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Blood Spare of Secret : The story of Creeds  作者: 千導翼
第五章 アンヴィルヘム邸編

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首領と懐刀

 1日前 元ルーウィッド領 アンヴィルヘム邸


 ジェネシスが指輪を光らせた瞬間、光琳は動けなくなり宙に浮いて、勢いよく床に叩きつけられる。


 「ふふっ。」


 「刹鬼ぜっき!」


 「ダメダメ。」


 光琳が力を使おうとした瞬間にジェネシスは手をかざして力を使わせない。


 「!?」


 「僕の前で深天極地の力は使えないよ? だって...僕の戦場に君は立ってるんだからさ。」


 ジェネシスがそう言うと、光琳は何もされていないのに、攻撃を受けて床に押さえつけられる。


 「ぅっ...ぐぅ...!!」


 何とか立ち上がりたいが、手足が全く動かない。その様子を見たジェネシスは光琳に目線を合わせて微笑みかけながら言う。


 「これじゃ実力に開きがありすぎてフェアじゃないねぇ...。僕の兵器の力を教えてあげるよ。」


 「?」


 光琳が怪訝そうな顔をすると、ジェネシスは指輪を振って光琳を壁に押さえつけて説明する。


 「僕の兵器は管理者アドミニストレーター。半径10m以内の物質の法則、特性、能力を操作する力。簡単に言えば、ゲーム内の物の設定をそのまま書き換える力。」


 「...?」


 ゲームをやったことない光琳は例がよくわからなかったが、強い力であることを何となく察する。


 「多分、この兵器名をつけた人は、半径10m以内の全てを管理するって意味ってつけたんだろうねぇ...。」


 少し気が抜けたおかげで壁から脱した光琳は槍でジェネシスに襲い掛かるが、当たる直前で動きが止まる。


 「くっ...!!」


 「ダメだよぉ~? 管理者に逆らったら。」


 そう言ってジェネシスがデコピンすると、光琳は吹っ飛ぶが次の瞬間にはジェネシスの前に戻ってきている。


 「!?」


 光琳が驚いていると、ジェネシスが満面の笑みで近づいて


 「びっくりしたかなぁ?」


 と言って、指輪を振って光琳を押し潰す。


 「がぁっ!! う゛ぅぅ!!」


 しかし、光琳は抗って立ち上がろうとする。


 「へぇ~。凄いねぇ。」


 ジェネシスはそう言いながら容赦なく重量を増やして更に光琳を押し潰しにかかる。


 「どうかな? 僕って意外と強いだろ~?」


 ジェネシスがそう言って指輪を振ると、そのまま光琳は床に引きずり回されて、天井に吊るされる。


 「刹鬼ぜっき...!」


 しかし力は使えない。


 「刹鬼ぜっき...刹鬼ぜっき刹鬼ぜっき...! 刹鬼ぜっき!!」


 何度も力を使おうとするが、使えずジェネシスに笑われる。


 「力が使えないと何もできないの? まぁそれは今の僕も同じか。」


 ジェネシスがそう言いながら光琳に手をかざして手をぐっと握ると力が解かれた様に光琳は床に落下する。


 「ほら! 今なら使えるよ!」


 「刹鬼ぜっき...!!!」


 光琳の髪が金に、目が黄に変色する。力が使えたのだ。だが次の瞬間には力が消えて元の状態に戻った。


 「ぁ...。」


 「はいざんね~ん。駄目だよ。力が使えたことに安心しちゃ。」


 「ぐっ...!! ぁぁああああああ!!!」


 光琳は叫びながら槍でジェネシスを攻撃する。しかし、槍がすり抜けて当たらない。


 「...?」


 「ふふっ。残念。」


 ジェネシスが指輪を振ると、槍を持っていた手から血が流れる。


 「ぅあ...!」


 痛みで槍を手放すと、なぜか手放したはずの槍に手を貫かれて床に固定される。


 「ぐああっ!!」


 「どう? 何もかも思い通りにいかない気分は? 嫌な気分だろぉ? わかるよその気持ち。」


 光琳は頭を掴まれて持ち上げられる。


 「ぅぅっ...!」


 「流石に連戦はきつかったねぇ...。え~っと...? 殺しちゃいけないんだよねぇ...。君にお友達捕まえに行ってもらおっかなぁ?」


 ジェネシスは指輪を光琳の頭に向けて鍵を開けるように振る。


 「記憶...いじっちゃおっか。」


 「ぅぅ...ぁぁ...。」


 その瞬間、光琳の脳内を記憶が駆け巡る。その中には黒くもやがかかってほとんど見えないところばかりだ。しかし、くっきりしている記憶もあった。それのほとんどはバンバが映っている。


