忠誠の騎士、反抗の奴隷
翌日、朝からクリード、清雅、薫はナイトメア・クラインと出会った場所を中心に歩いて探していた。
「いませんね。」
「結構大きな国だから3人だけで探すっていうのが無理あったかもね。」
薫の言葉に、清雅は半ば諦めたようなトーンで答えると、クリードが立ち止まって前方を見てみると、買い物をしている女性が立っていた。
「どうしたんです?」
「あの女。多分騎士だな。」
「え?」
クリードの言葉に薫は驚きつつも女性を見てみるが、違いがよくわからないようだ。
「目的は紅騎士を探すことだったが、別にあの女でも大丈夫だろ。」
「でも、団長の方が...。」
「それがいいのはもっともだが、あの女でも別に問題はないと思うぞ。」
クリードはそう言って女性の方に近づいていくと、女性もクリードたち3人の存在に気付いたのか、しばらく見つめた後に買い物を終わらせて、案内するように歩いていく。
「え? 誘われてます?」
「だとしてもついて行っても問題はない。何せ〝まだ〟何もしてないんだからな。」
清雅の言葉にクリードは女性についていきながら答える。それを追うように清雅と薫もついていくと、そこにナイトメア・クラインが食事している場所まで来た。
「どなたです? あなたは昨日の...。」
クリードと薫の姿を見て、首を傾げたが清雅を見た瞬間に知り合いだとわかったナイトメアは少し黙った後に、女性も隣に座らせた。
「何か話があるんですか?」
ナイトメアはクリードの雰囲気を見て、食事を中断して声のトーンを落とす。
「...。」
「ナイトメアさん。」
クリードが発言する前に、薫が前に出て話しかける。
「私は橘薫と言います。質問があります。」
「...何です?」
「ナイトメアさんは...生きてきて1番後悔したときはいつですか?」
その質問にナイトメアは固まって、しばらく黙り込む。そうして、隣の女性を見た後に頷いて話し出す。
「とある傭兵に負けたときです。」
「...。」
「あれがなければ、もっと被害は少なく、まだ戦いを続けられたでしょう。私は戦いに負け、すぐに戦線復帰できませんでした。私が治療を受けている間。私の知っている人たちの死亡報告が飛び交ったり、重傷者や遺体が運ばれてくることもありました。」
遠い目をしてナイトメアは答える。それを薫達は黙って聞いている。
「そうして傷を治した頃には戦いは終わり、王の選択を聞きました。その後、処刑人は私になり、王の首をこの手で斬りました。」
「王と王妃の首だけ斬って、弟とあたしは斬らなかった。」
「あたし?」
「そ。あたしはロンバート・サニーズ。って名前の他にネヴィア・フェシス・バルジェリア。この国の一応王女。」
「(何?)」
初耳の情報に薫と清雅は絶句し、クリードも目を見開いて驚く。
「(では、王子だけが四方匡に連れていかれたというのか? そんな馬鹿な。姫であり戦力にもなるのなら四方匡に連れて行く方が利があるはずだ。王子が死んでも王女がいるのなら問題なく国を再建できる。なぜそうしない?)」
「こいつは王の選択より、国民を奴隷にすることを選んだ。ド畜生だよ。」
ロンバートはそう言ってその場から立ち去ろうとすると、ナイトメアは何の言い訳もせず、清雅、薫、クリードに聞かせるように言った。
「その通り。四方匡に楯突くこともなくただのうのうと生きて、国民だった奴隷たちに不自由な思いを強いている。諸悪の根源だ。」
「それは違うんじゃ。」
「いいや。王の選択に従っていれば、こんな状態にはならず、もう一度万全の状態で戦いを挑むこともできた。間違いなく、俺も諸悪の根源だ。すみません。面白い話は出来そうもありません。また少し時間をおいて再度来てくれますか? そしたらまた話します。」
「え...ちょっ...。」
清雅が何か言おうとしたところをクリードが制止させてその場から薫も連れて出ていく。
「あれ...直接私達に話した理由は何なんでしょうか?」
薫の問いにクリードは少し早歩きでその場を離れながら答える。
