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Blood Spare of Secret : The story of Creeds  作者: 千導翼
第三章 シルヴァマジア編

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邪悪且つ狡猾なる狂人

9年前


 緋愛がいなくなって1年が経った。遊ぶ相手もいないし、勉強は相変わらず面白くないし、暇潰しにずっとランニングをしたり、筋トレをする毎日だった。


 「つまんね。」


 あたしはそんな事を呟きながら、いつも通りの道を歩きながら家に帰る。


 「あんたブスなんだからでしゃばんないでよ!」


 「智樹くんにちょっと話しかけてもらったからって、勘違いしちゃってさ! 誰もあんたの事なんて見てないっつうの!!」


 遠くの方で声が聞こえる。あたしは引き寄せられるようにその声の方に歩いていった。


 「!!」


 するとそこには、複数人の女子に囲まれて泥だらけで怯えている花奈がいた。あたしはバッグを置いてすぐに花奈の元に走る。


「しかも、あんた、姉ちゃんブスよね。あんな日焼けしてさ。」


 「じゃ...ない...。」


 「は? しゃべんないでよ!!」


 花奈が何か言おうとしたところをリーダーっぽい女子に蹴られる。


「ブスじゃない! お姉ちゃんは家族の中で一番の美人だもん!」


 「!」


 ずっと怯えていた花奈が震えているけどはっきりと、あたしに対する悪口に反抗した。


 「お姉ちゃんのこと何も知らないで馬鹿にするな!!」


 「!! ちょっと顔が良いからって調子に乗んな!!」


 「おい!」


 「「「「「!!!!」」」」」


 あたしが少し低い声で威嚇するように話しかけると、女子たちはあたしの方に顔を向ける。


 「どけ。」


 「...はい...。」


 あたしに完全にビビっている女子たちの間を通って、あたしは花奈の前に屈む。


 「大丈夫?」


 「...うん...!!」


 さっきまで怯えきっていた顔が嘘のように笑顔になる。それを見てあたしも思わず笑顔になって、花奈を起こして一緒にその場から帰ろうとする。


 「...でも...悪いのは...その子だ...!! そいつが...智樹くんと仲良くするから!!」


 「ちょっと...。」


 「やめてよ...。」


 そこに、リーダーっぽい女子が声を震わせながらも、花奈の事を指差して言った。他の女子は思わず引いてしまっている。それだけあたしが怖いんだろうな。


 「智樹くんってのがどんな子かあたし知らないけどさ...。」


 「?」


 「仲良くしてるからってあたしの妹にこんなことしてる時点で振り向いてもらえるって思ってんの?」


 「!」


 「自分のことしか考えられないんだね。」


 「!!」


 「今後妹に手を出すな。次に手を出したら餓鬼の遊びの範疇じゃすまねえ事するからな。」


 「「「「はい...!!」」」」


 あたしはそう言い残して、花奈と一緒に帰る。すると、玄関前で疲れきっている母さんが立っていた。


 「「ただいま。」」


 「んあ? あ、おかえ...。」


 「中で話すよ。」


 「...わかったわ。」


 花奈の様子を見て言葉を詰まらせた母さんにあたしは耳打ちするように言った。


 「で、何があったの?」


 「えっとねぇ...。」


 あたしはとりあえずさっき見た光景をそのまま話した。その後、花奈が学校であったことを話した。


 「虐めかぁ...。」


 「転校とかできたりする?」


 「できるけど...花奈はどうする?」


 「え?」


 ボーッとしていた花奈に母さんが話を振ると、首をかしげてあたしの方を見る。あたしは同じことを訊く。


 「転校するか?」


 「嫌だ! 逃げたことになるもん!」


 「え?」


 「はは! 花仙みたいな事いうようになったねぇ。姉妹って似るもんだねぇ。」


 意外な答えにあたしは目をパチクリさせてしまい、母さんは腹抱えて笑った。それを見て花奈も満面の笑みを浮かべて声を出して笑う。


 「そっか。でもね花奈? 無理しなくていいからね。迷惑だなんて思わなくていいから。迷惑だって思って話してくれない方が迷惑だからね?」


 「そうそう自分一人で出した答えに納得してそれを盾には話す面倒から逃げるな。」


 「うん...! ありがとう! お姉ちゃん! お母さん!!」


 「よし! じゃあ夕飯にしよっか。」


 「うん。」


 そうやって、一先ず花奈の話は終わって、あたしは花奈と母さんと一緒に夕飯を食べて、リビングで本を読む。その間に、花奈は風呂に入って就寝し、母さんは化粧を落としていつでも寝れるように風呂も済ませて、リビングに来た。


