鬼哭
シャインティアウーブ ミラージュタワー最上階
橘薫がフリード・フォン・ファーヴァと対峙した時と同時刻、シャインティアウーブでは1人の男が警察庁長官ヴェルフォルア・スミスと対峙していた。
「まずは名を名乗ったらどうだ?」
スミスの問いに男は酷く冷たい目で答える。
「情報は既にいっているでしょう? あなたを捕らえに来たんですよ。」
「3人と聞いているが?」
その返答にスミスは首を傾げると、男は淡々と話し始める。
「他2名は依頼を受けた段階でシルヴァマジアに向かってもらいました。あちらの方がどうやら荒れている様子でしたので...。ここは、あなたさえ何とかすれば、後はここの通信機やらでルーク市長の身の潔白とこの戦いの無益さを証明すれば、とりあえずある程度収まりますので...。」
「あちらも倒さねば、収まらんと思うが...。」
「ですので、僕の相棒がフリードを倒すまで時間を稼ぐんですよ。」
男がそう言うと、スミスは眉をピクリと動かす。
「なるほど...。で? 君は私やフリードを若造1人で倒せる程度のものだと考えているのか?」
「考えているも何も...事実でしょう? 前線から離れて指揮に集中していた立場では衰えは激しいものですよ。」
男の言葉にスミスは立ち上がって、立てかけていた鉄の箱をガトリングガンに変形させて男に向ける。
「目上の者への敬意が足りないな。」
「ただ年だけ上の人間を敬うような心は持ち合わせていませんので...。」
男は両手を上げて持ち合わせがないことを示す。
「ふっ...まぁいいだろう。その度胸だけは認めてやろう...。小僧...名を名乗れ...。」
「立神獅業です。戦う気ですか?」
獅業がそう訊くと、スミスは少しイラついた様子で答える。
「見ればわかるだろう?」
「こちらとしては戦わずに大人しく投降してもらったら楽なんですが...。」
「小僧...舐めるのも大概にしろ...。」
「それはこちらのセリフです。あなた如き、あいつと比べればそこらのハエと何も変わらない。」
スミスの怒りを抑え込んでいる声に対し、獅業は初めて感情のこもった声で答えた。
「この消骸のスミスを甘く見るなよ!!」
「...。」
そうした問答の後、ヴェルフォルア・スミスと立神獅業が激突した。
そうしてしばらく時間が経ち、橘薫がフリード・フォン・ファーヴァを倒した直後。
「くはっ...。」
獅業との戦いに敗れたスミスが仰向けに吐血しながら倒れていた。
「だから言ったのに...。」
「貴様...何者だ...?」
「ただの...元何でも屋ですよ。」
獅業はそう言って、睡眠液の塗られた矢を刺して眠らせる。
「あとは、この資料を映像でバラまいて、この戦いを終わらせるか...。あ、報告。」
獅業は依頼人から貰っていた魔力のこもった紙を耳に当てる。
「もしもし、聞こえてますか? 依頼を受けたものです。こちらヴェルフォルア・スミスを捕らえました。」
そう報告すると、紙の向こうの相手は感謝を述べた後、依頼料の話をした後に話を終えた。
「よし、ぐるぐる巻きにでもするか...。」
獅業はそうして巻いたヴェルフォルア・スミスを背負ってミラージュタワーに戻ろうとすると、紙から名前を呼ぶ声が聞こえた。
「ん? もしもし、聞こえてます。...。」
そして、フリード・フォン・ファーヴァが倒された事を知り、話を終える。
「フリードが倒された? 誰が? 奈終夜?」
獅業は無線機を手に取って、虎牙奈終夜に連絡を取る。
「もし~どうした?」
「シルヴァマジアに着いたか?」
「いや? 今、司のあねさんが先に国に入ったところだ。何かあったのか?」
「ああ。フリードが既に倒された。」
「は? 誰がだよ。」
「それはまだ聞いてない。とりあえず、予定よりも早くそっちに行けそうだ。すぐに報告してここを治める手伝いをして向かう。何かわかったら随時報告する。」
「おっけ。」
獅業はそう言って、無線を切る。
「奈終夜でも司さんでもない...。内部の人が既に...でも、そんな暇はないという依頼だったはず...。いや、今は今やれることを終わらせてからだ。」
