合流Ⅱ
10年前
今日は夏祭り、あたしは特におしゃれなどせずにいつも通りの服装で来た。
「皆和服だな。まぁあたしは似合わないしこれでいいだろ。母さんは何か頑張れとか言ってたけど...そんな関係にならねえっての...。」
あたしが1人でそんなことを言っていると、和洋折衷?な服装で現れた。
「花仙はいつも通りの服だね。ほんと飾らないよね。そこがいいんだけど。」
「緋愛は結構おしゃれしてくるよな。」
「そりゃ一度きりの人生。いろいろやっておきたいじゃん。」
「まぁ確かに?」
「確かにに疑問符をつけるなよ。」
あたしらはそんなやり取りを交わしながら、祭りの屋台に行った。そこでたこ焼きや焼きそば買って、2人でしょうもない話をしながら食って、その後はお面を買って着けたり、水風船釣りをやったり、広場を使って行われる流鏑馬での射的を交代でやったりした。
「花仙うまいね。僕1つも取れなかったのに。」
「そりゃあ、これがプロってもんよ。」
「調子乗り過ぎ。」
あたしらは景品のへそ出しジャケットとグローブを貰って、緋愛には帽子と懐中時計を渡した。
「ありがとう花仙。一生大事にする。」
「どういたしまして。ちゃんと一生大事にしろよ。」
緋愛からの感謝の言葉にあたしは腕組みしながら得意気な表情でそう言った。そうこうしていると、祭りが終わって、皆帰ろうとしていた。あたしらもそれに続いて帰ろうとした。
「花仙。」
すると、緋愛があたしの手を掴んで引き留める。あたしは首を傾げながら緋愛の方に体を向けて立ち止まる。
「帰るのはちょっと待ってさ。とりあえず人気の少ない場所に行こう。」
「お、おう。わかった。」
緋愛の提案にあたしは困惑しつつも素直についていく。そうすると、緋愛がつれてきてくれたのは、大量の流れ星が見える場所だった。
「うわぁ~すっげぇ~。」
「...。」
あたしはその光景に感動しながらつれてきてくれた緋愛の方に目をやると、何か凄い寂しそうな顔であたしのことを見ていることに気づいた。
「緋愛?」
あたしがそう言うと、緋愛はあたしの前まで歩いてきて、凄い真面目な顔で言う。
「花仙。僕はあの雨の日に君にお礼を言われて以来...僕は君の事が好きだった。」
「...は? ......は? ...え? ちょ...え?」
その言葉にはあたしは気が動転して言葉がうまく喋れない。
「君の事が好きだ花仙。君の為なら僕は自分の命を捨ててもいいくらい僕は君の事が大好きだ。」
「...いや...いやいやいやいやいやいや...。あたしとお前は別にそういう関係には...。」
あたしが動揺して、後ずさりしながらそう言うと、緋愛は凄い寂しそうな顔で頷く。
「うんなれない。」
「.....?」
「だからこそ、君に僕の本心を聞いてほしかったんだ。」
言葉の意味が一発でわからず、あたしはその場で硬直する。
「僕はこの夏休みが終わったら、この国を出るんだ。だから、君と付き合うことはできない。でも、これが最後だから僕の本心を知っておいてほしかったんだ。」
「...。」
「だから、告白しておいてなんだけど、僕のことは振ってくれ。そして、新しい人と出会って幸せになってくれ。僕のことは思わせぶりな最低な男という風に認識してくれ。ごめんね花仙。本当にごめん...。この2年ほんとに楽しかった。僕を普通の学生にいさせてくれてありがとう。僕の友達になってくれてありがとう。」
「...。」
寂しそうだがどこか覚悟を感じるような表情をする緋愛を見て、あたしはなにも言えなかった。本能的にあたしはこれからもう緋愛と会うことはないと悟る。
「突然だったよね。ごめん。せっかくの楽しい時間を台無しにしたね。とりあえず今日は帰ろう。家まで送るからさ。」
「あ、ああ。」
それからの緋愛との帰り道、あたしは無意識に手を掴んで寄りかかるような体勢になる。
