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Blood Spare of Secret : The story of Creeds  作者: 千導翼
第三章 シルヴァマジア編

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知らないはずの声

11年前


 あの雨の日から、あたしは緋愛とよく遊ぶようになった。そうして1年経った頃に、あたしは家に呼ぶことにした。


 「今日、あたしん家に来なよ。」


 「...え? 花仙の家に...僕が...?」


 「嫌か?」


 「いや...そんなわけないけど...。」


 「そんじゃ決まりだな。」


 そんなやり取りをして、今日の放課後にいつも通り緋愛と菓子とかを買い食いしながら家まで帰る。


 「何してんだよ。入るぞ。」


 「あ...いや...。(緊張している僕が間違ってるのか?)」


 「ん?」


 「ごめんごめん。入るよ。」


 あたしが緋愛のリアクションに首を傾げていると、緋愛は首を振って何か吹っ切ったような顔で家の中に入っていった。


 「失礼しま...。」


 「わぁ!!」


 「ん?」


 「知らない人だ!!」


 緋愛が職員室に入るみたいなテンションで玄関を上がろうとすると、4歳の妹が出迎えてくれていた。


 「知らない人じゃなくて、姉の大事な友達だよ。話には何回か出したろ? この子があたしの妹の花奈だよ。どうよ、あたしに似てなくて可愛いだろ?」


 「うん、可愛いよ。...花仙も...。」


 「ん?」


 「ん? どうかした?」


 「...いや、何か聞こえた気がしたんで...。」


 「気のせいじゃないかな。」


 「...そうか。」


 あたしは微妙に納得しなかったが、それ以上訊いても答えてくれなさそうだったから、深くは訊かなかった。


 「初めまして、陽葉山花奈です。」


 「初めまして、火竜堂緋愛って言います。」


 「お姉ちゃんがよく話する人だ!」


 「え? そうなの?」


 「そりゃいつも遊んでもらってるからな。」


 「...ありがとう。」


 素直にお礼の言葉を言われて、あたしは何故か胸の奥が熱くなった。


 「じゃ、じゃああたしの部屋に行こうぜ。ほら、花奈も一緒に来い。今日母さん帰り遅いんだから、あたし1人じゃなんだからって、緋愛も呼んだんだぞ。」


 「あぁ~なるほどそう言うこと。なら早く言ってくれればよかったのに。(そうしてくれたら、余計な期待をしなくて済んだのに...。)」


 「ごめんごめん。」


 「じゃあ晩御飯も一緒に食べてくれるの?」


 「あ、いやそれはだな...。」


 「もちろんだよ。」


 「...すまねえな。」


 「止めてくれよ。これくらいで謝られたら、花仙に優しくできないよ。」


 「そうだな...ちょっとネガティブすぎだなあたし。」


 緋愛に指摘されて、苦笑いをしながら反省する。そうして、その日は花奈と緋愛と一緒にトランプや宿題をしたり、2人で今日の晩飯を作って、食べた後に雑談しながら食器を片した。そうして、緋愛が帰る時間が近づいてきた。


 「もう帰っちゃうの?」


 「ごめんね花奈ちゃん。これからもたまに来るからその時はよろしくね。」


 帰ろうとしている緋愛に寂しそうにしている。花奈に緋愛は安心させるように笑って、次に会う約束を取り付ける。


 「今日はありがとうな。」


 「いやこちらこそだよ。楽しかった。また呼んでね。親がいるときでもいいからさ。」


 「そんなこと言ってたら本当に呼ぶぞ? 親居る時に。」


 「望むところさ。じゃあね花仙明日も学校で。」


 「ああじゃあな緋愛。」


 あたしは緋愛とそう会話を交わしたあと、別れを告げて家に戻った。それからというもの、あたしは定期的に緋愛を家に呼ぶようになり、そのおかげか、緋愛はあたしよりも花奈と仲良くなり出した。


深夜3時 魔工車レグス


 夜中トイレに行きたくなって起き上がると、外で焚き火をして本を読んでいるバンバさんが目に入った。


 「...。」


 私は少し考えながらトイレに行った後、顔を洗って水を飲んで、バンバさんの元に行く。


 「バ、バンバさん。」


 「ん? 薫か。あまり音をたててないと思ったが、起こしたか?」


 「いえ、自分で起きてバンバさんが目に入ったので...。」


 バンバさんの質問に私は首を振って素直に答えた後、クリードさんに言われた言葉を思い出して、暗い表情になる。


 「そうか。何か用か?」


 「はい。少しだけ...。」


 それに気づいているはずなのに、バンバさんは敢えて触れずに、いつも通りに接してくれる。それに対して、私はバンバさんの向かい側に座ってあの時の事を話した。


 「お前は俺を殺す時...か。確かにクリードが言ったのか?」


 「はい。」


 「そうか...。(まぁ元々暗殺者をやっていたのだから、誰かから恨まれている自覚はあるか...。だとしても、それを直接薫に言うということは...何か特別なものがあるのか?)」


