覚悟と真実
現在 元ルーウィッド領 アンヴィルヘム邸
テューフェルはしばらく目を瞑った後にブリザの目を見据えている。その目を合わせてブリザは一歩前に出ながら言う。
「僕は...家族と領民を殺した罪...領地を1人で滅ぼした罪を...背負って生きていく!!」
「...。」
その強い言葉を聞いて、テューフェルはしばらく黙った後に、薫と光琳の首根っこを掴んで人質のように首元にナイフを向ける。
「テューフェル...!」
「じゃあ、お前の覚悟を試させてもらう。」
「...何?」
テューフェルがそう言った瞬間に、ブリザの目の前にリフリージャ、コールド、フロス、リズレットが現れ、各々が武器を構える。
「皆...。」
「ここにいるのは、お前が作った氷の体と俺が呼び出した本物の魂で作り上げた。お前の家族だ。俺がお前に何をさせたいか...もうわかるな...?」
「そんな!」
清雅が何かを言おうとすると、ブリザが制止させて迷いを振り払うように首を振ってテューフェルを見る。
「僕に...家族を殺せって言うんだろ?」
「そうだ。罪を背負って生きていく言った以上。それがどういうことかを自覚する必要がある。口では何とでも言える。口から出た覚悟は...脆い。簡単に崩れ去ってしまう。だが、後戻りできない覚悟は別だ。能力を扱いきれず命を奪った。まだこれ言い訳にできる。だが、お前がやろうとしていることは、蘇られる...つまり助けることができる命を見捨てるという事だ。」
「...!!」
清雅が思わず口を挟もうとすると、クリードが口を押えて離れさせる。
「扱いきれなかった暴走でもなく、お前の自身の決断と覚悟が本物であるかは...自分の意思で目の前にいる者達を葬れるかで判断できる。」
「...。」
「両方ともとるなんて贅沢な事を言うなよ? それは...初めから強かった奴が言える言葉だ。」
テューフェルの言葉を聞いてブリザは家族の方を見る。リフリージャとコールドは覚悟を決めた顔をして、フロスとリズレットは安心させるような顔で見つめている。
「どうする! 決断しろ!! 答えを言うか! 行動で示せ!!」
薫と光琳に刃を近づける。それを見てブリザは体から大量の冷気を放出する。
「...。」
「この戦いに...水を差すのは...無粋だ。」
クリードが聞かせるように言うと、清雅は黙ってブリザの覚悟を見届けることにした。
「(...ブリザ...。お前は...やっぱり俺と同じなのか...? それとも本当に...乗り越えたのか...?)」
テューフェルの考えを知る由もなく、ブリザは家族に向かって行く。その姿を見たコールドは誰よりも先に前に出て、迷うことなく大剣を振りかざす。
「!」
ブリザは片手で受け止めて押し返す。背後から斬りかかってくるリズレットの攻撃を足で受け止めて、首元に手を当てて突き飛ばす。その瞬間を逃がさずにリフリージャが撃ってくる。即座に氷の壁を作って防ぎ、伸びてきたフロスの蛇腹剣を掴んで、引き寄せる。勢いよく飛んできたフロスの首を掴んで床に倒す。
「どうした? それでは...私達は殺せないぞ。」
「くっ...!!」
中々本気になれないブリザにフロスの言葉が刺さり、動きが止まったところをリフリージャに撃たれる。苦悶の表情を浮かべるブリザを見て、眉間にしわを寄せて下唇を噛んでリフリージャは銃口を向け続ける。
「...。」
撃たれたブリザに容赦なく大剣を振ってくるコールドの攻撃を何度も避けながら、壁に追い詰められて片手で受け止める。
「いつまで...。」
「?」
「いつまで...情けない姿を晒す気だ...。」
コールドはブリザの目を見て厳しく叱責する。
「己の命を捨てて罪から逃げる事を辞めたのだろう? 罪を背負って生きていくのだろう? その体たらくでは...いずれまた同じことを繰り返すぞ!!」