「おそらくだが、薫が奴隷に話を訊いていたことがバレていた。それで俺たちの動向を監視している。」
「バレてたならすぐに捕らえるんじゃ...。」
「あくまでそれを知ったうえで泳がせている。実際奴隷に話を訊くこと以外の怪しい行動は俺たちはしていない。逆に奴隷の話を聞いたからこそ、この国の異常性を恐れ、予定通りか早く国を出て行ってくれると踏んでいる可能性もある。だが、もし俺たちが行動を起こせば、すぐに対応可能であり、容赦なく潰しにかかる。あれはそういうものだ。」
外面としてはあまり重くなさそうな雰囲気のちょっとした会話だったが、クリードはそこからこれからの行動を決める。
「これから俺が奴隷の話を訊きに行く。薫と清雅はバンバ達と合流しろ。」
「でも...。」
「一応宣伝して奴隷たちから依頼があれば仕事は受ける。なければ薫が依頼をする可能性があるが、それもなければ俺たちは今日中にこの国を発つ。いいな?」
クリードの言葉に薫は意見する前に清雅に止められて指示通りバンバ達の元に合流することにした。
「(...奴隷からの依頼がなかろうと、このままでは薫は依頼をしてくる。)」
クリードはそう考えながら周りの奴隷たちを見渡す。そうしていると、背後から肩を叩かれる。
「ん?」
クリードが振り向くと、そこには先ほどのネヴィア王女もといロンバートが鎧をつけて立っていた。
「どうしました?」
クリードがそう訊くと、ロンバートは遠くを真っ直ぐ見て指差す。
「?」
「ず~っと真っ直ぐ行った先に四方匡の領地がある。」
ロンバートはクリードの方に目を向けることなく独り言のように続ける。
「あの領地に弟がいる。」
「...。」
「あたしは王族だが純粋な王族じゃない。養女だ。だから、正統な王になるべきなのはあたしの弟。あいつがいなけりゃあたしは王女として、姫として、女王としてこの国の上に立つ気はない。弟が死ねばそれこそ偽りだからな。あたしはあたしを拾ってくれた国王と女王が大好きだ。国王が決めた選択にも同意してた。なんだかんだ姫としても、騎士としても扱ってくれるナイトメアも大好きだ。だから、ナイトメアの覚悟を心の底から恨んでない。ただその覚悟が報われてほしい。」
そうして話し終えたロンバートはクリードとすれ違いざまに言った。
「奴隷たちは皆解放を望んでる。」
「...なぜ私にそんなことを?」
「さあな...。ただの気まぐれ。」
クリードの言葉に何かを遠くを見ながらロンバートは答えてその場を立ち去った。
その頃、バンバ、花仙、光琳はフレア・アステラのいる屋敷に来ていた。
「ここか。想定より早く着いたな。」
バンバがそう言うと、花仙は思いっきり扉を殴ろうとする。
「待て。」
「何だよ。」
「扉をノックするだけでなぜそんな振りかぶる。ここにインターホンがあるだろ。」
バンバがインターホンを押すと、花仙は首を傾げる。
「何だそれ? シルヴァマジアにはなかったぞ。あそこはノックした音が中で響くから。」
「だからここではそれがないと思ったから思いっきり殴る発想が出たのか? インターホンというスイッチがあるからここを少し押すだけで音が出る。」
「来ない可能性あるだろ。」
「来ない可能性があるだけで無駄な出費を増やすな。」
「あ、誰か出てきますよ。」
バンバはそう言っていると、中から赤髪褐色の男性が出てくる。フレア・アステラだ。
「ん? あんたらは? ...ああ。そいつの仲間ね?」
フレアは少し考えながら花仙が目に入ると納得したような顔で屋敷内に入れた。
「昨日のもう1人は?」
「別行動中。」
「へぇ~。」
花仙の言葉にフレアは適当に返事をしながら、ファーラを呼んでくる。すると、ファーラが歩いてやってきて、バンバ、光琳、清雅に目を向けると軽く挨拶を済ませて座る。
「今日も何か面白い話を聞きに来たんですか?」
「そう...。」
「フレア!」
主ができるだけ丁寧な言葉で話すと、バンバが答えるところを遮って花仙がフレアを呼ぶ。
「あ? 何だよ?」
「バンバ達はここでファーラさんと話しててくれよ。フレア。あたしと一回戦ってくれねえか?」