獅業はそう言って話を切り上げて眠ったスミスを背負ってミラージュタワーに戻った。
この更に前のシャインティアウーブ地下監獄
自分の爪を切って繋げたもので、牢獄の鍵を外す影が1つ。
カチャ
その音と共に牢獄の錠が外れ、扉が開く。そうして、扉から出てきたのは、七瀬愛翔である。
「改装前の牢獄で助かったぜ。牢からの脱出成功。このまま千波連れて逃げてやるぜ。」
愛翔はそう言って、監獄内の抜け道を通って看守の目を掻い潜りながら、外の扉を目指す。
「盗賊の経験がこんなところで活きてくるなんてな。」
愛翔はそう言いながら静かに歩いていると、浦坂千波の牢の前に来る。
「ぉ~ぃ。」
愛翔は小声で話しかけると、全くの無反応の千波に違和感を持ち、檻に近づいてよく見る。
「...?」
すると、そこには廃人と化している千波の姿があった。
「...相棒...。おい...俺だ、俺だよ七瀬愛翔...よく口喧嘩...したろ? まぁそん時はお前、男で騙されてる最中だったけど...。」
愛翔は周りの目など気にせずひたすら話しかけた。
「俺さ...騙されてたってわかった時...すげぇ...悔しかったんだよ...でもな実はそれ以上に...悲しかったんだ。あの時、ボスに拾われて...お前と組まされたとき、あん時...くっそ悪態ついてたけど...正直嬉しかったんだ。家族みたいな存在できたって思ってさ...。戻ってくるって信じてた人は皆戻ってきてくれなくて...寂しかった...そんな中だったから...嬉しかったんだ。」
千波は反応しない。
「だから...あの時騙された....って思った時...悲しかったんだ...。今度、また仲良くなればいいかなって...思ったんだよ。で...今日...一緒に脱出しよう...って思ったんだ...居場所をくれた...お前に恩返しするためにさ...。」
反応はない。
「ごめん...甘かったわ。俺の...考え...お前がこうなったのって...多分...ボスのせいだよな? でも、俺のところに...何もないってことは......庇って...くれたんだよな? わかんねえけど...そう思いたいから...そう思うわ...。今のまま...無理やり外出しても...そりゃ自由じゃ...ねえよな。」
周りから何か足音が聞こえてくる。それに愛翔は警戒しながらも無反応な千波をじっと見つめて考える。
「...。なあ相棒。俺...これから...あんたに恩を返すために戦う。感謝されないかもしれないけど戦う。そうやってしていくうちに、あの人たちに会えるかもしれない。だからとりあえず戦うための道具を手に入れるために、火事場泥棒しに行くわ。」
愛翔はそう言って、ちなみに深くお辞儀をしてから、監獄から出た。
シャインティアウーブ廃棄された武器庫
愛翔はシャインティアウーブの薄汚れ場所に来て、壊れた武器ばっかりが捨てられていた。
「こんな未来的な国な癖してこういうところもあるんだな。流石に使われているところだと通報されると思ったけど...まぁまともな装備ないよなぁ...。ここでも考え甘いな。」
そう愚痴りながらも、周りの音に警戒しながら壊れた部品を漁っていた。
「ん?」
その中で複数の物が積みあがっている一番下に何か巨大な物体を見つけた。
「う...ぐぉ...おっっっっっっっも...ぐぉぉぉぉ...!!!」
そうして、積み上げたものをどけて下にあった物を引き摺って取り出すと、それは棺のような鉄の箱だった。
「何だ? 何か書かれてる...。」
ASSAULT WOLF
「は? 何て書いてあんだこれ? あ..あすぇうえると...を...をぇるふ? ...は?」
愛翔は何度も瞬きして、黙ってしまった。
「...アサルト...ウルフ...? って書いてあんのこれ? え? うざ...。asarutouruhuって書けよ。何お洒落に英語使ってんだよ。ってかどやって開けんだ? これ。」
そうすると、何かパネルのようなものを見つけた。愛翔は自分の手のひらを見てから箱を改めてみる。
「電源入ってんのか? これ? いや、入ってたとしても...認証式だと...開かねえだろ。」
そう言いながらも試しに手のひらを当ててみる。
