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Blood Spare of Secret : The story of Creeds  作者: 千導翼
第四章 バルジェリア皇国編

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厳しい現実、抗いたい本心

 ギアと名乗る男と別れた後、宿屋に図書室を発見したバンバはその中の歴史書をひたすら読み漁っていた。


 「バルジェリアの歴史以外も載ってるな。途中までだが。シルヴァマジア、シャインティアウーブ、日桜匡ひざくらきょう、バルテキス帝国、クレイヴ公国、ユーフォリア、ローザオルナータ、レギスペッザ。」


 この世界に置いてかつては強国と謳われた国である。魔法大国シルヴァマジア、科学大国シャインティアウーブ、侍と忍が治める日桜匡、砂漠で絶対王政を取るバルテキス帝国、公爵を中心に科学技術を極めんとするクレイヴ公国、極寒の国ローザと灼熱の国ナータと森林の国オルの同盟によるローザオルナータ、気高い騎士と王が治めるバルジェリア皇国、全て謎に包まれているが誰も探ろうとしない強国レギスペッザ。


 「レギスペッザの歴史書なぞあったのかと思って読んでみたが、結果は他と同じで具体的な歴史ではなく、完全な妄想だ。支離滅裂すぎる。」


 バンバがそう言いながら読み終わった歴史書を本棚に戻しに行こうとすると、クリードが部屋から出てきた。


 「おはよう。」


 「おはよう。薫たちは?」


 「街を回らせてる。もし何かあってもすぐに逃げるから大丈夫だと思ってな。」


 バンバがそう言うと、クリードは少し考えた後に言う。


 「逃げるから大丈夫ではあるが、薫が耐えられんぞこの国の惨状を。」


 「聖転騎士団の強さはある程度伝えてある。」


 「意外と薫は強情な気がするぞ。流石に今回ばかりは関わり合いになりたくないな。」


 「関わったところで死ぬだけだろうしな。」


 バンバとクリードはそう会話をした後、クリードは水を一杯飲み、部屋を出ようとするところでバンバも出る。


 「ん? 何か用で...本を返しに行くのか。」


 「そうだ。面白そうな歴史書があったからな呼んでた。バルジェリアとこれは読めたもんじゃかったが。」


 「レギスペッザ? 歴史書が存在する事実に驚きだな。バルジェリアは、四方匡の人間にでも悪戯いたずらされてたか。」


 「その通り。いくら敗戦国とはいえ、歴史すら強引に書き換えるとは四方匡の歴史を知る気が失せるほど残念だ。」


 そうして、図書室に歴史書を戻した。バンバとクリードは時計を見る。


 「もうこんな時間か。どうだ? 外でも見てくるか?」


 「俺1人で出たら面倒極まりないことになりそうだ。止めておく。」


 「何だ? 四方匡の人間に襲われるか?」


 「四方匡の人間より奴隷商に狙われる。あいつらの方が余程面倒だ。」


 そうして2人が自室に戻ると、いつの間にか薫、花仙、光琳、清雅が帰ってきていた。


 「お帰り。昼までとは意外に早かったな。」


 「朝から入国して宿屋の部屋取ってすぐですから、もう5時間くらい外にいましたよ充分です。」


 バンバの言葉に薫が答えると、クリードは薫の目を見つめてから訊く。


 「この国何とかしたいと思ったか?」


 「「「「!!」」」」


 その言葉に、薫だけでなく、花仙、光琳、清雅もドキッとした顔をする。


 「ダメだぞ。あまりに可能性が無さ過ぎる。」


 「でも...。」


 クリードの言葉に反論しようとする。


 「でもじゃない。俺は大勢の赤の他人の為に、数少ない仲間に死なせる気はない。」


 「...。」


 しかし、クリードの言葉に何も言えなくなる。そのままクリードは薫に共感しながら続ける。


 「確かにこの国の現状は酷いものだ。何とかしたい気持ちもわからなくもない。だが、その何とかする力が俺達にはない。その後の問題を背負う暇もない。」


 「後?」


 「もし聖転騎士団に奇跡的に勝って、奴隷を解放できたとしよう。だが、大元の四方匡を何とか出来たわけじゃない。そのまま四方匡を敵に回すことになる。それも倒そうとすれば、その間に聖転騎士団は回復してまた戦線に復帰してくる。じゃあこれも奇跡的に勝ったとしよう。じゃあこの国のトップは誰がやる? 適任がいるのか? 国民はつい最近まで奴隷をしていた。奴隷の生活リズムと根性が心に染みついている。子供からすればそれが当たり前にもなってるその教育はどうする?」