「は? 何でだよ?」
「なぜ?」
花仙の言葉にフレアとバンバは全く同時に首を傾げる。
「能力の使い方とか、戦い方とかを肌で学びたいんだよ。フレアと戦えば強くなれる気がするしな。」
「...お前が強くなるための修行相手になれってことか...。面倒くせえ...。」
心底嫌そうに言うと、ファーラがフレアの方を見て言う。
「折角なら行ってくれば? 気晴らしになるかもよ? ちょうどいい地下室がこの屋敷にはあるんだし。」
「ファーラさんナイスアシスト!!」
花仙の言葉にファーラはグーサインをする。それを見たフレアはため息を吐いて、地下室の階段の扉を開ける。
「ほら来い。ある程度は本気でやってやるよ。」
「よし来た! じゃあ師弟コンビ。後は頼むなぁ~。」
そうして2人は地下室に入っていった。バンバはファーラから奴隷の情報を得るために質問を始める。
「よし、頼むぜ。」
「何をそんなやる気になってるのか。」
「さて、実戦での修行だからな。しっかり戦ってもらうぞ。」
「そうだな...。じゃあまず...俺を動かしてみろ」
「は?」
フレアの言葉に花仙は首を傾げて眉間にしわを寄せる。
「あたしのこと嘗めすぎじゃない?」
「いや? ただ能力覚醒した直後に使いまくって動けないはアホだからな。一応能力では先輩の俺を動かせるくらいに力を素で出せるようにしねえと。いちいち能力使わないと攻撃が通らないんじゃ不便でしゃあねえよ。」
「...後悔すんなよ!!」
花仙はそう吼えて、勢いよくフレアに攻撃を仕掛ける。
「!?」
「受け止めねえとは言ってねえぞ。」
「...。」
「なに呆けてんだよ。来いよ。修行するんじゃねえのか?」
フレアがそう言うと、花仙は無言で頷いて、気を取り直すように頬を両手で叩いて気合を入れ直す。
「しゃあ!! 行くぞ!!」
「うるせえ...。」
花仙はフレアに向かっていく。その間、バンバはファーラから情報を訊いていた。
「奴隷から依頼を受けることはまず不可能です。」
「...。」
「そもそも奴隷たちは愚痴をはくことはできても、どこかに出歩く暇を与えてもらえないし、一定の距離離れてしばらく経つと、首輪や足枷、手錠が即爆発するようにできています。それに、奴隷たちは主への恐怖心と騎士達への猜疑心にまみれた者たちが多いです。助けてくれると言っても、彼らが自ら動くことはありえません。」
「では、この国の人たちは解放を望んでいるけど心の奥底では諦めている?」
「少なくとも私はそう思っていますよ?」
ファーラの答えにバンバは何とも言えない顔で頷いた後に、光琳の方を見て王の居場所を訊いてみる。が、これに関しては知らないという返答が来た。そうして、質疑応答を繰り返しているうちに時間は経ち、地下室から花仙とフレアが出てきた。
「今日教えた事。しっかり覚えて身につけろよ。」
「任せろ!!」
「まだ大声出せんのか。お前のステータス声に振り切ってんじゃねえのか?」
フレアがそう言って、自室に戻ろうとすると、花仙がまた大声を出して引き留める。
「あたしさ。ここの奴隷救って見せるから。助けに来てくれよ。」
「は?」
「...。」
「おい。」
バンバの制止を無視して、花仙は続ける。
「お前さ、昔騎士と戦ったんだろ? リベンジ果たそうぜ!!」
「修行の休憩中に話した俺の過去を今掘り返してくんな。その件に関しては個人的にイラついてたってだけだ。わざわざリベンジを果たすようなことでもねえ。」
「何だよ...。負けたままか? らしくねえよ!!」
「らしくない...って。いやお前...ちょっと前に会ったばっかで、少し話しただけでお前に俺の何が分かってんの? お前なんだ? 心理学の教授かなんかか? らしくねえよ。それは長い付き合いがある間柄だから有効ってだけで、お前と俺そこまでいってねえぞ?」
「...う...うるせえなぁ...!! とりあえず来い!!」
「ふざけんな。面倒くせえ。わざわざ死にに行く気はねえよ。」
「ビビってんだ?」
