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Blood Spare of Secret : The story of Creeds  作者: 千導翼
第五章 アンヴィルヘム邸編

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偽りを壊す

 現在 元ルーウィッド領 アンヴィルヘム邸


 フレアが屋敷内を走っていると、清雅がリズレットと戦っている場に出くわす。


 「何だ苦戦中か?」


 「はい。」


 フレアが話しかけると、清雅はリズレットを押し返して返事をすると疲れてきている清雅と平然としているリズレットを見て訊く。


 「手伝うか?」


 「...いえ...このくらい自分で...。」


 清雅がそう答えると、フレアはその場を立ち去ろうとすると、天井から矢が降ってきた。清雅とフレアは同時にそれを避けてリズレットから離されると、フードを深く被って白い服を着た顔の見えない女が現れた。


 「エゴ...!」


 「もうすぐ時間よ。行きなさい。」


 「?」


 エゴが機械音の様な声でそう言うと、リズレットは複雑そうな顔で清雅を見た後にその場から去る。それを清雅が追いかけようとするとフレアが制止する。


 「え...?」


 清雅が驚いた瞬間、矢が清雅の前に突き刺さった。


 「......。」


 「フレアさん?」


 フレアは清雅の首根っこを掴んで勢いよくリズレットが向かった方向に投げ飛ばしてそれを撃とうとしているエゴの視界を炎の壁で遮った。


 「行け!」


 「はい! ありがとうございます!」


 清雅はリズレットが走っていった方向に走っていった。それを見て、エゴは追いかけずにフレアの方に向いて、空中に浮いたまま矢をつがえて弓を引く。


 「戦う相手にぐらい顔見せたらどうだ?」


 「シャイな者でしてね。顔を見られるのが恥ずかしいんです。」


 「なるほど。だから声加工してんのな? ほぼ機械音で聞き取りづれえよ。」


 フレアはそう言いながら両手を赤熱化させて、足から炎を噴射させてエゴに殴りかかる。


 「まぁそう言わずに仲良くしましょうよ。敵ですけど。」


 それをエゴは避けて矢を放つ。フレアは炎で矢を灰にして、首を蹴る。


 「そうだな。仲良くできたらいいよな。」


 寸でのところで受け止めたエゴは口角をあげながら言う。


 「そう言っている割には割としっかりと殺しに来ますね。」


 「そりゃそうだろ。敵同士なんだからよ。」


 フレアが勢いよく殴打を決めようとすると、エゴは華麗に避けて床に降り立つ。


 「まぁまぁ落ち着きましょうよ。」


 「別に落ち着いてるけどなぁ?」


 フレアは軽く赤熱化した足でかかと落としをするが、エゴはバックステップしながら矢を撃つ。それを打ち落としてフレアは連撃を加えるが、それをエゴは避けながら、高く跳びあがって真上から矢を撃ってくる。


 「おっと。」


 フレアは矢を受け止めてエゴを蹴り飛ばすが、華麗に受け身を取って平気そうに立っている。


 「(やるなぁ...。)」


 「(今の状態では近距離戦の分が悪い...。)」


 フレアが攻撃をしようとした瞬間、エゴの武器の形状が変化し長槍になる。白い服は黒くなりフードから見える口元は悪そうに笑っている。


 「あたしの出番って訳だ!!」


 「キャラ変わりすぎだろ。」


 フレアが突っ込んだ瞬間、エゴは一気に間合いを詰めて長槍を突き出す。


 その頃、リズレットを追いかけた清雅は屋敷内を走っていたが完全に見失っていると、囲まれた感覚がした。


 「誰だ!?」


 清雅がそう叫ぶと、前後から強面の男と口の無い男が迫って来ていた。


 「侵入者だなぁ?」


 「...!!」


 「俺の名はガラド。そっちはペテンって言うんだよ。よろしくなぁ。」


 ガラドはそう言って、清雅との間合いを詰めて頭を掴んで床に叩きつけるが、その瞬間清雅の周りから強烈な冷気が出て、ペテンとガラドの腕が凍らされ、蹴り飛ばされる。


 「流石に異能力者スペアネルか...。気合入れていくぞペテン!」


 「!!!!」


 清雅は無言で刀を引き抜いて2人を警戒しながら構えを取り、鋭く睨みつける。


 「ベーゼファミリーの意地って奴を見せてやる。」


 ガラドはそう言って、何もないところを勢いよく殴ると、拳の様な空気の塊ができ、清雅に襲い掛かる。清雅は後ろから襲い掛かるペテンを足で壁に叩きつけながら空気の塊を切り裂いて、冷気の斬撃を飛ばす。