 「...。」


 「たかだか一時の正義感で何とか出来るような問題じゃない。奇跡2回起こさないと、解決するための状況にすら持っていけない。聖転騎士団は1人1人がその道のプロだ。ずっと裏の世界で戦ってきた俺とバンバが死ぬ気で聖転騎士団のトップ5人のうち2人削っても後に3人控えてる。青葉を呼んでも、後2人、控えてる。花仙と清雅に全力出してもらっても、恐らく経験値で負ける。薫と光琳は、まだ彼らと一騎打ち、2対1、できるほどじゃない。」


 「...。」


 「それでも...。何とかしたいと思うなら、依頼しろ、4人でか、それとも勇気を持った奴隷に代わりに依頼させるかどっちかにしろ。そうすれば、何でも屋だからな。死ぬ気で挑むさ。だが、お前達にも何でも屋だから、当たり前に協力してもらう。もちろん命も懸けてもらう。なんせ、これまでは国と協力したが、ここの場合は国に喧嘩を売ることになる。」


 「わかりました...。」


 クリードの言葉に薫は沈みながらも何か考えるような顔をして部屋を出る。それを追うように花仙も出る。清雅と光琳は少し考えた後に、部屋を出る。


 「どうする? あの様子じゃ無理そうだぞ?」


 「はい。実際現実的に見れば、到底無理な話です。でも、このままほっとけないというのが本音です。」


 「そりゃあたしだってそうだよ。」


 「私達もね。」


 薫の言葉に同調した花仙に続くように遅れてきた清雅が光琳を連れて言った。


 「とりあえず。私達女子チームで考えよ。」


 「女子だったらクリードも入るんじゃ。」


 清雅の自信満々の言葉に冷めたツッコミをする花仙。


 「いやまぁ...あの人は...年長者だから。」


 「あたしらと2歳しか変わらねえぞ。」


 それに真面目に考えながら返した清雅の言葉に更に冷めたツッコミをする花仙。


 「シャラップ!! 細かいツッコミは無し!」


 「お、おう。」


 勢いで乗り切ろうとする清雅に気圧されて少し引く花仙。


 「でも、厳しそうだよね。あそこまではっきり言われると。」


 ボソッと光琳が呟く。それに花仙以外の2人も頷いて、頭を抱える。


 「なぁ。」


 「ん?」


 「実際に奴隷に話聞けねえかな。」


 「どうやって?」


 「夜に忍び込む。」


 「その技術あるの...多分クリードさんとバンバさんだよ?」


 「そこがネックなんだよなぁ...。」


 清雅のツッコミに花仙は頭を抱える。それを見ていた薫は少し考えた後に


 「私が話を聞きます。武装しなかったら一番警戒されなさそうなので。」


 と提案した。それを聞いた3人は少し考えて頷く。


 「あたしはまぁ警戒されるだろうしな。」


 「私は別の意味で危なそうだし。」


 「何かあったら3人で助けに入ればいいし、薫も反撃できるしね。」


 「「「(反撃しちゃったら、相当な場合問題になるのでは?)」」」


 光琳の言葉に薫や清雅、花仙は首を傾げる。そうして、花仙、清雅、光琳の監視の元、薫が隙を見ては奴隷に話かけて今の現状、不満などを聞いて情報を更に得るためのハラハラドキドキツアーが始まった。


