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Blood Spare of Secret : The story of Creeds  作者: 千導翼
第四章 バルジェリア皇国編

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堕ちた騎士と奴隷の国

 シルヴァマジアを出国して丸3日レグスを走らせていると、高く広い壁が見えてきた。運転しているバンバはクリードに話しかける。


 「あれ、バルジェリアの城壁か?」


 「そうだろうな。あんな高かった覚えはないが、恐らく敗戦してからああなんだろう。」


 そんな会話をしながら城門まで行き、バンバが車から降りていくものの、夜だからか固く閉ざされており、ノックをしても何も返ってはこない。


 「昔と変わったな。こんな深夜でも兵士10人は起きてたもんだが。」


 「だから、敗戦してから昔のような騎士や兵士は居ないということだろう。」


 「では国にはまだ入れないな。」


 「今日も車中泊だ。」


 「これの構造では車中泊というか、走る住宅だろ。」


 2人はそんな会話をして、レグスを国から少し離れた場所に止めて、一旦クリードかバンバのどちらが見張りに起きているかを決める。その結果、バンバが眠ることになった。


 「悪いな。じゃあお休み。」


 「お休みしっかり休んでおけよ。バルジェリアでは食料の調達だけ済ませてさっさと発つ予定だからな。」


 「わかってる。」


 バンバは住宅スペースに薫や清雅、花仙や光琳を起こさないように入り、遠くの方で眠りにつく。そうして、眠れなかったクリードはレグスの運転席に座ってバルジェリア皇国の城壁を見る。


 「昔はこの時間帯でも、国が煌々と照らされていて、夜の来ない国とも言われていたな。昼夜問わず勇敢で優秀な騎士たちが国民と王族を守る強国。それがたった一度の敗戦でまだ国内に入ってもいないのに、こうも寂れた国に変貌するのか。」


 クリードはそう言いながら、バルジェリア皇国の敗戦時の情報を見る。


 「国内外問わず全世界が震撼した騎士の国バルジェリア皇国、小国の四方匡しほうきょうに敗戦。バルジェリア皇国を守る9つの騎士団の団長殉職。国王ユーシリウス・ドラグ・バルジェリアが処刑。もうこれも9年前か。時間が経つのは案外早いもんだな。」


 クリードはそう言いながら見た情報を片付けてバルジェリアの城壁を再度眺める。


 「音はしない。怪しい影も気配もない。国の中にいれば多少安心だが、一度国外に出ると見張りを立てなければいけないのが面倒だな。」


 そんな愚痴を吐きながら椅子を倒して寝転がる。


 「バルジェリアに車でに好きな食べ物と年齢を聞いたがまぁ想像通りだったな年齢は。薫と光琳が18歳。花仙と清雅が25歳。俺とバンバが27歳。好きな食べ物は俺が魚介系、バンバが肉系、薫はサンドイッチで、光琳は焼肉。清雅が焼き魚と酢豚、花仙が鍋料理全般とカレー。店に言って食べるとなると、揃いそうで揃わない品ばっかりだな。」


 車での移動中や眠る前に聞いた事を書いた紙を手に取る。


 「趣味は薫は服選び、光琳は狩り、清雅はスイーツ巡り、花仙は修行、バンバは歴史書を読み漁る事。何でも屋にいる理由。薫、ユーフォリアに行くため、光琳、師匠について行くと決めているから、清雅、姉を探すため、花仙、友達を探すため、バンバ、面白そうだからと安定して金を稼げるから。バンバと光琳はこの店に縛られる理由がない。その内辞めそうだな。」


 クリードはそう言って、貰ったカメラで何気なく撮った写真を見る。その写真には果物チョコアイスを食べている薫、光琳、清雅の姿。バンバの監視の元、花仙と実戦形式で修行している薫、光琳。夜に隠れて戦い方を花仙に教わっている清雅。花仙と光琳の将棋勝負と薫と清雅の囲碁勝負とそれを見ているバンバ。


 「女4人共仲良いな。」


 そんなことを言いながらクリードは無意識に微笑む。そうやって周りに警戒しながらも移動していた3日間やシルヴァマジア、シャインティアウーブ、クルードフォーミアでの思い出を振り返っていると、いつの間にか朝になった。