 「あの祭りの日からあんた元気ないね。」


 「そう?」


 「やっぱり自覚なかったかぁ...。何があったの? もう話してくれてもいいんじゃない?」


 あたしは少し考えて、あの時の事を正直に話した。


 「へぇ~。で? 探しに行きたいの?」


 「わかんない。今でもあいつの声の感じとか、雰囲気とかは鮮明に覚えてる。だから、軽々しく再会しちゃいけないような気もするし、会いたいって気持ちもある。」


 「会いたいって思うなら、会いに行ってもいいんじゃないかなって私は思うよ。」


 「...。」


 「何もせず後悔するより、何かして後悔したいからね。自分の我儘わがままを通してこそ、相手の気持ちに寄り添う余裕ができるんだよ。」


 「自分の我儘を通してこそ...。」


 「まっ、どうするかは結局あんた次第だけどね。花仙、明日も学校なんだからあんまり夜更かししないようにね。」


 「...うん。ありがとう、お母さん。」


 「親として子の悩みに寄り添うのは当然なんだから、お礼なんていらないわよ。」


 母さんは軽い助言をして、眠りに就いてしまった。あたしはその後、風呂に入ったり、歯を磨いたりしながら、あの日の事をずっと考えた。


 「(花奈の虐めもあれで終わる保証なんてない。あたしの悩みより、まずは花奈の事を優先しろ。)」


 それから、あたしは登下校に花奈に付き合って、学校に向かうことにした。そのおかげか、しばらく花奈の虐めは少なくなって、花奈もよく笑うようになって、安心しきっていた矢先に、それは起こった。


 「あの先生。うちの花奈知りませんか?」


 「今日は友達と帰るとかで、先に帰りましたよ。」


 「え? その友達って言うのは?」


 すると、担任の教師はあの虐めていた女子グループの名前を言った。あたしはすぐに、あの時の虐めの現場や、女子グループの子達が使っている登下校の道を散策したりして必死に花奈を探した。


 「助けてお姉ちゃん!!!」


 そんな中、近くで必死に叫んでいる花奈の声が聞こえた。あたしは一目散にその方向に走っていき、その現場に着いた。


 「!?」


 するとそこには、紙を引き千切られて、泣き腫らした目をしている花奈と複数人の男女が取り囲んでいた。


 「あ、来た来た。」


 1人の男子生徒があたしを見てそう言った。すると、背後から背丈のでかい男があたしの頭を掴んで、地面に押さえつけた。


 「うがっ!!」


 「おぉ? こりゃ美人。餓鬼共の戯れ言かと思ってたら。とんだ大物だ。」


 男が気持ちの悪い口調でそう言いながらあたしを見る。


 「ごめんねお姉ちゃん。私のせいで...。」


 「あんたのせい? 馬鹿かって、あたしが勝手にあんたが心配で探しに来たんだから自業自得だよ。」


 あたしに向かって泣きながら謝る花奈にあたしは優しく声をかける。


 「お姉ちゃん...。」


 「いいねえ姉妹愛? でも俺、小学生には興味がねえんだよなぁ...。」


 男がそう言って、小学生共が見ている前であたしの服を剥がそうとする。あたしは完全にどうしようもないと思って諦める。


 「待ちな。」


 そこで、1人の老婆が見たことのない武器を持って、あたしら姉妹の前に現れた。これが、あたしの今の師匠である烈宝林れつほうりんとの出会いだった。


シルヴァマジア国民避難地区


 母さんと避難した土地で、婆さんと花奈と再会した後に、そこでとんでもないニュースが流れ込んできた。


 「ジーク・ヴィネアが捕まった?」


 「ルーク・ギルデアが戦争を仕掛けてきた...。」


 あたしと花奈が口々にそのニュースの文章を読んだ。そして、同じように読んだ同じ避難民は、狼狽える者、落ち着いて呑み込む者、ニュースの内容を否定する者と様々だ。


 「皆落ち着け! ジークさんが捕まったのは何か策があるからだ。それに、ルーク・ギルデアが戦争を仕掛けてくるわけないだろ! 忘れたかよ2年前! 2人とその両翼が命懸けで俺達を守ってくれたことを!」


 「そうだ! 俺なんて娘を助けてもらってる!!」


 「あたしだってお父さんとお母さんを助けてもらった!!」


 「2年経ったんだぞ! 考えが変わってる可能性だってあるだろうが!」


 「落ち着いてられるか! もしこの情報が本当だったら、俺達はこのままここにいていいのかよ!!」


 「そうよ! いつ敵が来るかわからない!!」


 狼狽えている者と否定する者が激しく言い合い、飲み込む者は黙ってその光景を見ている。


 「とりあえず深呼吸して落ち着きましょう。動揺している状態ではうまく頭が働きませんよ。」


 そんな中、母さんが言い合っている大人たちを仲介して、落ち着かせるように動く。


 「おぉ~やってるやってるぅ~。」


 「!!」


 そんな母さんを黙ってみていたら、背後から聞いたことのない声が聞こえ、あたしはその声になぜかゾクリとして、すぐにスレイバーを手にとって、臨戦態勢に入りながら後ろを向く。


