何とか避けきるが、横から襲ってきた棒に打ち飛ばされる。


 「ぐっ...!」


 壁に激突したバンバに反撃の隙を与えないようにツインテールの方が追撃を仕掛けてくるが、即座に躱してその隙を突いてくる2本の剣の攻撃も避けながら、狙ってきたツインテールの方の棒を受け止めて、カウンターで首を殴り飛ばす。


 「!? ...!!!」


 それを見たポニーテールの方が、勢いよく攻撃をしてくる。バンバは戦闘方法の変化に違和感を感じて、うまく躱しながら顔を見てみると僅かに眉間にしわが寄っていた。


 「(どうやら姉妹愛は多少なりともあるようだ。)」


 そうして、大きく剣を振った隙にポニーテールの方の剣を奪って、立ち上がったツインテールに投げると、ポニーテールの方はすぐさまツインテールの方に走って押し倒して剣を避けて、壁に刺さった剣を抜き取って、ツインテールの方を見る。


 「...。」


 ツインテールの方が平気そうにすると、ポニーテールの方の顔が少し緩んで安堵したように見える。それを見ていたバンバは双子の首輪に目をつけて、双剣を構えて目を細める。それに気づいていない双子はさっきと同じ様にツインテールの方がメインでポニーテールの方がサブで攻撃を仕掛けてくる。バンバは2人の動きを慎重に見極めて、攻撃を上手く往なしながら隙を窺っている。


 「!!」


 そうして、往なしている間にできた大きな隙を逃さず双剣を持ち替えて柄で2人の首輪を壊す。そして首輪が壊された事に動揺している双子を気絶させて花が座っていたソファに楽な姿勢で座らせて、動けないように拘束して、林明に連絡を入れる。


 「バンバかい? どうした?」


 「敵は殺さなかったら学校に入学させることは可能ですか?」


 「できなくはないけど...それが?」


 バンバの質問が今までの実務中にされた質問ではなかったため、林明は一瞬首を傾げたが、すぐに何かを察する。


 「実務が完了次第話します。」


 「...わかった。では十分気を付けるように...。」


 「はい。」


 バンバは林明との通信をきって、双子の姉妹を一瞥した後に部屋を後にする。


 同時刻、花と逃げている青葉は正面に敵の気配を感じて前に出る。


 「戦わないのは...これが実務だから?」


 「そう。あなた達が窮地に陥った時に、私たちは動くの。」


 それを聞いて、納得したように正面から迫ってくる敵が姿を現すと、向こうも青葉と花の姿を捉えたようで、ど真ん中の大砲の様な兵器を構えている男を取り囲むように銃を持った男たちが容赦なく引き金を引き、ど真ん中の男は大砲の引き金を引きながら何かを溜めている。


 「!!」


 青葉は鎖鎌を振るって、襲い来る銃弾の群れを全て弾きながら近づいていく。それを見て、銃を撃ち続けている男達の何人かが恐怖を感じて逃げ出す。


 「お、おい!!」


 そうして、ど真ん中に立つ男以外が逃げ出すと、何かが溜まったのか男は青葉と花に目掛けて大砲を放つ。


 「おらあ!!」


 放たれたのは避けようがない電磁砲、青葉はそれを視認した瞬間に分銅を勢いよく正面に投げる。その瞬間にできた衝撃波で電磁砲は吹き飛ばされ大砲は粉砕される。


 「なっ...。」


 唖然としている男を気絶させて拘束する。


 「流石ね。逃げた奴らを追うわよ。この調子なら殺さなくて済みそうだしね。」


 「はい!」


 花の言葉に青葉は強く返事して逃げた男達の方向に走り出す。


 同時刻、男たちは逃げた先でクリードと遭遇し、たった一人で細身だったこともあって、油断して先ほどと同じ様に銃口を向ける。


 「どけぇ!!」


 男たちはそう言って引き金を引こうとする。


 「んあ?」


 だが引けない何故かと思って下を見ようとすると、何やら視点がおかしい。しゃがんでもいないのにどんどん床に近づいてくる。


 「へ?」


 男たちは自分達になにが起こっているのか理解できないまま首から血を流して意識を無くしていく。


 「お前...何を...。」


 1人がかろうじて訊くと、クリードは静かに当たり前のように答えた。


 「あなた方が私を視界に入れた時には...既に首を斬り終わっていた。」


 そう言われた瞬間、男たちは自分達の体に起こったことを理解して、何も言うことなく死んでいく。そうして、殺し終わると、ダリウスから通信が入る。


 「制圧完了。実務達成だクリード。戻ってこい。」


 「了解しました...。」


 クリードはそう答えて、自分が殺した死体だらけの道を戻ってダリウスの元に戻る。そして、同じようにダリウスから制圧完了の報告を受けた青葉は戸惑いながらも、花は何かを察したように青葉を落ち着かせて拘束した男を背負って戻り始める。同じように報告を受けたバンバは特に動揺することなく、捕らえた双子をおぶって戻り始める。