その言葉に、ブリザは目を瞑って血が出るほど下唇を強く噛んで押し返す。
「うあああああああああ!!!!」
そうして、コールドが仰け反ったところで叫びながら体を貫く。貫かれたコールドは手を震わせているブリザの頭に手を置いて言う。
「...そうだ...。そうして...進め...!」
コールドはそのまま氷の塵となる。それを見たリズレットは少し怖がったが、フロスとリフリージャは嬉しいようにも悲しいようにも見える複雑な表情を浮かべる。
「お父...。」
リズレットが駆け寄ろうとすると、フロスが口を塞いで耳打ちする。
「その姿を見せたら...ブリザの覚悟がもっと鈍る...。」
「...はい。」
そのやり取りを見ていたリフリージャが歩いてきているブリザに銃口を向けつつも、決して引き金を引くことはなくジッと待っていた。
「ブリザ。」
目の前まで来たブリザにリフリージャは名を呼びながら、産んだ時の事を思い出しながら目を見つめる。ブリザの悲しそうだが強くなった眼差しを見てショットガンを捨てる。
「お母様...何一つ...親孝行なんてできませんでしたね...。」
「いいえ。」
「?」
「今...されてるわ...。」
そう言われたブリザは涙をこらえながら、氷の剣を作り出す。それを見たリフリージャは目を瞑って身を捧げるように両手を広げる。それ見てブリザはリフリージャの胸に氷の剣を突き立てる。その瞬間にリフリージャは氷の塵となった。それを見たフロスは不安そうなリズレットの肩に手を置いて深く頷いた後に、蛇腹剣を持ってブリザの元に行く。
「初めての姉弟喧嘩だな。」
「...そうだっけ?」
ブリザの涙をこらえている声色を聞いてフロスは少し切ない表情を浮かべて、蛇腹剣の切っ先を向ける。
「ああ、初めてさ....!」
「!!」
フロスの攻撃を正面からブリザは氷の剣で受け止める。
「弟がどれだけ強くなったか...見ておかないとな...!! 姉なんだから...!!」
「手加減してよ...?」
「お前はするなよ...。」
ブリザとフロスの攻防を見て、清雅はポツリと呟く。
「何で...こんな事になるんでしょうか...?」
「?」
「逃げ道があっても思うんです。たとえ...本当の意味で生きてなくても...会えるだけでいいと思うんです...。何でまた自分の手で殺さなきゃならないんでしょうか...?」
「逃げ道って言うのはな...道を逸れてしまうんだ。正道を歩いていた自分を知らぬ間に別の道に行かせてしまう危険性がある。正道にすぐ戻れる道ならばいいが...そのまま気づかないうちに邪道を歩むことになる。だが、あの氷像の家族を野放しするということは...逃げ道として、正道から大きく外れ邪道に行ってしまうものだと、あの男は思い...ブリザも同意したんだ。...俺も...そう思うしな。」
「そういうものですかね...。」
「無理にわかる必要はない。清雅は自分自身の考えを尊重すると良い。」
クリードにそう言われて清雅は深く頷いた。そうして視線を戻すと、フロスの蛇腹剣は宙に舞い、背後に突き刺さる。そうしてフロスを追い詰めたブリザが首を刺そうとすると、フロスが遺言のように言う。
「ブリザ。」
「ん?」
「頼むぞ。」
その瞬間ブリザの脳裏にあの日交わした約束を思い出した。
「もちろん。約束するよ。何があってもね。」
ブリザがそう答えてフロスの首に氷の剣を突き立てると、フロスは満足したような顔で氷の塵となった。それを見て、リズレットは自分の姿を見て氷の塵となった家族の残骸を見て、覚悟を決めて声をできるだけ落ち着かせて、笑顔を作る。
「私は...お父様もお母様も、お姉様も、お兄様も大好きです!」
リズレットがそう言った瞬間、ブリザはリズレットの方に振り向くことができずに肩を震わせて涙を流していた。一向に収まる気配のない涙をこらえる事を辞めて、涙を流しながら振り向いて、少し怖がりながらも頑張って笑っているリズレットを見て、氷の剣を捨てて、歩いて近づていく。
