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Blood Spare of Secret : The story of Creeds  作者: 千導翼
第三章 シルヴァマジア編

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闇と星

16年前


 9歳の誕生日...あたしはシルヴァマジアの迷いの森の中で迷子になった。何で迷いの森に入ったかは今でも思い出せない。でも、暗くて怖かったことは覚えてる。


 「お父さぁぁん!! お母さぁぁん!!」


 ずっと泣きじゃくってて、お父さんとお母さんのことを必死に呼んでた。でも、助けは来なくて、私はしだいに声も出せなくなっていって、いつの間にか森の中で眠ったんだ。


 「花仙! 花仙!!」


 そしたら、知ってる声が聞こえてきて、あたしは疲れきった体を何とか起こして、声の方向に向かって歩いた。そうして、父さんに会ったんだ。


 「花仙。大丈夫か? 怪我はないか?」


 「うん...大丈夫だよ。お父さん。」


 「そうか...。」


 その時の父さんは、凄い安心したような顔を浮かべて、あたしを抱き締めてくれた。その温かさを知って、あたしは思わずまた泣いた。


 「花仙! あなた!!」


 その後、あたしの泣き声を聞き付けて母さんもやって来た。それを確認した父さんは母さんにあたしを預けて、背負っている大剣を引き抜いた。


 「あなた?」


 「どうやら、花仙はあいつに襲われそうになっていたらしい。」


 お父さんがそう言うと、その方向には金色のたてがみを持つ黒獅子が視線の先にいた。


 「!! 夢喰獣ナイトリオラル...。」


 「ああ。俺はやつの足止めをする。」


 「何を言っているの!? 一哉と六科むじなもいないのよ!?」


 「そんなこと百も承知だ。だが、誰かがあれを足止めしなければ、ただ死ぬだけだ。清美。花仙を、あとお腹の子は頼む。」


 「お父さん...?」


 ただならない雰囲気に、幼いながらもなにかを感じ取ったあたしは母さんに抱き抱えられながら、父さんの方に顔を向けた。


 「花仙。大きくなって、いつかいい人を見つけたら、真っ先に父さんに報告に来い。見定めてやろう。優しい子に育つんだ。不器用でも、人付き合いが悪くてもいい。優しい子に育ってくれ。」


 父さんはあたしにそう言って、大剣をもって黒獅子に向かっていった。同時に、母さんはあたしを抱き上げて、その場から逃げるように去っていった。あたしはどんどん小さくなっていく父さんの姿に不安になって、


 「お父さん...お父さん...! お父さん!!」


 と何度も、何度も、叫んだ。その日から父さんは家に帰ってこなかった。これが、あたしの中にある数少ない父さんとの思い出だ。そして、その数日後、妹の花奈が生まれた。母さんは仕事と家事の両立で忙しくなって、少しのことで怒っちゃうこともあったけど、基本的にはあたしの頼みも聞いてくれて、花奈にも優しくしてくれた。そうやって、女で1つで育ててくれた。


シルヴァマジア中央森林地帯


 時間は夕暮れ時に差し掛かってきている中、小屋から2人の姉妹が老婆と共に外に出てきた。


 「ほら、もう遅いんだからさっさと家に帰んな。さっきの話もある。母さんが心配するだろ。」


 「でもお婆ちゃん...。」


 「花奈。婆さんを困らせるなよ。また明日会いに来ればいいんだし。」


 花仙は寂しそうにしている花奈に優しく微笑みながら言い聞かせる。


 「花仙の言う通りさ。また明日会えばいいんだよ。2人が一人前になるまであたしゃ死ぬ気ないしね。」


 「...うん。また明日絶対来るからね。お姉ちゃんと一緒に...。」


 「え? あたしも...?」


 「あったりまえじゃん。」


 「え~めんど。」


 老婆の言葉で元気を取り戻した花奈は花仙をさらっと巻き込み、それに対し花仙は心底怠そうに答える。


 「じゃあまた明日ね。2人共。」


 「うんお婆...。」


 「ギャアアアアアアアアア!!!!!!」


 花奈が別れの言葉を告げようとした瞬間に、遠くの方でいくつもの悲鳴が聞こえた。


 「え?」


 「婆さんと花奈はここで待ってろ。あたしが様子を見てくる。」


 悲鳴に驚いてまともに喋れない花奈の前に花仙が出て、端的に指示を出す。


 「う、うん...。」


 「花仙...!」


 「大丈夫だよ婆さん。あたしの強さは知ってるだろ?」


 花仙は老婆と花奈にニヤリと笑って、悲鳴のした方向に勢いよく走り出した。


 「(いったい何があった? ここいらはシルヴァマジアの中央地帯のはず。だから、何かがあれば、聖王様か竜王様が動くはず。あんな悲鳴が上がることなんて稀なんてもんじゃ...。)」