 「もう朝になったのか。朝ご飯でも作るか。」


 クリードはそう言って、運転席を降り、周りを警戒しながら住宅スペースに入った。


 「まだ眠ってるな。」


 クリードは炊飯器を見るが、ご飯はまだ炊き上がる前。完成する頃には炊き上がってちょうどいいと想定して冷蔵庫から取り出した食材でご飯を作り始める。


 「シンプルにベーコンエッグと油揚げの味噌汁とご飯にしらすを乗っけるだけで充分だろ。」


 そうして、慣れた手つきで料理を作っていく。ご飯が炊きあがる時間を考慮して少しゆっくり作っていく。そうして、炊飯器の通知音が聞こえるとちょうどよく焼きあがったベーコンエッグを皿に盛り付けて光琳と花仙の分にはケチャップをかけ、クリード自身と薫との分には醤油をかけ、バンバと清雅の分には胡椒をかける。すると、起きてきたバンバが味噌汁を注いで、ベーコンエッグと一緒にテーブルに並べる。その間に炊けた白米にはしらすを乗せて醤油やポン酢をかけずに持っていく。


 「皆起きたか?」


 「薫と清雅が起きたが光琳と花仙がまだだ。」


 クリードの質問にバンバが淡々と答えると、奥から薫と清雅が光琳と花仙を連れてきた。


 「おはよう。」


 「おはようございます。」」


 「おふぁひょぉ~ござぁいまふぁす。」


 「おっふぁ~。」


 薫と清雅はしっかりと挨拶したが、光琳と花仙はえらく眠そうな状態。


 「えらく眠そうだな。」


 「ギリギリまで起きてたので。」


 「特に2人が」


 「そうか。とりあえず朝飯でも食べてくれ。俺は食べた後しばらくしたら眠るからな。夜中ずっと見張りだったから眠れてない。」


 「わかりました。」


 クリードの言葉に薫は返事をして、席につく。


 「いただきます。」


 薫に続くように光琳、清雅、花仙も食べ始めて、薫と清雅はしらすに醤油をかけて、花仙と光琳はポン酢をかけて食べる。それを見てバンバと俺も食べ始める。


 「ごちそうさまでした。」


 全員食べ終わると流石に起きた花仙と光琳が着替えて外に出ようとする。


 「待て。」


 「何で?」


 「もうバルジェリアにはついている入国申請をしてから国に入るぞ。」


 クリードがそう言うと、花仙と光琳は顔を洗って歯を磨きだした。それに続いて、薫、清雅もいつも通り顔を洗い、歯を磨く。


 「珍しいな。」


 「いつもは洗顔は見ずつけるだけで済ませて口内はうがいだけで済ますのにな。一応国に入るかもしれないから気を遣ってるんだろう。」


 クリードの言葉にバンバも少し驚きながら言った。そうした後、クリードとバンバも洗顔と歯磨きを済ませてレグスを走らせる。そうした着いた城門に行くと、首に枷がついていて、酷くやつれた門番が立っている。


 「ん?」


 「?」


 運転して早めに見つけたクリードがその光景に違和感を持つと、それに気づいた助手席のバンバも怪訝そうな顔をする。しかし、ここまで来て引き返すわけにもいかず、門番に話しかける。


 「おはようございます。入国申請をしたいのですが。」


 「入国申請ですか? では、滞在期間をこの書類に書いてください。」


 「それだけでいいんですか?」


 「はい。これだけで結構です。」


 「(少ないな。)」


 入国申請の際の手続きの少なさに驚きながらも受け取った書類に書かれた文章をよく読んでサインしていく。


 「何でも屋一行、コーネリアス・クリード、橘薫、入町光琳、バンバ・キルラエル、富士浪清雅、陽葉山花仙の計6名。滞在期間は3日を予定。」


 書いた後の書類を確認した後に門番は書類を受け取り、敬礼をする。


 「では、6名様、城門はこれから開きますが、この腕章をつけてから進んでください。それでは...ようこそ。〝堕ちた騎士と奴隷の国〟バルジェリア皇国へ!!」


 かすれた声で叫ぶ門番の声と共にバルジェリアの城門は開かれる。その声を聞いた薫、光琳、清雅、花仙は窓から外を覗く。クリードとバンバはその異様な状態に違和感を持ちながらもレグスをゆっくりと進める。