 「うああああああああ!!!!」


 光琳が苦痛に顔を歪めて、絶叫すると黒くもやがかかった記憶の1つがひび割れるように晴れた。そこには激しい雷雨を背に廃墟の様な場所であざだらけで薄汚れたワンピースを着た光琳と2本の短剣を持っているバンバがいた。


 「私の...記憶を...消してください...!!!」


 「なぜだ?」


 「私は...今のままで......生きていく自信がありません...!! 忘れたい...! 今までの事を...! されてきた事を...!! 逃げたいんです...!!」


 光琳は枯れた声で泣きじゃくってバンバに訴えかける。そんな光琳にバンバは真剣な眼差しで落ち着いて言う。


 「記憶を消しても...いつかは向き合わなければいけない時が来る。」


 「...。」


 「そのいつかが来た時。向き合うならば。俺は君の記憶を消そう。」


 光琳はバンバの言葉を聞いて下唇を噛んで深く頷く。


 「わかった。ただの口約束だが...俺は君を信じよう。」


 「...ありがとうございます...。」


 「名前を聞いておこう。」


 「光琳...です。入町...光琳...。」


 「そうか。では入町光琳。また、今の君と会える事を俺は望んでいる。」


 バンバの言葉に頷いた瞬間、光琳は意識を取り戻してジェネシスから何とか離れる。


 「何...!? まさか...この程度の記憶を改竄かいざんできないほどに.....。」


 光琳は涙を流しながら立ち上がり、ジェネシスを見据える。


 「あれ? 感動的な事を思い出した?」


 「...。」


 光琳は無言で涙を拭って動揺する心を落ち着かせて首を振る。


 「そう。じゃあ続けようか。」


 光琳は長刀と槍を構える。それを見たジェネシスは噴き出すように笑って馬鹿にする。


 「どっちも両手で扱う武器なのに、片手ずつで持ってどうするの? それとも何? 今ので僕の攻略法がわかったとでも?」


 「......!!」


 光琳は無言で走り出して、ジェネシスに向かって行くが、それを止められる。その直前に槍を勢いよく投げて指輪を狙う。


 「おっと。」


 ジェネシスが避けた瞬間、動けるようになった光琳は長刀を指輪に向けて振り下ろす。


 「危ない。」


 しかしそれも軽々と避けられて、吹っ飛ばされそうになる。


 「!!」


 だが、光琳はそれを想定して長刀にジェネシスの意識を向けておいて、死角の位置でもう片手に持っていた矢を指輪に刺して粉砕する。


 「なっ...!!」


 ジェネシスは自ら距離を取って壊された指輪を見る。


 「...やってくれたね...。」


 「はぁ...はぁ...。」


 光琳は息を切らしながら、床に刺さった槍を引き抜くとジェネシスは笑って壊れた指輪を投げ捨てる。


 「何かな? まさか勝った気になってないよねぇ? あくまで指輪は制御装置だったんだよ。あの戦いから兵器の力が暴走しやすくなってしまって、制御装置が必要になったんだ。...もう知らないよ?」