 花仙がそう思考しながら悲鳴のした方向に到着する。


シルヴァマジア中央北側地区


 「.....!?」


 そこに広がっていたのは、数えきれない死体の山。中には魔法師や兵士の姿もある。


 「これだけの数を...一体どうやって...?」


 あたしはあまりの出来事に愕然として、中々まともに喋れない。


 「イヤアアアアアア!!!」


 「この声...!!」


 あたしは知っている悲鳴が聞こえた方向に全速力で走っていく。そこには、ボサボサの長い黒髪の男に首を掴まれて持ち上げられている母さんの姿があった。


 「おい...!! てめえ...その汚い手を離せ...!!!!」


 あたしは腰の武器を取り出して、母さんを持ち上げている男に切っ先を向ける。


 「!?」


 すると、あたしの声に反応した男は母さんを持ち上げたままあたしの方を見る。それで、あたしも男の姿をよりはっきりと見て、目を見開いた。なぜなら、男の目を虚ろで、目の下にはクマができてて、痩せ細った体型をしていたからだ。


 「この死体の山は、お前がやったのか?」


 「ああ。」


 「何で殺した?」


 「んあ? そりゃ、そこにいたからだろ。」


 「は?」


 男の容姿に若干引きつつも、あたしは回りの死体に目をやりながら訊いた。そして、それに対する答えは呼吸するように、目の前にいたから殺すと言う風に言った。その答えに、あたしは眉間にシワを寄せて、男を睨み付ける。


 「花仙...。」


 「うるせえ。」


 そんなあたしを見て、母さんは止めようとしてくれた瞬間、男は母さんを思いっきり、投げ飛ばして壁に激突させた。


 「母さん!!!」


 あたしはすぐに母さんの元に駆け寄って、生きているかを確認して、比較的損害の少ない場所に、横たわらせて、武器を血が滲むほど強く握って、男を睨み付ける。


 「この野郎!! 絶対に殺してやる!!!」


 「うるせえ。耳が壊れるだろうが!」


 怒りが一気に頂点まで来たあたしはただがむしゃらに武器を振るう。だが、それらを男は難なく対応してくる。


 「うらあああ!」


 それでもあたしは関係なく、あたしは武器を振るう。


 「...! ちっ...!」


 「...? (何だこの武器?)」


 解説 伸縮長径双刀剣スレイバー。通常の全長は140cmで、刀剣部分がそれぞれ60cm、柄部分が20cmの武器であり、分離することによって、2本の刀剣になる。だが、文字通り伸縮させることができる蛇腹剣のような武器である。しかし、蛇腹剣とは違い、刀剣部分を紐で繋いでいるのではなく、紐の代わりに無数とも言える刃が内蔵されており、伸縮させることでただの斬撃武器としての役割だけでなく、刃部分も研磨され、常に鋭利な状態で武器を使うことができるものである。そして、繋げた状態で完全に刀剣部分を伸ばすと、全長420cmにもなる。しかし、それ故扱いづらく、最近生まれた武器であるため、教えられるものも少ない武器で、人気はないに等しい。


 「開花!!」


 「闇鎌。」


 あたしがスレイバーを回転させると、刀剣はつぼみが花開くように刀剣が輪状に伸びて、目の前の男に襲いかかる。それと同時に男は黒い大鎌を作り出して、弾き返す。


 「なっ!? (あの男、まさか...。)」


 「何だ? 化け物に喧嘩売ったことを今さら後悔してんのか?」


 「なわけねえだろ。スカしてんじゃねえよ餓鬼。」


 「一々声がでけえんだよ。褐色ババア。」


 あたしはスレイバーを分離させて、両手に持って男を切り刻むために入り乱れる斬撃の嵐を作り出す。それに対し、男は黒い大鎌でそれを弾きながら、走って向かってくる。


同時刻 シルヴァマジア監獄塔


クレイ側


 監獄塔に着いて早々、塔内が騒がしくしている。何かと思い、忙しくしている看守を捕まえて理由を聞いてみると、黒崎闇裏と天海銀河が脱獄していると言う。


 「何か嫌な予感がすると思って来てみたらこれか...。こりゃ近い内に何か...。」


 「イヤアアアア!!!!!」


 「は!? (まさかもうか!?)」


 俺は驚きながらも、監獄塔の入り口付近まで行くと、大量の看守や近くにいた一般人が何やら押し潰されている。


 「お前、天海銀河だな。」


 「だとしたら何だ? 捕まえにでも来たか?」


 天海銀河は俺の方に体ごと向けて、臨戦態勢をとる。


 「ああ。ちょうどよくここの前だしな。大人しくしてくれりゃ、手荒な真似をしなくて済むんだが。」


 「何だ? まるで俺を片手間で倒せるみたいな言い方だな。」


 「片手間とは言わないが...まぁ負けないとは思ってる。」


 「そうかよ...。」


 「!」


 俺の言葉がしゃくに触ったのか、天海はいきなり俺に攻撃を仕掛けてきた。俺は難なく避けて、回りで押し潰されそうになっている一般人と看守を安全な場所に逃がそうとするが、それよりも早く、天海が動いて吹っ飛ばされる。


