増援
シルヴァマジア 中央部世界樹の都
空が黒い闇に覆われてから、消えた隕石の雨。それと同時、私たちの前から消えた4人と1匹。私は三頭狼を戻して、膝に手をつく。
「はぁ~疲れた。」
そんなことを言っていると、ローザンとアリューが来る。
「追いかける間もなく消えたな。どんな力か知ってるか?」
「知らない。襲ってきたときもあんな感じだったし、魔法以外の何かってことはわかるけど、それ以外はちょっとわからないかな。」
「そうか。じゃあ俺たちはこの状況の収拾だな。」
ローザンがそう言った瞬間、私は伸びをして2人の気配を掴む。
「ん? いるじゃん。連絡よこせっての。」
「は? 報告あったろ。」
「あったぞ。戦闘中に聞こえなかったか? 大樹のほうから。」
私は何を指摘されてるのかわからず、キョトンとする。
「...。あ、違う違う。クレイの事。」
「紛らわしいぞお前。」
「ん?」
気づいた私が訂正すると、アリューが納得した様に文句を言う。すると、ローザンが上空を見ている。
「どしたの?」
「少し離れるぞ巻き込まれる。」
「わかった。」
その言葉に私たちは即座に箒に乗って離れる。その瞬間、さっきまでいた世界樹付近の都が巨大な光線に放たれる。しかし、すぐに氷の障壁が張られる。
「あの規模...。」
光線と氷の障壁はぶつかり合い、障壁は光線を霧散させる。
「同ランク帯の異能力者が争ってるぞ。しかも、かなり上空でだ。」
「思ったよりも、この闇かなり高い位置から覆ってんだな。上空でぶつかり合う衝撃みたいなものは見えるが、影は見えねえ。」
「恐らくだけど、氷の方は守ってくれたから手は組めそう。ローザン、アリュー。」
私はそう呟いて、一緒に見ているローザンとアリューに声をかける。
「北西部付近で戦ってる影がある。そこの救援に向かって。私は、さっき光線撃ってきて殺されかけたから、やり返しに行ってくるから。」
「...何とも俗っぽい理由だが。まぁいい。」
「...エリナ。お前は相変わらずだな。」
2人はそう言い残して北西部に向かった。
「いや...殺されかけたんだから妥当でしょ。」
私はそう言って、戦っているであろう上空に向かう。
シルヴァマジア中央部上空
隕石の雨の一部を霧散すると、シャインティアウーブを襲った光の異能力者...白澤光が僕に向かって光線の嵐で襲う。
「!!」
「...。」
そんな中、彼女が光速で繰り出してきた蹴りを難なく防いでそのまま凍らせようとすると、すぐに距離を取って僕を見据える。その目は何やら虚ろで、よく見ると息切れも起こしている。
「(あの能力の規模といい、間髪入れずに襲ってきたことといい、あの状態...まさか!)」
僕がそう考えていると、彼女は大量の光を全身から放出して銃弾のように突撃してくる。僕は片手でそれを受け止めると、うなじを強めに打つ。
「...!!」
それでも反撃して来ようとしたから、すぐに背中を打ち落とす。そうして勢いよく地上に落ちていきそうになるがすぐさま体勢を整え光線を撃ってくる。
僕は手の平に氷を形成して、反射で光線の軌道を変えて避ける。
「はぁ...はぁ...。」
「もう止めるんだ。死んでしまうよ。(僕の考えが正しければ恐らく、この空の元凶も、あの隕石の雨を降らせた人も強化剤を打ちこまれている可能性がある!)」
「死ぬなんて今更...!」
彼女はそう言って、僕の周りに光の玉を形成してそこから光線を放ってくる。
「!」
僕はすぐに無数の氷のつぶてを形成して全て防ぎ、彼女の腹部に肘打ちを仕掛ける。
「ぐふっ...!」
直撃した箇所から彼女は凍っていく。
「うあああ!!」
彼女はそれに抗うように光速で空高く飛び上がり、空を覆っている闇に手を突っ込む。そうして、太陽の光を集めた手を僕に向ける。