 ジェネシスの発言を聞いて光琳は驚きながらも、長刀を構えて心を落ち着かせる。


 「記憶がそこまでの覚悟を決めさせる禁忌だとは知らなかったよ。君との戦いにおける僕の最大の失敗だね。」


 そう言われる光琳は体中に流れる血の流れや、周りの音、においを感じ取りながら、呼吸を整えている。それを見たジェネシスはすぐに光琳に手をかざす。


 「...!!」


 兵器の力を感じ取った光琳は体を傾けて避ける。


 「くっ...! やっぱり指輪がないと狙いを定めなきゃいけなくて面倒だね。」


 光琳は勢いよく走り出してジェネシスに斬りかかる。そしてジェネシスはそれを自ら動いて避ける。


 「(戦える!!)」


 光琳はそう直感して長刀を容赦なく振るが、ジェネシスは軽々と避けながら受け止めて逆に投げ飛ばして、兵器を使う。だがそれを感じ取った光琳は体を反らして回避する。


 「やるねぇ...。」


 ジェネシスがそう言うと、光琳は廊下のランプを撃ち落として、屋敷を燃やす。


 「何のつもりかな?」


 「今のあなたには...こういう小細工も...効果あるのでは...?」


 「...変わんないよ。」


 ジェネシスは燃え盛る炎を操ろうとするが、光琳が炎の中を突っ切って自身の元に来たことに驚いて後ろに跳んで距離を取る。


 「ふふっ。さっきより断然楽しいよ! 戦うのがね!!」


 ジェネシスは笑いながら、自身の重力を変えながら壁や天井を走って、ただの殴打で光琳の頬を切り裂く。


 「くっ...!!」


 「どうかな? 意外と一筋縄じゃ行かないだろう!?」


 戦いを楽しみながら攻撃を続ける光琳はいつしか屋敷の厨房に追い詰められていた。


 「どうだい!?」


 力押しで負けかけた光琳は油を取って、ジェネシスにかける。


 「おっと。」


 怯んだ隙に長刀に油をかけて、ガスボンベを持って燃え盛る廊下に出て、その場から離れながら厨房を出たところにガスボンベを投げる。


 「!?」


 その瞬間にジェネシスの目の前で大爆発が起こり、その一帯が吹き飛ばされる。しかし、光琳は油断せずにその燃え盛る炎の中に入っていって、油で燃え盛る長刀で兵器を使って防いでいたジェネシスの首元を刺す。


 「!!!」


 「あああああ!!!」


 光琳はそのまま切り落とそうとするが、痛みをこらえながらジェネシスが手首を掴んで


 「飛んでけ。」


 と言うと、光琳は天井を突き抜けて空の彼方まで飛んでいくと、


 「落ちろ...!!」


 ジェネシスに勢いよく屋敷に落とされて目の前に叩き落とされる。


 「はぁ...はぁ...。今のは危なかった...。」


 ジェネシスがそう言っていると、光琳は長刀に体重をかけて何とか立ち上がりながら言う。


 「あなたの...力の弱点は...自分に対しては使えないこと...。」


 「!!」


 「管理者アドミニストレーター...。法則や能力、特性を自在に操ることはできるけど、それは使う自分には適用できない...。だから...力で未然に防がなければならない...。違いますか?」


 「...ふふっ...。正解だよ。大正解。それが僕の力の弱点だ。...懐かしいなぁ...彼にもこうやって兵器の力を看破されたっけ...。」


 ジェネシスは傷口を押さえながら手を光琳に向ける。


 「くっ...!」


 「制御装置を破壊し、力を看破したことは素直に凄いよ...でも...勝ちは君には渡さない!」


 ジェネシスは自身の力の効果範囲全域を指定して力を使う。光琳は膝をついて両手を床について息を切らしている。


 「くっ...!」


 その時光琳の頭の中に言葉が過る。


 ―――極限ノ鬼哭


 「!」


 ―――頭で考えれば動きがワンテンポ遅くなる! 本能を使え!!


 「!!」


 光琳は長刀を握りしめて立ち上がって、ジェネシスを見る。


 「(...力が効いていない...!? なぜ!?)」


 ジェネシスが光琳に驚いていると、光琳は長刀を構えて眼をつむり、呼吸を整える。


 「...。」


 しだいに光琳の髪が金色に輝き、インナーカラーが黄色く変色し、目が黄色く変わっていく。


 「地底ちてい刹鬼ぜっき。」


 それを見た瞬間、ジェネシスは光琳に手をかざして力を使う。


 「消去イレイズ!!」


 その瞬間、光琳の床が隆起してそれを防ぐ。ジェネシスがそれに驚いた瞬間、目の前に光琳が現れた。


 「!?!?!?」


 「はああああああああ!!!」


 光琳は力任せにジェネシスを切り裂く。


 「...。」


 切り裂かれたジェネシスは死の間際に告げる。


 「おめでとう...。君の...勝ちだ...。」


 ジェネシスが息絶えたのを確認すると、光琳は倒れそうになりながらも薫の方に歩き出す。


 「薫...。今...行くからね...。2人揃ったら...絶対に脱出でき...。」


 そんな光琳の目の前にフードを深く被って顔の見えない女。エゴが立っていた。


 「くっ...!!」


 光琳は長刀を構えようとするが、力が入らずに落としてしまう。


 「ぅぅっ...ぁぁ...!!」


 武器を手に取る力すら残っていない光琳はエゴに殴りかかるが、エゴが体を軽く動かしただけで、光琳は立ってられずに転んでしまう。そんな光琳を見てエゴはうなじを叩いてすぐさま気絶させる。