 「それで、私...何でそんなことを言ったのかが気になってるんですけど...直接訊くのが怖くて...だからと言って、バンバさんが何か知ってるのかもとか思って来たんじゃないんです...。」


 「ほう?」


 私の話しに来た理由が意外だったのか、バンバさんは顎に手を当てながら、私の目を見る。


 「昔のクリードさんについてを訊きたくて...。」


 「なるほど。今のクリードしか知らないからこそ、あいつの発言を信じられない訳だ。それで、判断材料が欲しいと...。」


 「いえ別にそんな...。いえ、そうかもしれないです...。」


 「わかったいいだろう。ついでにこの際だ、俺と青葉のことも交えて話そう。」


 「お願いします。」


 私がそう言うと、バンバさんは頷きながら、膝に肘をついて話し始める。


回想


 俺と青葉、そしてクリードは全く同じ日に入校する形で出会った。俺が転入、青葉が入学、クリードは特待と言った形だな。


 「よろしくお願いします。」


 俺のクリードの最初の印象は、他の人間とは違ってひどく機械的な印象を受けた。その印象は当たりで、感情はなく、損得でしか話をしないところや、仲間のはずのクラスメイトに対して冷たくて、練習とはいえ、成功率が低くなれば簡単に見捨てるところもその後すぐ見ることになったからな。


 「よろしく...。」


 逆に青葉は第一印象が当たってなかった。最初の印象こそ暗くて、完全に死にきった目をしていて、やつれていた癖に、後の授業で情に厚くて、回りのムードを明るくしたり、練習では最後まで仲間を見捨てずに一緒に成功させたり、見捨てる選択をしたクリードにも「お互い頑張ったな」とか言って積極的に握手を求めたりして、あの学校に入学した意味がわからないくらいにはいい奴だった。


 「よろしく。」


 俺は何だろうな...何と言うか当時の俺は他人への興味がほぼ0でな。まぁ例外はあったが、その例外以外は本当に興味がなかった。だから、辛い事情なぞ話されても、結局自分に関係ないと頬杖ついて明後日のほうを見てた。ちなみに俺の練習は残ってる仲間の数が少なかったから見捨てずにクリアした。その後、クリードと青葉がなんか話しているところが目に入ってな。しばらく見てた。


 「握手することに何か意味が?」


 「ちょっとした行動が、繋がりを作るんだ。俺はそう思う。」


 「...。」


 そうしていたら、クリードは表情をピクリとも動かさずに青葉と握手を交わしてその場から立ち去った。その時は、クリードは同じようなタイプかと思っていた。それから、俺と青葉、クリードは任務に行かされるようになって、3人トリオで組まされることが多かった。任務まさかされる頃には、成績上位組何て言われてたからな。授業だけ受けさせるのは勿体無いと思ったんだろう。


 「話し合えるなら話し合う。できなかったら、殺す。これでいいよな?」


 「俺はどっちでも良い。」


 「即殺すじゃダメなのか?」


 「相手だって俺たちと同じ生きてる人間だ。死ぬことで悲しむ人がいるかもしれない。それに、一度きりの人生だ。やり直すチャンスくらいあっても良いと思うんだよ。」


 「...そうか。」


 青葉の言葉にクリードは首を傾げて理解できないって顔をしながら、先に対象のいる建物に潜入した。


 「おい。バンバも頼むぞ。」


 「善処する。」


 その態度に不安になったんだろうな。俺には念を押すように言った。それから、青葉の言った通り対象とは話し合う場を設けることができた。だが、クリードは対象のみの話し合いの場を設けるだけと考えてたようでな。そこで働いていた従業員は皆殺しにした。お陰で青葉との話し合いはまともに成立せず、青葉が気絶させようとしたところをクリードが即銃殺した。


 「お前...。」


 「ん? 元々対象の抹殺という任務だ。何も間違ってはいない。」


 「...ああ。何も間違っちゃいない。でも、死んじまったらそこで何もかも終わっちまうんだ。やり直すことも出来ずに...後悔していることを後悔したまんまになっちまうんだ。俺は、それを知ってる。だから、たとえ俺自身のエゴだとしても...俺は悪人でも一度はやり直すチャンスあるべきだと思ってる。」