―――認証開始
「は?」
―――あなたのお名前を教えてください
「...な...七瀬...愛翔...。あの...漢字の七に瀬戸の瀬...愛に翔けるって書くんすけど...。」
―――認証しました七瀬愛翔様
「え?」
―――突撃型決戦兵器・孤高の大狼起動します。
「は?」
愛翔は期待していなかった展開に驚きながら、開いた鉄の箱の中身を覗く。
「す...すげぇ...開いちゃったし...何かめちゃ武器入ってる...。」
愛翔は装備のASSAULT WOLFと書かれた箇所を指先で触った瞬間...中身の武具が自動的に装着され、大きな鉄の箱は4つに分かれジェット噴射機となって、突然飛び立つ。
「ちょっと待てどこ行く気だ!?」
―――強大な敵がいる方に
「いきなりそんな奴と戦えるかぁ~~~~~~!!!!!!」
愛翔はそう叫びながら装着された装備に勝手に移動させられた。
シルヴァマジア国外避難キャンプ地
薫さんがフリードさんを倒しに行ってからすぐ、私達の目の前には 銀髪赤眼に黒い服を身に纏った男が現れた。
「あなたは...誰ですか?」
私がそう言うと、男は周りを一瞥した後に光琳さんを見る。
「その眠ってる子渡して。」
「(光琳さんが狙い!?) 何でですか?」
私がそう訊くと、男は少し考えた後に答えてくれる。
「その子の力が必要なんだ。俺の目的の為に...。」
その答えに私は直感的に
「(この人に預けたら絶対にダメだ。)」
と感じて、光琳さんの前に立って、男を見る。それを見た他の人たちも光琳さんを取り囲むように近づいた。
「動かなかった奴らは関わりたくないってことか。じゃあ...」
男は動かなかった皆に手をかざしながら言う。
「閉じ込めろ、牢獄。」
そうすると、皆が無重力状態のように宙に浮いてその場から離される。
「...!!」
それに私が驚くと、光琳さんを取り囲んでくれた人たちも少し怯み後退ってしまう。
「閉じ込めろ、牢獄。」
その人たちも同じように浮かされてその場から離される。
「...!」
皆何か言っているが、声が聞こえないあれを受けると音すら聞こえなくなるらしい。そうして私だけ何もされずに残される。
「力は無いが度胸はあるのな。」
「光琳さんは...渡しません...!!」
私は腕を広げて守るように立ち塞がると、男は鼻で笑って私を見て
「お嬢ちゃん。それはね...勇気ある行動じゃなくて...」
一瞬で目の前まで移動してきて
「無謀って言うんだよ。打て、剛拳。」
と言いながら私の腹部を殴ってきた。
「ぅぁ...。」
私は軽く浮かされるとそのまま普通に蹴られて無理やりどかされた。
「光琳さん!」
私がそう叫ぶと、男は光琳さんを抱きかかえて、その場を立ち去ろうとすると上から何か音が聞こえる。
「ん?」
男がその方向を見ると、青と黒の鎧を身に纏った人が落ちてきた。
「っつう~。こいつ無茶苦茶すぎる...。」
その人はそう言いながら、周りを見て私と光琳さんを抱えている男を見る。
「これ...どういう状況なの?」
「その女の人を助けて下さい!! その男の人は敵です!!」
私は咄嗟にそう叫ぶと、その人は男の方を見て戦闘態勢を取る。
「(何が何だがわからないままだが...とりあえずあの子の言葉を信じて) やるしかねえ!!」
その人はそう叫んで、男に向かっていく。男は光琳さんを上に投げてその人の攻撃に備える。
「(変異せよ、過銀。)」
男は体を水銀のようにしてその人の攻撃をすり抜け、すぐに再生した後、拳を鋼鉄に変える。
「打て、剛拳。」
「うぉ!?」
さっき私が受けた攻撃をその人は何とか防ぐけど、そのまま私の方に吹っ飛ばされてしまい、男は投げた光琳さんを受け止める。
「大丈夫ですか?」
「うん。君誰?」
その人は立ち上がりながら私の名前を訊いてきた。
「陽葉山花奈。15歳です。」
「15...タメかよ。俺は七瀬愛翔。」
七瀬さんはそう言って、再度男に向かっていった。そうして、男はまた光琳さんを上に投げて攻撃を受ける。
「私も何か役に...。」
―――私、今日回復魔術の授業でね。先生から回復魔術の才能があるって言われてね!