 「...ごめんなさいね。」


 エゴは光琳を担ぎ上げてその場から離れた。


 同時刻、ジャックの銃弾に撃ち抜かれた薫は床にうずくまって、リズレットは壁に押さえつけられていた。


 「どうした? 流石に足を10発も撃ち抜かれたら動けないか?」


 「ぐっ...!!」


 煽られた薫は何とか立ち上がろうとするが、出血がひどい両足ではまともに立ち上がれない。


 「くぅ...ああああ!!!」


 薫は叫びながらなんとか立ち上がり、激痛に耐えながら拳銃の引き金を引くが、その寸前で拳銃を持っている手を撃ち抜かれて落としてしまう。


 「...!」


 それを見たリズレットは何とか手を振り解いてエストックを振るうが、容易く受け止められる。


 「!?」


 その瞬間、リズレットは驚愕した顔を浮かべる。なぜならエストックを受け止めたのは、もう1人のジャックだったからだ。


 「分身?」


 「俺の兵器の力は、分身と加速。」


 「分身と...加速...?」


 2人とジャックが交互に話しながら薫とリズレットを見据える。


 「俺は無限に実像か虚像の分身を作り出し、無限に投射物を加速させ続ける。シンプルだろう?」


 ジャックの言葉に薫は目を見開いてその兵器の恐ろしさに気付いた。


 「つまり...遠ければ遠いほど銃弾は加速していく...いずれは...時をも超える。」


 「なっ...!?」


 「それが...分身によって、雨のように降り注ぐ...。だから...。」


 「雨弾レインバレッツ。そのままだろう?」


 2人のジャックはそう言ってハットを片手で押さえて銃口を向ける。リズレットはエストックを構える。薫は激痛に耐えて後ろに避けようとするが、次の瞬間には体を撃ち抜かれている。


 「ぎゃああ!!」


 リズレットの足は崩壊して、姿を保てなく。


 「所詮は氷の体。攻撃を受ければ再生に手間取る。その間に、この娘を撃ち殺す...。俺の可愛い子分をやったんだ。依頼何て知るか。」


 リズレットは薫にエストックを渡すが、分身に取られてジャックの元に戻っていく。そうしてエストックを持ったジャックがまた分身するとエストックも分身する。


 「...!!」


 薫は何とか立ち上がるが、痛みでそれどころではない。


 「羅刹らせつ...!!」


 薫は血の力を使って痛みに耐えて構えて、攻撃に備えるが来る方向が読めても、間に合わない。


 「かっ...!!」


 薫がどれだけ早く動いても加速していく銃弾を避けることはできない。薫は自分の拳銃を拾って引き金を引くが、その時にはジャックに20発銃弾を撃ち抜かれている。


 「...!!」


 床に倒れる薫の頭をジャックは何度も踏みつける。


 「ほら? どうした?」


 普通なら潰れるほどの威力で頭を踏みつぶされる薫を見て、リズレットはジャックに恐怖しながらも何とか氷の体を再生させてジャックに突進するが、分身に止められる。


 「学ばないな。」


 分身にリズレットは壁に勢いよく打ち付けられて、頭から崩壊する。


 「これで死んでいないんだから便利なもんだ。」


 分身はジャックに戻る。それを見ていた薫は何とか足をどけて反射的に距離を取る。


 「しまっ...!!」


 気づいたときには遅く、次の瞬間、薫は複数のエストックを投げられ、体中を刺し貫かれた。


 「ぐっ...ぐふっ...!! ぐはぁ.....!!!!」


 薫は大量の血を吐いて倒れそうになる。


 「投射物を加速させる。投げた剣も例外じゃない。」


 ジャックはそう言いながら分身を戻して、何とか立っている薫に刺さっていた複数のエストックを掴んで傷を抉るように引き抜いて傷口を何度も蹴り続ける。


 「いい声で鳴くじゃないか? えぇ?」


 ジャックがそう言いながら傷口を何度も蹴ると、薫は何度も吐血混じりの悲鳴を上げて涙を流す。


 「!!」


 ジャックに止めのように蹴り飛ばされて10発の銃弾を撃ち込まれる。そのまま床に転がった薫は倒れたままジャックを見据えながら目を閉じようとしていた。その瞬間、クリードと交わした約束を思い出す。