「ごめんね...リズレット...。これからだったのにな...。これから...もっと生きるはずだったのにな...。これから...もっと...思い出が作られるはずだったのにな...。」
その言葉を聞いたリズレットは不思議と恐怖心が消えていく。そうしてブリザが目の前に立つと幼い頃の思い出と今の屋敷での思い出が一気に蘇り、急に悲しくなって涙を流してしまう。それを見たブリザは流していた涙を拭いて抱きしめる。
「ごめん...ごめんよぉ...!!」
リズレットはそう言われると、強く抱きしめ返した後スッと力を抜く。その瞬間にブリザは察して、リズレットの体にひびを入れていき、ゆっくりと氷の塵に変えていく。そうして、顔まで変わる時にリズレットは満面の笑みを浮かべていた。
「......。」
そうして、氷の塵となった家族の残骸を見てしばらくボーッと立ち尽くした後に、膝から崩れ落ちて、額を床にこすりつけて叫ぶように泣く。
「うああああああああああああああ!!!!!!」
その様子を見て、クリードは清雅に耳打ちして駆け寄らせる。テューフェルはその姿を見届けて薫と光琳を解放して、エゴに連絡しながら呟く。
「ブリザ...〝君は凄いよ〟...。」
黙って立ち去っていくテューフェルを見て、クリードは敢えて何も言わずに解放された薫と光琳に駆け寄る。
その頃、エゴと交戦していたフレアはブリザの泣き叫ぶ声を聞いて、2人とも立ち止まる。
「あ? 何かあったか?」
フレアがそう言った瞬間にエゴに連絡が来る。
「...了解...。」
「ん? あんたもなんかあったか?」
「ああ。じゃあな。」
エゴは窓ガラスを割ってその場から立ち去ると、フレアはその場で立ち尽くした後に、声が聞こえた方向に走り出す。
「ここか?」
穴の開いた天井を上がると、泣いているブリザとそれに駆け寄る清雅と、薫と光琳を起こそうとしているクリードを見て、腕組みして壁に寄りかかる。
「部外者は黙って見てるか。」
そうしてしばらく経つと、泣き止んだブリザはゆっくりと立ち上がりながら清雅に感謝しながら、薫と光琳の元に行こうとすると、光琳が目覚める。
「? クリードさん。清雅さん。...あ!」
戦闘態勢に入ろうとする光琳を制止させてクリードが言う。
「もう終わった。というより、あいつが終わらせた。」
そう言うと、光琳はブリザを見て笑顔を作る。そして、隣で寝ている薫を一緒に起こすと、目覚めた薫はクリードを見て眼を見開いて突き飛ばす。
「うわぁっ!!」
薫はすぐに立ち上がってクリードから距離を取る。その尋常じゃない様子を見て、フレアとブリザは首を傾げて、清雅は心配そうな顔を向けて光琳は少し理解できない顔を浮かべる。
「どうしたの薫?」
光琳が訊いても薫はクリードの事を恐れる目を向けて後ずさる。その様子を見てクリードは静かに訊く。
「何を聞いた?」
「フード...。」
薫の答えにクリードは何かを覚悟してフードを取って顔を見せる。
「!!!!!」
その瞬間に薫は目を見開いて、壁に背中をぶつけて、頭を抱える。
「どうしたの薫!?」
「薫ちゃん?」
「知ったのか?」
「知ったのかって...じゃあ...あの話は...本当...?」
状況に追いつけない光琳、清雅に気を配る暇もなく、薫はクリードに訊く。
「本当だ。」
「......。」
その瞬間、薫の中の時間が止まったようにクリードを見たまま、動かなくなる。その瞬間、真上から来る影から薫を守るように立つが、少し遅く簡単に光琳諸共蹴り飛ばされた。
「あ? あいつ...。」
「あなたは...。」
「誰?」
「お前は!!」
「...そうか...お前が。」