「(そうだ。私には...回復魔術の才能が...。土壇場で光琳さんを目覚めさせれば...戦わせるの? あんな傷だらけで...。そんなの...言ってられない...!) やるしかない!!」
私はそう決心して杖を取り出して、光琳さんに向けて魔術を唱える。
「かの者を癒したまえ。治癒。」
しかし、発動しない。
「くっ...(魔力の流れを感じて、治したい者に流し込むように、優しく、丁寧に...) かの者を癒したまえ。治癒。」
発動しない。私がそれをやっている中、七瀬さんは光琳さんを受け止めながら楽々と戦う男に翻弄されている。
「チッ、クッソ。」
「打て、剛拳。」
男は地面に向かって鋼鉄の拳を叩きつけて土煙を起こす。
「くっ...。」
「狩れ、刃爪。」
そして、爪を伸ばして刃のようにして刺す。
「ぐぉ!!」
七瀬さんは後ろに跳んで距離を取る。
―――銃撃や砲撃は使わないのですか?
「はぁ? あんの?」
―――当り前じゃないですか。何でわからないのです?
「お前が何も試させずに唐突に飛んでここまで連れてきたからだろうが! おかげで俺は今さっぱりだよ!」
―――それは失礼。
「おせぇ!! 何もかもおせぇ! 俺戦ってるから勝手に装備を変形さしてくれよ!」
―――了解しました。
七瀬さんがそう何かと問答していると、男が呆れたような顔で見ている。
「あ? 何だよ?」
「終わったか?」
「...終わったよ!!」
七瀬さんはそう言って、男に殴りかかる。その瞬間右腕の甲が変形して剣が出てくる。しかし、男は簡単に爪の剣で受け止めて、七瀬さんを蹴り飛ばす。
―――戦い下手ですね?
「うっせぇ!」
また問答している。だが、私は気にしないように治癒魔法に専念する。
「(落ち着け...花奈は...やればできる子...。) かの者を癒したまえ。治癒。」
でも、発動しない。
「(くっ...どうすれば...。お母さん...お婆ちゃん...私...どうすればいいんだろ...?) かの者を癒したまえ。治癒。」
やはり発動しない。そうして、何度も同じように詠唱して魔術を行使しようとする。でもやはり発動しない。そんな中、お母さんとお婆ちゃんの死んだときの場面がフラッシュバックする。
「(お母さん...お婆ちゃん...。)」
そして、まだ生きているはずの姉の死んだときの場面がフラッシュバックする。
「(お姉ちゃん!!)」
お母さんが刺された時も、お婆ちゃんが切られた時も、私は何もできなかった。あの時と同じように私は今、何もできてない。
「(あの時、回復魔術を使えていたら、助けられてたんだろうか。今使えなかったら、浮かされた皆もああなるのかな。)」
そんな考えが脳裏に過る。
「(お姉ちゃんも...もしかしたら今頃...。使えなかったら...光琳さんも...ああなるのかな。助けてくれてる七瀬さんも...。嫌だ。そんなの嫌だ。誰かが居なくなるなんて嫌だ。当たり前に毎日喋ってた人がいなくなるなんて嫌だ!!) かの者を癒したまえ! 治癒!」
でも、発動しない...ように見えた。
「...!」
微かに杖から緑色の光ようなものが投げられた光琳さんに向かっていくのが見えた。私は咄嗟に光琳を寝かせていたところに向かって走る。
「ん?」
「よそ見してんじゃねえ!!」
「(何で急に武器を...? あそこは...? まさか...。)」
男は光琳さんの方を見ようとする。それと同時に私はとりあえず一番に取った武器を光琳さんに投げる。
「!!」
そして、目を覚ました光琳さんは即座に武器を受け取って、真下にいる男に向かって武器をしたに突き出すようにして落ちる。
「...!!」
「は? 何か目覚ましたんだけど。」
「あなたは誰ですか?」
驚いている七瀬さんを余所に光琳さんは武器を入れていた布を剥いで後ろに投げ、私はそれを受け止める。どうやら私が投げたのは槍らしい。
「俺の名はバラガラ。」
「...バラガラ...!?」
「ん何? 知ってんの?」
置いてけぼりの七瀬さんの質問に光琳さんは警戒したまま答える。
「私は直接会ったことは無いんですけど、師匠と青葉さんとクリードさんと薫っていう仲間が戦ったって...。」