 「実務完了。皆ご苦労。」


 戻った3人にダリウスがそう言うと、クリードが深く頷いて、バンバも同じように頷くが、青葉はどこか戸惑っている様子を隠せなかった。


 「殺さずに済んだ者はたった3人のようだな。他のものはクリードを取り囲み、殺さざる終えなかったため、クリードが単独で殺害した。」


 「殺害した...。数は...?」


 「ざっと50人...。その中には今回交渉の場を設けて話したリルダーも含まれていた。」


 「50...(その中には...あの時逃がした男達も含まれてるのか...あの取り逃がさなければ...。)」


 隣にいる者が50人も殺したことに青葉は複雑な気持ちを抱えながら少しの後悔を感じる。それを何となく察しつつもバンバはリルダーが取引をしていた事を証明する文書を林明に渡す。


 「文書も取ってきているとは...よくやったねバンバ。で、さっき言ってたことだが...。」


 「こちらにいる屈強な男と双子の姉妹...歳は俺達とあまり変わらないように思えます。それに、屈強な男の方はわかりませんが、双子の方は首輪で無理やり従わされていた様子がありました。暗殺教育学校に入学させてもよいのではと思いまして...。」


 「なるほどね...。まぁ今日の実務は実に素早く犠牲もなく達成できた。学校でしっかりと考えておくよ。」


 「ありがとうございます。」


 「(入学...そうすれば...殺さずに済むどころか...安定した生活もあるのか...。)」


 バンバの進言を聞いて、青葉は頷きながら見習おうと考える。


 「ではこれからの後始末は我々でつけておく。今日のところは帰ってもいい。花先生彼ら3人を送ってもらえるか?」


 「もちろんですよ。ダリウス先生...。」


 花はダリウスにリルダーに向けていた笑顔を向けて車でクリード、バンバ、青葉を学生寮まで送ってくれる。クリードは無言で降りると、無機質な声でお礼を述べた後に、寮に行き、バンバはお礼を言った後に青葉に手を差し伸べる。


 「?」


 「共に実務を達成させたんだ。握手ぐらいいいだろ?」


 「...ああ。」


 戸惑いながらも青葉は握手を交わす。そうして手を離した後バンバは寮に帰っていく。青葉も花にお礼を言った後に寮に戻ろうとすると、花が一言述べる。


 「多分だけど...クリード君。ダリウスに指示されて50人容赦なく殺したわ...。」


 「ぇ...。」


 「多分だけどね...。でもダリウスはこういう任務に容赦がない人だから、彼に推薦されたクリード君は間違いなく彼の息がかかっていると思う。だから...同級生の中で...彼は警戒すべき対象だと私は思うわ。」


 花の発言を聞いて青葉は少し黙った後に頷く。


 「はい...気をつけます...。」


 青葉の返事を聞いた後に花は少し複雑そうな顔をして言う。


 「私の指示だけ聞く必要はないのよ?」


 「え?」


 「君の人生なんだから...君が最終的に選択していいんだよ? 私の指示を守るか...あなた自身の考えの下で動くかをね...。」


 そう言われた青葉は少し考えた後に、答えが出なかったのか首を横に振って複雑な表情で花を見る。


 「今の俺には...そういうのは難しいですけど...できるだけ善処します。」


 「...うん。じゃあお休み。明日の学校も頑張ってね。明日は実務ないから。またね。」


 青葉の答えに少し安心したのか花は深く頷いた後、ダリウスと林明と共に後始末をするために戻っていった。残された青葉は花が向かって行った方向を見ながら黙って立っている。


 「俺自身の...考え...。...やっぱりすぐには答えは出ないや...。ゆっくりと答えを出そう...。流石に腹減ったし...何か食べてから寝るか。」


 青葉は自分のお腹を擦りながら外に夕ご飯を買いに行った。

次話「新たな生徒」

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