「ビビってるよ。これでいいか? じゃあ今日のところは帰んな。もう結構な時間だぜ?」
花仙の言葉をフレアはいつも通りのテンションで受け流し、自室に戻っていった。
「...また茶化された...。」
「まだ決まってないのによくも言ってくれたな。」
「師匠...。ファーラさんが...。」
花仙にバンバが何か言おうとすると、光琳が肩を叩いてファーラの方を指さす。
「ん? どうかしましたか?」
「もしも...この国の奴隷を...騎士を...救っていただけるのなら...遅くなるかもしれませんが...フレアを...必ず向かわせます。」
「...。」
そうやって笑いかけるファーラをしばらく見て、バンバは首を振る。
「いえ、大丈夫です。もし奴隷を救うことになっても助けはいりません。」
「え...。」
「師匠?」
バンバの言葉に花仙と光琳は驚いて声をかけるがそれを無視して続ける。
「もし、戦いを始めてあなたの身に何かあった場合。我々は責任を負うことができません。フレア・アステラを最後まで傍に居させてください。」
「...考えておきます。」
バンバの言葉に何かを察したファーラはすぐに落ち着いて、バンバ達を屋敷から見送る。
「じゃあな!!」
「お話ありがとうございました。」
「...。」
花仙と光琳が手を振る中、バンバはジッとファーラを見つめてその場から離れた。
「バンバ。何であんなこと言ったんだよ! 戦力になってくれるかもしれなかったんだぞ!」
「責めないでください! 師匠にも何か考えがあるはずです!」
「花仙の言う通りだ。戦いになれば、フレア・アステラの戦力はほぼ必要不可欠だ。だが...」
「だったら...。」
光琳はバンバの雰囲気を感じ取って花仙を制止する。
「それは俺たちの事情だ。俺たちの事情にフレア・アステラを強引に引き出すわけにもいかない。それに...。」
「それに...?」
「一緒に居たいだろ。」
光琳と花仙はその言葉に瞬きを何度もしながら、顔を見合わせた。そうやって驚いているところを他所にバンバは歩き続ける。
その頃、バンバ達が帰った後の屋敷内。
「はぁ~。」
「ん? マジで帰ったのか? 何かまだ訊きたそうな雰囲気があったが?」
ソファに寝っ転がって体勢を楽にしているファーラにフレアはココアを持ってきて横に座った。
「うん。割とあっさり帰っていったよ。男の人の方はフレアの手伝いいらないって言ってくれてたよ。」
「まぁあの人は話わかりそうだったしな。」
そんな会話を続けていると、ファーラはフレアの方にすり寄って、太ももに頭を置く。
「バレちゃったのかなぁ~?」
「...何がだよ。」
「わかってるだろぉ?」
「...わかってねえよ。...わかってたまるか。」
ファーラの言葉に、フレアはしらばっくれた。
同時刻 ナイトメアを含む5名の団長たちは王宮の議事の間に集まっていた。
「あたしが姫だって事。話してよかったのか? あんたが処刑を執行したことも。」
「ロンバートが姫であることはどうかは知らないが。奴隷の聞き込みで私が処刑を執行したこと、今の体制にしたことの引き金になったことはすでにバレている。後はあの旅人達がどういう行動をとるかでしかない。だから、正直に話しただけだ。」
「俺らにわざわざ喧嘩売ってくるって本気で思ってんのか?」
ロンバートの質問にナイトメアは俯きながら答え、ティルジェイは呆れながら訊く。
「その可能性はある。いうて4人しか見てないが、皆強い目をしていた。特にあの金髪の女性は死地を潜り抜けた人の目だ。」
「だからと言って、俺らに喧嘩売るメリットねえだろ。俺ら5人だけじゃなく俺んところの元傭兵の野郎共と生真面目な騎士共を相手しねえとなんだぞ? 俺だったら逃げる。」
「それは相手方もそういうやつはいるだろう。今回は半数以上が違うやつだったという事じゃないか?」
ティルジェイの言葉にギアバシルが反論する。
「ギアなんか知ってんのか?」
「いや? 偶然そいつらの一味の男と少し話しただけだ。」