「氷壁。」
「うあああ!! 陽光砲!!!!」
彼女がそれを放ったと同時に、僕を起点に広く氷の障壁を張る。
「うおおおあああああ!!」
彼女の叫びが聞こえる。僕は光線が直撃すると同時に光線の中を飛んで、彼女の目の前に現れる。
「!?!?!?」
そうして光線を放っている手を掴んで冷気を放出させて光線を霧散させる。
「なっ!?」
「今の君じゃ僕には勝てない。諦めるんだ。生きる事を止めちゃいけない!!」
「うるさい!!」
彼女は僕の手を振りほどいて、頭を抱えながら距離を取る。
「戦うことを止めるんだ!! 強化剤を打たれてるんだろ? このまま戦えば死ぬよ!!」
「くっ...ぅぅ...ぅああ!!」
彼女は苦しみながらも僕を睨む。
「(邪魔だ。こいつは邪魔だ!!)」
彼女は困りながらも光線を僕に撃って、落下する。
「何を...。」
すると、彼女がポケットから注射器のようなものを取り出すのが見えた。僕は上に氷を形成してそれを蹴って落下する彼女の元まで行く。
「使うな!!」
「(どうせ死ぬんなら...暴れてから死んでやる!!)」
僕は氷の刃を飛ばして注射器を手に取った彼女の腕を切り落とそうとしたが、
「!!」
寸前で注射器を首元に刺した。
「くっ...!!」
僕が苦い顔をして氷を形成してそこに降り立つと、彼女は苦しみながら僕と同じ位置まで上がってきて僕を見ながら笑っている。
「すまないが死なせないために荒っぽくいかせてもらう。」
僕の全身から冷気が漏れ出し、髪に霜が降り、目は水色に変色する。
シルヴァマジア森林部
隕石壊して無事かどうか確かめるためにキャンプ地に戻ろうとしていると、暗闇の中から虚ろな目をしている奴が現れた。
「暗いところでその外見って、お前はホラーかよ。」
俺がそう言うと、そいつはゆっくりとこっちに向かってくる。
「お前か。」
「...は? 何て?」
よく聞こえなかったから首を傾げながら訊くと、男は全身から闇を放出しながら向かってくる。
「ああお前この空の元凶か。」
呑気にそんなこと言ってると、片手から大量の闇を放ってくる。
「闇は全てを吸い込み覆いつくす。ありもしない希望も救いも。」
「うぜぇ。」
視界が真っ暗になって鬱陶しかった俺は、片手を振って闇を振り払った。
「話があるんだったら直接言って来いよ。何で襲い掛かるんだよ。俺がお前に何したってんだよ。心当たりねえぞ。」
「そんなものない。邪魔をしたから。それだけで充分だ。」
そいつはそう言って、影に消えて背後から現れる。
「!!」
そうして攻撃を加えようとする手首を掴んでぶん投げる。そうやって、開けた場所まで行くと、男は立ち上がって体から大量の闇を放出して俺に向ける。辺りの磁場が乱れるのが見える。
「おぉ~すげぇ。磁場どころか空間が捻じ曲がってらぁ。」
「虚穴。」
放出された闇が渦を巻き、大きな穴を形成する。形成された穴は重力が乱れてるのか、伸びたり縮んだりしながら吸い込まれていく。
「ブラックホールねぇ。うまく名付けたもんだ。」
「!!」
血管が浮き出てる。無理してるのがわかる。
「(何かキツそうだし。壊すか。) 噴火。」
俺はそう言ってブラックホールまであえて近寄って手を突っ込んでからマグマと炎を同時に放出して爆発させて、ブラックホールを形成している闇を吹き飛ばす。
「は?」
渾身の技だったのか、あっさりと壊され唖然としている男を尻目に立ち去ろうとすると、あいつが自分の影と俺の影を繋いで引き留める。
「お前は某忍者かよ。」
俺が呆れたようにそう言うと、
「影爆。」
影を破裂させて俺を殺そうとした来たから瞬時に体を炎にして回避して、目の前に現れて頭に強めにチョップをかまして