黒い外套に白髪と紅い眼に特徴的な傷を持った男。ラファス・ドゥイレルが放心状態の薫の首根っこを掴んでクリードに意地の悪いの笑みを向けながら言う。
「ああ。俺が言ったよ。」
そう言ってラファスはすぐに屋敷から立ち去ろうとする、それをクリードが全力で止めようとするが、すぐに蹴り落とされて簡単に逃げられてしまう。
「薫!!」
「えぇ...?」
またも連れ去られた薫を心配する光琳と、何が起きているのか理解しきれない清雅、何か事情がありそうなクリードをブリザとフレアは見つめている。そんな中でクリードは立ち上がって、少し考えた後に歩き出す。
「光琳、清雅。ユーフォリアに行くぞ。」
「え? 薫は?」
「テゼルの盗賊団の現拠点は恐らくユーフォリアだ。」
「何でわかるんです?」
クリードの言葉にブリザが訊くと、しばらく黙った後に答える。
「俺は昔ラファスと組んでいたことがある。そして、俺の情報はユーフォリアにある。俺の情報を持っているということはユーフォリアで調べた可能性が高い。それにユーフォリアは表裏の差が激しい国だ。裏で国をコントロールしている可能性は高い。あいつの性格的にな。」
そうして、壁に寄りかかっているフレアに感謝を述べようとすると、フレアはすかさず訊く。
「で、今度はどうするよ? 作戦とか立てるか? ユーフォリアならあんたの仲間が後3人いるよな? 合流してから作戦会議か?」
「は?」
「は? じゃねえよ。おいまさかここまで来てお終いか? まだ助けられてねえんだけど。依頼された半分しか達成してねえぞ? 俺。それに、ここに取り残されて旅を始めるって何の拷問だよ。」
「まだついてきてくれるんですか?」
清雅がそう言うと、フレアは親指を立てて頷く。それを見た光琳が挨拶しようとすると、クリードが制止させて訊く。
「なぜだ? お前に何の得がある?」
「俺ってそんな損得勘定で動くとか思われてんのか? まぁ間違っちゃいねえが。単純に俺もユーフォリアには親しい友人がいてな。そいつに酒を持っていきたいしな。」
それを聞いたクリードは目を細めながらも頷いて、光琳が頭を下げて挨拶する。
「よろしくお願いします! シルヴァマジア以来ですかね! 入町光琳です!」
「お~元気だなぁ~ってかそうだったっけ? まぁいいや。よろしく。俺はフレア・アステラ。」
そのやり取りを見てからクリードが降りようとすると、ブリザが歩いてきて言う。
「僕にも協力させてください。」
「なぜ?」
「攫われてしまったのは元はと言えば僕の責任です。けじめをつけるためにも協力すべきだと思いました。それに...僕もユーフォリアには親しい友人が眠っているんです。彼女に花を手向けたい。」
「よろしくお願いします!!」
すぐさま手を差し出す光琳を見て、クリードは頷く。すると、ブリザは自分の手の平を見つめてから言う。
「いや、握手はけじめをつけたあとに取っておいてくれないかな?」
「え?」
「今の僕の手は...ちょっと汚れてる気がして...。ごめんね。」
「いえ! じゃあそのけじめ...ってものをつけたら握手しましょう!!」
光琳はそう言って真っ先に降りると、ブリザに清雅が言う。
「あの子の明るさのおかげで私達は成り立ってます。」
「...そうなんだ。...いや...そうだろうね...。」
その会話を聞いてフレアも降りて続くようにブリザ、清雅も降りて最後にクリードが降りる。その頃、ラファスに連れ去られている薫は、テューフェルに気絶させられてあの部屋に閉じ込められていた時を思い出していた。
今日午前 元ルーウィッド領 アンヴィルヘム邸
薫は応急処置された状態で目を覚ます。隣で眠っている光琳に話しかけようとするが、何者かが来る気配を感じて拘束された状態で何とか立ち上がって、光琳の前に立ってその方向を見る。そうすると、部屋の扉が開き、薫はそこから現れた男を睨みつけた。