 その頃、クリードとバンバも外に出て街中を歩いていた。


 「いかなる強国も敗北すればここまで落ちぶれるのか。」


 「あぁ。誰一人として元の国民が人として扱われていない。」


 四方匡の人間には特有の印のものが首元に描かれており、奴隷はバルジェリアの国章を斜めに切られている印を露出しているところに描かれている。


 「まぁわかってはいたが、試しに外を出歩いていると、無駄に見られているな。」


 「なぜ話しかけてこないんだろうな?」


 「わかりきったことをわざとらしく言うな。お前がいるから話しかけてこない。もしこれで話しかけてきたら、相手はお前から俺を話そうとするだろ。」


 クリードとバンバがそんな会話をしていると、屈強な奴隷を連れた細身の男がやってきた。


 「やぁ。外からの人間だね? 私がこの国を案内して差し上げよう。もちろんお金はいらない。」


 「いえ...。」


 「大丈夫。僕はこの国に詳しいんだ。」


 断ろうとした瞬間に言葉を遮り、細身の男はクリードに顔を近づけてくる。


 「安心してください。私は四方匡の人間の中でも温厚ですよ。」


 そう言いながら、細身の男は奴隷にバンバとクリードの周りを囲わせて逃げ場をなくさせる。


 「落ち着いてください。私たちは昔この国に訪れているので、この国のどこに何があるかを把握しています。なので案内は結構です。」


 「でも前来た時より変わっているかもしれませんよ?」


 「それも醍醐味だいごみかなと思います。新しく自分の足で見つけるのも。」


 そうやってクリードが断り続けていると、細身の男は流石に取り繕えなくなり、少し圧をかけるように言う。


 「それでは時間の無駄でしょう? 時間をより有意義に使うために私たちが案内しますよ。」


 「その時間の無駄さも醍醐味と言ったと思いましたが、言葉足らずでした。すみません。」


 すると、男はクリードの手を強く掴んでドスの効いた声で言う。


 「うるさいな...! 僕が案内してやるって言ってんだから大人しく従えよ...!!」


 「わざわざそんなことをして頂かなくても大丈夫ですよ。と遠回しに言っているじゃないですか。断ったのだからすぐに諦められた方が時間を有意義に使えますよ。」


 声色に感情が乗っていく細身の男に対して、クリードは淡々と答えていく。それにしびれを切らした男は手で奴隷に合図を出して、無理やりさらおうとするがバンバがクリードの前に出て淡々と話す。


 「いくら四方匡の人間と言えど、外部の人間に手を出せば、ただではすみません。その為の腕章です。それに、命を守るためであれば反撃することは許されています。」


 「何だ? 僕が罪に問われるっていうのか? はっ! 金を払えば、騎士共は僕を裁けない。四方匡はこの国で絶対なんだ。だからどんな勝手も許される。外部の人間だろうとものにする権利がある。女、そのすかした顔を快楽に変えてやるよ。」


 ある程度小綺麗にしていた顔から下卑た笑いをしながらクリードに言う。すると、奴隷たちはクリードの手を掴み、バンバに攻撃を加えようとする。


 「何してんだ? 小僧。」


 比較的軽装の男がポケットに手を突っ込んで面倒そうに話しかける。それを見た細身の男は、目を見開いて後ずさる。


 「ティルジェイ第一団長じゃないか。こんなところで何を。」


 「何を...って見回りだよ見回り。」


 ティルジェイは欠伸をしながら答えたのちに、クリードとバンバ、そして細身の男とその奴隷たちの状態を見て、何度か頷く。


 「今すぐにその人たちから離れたら、罪には問わないし、仕合相手にもさせないでいてやる。どうする? 問題児。」


 そう言われた細身の男はクリードの体を見て、悔しそうにその場から立ち去った。奴隷たちはバンバとクリードに会釈をしながら立ち去る。


 「じゃ。あんたらも気をつけろよ。昔はまだ良かったが、調子に乗った四方匡の奴らが居やがるから。まぁ傭兵上がりの奴ら...俺とかには警戒してんのか、結構ビビってくれるが。戦っても弱いからつまらねんだよな。」


 ティルジェイはそう言い残して、その場を立ち去った。そうして、しばらくした後に宿に戻った。


 その頃、奴隷から一通り話を聞いた薫は花仙、清雅、光琳に共有した後に、座り込んでしまっていた。


 「意見は五分五分か。」


 「まさか、過半数の国民が望んで受け入れたどころか頼んだ上での奴隷制だったとは思わなかった。ナイトメア・クラインがそれを決めてただなんて。」


 「でも、子供はそもそも受け入れてなかった国民は不満だらけで騎士団...主にナイトメア・クラインを深く憎んでいる。」


 「ナイトメア・クライン...。どんな人でした?」


 薫が実際に会って話した光琳と清雅に訊くと、2人はしばらく考えた後に答えた。


 「普段はとても穏やかだし、真面目な人だと思う。」


 「国の事を誰よりも愛していると思うし、何より前の国王の事は誰よりも慕っていると思う。だからこそ、最後の最後に国王の決定に背いたのは、国民が頼んだからって理由だけじゃない気がする。」