 「ふっ。」


 ガラドは笑ってその攻撃に当たるが、全くダメージを受けた様子はない。


 「?」


 清雅が訝しむと、ペテンが無い口で何かを言おうとしていると感じて頭を凍らせて喋れなくする。その瞬間、間合いを詰めて来ていたガラドの殴打を受ける直前に氷の壁を何層も形成して防ぐ。


 「!!!」


 しかし、一撃で氷の壁は割れて清雅に直撃して吹っ飛ばされるが、壁を凍らせて何とか耐えるが、口から大量の血を吐き出す。


 「(何...? このめちゃくちゃな...威力...!? ...威力...?)」


 その瞬間に清雅はさっき冷気の斬撃を受けて平然としていた時を思い返して笑っているガラドを見る。


 「まさか...。」


 清雅は起き上がって冷気の斬撃を大量に放ちながら走り出す。しかし、ガラドは避けることなく全部受け止めて平然としている。そして、清雅の刃が首に届いても刃が通らない。


 「...!?」


 ガラドは刀を払いのけて、清雅に攻撃を加えようとするが、咄嗟に氷の分身になって攻撃を避けるが、かなり頑丈なはずの氷分身を一撃で粉砕したところを見た清雅、ガラドの力がどんなものかを悟った。


 「(彼の力は...恐らく威力の操作。自分や相手の攻撃の威力を自由自在に操れる。でも、操れる対象は1つのみ。相手の攻撃の威力を0にしているときは自分の攻撃の威力をあげることはできない。つまり...彼が攻撃をしてくるとき以外...一切の攻撃は意味を成さない...。凍り付いていたところを見るに...私の能力は...有効打を取れる...!」