「...あたしも好きだよ緋愛。」
「...!」
「だから...最後なんて言わないでさ、会いに来てよ。」
「...花仙...。」
「もし無理だったら、あたしが探しに行くからな。」
「...。」
あたしが静かにそう言うと、緋愛は涙を流していた。それが嬉し泣きなのか悲しいから泣いたのかは今でもわからないけど、あたしは気づかないようにした。そうしてあたしの家の前まで着く。あたしがいつも通り玄関に手をかけると、緋愛が一言
「さようなら。」
と言った。それに対してあたしは、少し考えたのちに
「またね。」
と言った。すると、緋愛は目を見開いて深く頷く。それを見たあたしは家の中に緋愛を見つめながら入った。そして、あたしの姿が見えなくなったからか、その場から走り去る音が聞こえた。その日、あたしは帰ってきてから玄関の前でうずくまっていた。
早朝 シルヴァマジア国外 ラファスのアジト
あまり疲れてなかったからか、早く起きたあたしは他のやつらを起こさないように静かに外に出る。すると、外から移動していたあたしを見ているラファスを見つけた。
「白澤光。全員起こしてくれよ。」
「まだ朝日すら出てない。」
「だからだろうがよ。特等席で見ようじゃねえか。襲撃に遭う2つの国を。」
「は?」
寝ぼけてるためかよく理解ができない。それを見て、ラファスは不気味かつ不快な笑みを浮かべてあたしの前まで一瞬で移動してきて、耳元で囁くように言う。
「これから、シャインティアウーブとシルヴァマジアそれぞれの軍を互いの国に差し向けさせて、戦争を起こさせる。」
「どうやって?」
「そりゃお前...作った協力者を使うんだよ。」
ラファスは心の底から楽しそうな声でそう言った。そして、こう続ける。
「それで、起きた戦争の責任をシャインティアウーブとシルヴァマジアそれぞれのトップ3に押し付けて、辞任から死刑へと持っていく。」
「失敗したら?」
「失敗したら、戦争阻止で消耗している所を俺がやる。」
あたしはずっと遊び気分で話すラファスを見て、こいつの異常性の片鱗を見た気がした。
「起こしてくる。」
「ああ~頼む。」
あたしはとりあえずラファスから離れたくなって、皆を起こしに行った。
シルヴァマジア
ーーー...ク...ーク....ジーク...ジーク!!
聞き覚えのある声と共に体を揺らされて僕は目覚める。すると、目の前にボサボサ頭のエリナがいた。
「おはよう。」
「おはよう....じゃなくて! ジーク! 軍に命令とか出した!?」
「いや....あくまで防衛戦だし...。ちょっと待って...何で軍に命令をしたと思ったの?」
「シャインティアウーブに魔法軍が進軍を開始したの! そして、全く同時に今、シャインティアウーブの軍がこっち進軍してるんだよ!」
「え?」
予想していなかった展開に僕は驚きのあまり一瞬だけ固まる。しかし、すぐに平静を取り戻して、エリナと共に家を出て外を様子を確認する。
「...。」
あらかじめ国民は避難させているから静かだが、確かな物々しさを感じる。
「(軍を直接動かせるほどの地位を持った人は国を統治している森長と、その補佐、そして元老院の軍務大臣。)森長は僕、補佐はクレイ、軍務大臣は...。」
ーーー北部の領主であるローザン・アンティルと南部の領主であるアリューメス・フローレスの協力を受諾。ただし、国民の不安を最小限に押さえるために、ローザンには杖と剣を分け、アリューメスには亜人の力を行使することを禁じた上で戦いに挑んでもらうことを条件とする。ーーーーーー
軍務大臣 フリード・フォン・ファーヴァ
「... (軍務大臣が...軍を動かした。何で? 国民を巻き込むことになるのに...。そもそも、何でわざわざ万全の状態のローザン君とアリュー君を戦力にしなかったんだろう...? 何で今のタイミングで動いたんだ? クレイが完全に出払っているときじゃなく、なぜ今...?) 唐突なスペアネルの脱獄。スペアネルを連れ去った謎の影。急に動き出した軍務大臣...。脱獄は自分にもリスクがある。」