「危ねえな殺す気か。」
と言って、再度立ち去ろうとすると男が黒い鎌を投げてきた。
「何だよ。」
俺がそう言うと、男は驚いた顔をしながらも、戦闘態勢を崩さずに訊いてくる。
「なぜまともに戦わない?」
「俺はこの国より守らなきゃならない人がいるんだよ。だからそいつの無事を確認しねえと、暴れ辛いだろうが。わかったか? 俺にはお前みたいなガキ相手してる暇ねえの。」
面倒そうにそう答えると、男はニヤリと笑って俺を見る。
「じゃあそいつを殺せばお前は俺と戦うのか?」
「は? 何言ってんだお前。」
俺が引き気味に突っ込むと、男は頭や顔を掻きむしりながら言う。
「俺は...恵まれたやつが許せない...。異能力者の癖に...恵まれ、幸せな奴が許せない!!!」
「どうした? えらく情緒不安定だな。」
傷つけた皮膚を再生させながら、大量の闇をまた放出させる。そうして、地面から大量の影の武器を形成して、俺に襲ってくる。
「急に話せなくなるの何なんだよ。」
俺はそう言って、襲ってきてる影の武器以外にも、キャンプ地に向かっている武器を発見する。俺は地面を強く蹴ってその方向まで移動して全て叩き落して、それでも形成を続ける男の目の前まで言って頭を蹴って地面にぶつける。
「本当に狙うやつがあるかボケぇ。」
そう言いながら男の頭を掴んで何度も地面にぶつけて気絶させようとすると、体を闇に溶かして消える。
「どうした!? 能力は使わないのか!?」
どこからともなくあいつが挑発するように言ってくる。
「こんな場所で使ったら森に燃え移るわバカ。ってか能力使わずにほぼ戦いになってねえんだから使うわけねえだろ。効率悪いんだよ。」
俺がそう言うと、上から黒い槍を持ってハヤブサみてえに突撃してくる。
「いい加減俺以外の相手見つけろよ。」
黒い槍を片手で掴んで振り回して男を吹っ飛ばして槍を足元に投げる。
「舐めやがって...。」
「んあ?」
男の呟きに首を傾げると、そいつは立ち上がりながら俺を見据える。
「ここじゃ本気出せないんだろ? 大事な奴がいるんだろ?」
「うん。」
「じゃあまとめてぶっ壊してやる!」
男はそう言って、注射器を手に取って手首に勢い良く刺した。
「何してる?」
「う...ぐおぉ...ぐああああああ!!!」
男は酷く苦しんだ後に、空高く飛び上がり、空を覆っている闇を吸収し始める。
「あ?」
「さっきとは比べ物にならないぞ!!! 虚穴!!!!」
そうして馬鹿でかいブラックホールを作り出して国ごと吸い込もうとする。
「おいせっかく俺が被害出さないように戦ってんのにふざけんなよ。」
俺はそう言って、ブラックホールにさっきのようにまた突っ込む。
「は?」
そうして、中から空を覆ってる闇ごと爆炎で吹き飛ばす。
「...何...?」
何かすげえ驚いてる。俺は拾ってた小石を男に投げる。
「?」
「ほら、戦いたかったんだろ? 来いよ。多分強くなったんだろうしな。」
俺はそう言うと、体に熱がこもり髪と目を橙色に変色する。
シルヴァマジア北西部
女性陣と分かれて戦い始めたばっか。今俺は、死にかけてる。
「明らか3番手みたいな雰囲気だったくせに...ナチュラルに異能力者威力してんじゃねえよ。」
俺が血を拭いながら言うと、あいつは欠伸をしながら歩いて近づいてくる。
「へっ。余裕そうにしやがって。」
そう言いながら隣にできたデカい渓谷を見る。
「(あの炎の剣...一振りだけでこの威力なら...そんな簡単に二度目は出せねえはずだ。)」
俺は再度しっかり構えて、体の熱を一点に集める。
「烈火掌。」
そうして俺は熱のこもった拳を相手の腹部に一発打つ。
「...。」
「猛火!!」