「クリード? あんたクリードさんの知り合い?」
「はい...。」
「マジかよあの人どこだよ?」
「いません。突然ここに移動させられて...。」
「なるほど。おっけもう訊かないわ。」
「あなたは?」
「愛翔!」
「わかりました!」
どうやら2人には共通の知り合いがいるようで話がスムーズに進み、2人でバラガラと言った男に向かっていく。
「(片方は意識を取り戻したが、重傷なのは変わらない。簡単に制圧できる。)」
「私も少量でも回復でサポートを...。」
「「はぁぁぁぁぁ!!!」」
「複数ならば。刻め、斬翼。」
バラガラは伸ばした爪の刃を納めて、肩甲骨の部分を水銀のように変形させて鋼鉄のように固めて無数の刃の翼を作り出し、そこから刃を2本抜き取って、剣のように2人の攻撃を受け止める。
「な...なんじゃそりゃ...。」
「ぐ...(痛みが...)」
「かの者たちを癒したまえ。治癒。」
杖から少量の緑の光の粒子が出て2人に入っていく。だが、余りにも少ないせいで2人は気づかずバラガラを攻撃し続ける。
「くっ...。」
「大丈夫か!?」
「大丈夫...(刹鬼が使えない)」
七瀬さんは苦しそうな光琳さんに代わって多く攻撃を受けている。
「かの者たちを癒したまえ、治癒。」
そうして、戦っている2人に魔術を使っていると、だんだん治癒を撃っている魔力量が多くなっているがわかる。
「(あの子...才能の塊かよ!?)」
「(ありがたい...何とか戦えてる!)」
「(倒れなさすぎる...。ゾンビか?)」
しかし、バラガラは2人の様子を見て違和感を持ったのか、私の方を見た。
「(杖...。まさかあの子、あの数分で治癒魔法を使ったのか? だから、突然こいつが目覚めて、意識も失わずに戦っているのか。なら...!)」
バラガラは気づいたのか、2人を吹っ飛ばして私の方に向かってくる。
「「(バレた!)」」
2人はすぐさま体勢を立て直して、私の元に来ようとしてくれるけど、息が合わずにぶつかってしまう。
「ごめん!!」
「すまん!!」
「うぁ...!!」
その隙に私はバラガラに首を掴まれる。息ができずにもがいていると、バラガラは杖を持っている手を握りつぶす。
「うあああああああ!!!」
「てめぇ!!」
私がそう絶叫すると、七瀬さんが一気にバラガラとの距離を詰めて攻撃を仕掛ける。
「焦ったなぁ?」
それを片手で受け止めて、首を掴んでいた手を放して、落ちる私にぶつける。
「陽葉山さん! 愛翔さん!」
光琳さんがそう叫ぶとバラガラは一瞬で目の前に移動して押さえつけられる。
「ぐぅ...くっそぉ...!!」
「3対1でこれとは...弱くて運が良かった。あの2人のどちらかいたら面倒だったがなぁ...。」
「光琳さん!!!」
「まぁこれはこれで好都合。」
「...くぅ...バラガラ...!!」
バラガラはそう言いながら、光琳さんの意識を落とそうとする。
「...ぅぁ...。待てコラ...。」
七瀬さんが立ち上がって、戦闘を続けようとするけど、疲れてきたのかすぐに膝をついてしまう。
「何で...俺がこんなにバテてんのにお前...平気そうなんだよ。」
「潜ってきた死線が違うからな。」
「ぐ...ぅぅ...。」
今にも光琳さんが落ちそうになっている。
「かの者をぉ...癒したまえ! 治癒!!」
しかし、魔術は発動しない。
「くっ...杖が...。」
私がそう言っていると、すぐ近くで声が聞こえてきた。
「もし~どうした? ...いや? 今、司のあねさんが先に国に入ったところだ。...何かあったのか? ...は? 誰がだよ。...おっけ。」
「ん?」
短い銀髪にグローブのような武器をぶら下げている男性が現れた。
「!?」
「ん? 光琳さんじゃん。何やってんの?」
男性はラフにそう言うと、この状況を見てグローブのような武器を装備する。
「あんたの目的...これだろ? 極限ノ鬼哭。」
男性がそう言うと、銀髪がより輝く銀となり、インナーカラーに赤くなり、目の色が赤く光る。
「深天極地...しかも完全覚醒のか...。」
「待ってな光琳さん。今、助けるからな!」
男性はそう言って、赤と銀のオーラを放ちながら向かっていく。