 清雅はそう考えて刀を持ち直すと、ガラドを警戒しながらペテンに注意を配ると知らぬ間に氷を溶かして脱出している。


 「くっ...!!」


 清雅を見ながらニヤニヤと笑うガラドと目を見開いて真顔で見つめるペテンに対して一定の間合いを保ったまましばらくお互いの様子を見ている。


 「...。」


 我慢の限界だったのか、ガラドが仕掛ける。それと同時に清雅もガラドと一歩遅れたペテンを警戒しながら間合いを詰めて刀を斬り上げる。


 「!!!」


 ガラドは攻撃をゼロにしたが、清雅の冷気で刀が触れた部位から凍り始める。その瞬間にペテンはバックステップで距離を取って、無い口で喋る。


 「〝凍れ〟」


 その瞬間、凍り付いていたガラドの体が自由に動けるようになり冷気がなくなっていた。


 「なっ!?」


 「ペテンの兵器の力は俺のそれより厄介だ。言ったことが全て逆転する。言霊を逆転させる力。贋作デシーブ。」


 ガラドが自慢げに言うと、ペテンから避けるように口が出てくる。


 「あしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃあ!!!!」


 ペテンは声を出し慣れていないのか、枯れたような声で高笑いして言おうとする。


 「〝動け〟!」


 その瞬間清雅の動きが完全に止まる。その瞬間に、ガラドの攻撃を受ける。


 「...!!!」


 清雅はその場に停止した状態でダメージを他に伝える事も出来ず、何度も殴られ続ける。


 「強力だろう? これでも元の使い手と比べるとまだまだなんだぜぇ? 動かせペテン!」


 「〝動くな〟...!」


 その瞬間体の自由が戻った清雅の顔面をガラドは蹴り上げる。そのまま天井に突き刺さった清雅は何とか抜け出して床に落ちてくる。


 「くぅっ...!!!」


 清雅が力むと異常な速度で屋敷内が凍り始め、ガラドとペテンに向かって床や壁から氷柱が生え、天井から氷柱が大量に振り注ぐ。


 「!」


 清雅は刀に体重をかけて立ち上がりながら、氷柱から逃げ惑うガラドとペテンの体を凍らせながら、その中を滑走しはじめる。


 「ペテン!!」


 「〝凍れぇぇぇぇぇ!!!〟」


 その時に、ガラドに向かって斬りかかった清雅の攻撃をゼロにして、ガラドは反撃するがそれはあっさりと割れた。


 「なっ!?」


 「後ろだよ...。」


 清雅はガラドの腹を突き刺して、即座に蹴り飛ばす。


 「あなたは、うるさい...!!」


 そしてペテンの顔面を刀の反りで殴って床に叩きつける。


 「やるじゃねえか...!!」


 ガラドはそう言いながら、何度も空気を殴って清雅に攻撃を仕掛けてくるが、清雅は刀を回転させて全て打ち落としてガラドとの距離を縮めていく。


 「ペテン...!」


 ガラドがペテンに声をかけた瞬間に、ペテンは氷のドームで覆われていた。


 「何助けを求めてるの?」


 「!!」


 清雅が冷たく言った瞬間に、ガラドは威力を最大限上げた殴打を繰り出すが、当たる寸前で凍り付いてどんどん体の自由が利かなくなっていく。


 「あれだけ直接触っていたら...凍るに決まっているでしょう?」


 清雅は刀を押し当てて、ガラドをただの氷像に変えた。その瞬間にペテンは何とか氷のドームを抜け出して凍らされたガラドを見て、悔しそうな表情をして隙を晒している清雅に襲い掛かる。


 「〝生きろ!!〟」


 その瞬間に、清雅はペテンの目の前に氷の壁を張って声を反射させる。


 「!?」


 ペテンは自身の声を受けて、氷の壁に激突してそのまま息絶える。


 「もしかしたら...声が跳ね返らないかなぁって賭けでしたけど...。当たりだったようで...。」


 清雅はそう言って、その場を走り去る。


 その頃、クリードは全ての部屋を散策し終わり、それでも薫や光琳の影1つ見つからないことに首を傾げている。


 「この屋敷には...玄関ホールまで来て何もないとは...。」


 クリードがそう言っていると、リズレットを追いかけていたはずの清雅が玄関ホールに現れた。


 「クリードさん。」


 「ん? あれはどうした?」


 「追いかけてきたのですが...途中で邪魔が入り、その人たちを片付けていたらすぐにここに着きました。あと、フレアさんが屋敷内入って何者かと交戦を始めているので、ブリザはこの屋敷内にいます。」


 「わかった。」


 クリードはしばらく黙ってから清雅に日記を投げ渡す。受け取った清雅は無言で頷いて日記を読み始める。


 「......これが...彼の目的...?」


 「ああ。恐らくな。」


 日記の内容を読み終えた清雅は複雑そうな表情でリズレットの表情の意味とバルジェリアでのブリザの言動とシャインティアウーブでなぜ助けてくれたのかの意味を理解したようにクリードに言う。


 「...私...彼としっかり話してみたいです...。」


 「多分、会話で折れるような奴じゃないぞ。」


 「それでも...私は話したい。」


 清雅の落ち着きつつも毅然とした態度にクリードは頷いて、屋敷の外観と内装で違和感のあった場所を見る。


 「玄関ホールの真上。」


 クリードがそう言った瞬間、清雅は氷柱で天井を砕く。すると、開けた空間が見えた。清雅とクリードは2人でその場所に入ると、檻に閉じ込められ眠った薫と光琳がいた。そして、その前には体から冷気を放出し続けるブリザと弓を持っていた黒服のテューフェルがいた。


 「出向く前に見つかったな。」


 「だから早く出向いてくれと言ったんです。」


 「ごめん悪かった。」


 そんな会話をしながら臨戦態勢に入る2人にクリードは清雅の前に立ってチェーンナイフを構えて言う。


 「お前の望み通りブリザは任せる。」


 「はい...!」


 清雅が返事した瞬間、クリードはテューフェルに襲い掛かり、清雅はブリザとテューフェルを分断するように氷の壁を張る。


 「僕とやる気かい?」


 「そうです!!」


 清雅が返事した瞬間に、容赦なく氷の刃を撃ってくる。それを打ち落としながら、ブリザをじっと見据える。


 「なんだい? 何で仕掛けてこない?」


 ブリザがそう訊くと、清雅は日記で見て知った事を話す。


 「日記の内容を見ました。本当に自分の命と引き換えに家族や領民の人たちを蘇らせる気なんですか?」


 それを聞いたブリザは少し驚きながらも自嘲気味に笑って答える。


 「そうか...あの日記にそれ書かれたのか...。その通りだよ。僕は自分の命を捧げて家族と領民の人たちを蘇らせる。必ずね...。もしかして...説得する気だったかい?」