その流れでもう一方の手に更に熱を込め、同じ個所に叩き込み、同じように元の手に更に熱を込めて、どんどん速度を上げていきながら連続で全身に叩き込む。そして、締めに両手に熱を込め掌底を打つ。
「(どうだ?)」
少し距離を取って様子をうかがうと、男は上に片手を挙げる。
「(大して効いてねえのか!? 手応えあったぞ!!)」
「来い。」
男がそう言った瞬間、あの激しく燃え盛る炎の剣が手元に降りてくる。
「!!」
俺はすぐに姿勢を低くして回避しようとするが、それよりも早く男は剣を振り下ろす。振り下ろされた剣からさっきと同じように炎の斬撃が飛んでくる。次の瞬間、俺は空を見上げて、地面に倒れていた。
「...!!」
体が馬鹿みたいに熱い。避けきれずに直撃した。体は黒焦げだがまだ動く。
「(もっと距離を取るべきだった。避けきれなかった。ってか、何であんなすぐ出せるんだよ!?)」
何とか立ち上がると、俺の攻撃何て効いていないような様子の男が炎の剣を持って立ち尽くしていた。
「(無くなってねえ!?)」
驚いてると、男は炎の剣を見て、今度は両手でしっかりと掴んで振り上げる。
「体が慣れてきたようだな。」
「は?」
男の言葉を聞いて何か違和感がある。それに気づいて、顔つきを見てみると、やっぱり何か違和感がある。
「(何か様子違くねえか? あんな顔つきだったか? 喋り方...全体的に雰囲気が...。)」
そう思いながら攻撃をあてた俺の拳を見る。
「...?」
俺は構え直して、一瞬で距離を詰めて脇腹を殴る。
「(かてえ!?)」
確信した俺は反撃される前に距離を取って、何とも思ってない男を見る。
「(あの威力といい、規模といい、炎の剣を持ったあいつはまるで異能力者と戦ってる感覚になる。だが、炎の剣を持ってない時は結構戦える感じがあった。そんで実際に今攻撃仕掛けたら、全然手応えねえじゃねえかよ。何でああなるかはわからねえが、炎の剣を持ってる間はどうやら、持ってない時より遥かに強くなってる。でも、あの言葉を信じるなら...まだ安定性はねえ。ワンチャン狙うとすれば...炎の剣が無くなった瞬間に、一撃で沈めることだ。)」
俺はリラックスして構えを取る。それを見たからか、男は剣を勢いよく振り下ろす。
「!!!」
俺は腕を前方に交差させて炎の斬撃に飛び込む。
「?」
その中で全身に受けている熱を一点に集中させる。
「烈火掌・業火!!」
俺は斬撃を防ぎきって目の前に降り立ち、炎の剣が消えていくのを確認した後に、集中させた拳を勢いよく胸部に向かって打つ。
「(手応えあった!!)」
「グハッ!!」
男は大量の血を吐いてよろけるが倒れはしなかった。
「(耐えきっただと...!?)」
「今のままだとやっぱり脆いね。流石に痛かったよ。」
男がそう言うと、俺は後ろに跳んで距離を取る。
「もう戦えないよね君。1回はまだ良かったけど、後の2回直撃だもんね。」
「はぁ...はぁ...。」
「君強いよ。でも、その力を扱いきれるほどの技量があとちょっと足りてないね。」
「何...?」
「でも懐かしい。まるで昔の僕を見てるようだ。」
男は笑顔で炎の剣を手に取る。
「だからこそ一つ言えることがある。」
「...。」
「強さだけでは何の意味もない。」
瞬時に防御態勢を取る。次の瞬間、炎の剣が、男が見えなくなる。
ガン!!
何かがぶつかり合ったような音がする。
「誰だ?」
俺は少し後退ったその姿を見る。すると金髪の白衣を着た男がいた。
「ど~も~。通りすがりの科学者でぇ~す。イェーイ。」
「シャインティアウーブのトップ。」
俺がそう言った瞬間、後ろに何人かが降り立つ音がして振り返ると、獅業と他4人の科学者?が立っていた。