 「...これ...どうなってるんだ...?」


 異様な国の光景にクリード達も目を丸くする。バルジェリア皇国内の状況はクリードとバンバが考えていたものよりずっと深刻だったからだ。


 「バルジェリア皇国の国章ってあれじゃ無いですよね?」


 薫が助手席のバンバに質問する。


 「ああ。バルジェリアの国章は盾と後ろで交差した槍と剣だ。あの国章は、四方匡の国章だ。」


 「四方匡しほうきょう...。」


 クリード達が目にした光景はその四方匡の腕章をつけた人間たちが大量の奴隷を連れて街を歩いている姿があった。そして、奴隷の顔立ちと奴隷を買っている人間の顔がかなり違う。これでクリードとバンバが判断したこの国の現実は。


 「「(バルジェリアの国民の全てが四方匡の人間の奴隷になっている。)」」


 というものだ。しかし、四方匡の人間はクリード達の乗っているレグスを見ても何も言ってはこない。あくまで外部の人間として見ているのだろう。


 「薫。」


 「はい。」


 「変な気は起こすなよ? この国の現状は俺達ではどうしようもない。たとえ奴隷が依頼してきたとしても、俺達ではどうしようもない。」


 「...頑張ります...。」


 建物が赤いのと、ところどころから臭う腐敗臭と血の匂いは恐らく奴隷同士を殺し合わせた結果だろう。そうして、クリード達が気分を下げていると、1人だけ奴隷を見つめている人間がいた。花仙だ。


 「花仙?」


 「知ってる。」


 「何が?」


 「あの鎖とかの枷知ってる。」


 心配する清雅の声に花仙は少し興奮気味に答える。


 「情報とかで写真が来てたの?」


 「違う! あれつけてる男をあたし知ってるんだよ!」


 花仙の言葉にクリードが質問する。


 「バルジェリアの奴隷がシルヴァマジアに来てたというのか?」


 「来てたっつうか。直近で会ったんだよ。えっと...フレアだ!!」


 「フレア? フレアだと? フレア・アステラの事か?」


 クリードは全く考えていなかった名前の登場に少し困惑しつつも冷静に確認する。


 「ん~えっとぉ~。そう多分そう!!」


 「アステラ族の炎帝が生きていて、しかもバルジェリアの奴隷だと? 信じがたいな。」


 クリードはそう言いながらも、シルヴァマジアで隕石の雨を止めた炎を思い出して、少し納得し始める。


 「だが、知ってたからと言って何か変わるわけじゃない。とりあえずレグスを止めて宿をとっておくぞ。」


 「そうしよう。それに、今はこの光景を見て少し冷静じゃないところがある。」


 クリードの言葉にバンバも同調し、レグスを止めてから比較的綺麗な宿で受付を済ませ、薫と光琳、清雅と花仙、俺、バンバで四部屋を取った。このタイミングでクリードに疲れが来て、早めに眠りについた。


 「眠っちゃいましたね。」


 「中々しっかりとした睡眠はとれなかっただろうからな。」


 「師匠も眠っていいんですよ?」


 「一瞬だけそうしようと思ったが。腕章をつけているといってもこれでは何一つ安心できない。一応起きておく。」


 バンバの言葉に花仙が自分と清雅を指さして言う。


 「不安でもあたしらいるぜ?」


 「でもバルジェリア皇国って。」


 「ああ。本来ならば騎士の国だ。見かけなかっただけで騎士がいる。それも聖転騎士団せいてんきしだんがな。」


 「聖転騎士団?」


 花仙にとっては聞き覚えのない言葉なのか首を傾げる。


 「血鎖狩人ブラッティソルのNo.1の団長と4人の幹部で構成された、バルジェリア最強の騎士団だ。」


 「バルジェリア最強って...負けてる時点で最強じゃねえじゃん。」


 「違う。聖転騎士団が結成されたのは四方匡に負けてからだ。」


 バンバの言葉に花仙は合点がいったというような顔で納得する。


 「あぁ~なるほど。血鎖狩人ブラッティソルのNo.1つっても、あたしらそれぐらいの異能力者スペアネル倒してんじゃん。勝てなくとも負けないようにはできるんじゃねえの?」


 「あれはあくまでも15歳ぐらいの子供で経験が足りてなかったからあれで済んだだけだ。相手はその力を持っておきながら経験も積んだプロだ。小手先だけの技術じゃ到底どうにかなる相手じゃない。」