 清雅の考えに薫は頭を抱えて奴隷たちに聞いた話をまとめる。その中で1つ忘れていたことを思い出す。


 「5年前...そうだ5年前、剣の打ち合う音と爆発音が国中に鳴り響いたことがあるって言ってました。」


 「爆発音...。それって...。」


 「多分...フレアさんです。」


 薫の言葉に花仙が察すると、薫も頷いて同意した。


 ―――5人いる状況で俺が動いたところで即制圧されるっつうの。


 「あれ...体験談の可能性があるのか...。」


 花仙はすぐにフレアの元に向かおうとするが、日が暮れてきているのに気づいて一旦止める。


 「明日4人でフレアの元に行こう。」


 「わかった。」


 「うん。」


 「はい」


 花仙の言葉に清雅、光琳、薫はそれぞれに返事をして宿屋に戻った。


 宿屋に戻ると、薫は奴隷に聞いた話のまとめをクリードとバンバに話した。


 「...。奴隷解放に光明の兆しが見えてきたという事か?」


 クリードがそう訊くと、薫は少し悩んでいる様子で頷いた。


 「これが正確な情報だとして、囚われている王子の救出が加わっただけで、聖転騎士団とは戦わなければいけないだろうし、なにより解放した後の奴隷はどうする?」


 「...。」


 「諦めたくないなら、もう少し情報を集めてこい。」


 クリードはそう言って、部屋を後にする。


 「きついな。」


 「話しかけた奴隷たちは何て言ってた?」


 「...え?」


 2人の会話に頭を抱える花仙を横目にバンバが薫に問いかける。


 「子供、ご老人、大人の人、私と同じくらいか少し年下くらいの子に共通してした質問があります。」


 「...。」


 「奴隷からの解放は諦めてしまいましたか? です。」


 「それで?」


 「皆、考え方や今の奴隷の立場の考え方に違いはあれど、口を揃えて奴隷のまま死ぬ気はない。って言ってました。」


 そう言うと、バンバは何度か頷いて顎に手を当てる。


 「明日は俺とクリードも同行する。もちろん別行動でな。俺と花仙と光琳でそのフレア・アステラの元に行く。何かありそうだしな。清雅と薫、そしてクリードにはナイトメア・クラインと接触してもらう。」


 「わかった。」


 「わかりました。」


 「はい。」


 「はい師匠!」


 「そこでの話と具体的な事情を知ってからこの一件の話がようやく動き出す。今までは仕掛けられてきた側だが、今回は仕掛ける側だ。慎重に情報を集め、こまめに情報を共有する。それでこの一件に加わるか手を引くかを決める。」


 「それクリードが決めることなんじゃねえの?」


 「もちろん。こうは言ったが、全員が寝た後に打診するさ。」


 花仙のツッコミにバンバは冷静に返して、宿部屋を出ていき、それに続くように4人も出て行った。


 そうして、何でも屋の6人が風呂や食事、休息をとっている頃、宿から一羽の鷹が鳴き声も上げずに飛び立った。そして、それを遠くで見る影が1つ。


 「もうそろそろ、中立なんだって言ってられなくなってきたかな。僕にも時間がない。」


 白い紳士服を身に纏った男。ブリザはそう静かに呟いて飛び立つ鷹を見届けた。

次話「忠誠の騎士、反抗の奴隷」


クリード「お前、甘くなったな。」

バンバ「かくいうお前もそうだろ。なぜ強く否定しない。自分たちの身だって危なくなるぞ。」

クリード「何でも屋だからな。無理難題でも依頼されればやるしかない。たとえそれが仲間の依頼でもな。」

バンバ「仲間...ねぇ。薫との確執があるのにか?」

クリード「それを知られた瞬間に仲間じゃなくなるだけで、今は仲間だ。」

バンバ「今は...ねぇ。」

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