「ジーク?」
「(スペアネルの脱獄、連れ去った影、軍務大臣の動き、この間を取り持つ存在がいる?)」
ーーー鉄猫のマーシィちゃんが捕まってて...あの喋り方からして、恐らくありゃ単独じゃなく集団で活動しているやつだった...戦争を起こしたいか、それとも俺たちとあいつらの命だけが重要なのか....。
帰ってきたクレイが言っていた言葉が脳裏に過る。僕はエリナに自分の考えを予測をまじえて話ながら、いつも通りの服に整え始める。
「恐らく...裏で糸を引いている敵の狙いは僕とルーク君とそれに連なる側近...僕で言えばクレイとエリナの抹殺だと思う。」
「うん。」
「その為に、ここでは軍務大臣を恐らくあちらの方もだけど、うまい話を持ちかけて、戦争の火種になるように煽った。それと同時に、個人的な戦力を集めるために、スペアネルを脱獄させた。恐らくこことあっちの国を襲撃したね...。」
「え? あっちも脱獄したんだっけ?」
「明確な情報は入っていないけど、あのスペアネルを連れ去る速度は、普通の人間じゃ無理だよ。だから、スペアネルとして仮定するよ。そして、軍務大臣が起こしてくれた火種によって戦争が起きれば、責任をとらされるのは実質的な部下の勝手を許した僕とルーク君。最悪、補佐のクレイとリーフ君、宰相のエリナとアスカさんにまで責任がいって死刑まで持っていかれる。」
それを聞いたエリナは若干引き気味な顔を浮かべる。
「先手とられた?」
「うん。完全にね。(同じようなことが起きているなら、僕の知るルーク君ならこのきに乗じて、大立ち回りを演じるはずだ。なぜなら、今回の戦争を起こす火種を撒いたのは僕だということに軍務大臣はしたいはず...だから今ごろ、僕を捕らえに来ている最中だろう...。) エリナ?」
「ん?」
「今から僕の考えを話す。そうしたら、君にあらゆる指揮系統をしばらく任せることになる。大丈夫?」
「誰に言ってるの?」
「...そうだね。じゃあ話す。」
僕は一通りこれからの流れをエリナに言って、蒼月の大杖を託す。
「じゃあしばらく...獄中生活を楽しんでおくよ。」
「任せなよジーク。」
「うん。頼む。」
エリナはすぐに僕の家から離れた。しばらくすると、軍務大臣が兵士を引き連れて僕のところへ来て、僕はあえて抵抗せずに捕まった。
シャインティアウーブ
ーーーこれはどう言うことか説明してもらおうか? ルーク市長?
唐突に俺の職場に警察庁長官様が大勢の警察を引き連れて押し掛けてきた。
「どう言うことかって?」
「なぜ、和平を結んでいるシルヴァマジアに軍を送ったのかについてに決まっているだろう。」
「何の事かさっぱりっすね。」
俺がそうやって少し小馬鹿にしたような態度をとっていると、長官様が俺の顔の隣を壁を蹴る。
「今自分がどういう立場か弁えろ。下手な誤魔化しは通用せんぞ。」
「誤魔化しっつっても、マジで心当たりないっすもん。」
「正直に答えた方が部下のためだぞ?」
長官様は、他の警察官が仕事中の部下に銃口を向けている映像を壁に投影する。俺はその様子を一瞬だけ見て、のんきに机に肘をついて手を組んで長官様を見る。
「脅しすか?」
「私とて手荒な真似はしたくはない。」
「凄いっすねぇ。まだ軍がシルヴァマジアに到達しきってないのに、軍を引けとかじゃなくて、俺が進軍させたってことを認めろって脅してくるとは。新手のギャグすか? つまんないっすねぇ。」
俺がそう言うと、長官様は手で1人の警察官に発砲を命じようとする。
「撃ったら...。」
「ん?」
「あんたの半身...消し飛ばすよ...。」
「やってみろ。今のお前に味方するやつなどおらん。」