 「お前は...誰だ...?」


 黒い外套に白髪と紅い眼で傷がある男が不気味な笑みを浮かべて、木の上に座っていた。


 「誰? そうだなぁ...あいつによく言われたのは...邪悪で狡猾な狂人ってやつだ。よろ。」


 「(強い。とんでもなく強い。下手すりゃあのスペアネルよりも...。)」


 「さて、俺の目的はただ1つ。ここにいる半数を殺して、国を落とすことだ。これはルーク・ギルデアの命令だ。」


 男がそう言った瞬間、他の国民達は畏怖の視線を向ける。


 「ぉお~いい反応すんねえ。」


 「嘘だ! あの人は俺達の国を死ぬ覚悟で守ってくれた!!」


 「今だって時々会いに行ったら、暇つぶしに付き合ってくれる!!」


 「(信頼されてるねえ。)」


 その反応に男は面白がるようにそう言って歩き出す。あたしはスレイバーを強く握って叫ぶ。


 「逃げろ!!!」


 何でこんなにビビってるのかわからないが、本能的に恐れてる


 「花仙!!」

 

 「へ?」


 あたしが叫んだ瞬間かわからないが、男は一瞬であたしの目の前に移動してきて、胸部に強い掌底を受ける。


 「グハァ!!」


 あたしはたったその一撃で大量に吐血し、宙を舞うように吹っ飛ばされる。


 「さて...。」


 「!!」


 男が近くにいた花奈と婆さんの方を見る。そこに母さんがすぐに2人の前に出る。


 「(母さん!!)」


 あたしはすぐにスレイバーを伸ばして、男の腕を切り落とす。


 「あたしの家族に手出してんじゃねえよ!!」


 あたしはそう言いながらスレイバーを戻しながら体勢を立て直す。


 「おぉ~切れ味抜群だなぁ。」


 カチッ


 「「!?」」


 「何...!?」


 謎の音と共に、切り落としたはずの腕はまるで元から切り落とされてなかったかのように戻った。その光景を見て、母さんは花奈がいることを確認しながら男を凝視している。


 「いつまで驚いてんだぁ? 家族に手を出すな。じゃなかったのか?」


 男はそう言って、持っていた銃を母さんに向けて引き金を引こうとする。


 「!!」


 あたしはすぐに走りながらスレイバーを伸ばして、男を攻撃し、母さん達の前に立って逃げている皆のもとに向かわせる。


 「花奈!! 母さんと婆さん頼むよ!!」


 「うん!!」


 「へぇ~...家族そんなに大事なんだ? 陽葉山花仙。」


 「(名前を知ってる...何で...!?)」


 あたしはそう考えながらも、男に攻撃を仕掛けるが、最小限の動きで回避されながら、焦って出してしまった大振りの一撃は容易くいなされ反撃を受ける。


 「良いこと知っちゃったなぁ~。」


 「!?」


 男の言葉と顔を見て、あたしはすぐにスレイバーで首を切り落とそうとしたが、あっさりと避けられ、また反撃されそうになり、あたしは咄嗟に防御の体勢をとる。


 「バ~カ。」


 そんなあたしの耳元で男は楽しそうな声でそう言って隣を横切る。


 「(馬鹿かあたしはあいつの狙いは!!) 花奈!! 母さん!! 婆さん!! 人混みに紛れろ!!」


 あたしは走りながら逃げている母さん達にそう叫ぶ。


 「(はええ。何で追い付けない!?)」


 「ハッハハハハ!!! 遅いんだよ動きがぁ!!!」


 「笑ってんじゃねえよ!! 気色わりい!!」


 あたしはそう言いながら、母さんを襲おうとしている男にスレイバーを伸ばす。


 「ヒヒッ...。わかりやすいなぁ...お前...。」


 すると、なぜか男はスレイバーが当たる寸前であたしの方に振り向いて不気味な笑みを浮かべる。


 トン


 次の瞬間、謎の音と共に男が目の前から消え、代わりに母さんが現れ、


 「...!?」


 あたしの伸ばしたスレイバーが母さんの心臓を刺し貫いた。


 「グ...クハッ...。」


 母さんは刺された胸部から血を滝のように流し、口から大量の血を吐きながら倒れる。


 「お、お母さん?」


 「見るな見るんじゃないよ花奈!」


 「...。」


 あたしはスレイバーをその場に落として、刺した母さんの元に駆け寄って、ゆっくりと抱き上げる。


 「母さん...お母さん...起きてよ...。」


 「グフ...フヴァ...花仙...花奈を...おね...。」


 バン!!


 「...は?」


 血で喋り辛くても必死に喋っていた母さんの頭が銃声と共に吹っ飛ばされる。


 「遺言とかいらねえから。黙って死んでくれよ。もう出番終わったんだからよ。話の無駄じゃねえか。あんたにそんなドラマを客は求めてねえんだ。」


 人混みの中から男が欠伸をしながら歩いて現れる。


 「んな...。」


 あたしはゆっくりとスレイバーの刃を母さんの遺体から引き抜く。


 「んあ? もうちょっとでかい声で言ってくれよ。ちゃんと耳かっぽじって聞いとくからさぁ!!」


 「ふざけんなああああああああああ!!」


 あたしはそう絶叫しながら、スレイバーの刃を掴んで男に向かっていく。

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