 ―――お前には、話さなければならないことがある。この戦いが終わったとき。どちらも生きていたら、俺とお前の確執を、包み隠さず話す。約束だ。


 薫の目に微かな光が灯る。ラファスに言われたことを思い出す。


 ―――助けることに必死こいてたら復讐なんざ夢のまた夢だなぁ!!


 薫の目に光が戻る。薫は指輪を見て母の言葉を思い出す。


 ―――どんな困難に打ちひしがれても、諦めなければ、その指輪が打開できる方法を示してくれる。


 薫の目に強い光が宿る。止めを刺しに歩いてくるジャックを睨みつけながら立ち上がる。


 「ん?」


 薫の変化に首を傾げたジャックが銃を向けると、薫は撃たれる前にバタフライナイフを投げてをそれを拳銃で撃って加速させる。


 「...!?」


 自分が攻撃する前に薫から攻撃を受けたジャックは驚きながらも落とした拳銃をもう片方の手で取って、薫に銃弾を撃ち込む。


 「ぐっ...!!」


 痛みで一瞬怯んだ薫だが、そのまま走ってジャックに刺さったバタフライナイフを引き抜く。


 「(どうした? 急に動きが...。)」


 ジャックは落ち着いて薫の動きの変化に対応して薫を蹴り飛ばして拳銃を向けるが、その頃には薫は不規則的な動きで間合いを詰めてきていた。


 「...何だか知らんが...偶々スイッチでも入ったのか?」


 ジャックは嘲笑いながら、薫の動きに対応していく。


 「だが精神論で何とかなるような状況じゃないだろ。」


 ジャックは複数の分身を生み出して同時に引き金を引く。その瞬間、薫は蜂の巣にされるがそれでもバタフライナイフとワスプナイフでしだいに捌けるようになっていく。


 「何...?」


 薫は銃弾が来る危機察知能力のみで撃たれる銃弾を捌きながらジャックの分身を殺して、それを盾に間合いを詰めて分身ごとジャックを刺す。


 「(この女...!!)」


 刺されたジャックは薫の頭を掴んで持ち上げて分身たちに銃口を向けさせる。


 「(まずい...!!)」


 「俺をこれ以上手間取らせるな。」


 ジャックが合図を出すと分身たちは引き金を引く。その瞬間、薫は時が止まったような感覚に落ちた。


 「え?」


 銃弾が来る方向。襟を掴んでいるジャックの顔、分身たちの動き、全てを事細かに視認できる。


 「...?」


 薫が何が起こっているかわからなくなっていると、夢でもないのにあの声が聞こえてきた。


 ―――力の解放の時だよ。


 薫は目を瞑って呟く。


 「深海しんかい羅刹らせつ。」


 薫の髪は白く、インナーカラーと目が青く変色して絶対に避けきれなかった銃弾を激流のように全て避けきって、ジャックの分身を全て倒して、ジャックの目の前に立つ。


 「土壇場で...力の更なる覚醒だと...? ふふっ...今日の俺は不運が続くなぁ...。」


 ジャックは若干にイラつきながら言っているのに対して、薫の心は落ちついている。


 「だが、土壇場の覚醒だ。そこまで持たんだろう。」


 ジャックはそう言いながらもう一丁の拳銃を取り出して、分身しながら薫に向けると、薫は冷静にジャックを見据えてバタフライナイフとワスプナイフを片手で自在に回しながら走り出す。