とはいいつつ、長官様は発砲許可を取り下げて、俺にガン飛ばしてくる。
「最近面白い情報が入ったんすよ。」
「ん?」
「相手の狙いは俺とその両腕、ジークとその両腕の抹殺で、その為にスペアネル3人を利用し、戦争の火種を起こすための協力者をシルヴァマジアとシャインティアウーブ内に潜ませている。その協力者の名前はシルヴァマジアの軍務大臣、フリード・フォン・ファーヴァ、シャインティアウーブの警察庁長官、ヴェルフォルア・スミス。」
俺がそう話していると、映像に写る警察官が一斉にカメラの方を見る。長官様は目を見開いて、拳を握りしめているのが見える。
「そして、その狙ってきた相手ってのは、テゼルの盗賊団のラファス・ドゥイレル。...合ってます?」
俺が白々しいテンションでそう言うと、長官様はため息をつきながら指を鳴らす。すると、武装した警察官が一斉に突入してきた。
「ルーク・ギルデア。外患誘致罪で逮捕する!」
「外患誘致罪? うまい自己紹介だなスミスさん。」
俺はそう言いながら、椅子から飛び上がり、武装した警察官が投げてきた催涙弾を蹴り返したところで、煙で視界が悪くなった警察官の後頭部を勢いよく蹴って、気絶させていく。
「近接格闘で奴に敵うと思うな!! 銃を使え!!」
スミスの声が聞こえた方向に俺は近づいていき、すぐに隠し持っていた。手榴弾を奪って、銃を俺の方に向ける音を頼りに、手榴弾を投げる。
「この野郎!」
すると、警察官は手榴弾を撃ってしまい、爆発してしまう。俺はその爆風の勢いにのって、部屋から出て、奪い取っておいた銃を両手に持って、部下に銃口を向けていた警官共の足と腕を撃って、部下を助ける。
「お前ら、国の人間を避難させろ!!」
「「「「「「了解!!!」」」」」」
「いい返事だ! 給料あげといてやるよ!!」
俺は部下に指示を出した後にライレトを使って、リーフとアスカに連絡をとる。
「リーフ! アスカ!!」
「繋がってるぞルーク! 無事だったようだな。」
「ああ! おかげさまでな!」
俺とリーフがそんなやり取りをしていると、アスカも合流して現状を報告する。
「言ってる場合じゃありませんよ。シルヴァマジアの軍が来てます。しかも、どうやら正気じゃなさそうです。」
「だろうな。ジーク君が進軍なんてさせるわけがねえ。」
「どうする?」
「速攻で今いる敵を全部倒す。そして、シルヴァマジアに救援に行く!」
「「了解!」」
俺はリーフとアスカに指示を出した後に、ライレトでマーシィに話しかける。
「マーシィ、ボーダーver.10を起動、武装する。」
「了解。」
俺は一直線にシルヴァマジアの軍が来ている場所に向かう。
「チッ...逃げられたか...。貴様等!! ルーク・ギルデアがジーク・ヴィネアと共謀し、国家転覆を考えていると報道させろ!!」
「了解しました。」
「せっかくのチャンスだ。お前の思い通りにはさせんぞ。ルーク・ギルデア...!!」
数時間後 魔工車レグス
大分体調が安定してきた頃に、私達の元にニュースが飛び込んできた。
「シルヴァマジアの森長が捕縛、シャインティアウーブの市長が逃亡...。」
「どうやら始まってしまったようだな。」
クリードさんとバンバさんがそう言っている間、私はテレビをじっと見つめている。
「少し速度を上げて早く行くことにしよう。バンバ付き合ってもらうぞ。」
「もちろんだ。」
クリードさんとバンバさんはすぐに運転席と助手席に行ってレグスを走らせる。
「不安だね。」
私を気遣ってくれているのか、清雅さんが優しく声をかけてくれる。
「はい... (ずっと、胸騒ぎがする。)」
「薫?」
私の元気のない返事に流石に違和感があったのか、光琳が名前を呼ぶ。
「ごめん。ちょっと眠らせて。」
「うん。」
私は光琳と清雅さんに笑いかけて横になる。
「(何か見れるかもしれない。)」
私はそう考えて目を閉じた。