「遠目からずっと見てたけど、相手は総勢で6人。赤髪と白髪の女性が一番警戒すべき。でも、経験値はギアの会った男と今日話した金髪の女性。基本警戒しなくてもいいけど、土壇場で強くなるかもしれないのが、後の茶髪と黒髪の女の子。赤髪と白髪は多分ほかの騎士たちは捲れる。」
「でもあたしたちだったらその子ら2対1でも勝てるぐらいなんじゃないの? 経験値が足りてないとか言ってたじゃん。」
「うん。練度が足りてない印象を受けたんだよね? 男と金髪の女性は少し私の気配に気づいてるかどうか怪しいところがたまにあったぐらい。」
ロンバートの言葉にソフィアは同意する。それを聞いたナイトメアは立ち上がって、指示を出す。
「面倒だろうが、騎士達を国中に配置する。何もなければそれでいい。何かあれば即座に制圧する。」
「了解。」
「オッケー。」
「了解した。」
「...それでいいのか?」
ナイトメアの指示に3人が動こうとする中、ティルジェイは座ったままナイトメアを見上げる。
「...当たり前だ。これが私の仕事だ。」
「...そうかい。じゃあ行ってくるわ。」
ナイトメアの答えにティルジェイは首を鳴らしながら立ち上がってすれ違うように部屋を出て行った。
その頃、宿屋には何でも屋の6人が集まって情報を交換し終えていた。
「何でそんな事教えたんだ?」
「知らん。この際その理由や意図はどうでもいい。この国の正当な王を助けるというほぼ無理であろうところが罠かもしれないがクリアになった。後は実行に移すかどうかだ。」
「...全員で助けに行けばよくね?」
「それがそうしてる。だが相手にはソフィア・ローアがいる。弓の血鎖狩人だ。視力は他の血鎖狩人何千倍も良い。国を出るときに四方匡の領地に向かっていることがバレれば即撃ち殺される。おまけに、この国には四方匡がどこに存在しているかの情報が不自然なほど消されている。ここから四方匡に辿り着けないようにするためだろう。それなのに領地に向かっていたら...。」
「避けれねえのか?」
「簡単に避けれる様じゃそこらの弓兵と何も変わらない。避けることが不可能近いから、無理だと言ってるんだ。」
花仙の疑問にクリードは淡々と答えて詰めていく。
「実行に移す場合の作戦は一応立ててはいる。まず、俺が今からこの国を出て、1人で四方匡の領地に向かい王子を奪還してこの国に帰ってくる。その間、警戒されているお前たちは恐らく何者かに監視されて俺がいないことがバレ、戦闘になるだろう。その場合は、先にこっちから仕掛けろ。花仙。」
「ん?」
「お前が一番、血鎖狩人のNo.1に届く可能性がある。お前が、恐らく総指揮を執るであろうナイトメアを止めて指示を出せないようにしろ。清雅。」
「はい。」
「お前も同様だ。お前はソフィア・ローアの相手を頼む。矢の雨から仲間を守れ。バンバ。」
「薫と光琳の指示と状況判断による対応を任せた。」
「その通りだ。ここまで指示したが、これは実行する場合だ。薫。どうする? お前が決めろ。」
クリードは淡々と指示を出した後に、薫をジッと見つめる。
「...これから死ぬ気で働きます。給料はいりません。全部この依頼の分に回してください。」
「...そうか...。金は要らない。」
「え?」
「その代わり。この戦いで死ぬな。全員だ。死ぬな。死ぬことは許さない。特に薫。」
「はい。」
「お前には、話さなければならないことがある。この戦いが終わったとき。どちらも生きていたら、俺とお前の確執を、包み隠さず話す。約束だ。」
クリードはそう言って、小指立てて薫に差し出す。薫も小指を立てて約束を結ぶ。
「これから、騎士が警備体制を敷くだろう。全員生きることを考えろ。死ぬことは依頼内容に反する。」
「大丈夫だ。花仙と清雅はわからないが。薫と光琳は俺が守るさ。」
バンバの言葉にクリードは無言で頷いて、宿屋の窓を開ける。
「じゃあ、行ってくる。これを最後の挨拶にするなよ。」
「わかってます。」
クリードの言葉を薫は重く受け止めて、明日に備えて早めに眠りに就くことにした。
次話「聖転騎士団」