「おお~そんな睨みつけんなよ怖えなぁ。」
「ラファス...!!!」
「まぁ落ち着けよ。拘束されてるし、たとえ拘束されてなくても今の怪我じゃ話にならねえだろ。俺もお前や後ろの奴を殺す気で来たわけじゃない。」
「何...?」
警戒を解かない薫を見て、ラファスは意地の悪い笑みを浮かべて訊く。
「お前さ...コーネリアス・クリードの素顔見た事あるか?」
「...は?」
「いいから答えてみろよ...。」
ラファスに言われたとおりに考えてみると、薫は一度も素顔を見た事がない事に気付く。毎回仮面をつけてたり、フードを被ったりしていてよく素顔が見えない。
「それがどうした...?」
「ふふっ。いいねぇ...まだ理解できてない顔だ...。じゃあ1つお前に真実を教えてやろう。」
「真実?」
「お前の家族構成は母親と父親、姉と弟がいるな?」
「...。」
無言を肯定と受け取ったラファスはこう続ける。
「そのうち3人死んでるんだよな? まぁ最も父親と母親の死には...俺ががっつりと関わってるわけだが...。姉は知らねえんだよなぁ...。」
そう言った瞬間薫は驚いた顔でラファスの顔を見る。
「そんな訳がない!!」
「いや本当だぜ? だから気になって調べてたんだよ。お前の素性と...クリードの素性をなぁ...。さて...橘薫...?」
「何?」
「最初の質問に戻るぞ? お前はあいつの素顔を見た事があるか?」
「(何? 何でこのタイミングで同じ質問を...? それだとまるで...。)」
薫の表情を見てラファスは更に意地の悪い笑みを浮かべて言う。
「わかったんだろう? 質問の意図が?」
「...。」
「その通り。お前の...姉を殺したのはコーネリアス・クリードだ。」
「......。」
告げられた言葉に薫は声も出せない。畳み掛けるようにラファスは続ける。
「そして...今のクリードの〝体〟はお前の姉。橘香織のものだ。」
「は...?」
混乱している薫に更に畳み掛けるように続ける。
「それになぁ? クリードはお前の父親と母親の死因にも関わってる。何なら協力してる。」
「嘘だ。嘘だ...。嘘だ...! 嘘だ!!」
動揺する薫を見て、追い詰めるように囁く。
「の割には...発狂するほど随分と驚かねえなぁ? もしかして...心の奥底ではもしやと思ってたんじゃねえのか?」
「!?」
そう言われた瞬間薫は初めて驚いた顔を見せた。
「(そんなはずない...!)」
薫は心の中で否定するが、あの日のクリードの言葉が脳裏に過った。
―――その時...お前は...俺を...殺す気だ...。
それもあってか告げられた事を否定しきれない自分がいた。でも、否定したい自分もいた。
「私達の信頼を崩そうって作戦ね? その手には乗らない!」
明らかに動揺している薫にラファスは心底楽しそうに笑って言う。
「じゃあ確かめてみると良い。クリードに素顔を見せてくださいってなぁ?」
「!!」
もしそれが姉の顔だったらという考えが脳裏に過る。告げられた事を聞いて、肯定されたらと考えてしまう。そんな不安と恐怖が薫の心の蝕んでいく。一気に否定しきれない情報を言われ続け、薫は冷静にもなれない。
「もうすぐ昏睡状態に入る時間だろう。もし生贄として連れてかれなかったら、ぜひ訊いてみると良い。」
ラファスがそう言った瞬間、薫は強烈な睡魔に襲われてその場に倒れこむ。
「思ったよりも折れやすい...つまんねぇなぁ...。まぁいいかぁ...見つかる前にずらかるか。」
ラファスはそう言い残して部屋を出た。
現在 ユーフォリア テゼルの盗賊団アジト。
薫は放心状態のまま奥の部屋に幽閉される。
「さて...助けにくるよなぁ? クリード。大事な大事な。恩人の妹だもんな。」
ラファスはそう言いながら部屋の鍵を閉めた。
次話「罪と罰」