 「はい...。」


 「...でも...そんなものは無駄だよ。」


 ブリザが一歩前に出るとそこから氷の結晶が広がり、周りから細かい氷柱が形成され、数えきれない氷柱の大群が襲い掛かる。清雅は自分を氷の球体で包んで防ぐ。


 「あなたが亡くなって...! 家族の皆さんが蘇っても喜ぶんですか...!?」


 「喜ばないだろうね。」


 「え?」


 「僕の命を犠牲にしたって記憶が残ったままじゃ...でも...皆が蘇った頃には皆僕の事を忘れてる。そうすれば悲しむ理由はない。喜べるはずさ。」


 「忘れられて...悲しくないの...? 寂しくないの...?」


 「寂しいよ。悲しいよ。でも...それ以上に...皆に生きていて欲しい。」


 清雅の質問に淡々と答えながらブリザは氷柱の量を増やして、清雅の防御を破ろうとする。


 「あなたの家族は! あなたの事を忘れたいんですか!? あなたの事を忘れてでも生きたいって言ったんですか!? 皆反対したんじゃないんですか!?」


 「いや。反対されたし...生きたいなんて言われてないし...忘れたいなんて思ってないと思う。」


 「じゃあなぜ...?」


 「くだらない意地なんだ。僕は家族や領民の人たちを失ってから...生きる意味を無くしてた。唯一あった生きる意味も...僕の前から消えてしまった。だから...家族を蘇らせるって目的がないと...生きてる意味がないんだ...。」


 ブリザがそう言うと、清雅の防御は破られて氷柱に動きを封じられる。


 「ぐっ...!」


 「僕の事を説得しようとした気持ちは何となくわかる。君も...親を殺してしまったからね。でも...あの時の君と僕では...状況が違う。君は操られてた。僕は自分の感情を優先させた。君には新たな目的ができた。僕には目的を見つけられず他人からその目的を提示されてそれに縋った。似てるかもしれないけど...君と僕では経験から得た答えが違うんだ。」


 ブリザは容赦なく清雅の頭を攻撃しようとするが、すぐさま自分に接触している氷柱を変形させて、反撃して動きを封じる。


 「違います...違いますよ...! 確かに...シンパシーの様なものは感じました...! でもそうじゃありません! 何で自分の気持ちをそんなにないがしろにするんです!? 寂しいのに...悲しいのに...! 目的がないと生きてる意味がない!? 生きる事に意味なんて必要ですか!? 生きる事自体が意味なんじゃないですか!?」


 「君は強いね...。」


 「強くない! 何一つ強くなんてない!! 弱い...弱いですよ! 母が死んだとき...受け入れたくなくて、父の手伝いをしていればいつか帰ってくるってずっと思ってた!! 病気になった時...一瞬...母に会えると思って...そのまま死ねないかな...って思った...!! 父を手にかけた時...信じられなくて...夢に逃げた!! その後、戦いが終わっても...どこか空虚で...生きてる実感がなかった...むしろ死んでいたかった!! でも...姉がいる可能性があるって言われて...それを理由に...生きよう思った! 同じですよ! 私も...! でも、必死に自分より強い人たちに果敢に挑んでる人達、苦痛に耐えぬいた人達、苦痛を味わって憎悪に塗れた人達を見て...生きてる事に意味を求めるのが...なんて贅沢な考えなんだろうって思った。」


 清雅の言葉にブリザは目を見開く。


 「贅沢...?」


 「皆...生きるとか死ぬとかにそもそも意味なんて考えてなくて...ただ目の前の事に真っ直ぐで、確かにその先を見ている人もいたけれど......皆、今を生きてる! でも...私は...過去に縋ってた...。ずっと今を見ているようで見てなかった! ずっと、生きてる今から目を背けて...ずっと過去を見てた...! 贅沢ですよ! 過去に浸ってるだけなんだから!! 過去に生きる目的を見出して...! 今を見てない! ずっと考えてるのは過去の清算ばっかりで...! だから...私は止めるようにしました! 生きる事に意味を考えるのも...目的が無ければ生きてる価値がないと思うことも!! だって私は...過去でも未来でもない...! 今を生きてる!! 今を生きてる...これがそもそも意味だとも思いましたしね。」