 「(斥力? でも、それ一辺倒の能力者スペアネルと比べたら出力は落ちる。まさか、名前の通り宇宙に関連する能力を使えるのか?)」


 俺は壁に激突させられながらも、すぐに体勢を立て直して、天海に目を向ける。


 「(回りには大量の被害者。相手はそこから動こうとしない。つまり、被害者を守りながら戦闘をしなければならない。なのに...俺は万全じゃない。ジークかエリナに報告しときたいところだが...まぁさせてはくれないよなぁ。とりあえず、現状を何とかするか。)」


 「流星弾。」


 「球体隔壁スファエリカ・バルクヘッド迅雷ライトニング拳力フォースフィスト。」


 天海は思考している俺に容赦無く、石ころくらいの小さな物体を大量に生成して、撃ってくる。俺は即座に走りながら回りに被害者を球体の隔壁で包み込んで、とりあえずの安全確保を取ると同時に腕に雷を纏わせて、それらを叩き落としながら、隙あらば取って投げ返す。


 「迅雷ライトニング脚力フォースレッグ。」


 「衛星。」


 そうして、脚にも雷を纏わせて、雷速で距離を詰めて、雷速の拳打を放つ。だが、直前で大量の衛星を作り出して、全て往なされる。


 「チッ(魔力をできるだけ節約して使いたいから、魔法を部分的に纏わせて攻撃してるってのに、余裕で対応してきやがって...。) ...!」


 俺が舌打ちしながら、思考をしていると、突然の目眩に襲われ、体勢を崩す。


 「流星拳。」


 そこに天海はすかさず、流星と同速の拳打を腹部に撃ってきた。


 「ぐっ...!! 放電ディスチャージ!!」


 だが、俺はその拳を掴んで、両腕に纏わせていた雷を天海に流しながら、人の気配が少ない場所に投げ飛ばす。


 「ぬっ!!」


 「(よし...戦いやすい場所に移動させれた。だが...思ったより体が疲れてやがる。)」


 「...。」


 「さて...第2ラウンドだ。」


 俺はそう言って、イラついている天海に不適な笑みを浮かべて、両腕に雷を纏わせ直す。


同時刻 シルヴァマジアの魔法学院前


ジーク側


 病院、学校、避難場所になる場所と経路の確認は終わった。責任者の許諾も取ってある。あとは事が起こったときの準備を共同で始めると言うときに...。


 ドゴォォォォ!!!!


 「!! 何だ?」


 近くの方で巨大な轟音が聞こえた。僕は、ほうきに乗ってその方向に向かう。


 「!?」


 そうして到着したところには、血まみれの人達が大量にいた。


 「大丈夫ですか!?」


 僕がそう声をかけると、大量の血まみれの人達はゆっくりと僕の方を見ると


 「違う。」


 「お前は違う。」


 と苦しそうな声口々にそう言った。


 「違う? 一体何の?」


 僕が首をかしげながら、蒼月の大杖で回復魔法を使おうとすると、伝達魔法が僕にかけられてきた。


 「なっ!?」


 僕がそれに一瞬気をとられると、目の前にいた大量の血まみれの人達は忽然こつぜんと姿を消した。


 「あり得ない...転移の魔法を使ったような後もないなんて...。」


 僕はそうして驚きながらも伝達魔法を受けとると、出たのは焦った様子の看守。わずかだが、悲鳴も聞こえる。


 「どうしました? 何かトラブルですか?」


 「すみません!! 知らぬ前に、2人の能力者スペアネルに脱獄されて、今クレイさんが、天海銀河と戦っています!!! あと、今さっき入った情報なんですが、陽葉山ひばやまのご令嬢と黒崎闇裏が交戦中とのこと!!」


 「!! (陽葉山のご令嬢...花仙さんか! 黒崎の能力は闇...森の中で戦っていたら、逃げ場がない!! それにクレイ...戦いから帰ってきたばかりで万全じゃないはず。...クレイのところにはエリナに行ってもらって、花仙さんのところには僕が行こう。) エリナを応援に回します。それまで持ちこたえるようにクレイに言っておいてください!!」


 「了解です!!」


 「(さっきのことも気になるけど、今はこっちが優先...。)」


 僕はそう考えて、箒に乗って、花仙さんがよく妹さんと向かう森の近くまで向かいながら、エリナに伝達魔法を送る。


 「お願い。早く。」


 「もし~? ジーク? どしたん?」


 エリナは状況を全く知らないようでいつも通りに出てくれた。そんなエリナに僕は落ち着いて事情を話した。


 「了解。監獄塔だね。任せな。」


 「ごめん頼んだよ。」


 僕はそう言って、伝達魔法を切って、箒の移動速度を更に上げる。


 「(いつ脱獄された? いや、それよりも思った数倍くらい敵の動きが早い。先手をとられないように準備するつもりが、既に後手に回ってたなんて...。) .....いや、落ち着くんだ。指揮する立場である僕が揺れたら、旗色は悪くなっていく一方だ。大丈夫。僕らなら、何とかできる。」


 僕はそう声に出して言って、自分の心を落ち着かせながら、花仙さんの方にもっと速度を上げて向かう。

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