 花仙の意見にバンバは冷静に説明しながら否定する。


 「師匠でも?」


 「今の俺では運が味方しない限り100:0で負ける。」


 「味方したら?」


 「99:1になるだけだ。」


 光琳のバンバへの期待と信頼をあっさりと折る。


 「青葉さんだったら?」


 「50:50だろうな。」


 「そんな人たちが5人...。」


 薫が同じ血鎖狩人ブラッティソルのNo.1の例を挙げるがそれでも五分五分という答えに清雅が言葉をこぼす。


 「そうだ。もちろん無理をしないという前提ならば、花仙と薫、清雅と光琳で分かれて行動することは許す。」


 「あたしと光琳、清雅と薫じゃダメなのか?」


 「片方が理性的じゃないと無駄に無茶するだろ?」


 「...それもそっか。」


 バンバの考えに花仙も納得して、薫を見る。


 「じゃあそうするから、バンバここにいて休んでてくれよ。」


 「...信用していいのか?」


 「してもらうしかねえよ。一応何でも屋で安定して強い人間つったら多分店長とあんただし。あたしと清雅...まだちょっとムラがあるからさ。いざって時の為に万全でいてほしいのよ。」


 「そのいざって時を来ないことを願うがな。」


 バンバがそう言うと、花仙は得意げに笑って腕を交差にして見せる。


 「それは保証できまっせん。」


 「こまめに連絡しておけよ。」


 「おっけおっけ。行こうぜ薫ぅ。」


 「あっはい。じゃあ行ってきます。光琳と清雅さんもまたね。」


 バンバの言葉を軽く受け取った花仙に対して薫が挨拶をして出て行った。


 「じゃあ私達も行ってきます。何かあれば連絡するので。」


 「ぜひそうしてくれ。気をつけろよ光琳。」


 「任せてください師匠!!」


 そう言って少し声のデカい光琳を連れて清雅が店を出て行った。


 「4人消えるだけで結構静かになるもんだ。」


 バンバはそう言いながら飲み物を買い、ちょうどいい椅子に座って飲んでいると、銀髪の男性が隣に腰かけてきた。


 「どこから来たんです?」


 「...シルヴァマジアから来ました。目的地はユーフォリアでその行きがけでこの国に来ました。」


 「そうですか。この国はどうです?」」


 「私、昔仕事でこの国に来たことがありまして...その頃と比べるとかなり変わったなと思います。」


 バンバの言葉を聞いた銀髪の男性は遠い眼をして深く頷いた。


 「私もそう思います。ぜひ昔のように戻ってもらいたいものです。心の底からそう思います。」


 「...。」


 「今の国は...何だか私の知っていた頃の活気も騎士の力強さも、国民と王族の厚い信頼も何も感じない。この国は...負けてしまってから全て死んでしまったのですね。」


 「...意外と、再起する可能性もあるかもしれませんよ?」


 「もはやそんな期待...この国に望んでいません。」


 「そうですか...。」


 バンバの言葉に銀髪の男性は諦めたような声で答えた後に立ち上がってバンバの顔を見る。


 「すみませんね。急に座ってきて急に話しかけていて、ちょっと喋りたくなったんです。あなた名前は?」


 「バンバ・キルラエルと言います。」


 「バンバ...。強そうな名前ですね。」


 銀髪の男性はニヤッとしながら言った。それに対してバンバも質問を返す。


 「そういうあなたは。」


 「ギアと言います。」


 「ギア...強そうな名前ですね。」


 「よく言われます。では...。」


 バンバも笑いながら褒めて会釈する。それに対しギアと名乗る男性はにこやかに笑って会釈をし返して、その場から立ち去った。


 「ギア...。まさかな。」


 「(鋭いなあの男。)」


 ギアと名乗る男性は内心そう思いながら店を後にした。

次話「騎士と奴隷」


花仙「さて、フレアに会いに行くかな。」

薫「どんな人なんですか?」

花仙「会ってねえの?」

薫「あの時、自分にいっぱいいっぱいで覚えてないんですよね。」

花仙「あぁ~あたしもそれだわ。何か記憶が曖昧なの。」

薫「きつかった時って大まかには覚えていても意外と忘れてますよね。」

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