 「...。」


 清雅の強い主張にブリザは黙り込んでしまうが、自分を抑え込んでいた清雅の氷柱を壊して、少し動揺しつつも氷の剣を作り出して切っ先を清雅に向ける。


 「生きましょうよ。ブリザさん...。少なくとも家族の方は...それを望んでいるはずです...!」


 「...無理だ。家族や領民を殺しておいて...生きるなんて...僕にはできない!!」


 ブリザが力任せに振り下ろしてきた剣を清雅は鍔で受け止めて、氷の剣を受け流してそのまま投げ飛ばす。氷の剣はブリザの背後に突き刺さり、首元に清雅の刀の切っ先が向けられる。


 「くっ...!」


 ブリザは間から氷柱を形成して清雅を突き放す。だが、精度が落ちており清雅は氷柱を叩き斬って、ブリザとの間合いを詰める。すぐにブリザも氷の剣で対応するがその剣はあまりにも荒っぽく、棍棒と言って差し支えない剣だった。


 「本当はわかっているんでしょう? 意味なんてないって...!」


 「いや...。」


 「本来私なんてあなたの相手にすらならない...。それなのに...こんなにも戦えている...。精巧な氷の剣も、鋭くても綺麗だった氷柱も...全部粗削りで...冷静さを欠いている証拠では...?」


 「くっ!!」


 清雅の言葉を否定するようにブリザは力任せに押し返して攻撃を続けるが、容易く往なされて反撃を受ける。


 「...!?」


 「カーツェさんと過ごしてた時...幸せだったんじゃないですか?」


 「...。」


 「あの時が...一番元の自分になって生きていられたんじゃないですか? 今...カーツェさんはあなたを見たら...きっと悲しむんじゃないでしょうか...?」


 「...。」


 「その服...カーツェさんに貰ったんですよね? カーツェさんは...生きててほしいから...それをプレゼントしたんじゃないですか? 道...踏み外すなよって...言ってくれたじゃないですか...。自分の死を覚悟してたのに...あなたの心配をして...それなのに...家族も自分も望んでいないのに...死ぬんですか?」


 そう言われたブリザの頭の中に言われてきた言葉が蘇る。


 ―――誰が生き返らせろと頼んだ! お前の命なぞいらん!


 ―――子の命を捧げさせてまで...生きる命なんで私にはないわ。


 ―――なぜ...! なぜです!! 贖罪の為に! 己の命を捧げると!? 止めてください! 私は...お兄様に生きていて欲しい!!


 ―――あなたは自分の過去に押し潰されそうになってるだけ。潰れない為に贖罪を言い訳にしてる。望んでるんじゃない...立ち上がって現実から目を背けてる。


 「...。」


 ―――...私が...もし戻ってきたらこの服...着て待っててほしいな。

 

 ―――ありがとう。絶対に着て待ってるからね!


 ブリザは膝から崩れ落ちて床を何度も殴る。


 「くそっ...くそっ...くそぉ!! 分かってるんだよ!! 逃げてることも!! 償う事を言い訳にしてるのも!! 皆望んでないことも!! 過去を見てるのも...! 未だにあの日の約束を待っていることも...!! 本当は死にたくない! 忘れられたくない!!」


 「...。」


 清雅は刀を納めてブリザの背中を擦りながら寄り添う。


 「じゃあ生きましょうよ。」


 「家族を...領民を殺した罪を背負って生きて行けと...?」


 ブリザの言葉に清雅は強く頷く。それを見て、家族が必死に自分を止めようとした時とカーツェとの約束をまた思い返しながら立ち上がる。その瞬間、氷が溶けて薫と光琳を閉じ込めていた牢も溶けた。


 「...?」


 その間交戦していたクリードとテューフェルは動きを止めて状況を把握する。テューフェルはブリザの顔を見て、何かを察する。


 「...まさか...。」


 「ごめん。テューフェル...。ここまで来て絆されたよ。」


 「...そうか...。」


 ブリザの言葉を聞いてどこか悔しそうだが嬉しそうな表情を浮かべた。

次話「覚悟と真実」

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