 「群銃グレックスレオ。」


 獅子の群れのように襲い掛かる銃弾の雨を掻い潜って増え続けるジャックの分身を相手取る。


 「...!!!」


 分身を一撃で倒していく薫に驚愕しながらも落ち着いてジャックは銃口を向けて引き金を引く。そうして襲い掛かる銃弾の雨を薫は避けつつ捌ききり、ジャックとの距離を詰めてワスプナイフを刺すが、そこで腹を何度も蹴られて、頭を銃で何度も殴られて、投げ飛ばされる。それによって加速していき光速で壁に叩きつけられて血を吐く。その隙にジャックは容赦なく引き金を引いてくることを感じた薫はすぐさまバタフライナイフを投げて撃たれた銃弾を弾く。


 「やるな。」


 ジャックはこぼれるように呟いて、大量の分身を生み出して、それを経由して薫との距離を一気に話して拳銃を向ける。


 「!!」


 それを見た薫は分身を倒しながら壁や天井も走りながら距離を詰めていく。


 「時弾テンパス。」


 「!!」


 腹部を撃ち抜かれた薫は一瞬怯みながらも走ることを止めずに距離を詰めていく。


 「何...!?」


 「はあああああっ!!!」


 薫はワスプナイフをジャックの片腕を吹き飛ばす。だがジャックは怯むことなく拳銃を向けてゼロ距離で撃とうとするが、薫はもう片方の手で拳銃の引き金を引いて、ジャックの拳銃を撃ち落とす。


 「!? ...っ!! ははははははははははは!!!」


 自身がここまで追いつめられると思っていなかったのか、ジャックは噴き出すように笑いだす。それを見て薫は怪訝そうな顔をして拳銃を向け続ける。


 「勝負はお前の勝ちだ。だが...。」


 「!?」


 ジャックは薫を蹴り飛ばして、撃ち落とされた拳銃を拾う。


 「命はやらん!!」


 「くっ!!!」


 そうして薫とジャックは全く同時に引き金を引く。


 「くあ...かっ...はぁ...。」


 「ぐっ...ぅぅっ...!!」


 薫の銃弾はジャックの額を撃ち抜き、ジャックの弾丸は薫の首元を撃ち抜いていた。ジャックはそのまま血を流して倒れ、薫は首元が噴き出す血を押さえてその場に倒れる。


 「ああ...ああ...かはぁ!! はぁ...ああ...ぁぁ...がぁ...。」


 薫は薄れる意識の中、再生して自身に駆け寄ってくるリズレットが見えて、何とか声を出そうとするが、全く出せない。


 「薫さん! 薫さん!! 薫さん!!!」


 リズレットが自分の名前を呼ぶ声が聞こえるが、薫は最早体を動かせない。そんな中、リズレットの後ろに弓を携えた黒い服の男もといテューフェルが現れた。


 「あなたは...!」


 「どうだ? 抗った結果。無駄骨となったわけだが。」


 テューフェルの言葉に薫は掠れるような声で反論する。


 「生きてれば...あなた達の...生贄になりさえ...しなければ....無駄には...ならない...!!」


 「その状態でよく喋れたものだ。」


 テューフェルは薫から流れ出る血を止めて担ぎ上げて立ち去ろうとする。それを見て、下唇を強く噛んでリズレットが叫ぶように尋ねる。


 「そんな子を連れて...!! 何がしたいの!?」


 「さぁな。計画の全てを知っているわけじゃない。それより今は...蘇る事が確定したことを喜ぶべきじゃないのか?」


 「兄の命で蘇ってもそこに兄がいないのなら私達には後悔しか残らない!!!」


 リズレットの強い目を見て、テューフェルはしばらく黙った後に安心させるように言う。


 「大丈夫だ。蘇った後は兄であるブリザの記憶は消しておく。」


 「何ですって!?」


 「死んだ者の事をいつまでも覚えていても、さっき言ったように後悔して辛いだけだろう?」


 そう言いながらテューフェルは気を失った薫を持ったまま立ち去った。


 「...たったそれだけで解決できるなら...今の心の苦しさ何てないよ...。」


 リズレットの声を聞いてテューフェルはかつての自分を思い出しながらこぼれるように呟いた。


 「やっぱり...死者を蘇らせるっていうのは...皆から否定されることなんだな...。それでも...譲れないんだ。そうだよな...。」


 テューフェルはエゴと合流して2人を特に治療することなく拘束してあの部屋に閉じ込めた。

次話「偽りを壊す」

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