 「そうか...。」


 「クリードは...お前はどう思っている?」


 「考えたことがない。」


 「そもそも興味がない。」


 「...そうかよ。」


 この会話の後、青葉はクリードに対しては割り切って行動するようになった。思えば、この時からだろうな明確に俺たちに亀裂が入ったのは...。それで、青葉はどんどんクリードに対する人間らしさを期待しなくなった。それで、あれが起きた。あれのせいで、青葉はクリードを恨むようになり、付き合いも悪くなった。


 「卒業おめでとう。私は君らのような優秀な暗殺者たちを育てられて本望だ。」


 「...。」


 「...これからも精進して参ります。」


 「ありがとうございます。」


 当時の教師の言葉に青葉は下唇を血が出るほど強く噛んで、クリードは感情のこもっていない声で感謝の言葉を述べ、俺は適当に答えた。それからは、俺たちは別々の道に進み、俺はそこで光琳と出会い、青葉と再会した。


 「久しぶりだな。」


 「ああ。その女の子は?」


 「これから育てることになった。」


 「は? 育てる? お前が?」


 「ああ。」


 「...失礼だけどお前が育てんのクソ怖いんだけど。」


 「まぁ大丈夫だろ。」


 「まぁ、つけずに自信もって大丈夫って言ってほしかったなぁ。」


 それで、俺は光琳を育てながら修行をつけ、金を稼ぐための仕事は青葉に協力してもらったりしていた。で、そうやってやっていたら、クリードとお前と出会ったわけだ。


深夜3時 魔工車レグス


 「だから、昔のクリードといっても学生の時以外ほとんど知らない。すまないな折角訊きにきてくれたのにな。」


 「いえ、とても貴重な話でありがたかったです。」


 「そう言われると話してよかったと思う。」


 話に私が素直な感想を述べると、バンバさんは少し嬉しそうに微笑む。それを見て、私は再度寝ようと思って立ち上がる。


 「そういえば、バンバさんは眠らないんですか?」


 「ん? いや、寝てたぞ。ちょうどクリードと交代したところだったんだ。」


 「あ、交互に見張りをやってるんですね。」


 「ああ。一応年上2人だからな、年下3人に無理させられないということでな。」


 「...ありがとうございます。」


 「じゃ、お休み。」


 「はい。お休みなさい。」


 バンバさんは手を振りながら、私が寝室に入るまで見ててくれる。私も寝室に入る直前で手を振り返して、寝室に入り、再度就寝する。


薫の夢の中


 就寝してから体感は一瞬で夢を見る。すごくリアルな夢。回りは雨が降っていて、私は傘も差さずに降ってくる雨でずぶ濡れになっている。


 「(夢? 初めて見る夢の感じだ...すごいリアル。でも、こんなの記憶にないし...。)」


 私がそう考えながら、夢の中の自分の姿を見る。すると、中学生くらいの頃の私だ。


 「中学生...?」


 私が夢の中でそう発言すると、急に頭に激痛が走る。


 「うっ...ああああ!!」


 すると、視界が歪み、フラッシュバックし始める。


 「!!」


 「君が橘薫ちゃんだっけ。これ、プレゼント。」


 聞き覚えのないはずの声が途切れ途切れに聞こえながら、フラッシュバックして姿が見える。黒い外套、白髪の不気味な笑みを浮かべる男...。口の回りに血がついてる。そんな男が、気持ちの悪いバッグを私に渡してくる。


 「何か、蓋で押さえてつけられているような感じで、記憶が思い出そうとしない...。何で...。」


 「大事に使っておくれよ。これは...さんの...で...バッグだから。」


 大事なところが聞こえない。この男は誰だ...。知ってる。知ってる気がする。でも、知らないと思ってる。初めてだと思っている。なんだ、これ...。


 「気持ち悪い..。」


 私は頭を抱えて、激痛を耐えきれなくなって、夢の中で叫ぶ。


 「うあああああああああああああ!!!!!」


 「...る...おる...かおる.....!」


 声が聞こえる。知ってる声だ。私はその声を辿るように夢から覚める。


早朝 魔工車レグス


 「薫!!」


 私は大量の汗を流しながら、目を覚ます。そうすると回りに光琳と清雅さん、バンバさんがいて、目の前にはクリードさんが居た。息切れしているところを見ると、どうやらクリードさんが私の名前を呼んでくれていたらしい。


 「すみません。おはようございます...。」


 「謝るな。光琳、水を持ってきてやってくれ。」


 「はい。」


 「清雅は薫に付き添ってやってくれ。俺とバンバは買い出しに行ってくる。薫は今日は安静にしていろ。」


 「...はい。」


 クリードさんは一通り指示を出した後に、レグスを出て急いで買い出しに出掛けた。それを見ながら、私は内心で


 「(突然あんな夢を見て、何かの兆し?)」


 と考えて、全く落ち着けなかった。

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