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Blood Spare of Secret : The story of Creeds  作者: 千導翼
第三章 シルヴァマジア編

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氷の女

 この間、私は今回の事に至る動機を聞いた。始まりは、この人に降りかかった不幸だったことがわかった。そして、利用され続け、12年間まともな人生を送れなかったことを知った。話している姿はとても元気がなく、すべてを諦めたように見えた。その...おかげなのか、せいと言えばいいのかわからないけど、とてもこの人を恨む気にならなかった。でも、その話の内容で1つだけ引っ掛かったことがあった。


 「あの...。」


 「ん?」


 「その、ラファス・ドゥイレルって人は、この国に...氷の女が”いる”って言ったんですよね?」


 「ああ。」


 「でも...その時の私って、氷の女とはほぼ無関係なただの一般人ですよね? じゃあ、もう既にいるみたいな言い方は変なんじゃないですか?」


 私がそう指摘すると、この人は少し考えた後に言った。


 「それは、あたしも疑問には思ってた。でも、いくら探しても、氷の女に近い情報が何一つなかったんだ。で、あんたに賭けてみた。そうしたら、見事に氷の能力を得たわけだから、それで単なる言い間違いだったんだろうって思うことにしたんだ。あんまり、あいつと会話したくなかったしね。」


 「何一つ情報がない。でも、確かに富士浪グループの令嬢が氷の女だって言ってたんですよね?」


 「ああ、間違いない。」


 私は後ろで聞いているルーク市長に顔を向ける。そうすると、顎に手を当てながら首を傾げている。どうやら、ルーク市長も心当たりがないようだ。私の記憶の中を探っても、お母さんが氷の力を使ったところなんて見たことがない。まして使えるなんて噂も...本当に単なる言い間違いで、私が氷の力を発現することを見越していたんだろうか。いずれにせよ、私個人として気になる事ができた。


 「じゃあ...私からの話はもうありません。ありがとうございました。」


 「あ...いや...。」


 私がそう言って立ち上がると、浦坂さんも立ち上がって、私に向かって頭を下げた。


 「すみませんでした。自由に生きていたいが為に...あなたを利用し、あなたの父親も利用した上であなたを完全に手駒にするために殺させました...。全ては...私の心が弱かったがゆえの過ちです。本当に...すみませんでした...。」


 「...。正直...もっと...お父さんといたかった。もっと...家族らしいことをしたかった...。でも...ちゃんと家族として、娘として、愛されていることを知れたから...前には進めます。」


 私は自分の正直な気持ちを笑顔で言うと、浦坂さんは目を見開きながら、もう一度頭を深く下げた。私はそれを見た後に、ルークさんの方を見て、


 「もう大丈夫です。向き合わせてくれたありがとうございました。」


と言った。そうすると、ルークさんは少しホッとしたような声で


 「いえいえ。お礼を言われるほどではないです。」


と言って、頭を下げている浦坂さんに視線を移す。同時に私もクリードさんとバンバさんの方に視線を移してお礼を言う。


 「向き合う機会を与えてくださってありがとうございました。」


 「いや、これは私自身の自己満足なので、お礼を言われるようなことではないですよ。」


 クリードさんは少し、自虐的な雰囲気で返答した。


 「では、戻りますか? 邸宅に。」


 「はい。そうしましょう。そこで調べたいこともありますし。」


 バンバさんの提案に私は同意して、クリードさんも一緒に邸宅に戻った。


富士浪家の邸宅


 富士浪清雅さんをつれて邸宅まで戻ると、もう一度中に入らせてもらった。その間に、俺は少しだけ邸宅の外装を見た。


 「さっきは何ももてなしができなかったので、少し緑茶を持ってきます。しばらく待っててください。」


 「ありがとうございます。」


 「その間、少しだけ内装を見て回ってもいいでしょうか?」


 「? いいですよ。」


 俺の質問に清雅さんは首を傾げながらも了承してくれた。そうして、清雅さんが俺たちから姿を消すと、俺はさっき見たときの外装と照らし合わせながら、内装を見て回った。


 「.....。...なんだこれ?」


 「ん?」


 俺の一言に黙っていたバンバが立ち上がって歩いてくる。俺が見つめている方向はただの壁だ。


 「どうした? 壁に何かあるのか?」


 「さっき...この邸宅内に入るときの間に流し目だが外装を見たんだ。」


 「ああ。」


 「何かあるんじゃないかと思ってな。そうしたら、明らかにおかしいところを見つけた。」


 「それがこの壁だと。どうおかしい?」


 「この壁の先には確実に空間あるはずなんだよ。」


 「何?」


 俺の言葉にバンバは眉間にシワを寄せ、俺が見つめている壁に掌を当てる。その後、別の壁にも掌を当てる。


 「俺が少し力を入れたら、疑った壁はほんの少し凹む感じがあったな。」


 「俺は最初この邸宅内に入ったとき、気にするほどではなかったが、何か違和感があった。邸宅のでかさにたいして、狭く感じたんだ。本当に少しだけな。」


 「それで、今日の話か。」


 「そうだ。この家系に氷の女がいるという話だ。聞いてみれば、この話を最初に聞いたとき、清雅さんはまだ普通の一般人だったという。だが、ラファス・ドゥイレルはこの家系にいると言ったんだ。確信的にいっていると言うことは、それが確定している情報であることが高い。」


 「それで、この家にはもう1人家族がいたのではないかという仮説をたてたわけだな。だが、もしも居たとして、なぜ富士浪誠二さんはそれを清雅さんに話していない? 家族なら知っていて当然の情報のはずだ。しかも、お前が間取り疑ったということは、その事実を隠蔽していることになる。清雅さんに対して娘想いの行動をしていた人間がそんなことをするのか?」


 「ああ。それは俺も気にはなっていた。だが、もしも...その存在自体を忘れさせることができたら...。」


 「そんな芸当...。いや、俺が光琳の記憶を消しているのだから、少なくとも俺は否定できんな。」


 「そうだ。神聖魔禍の剣の力でおこなったと言えど、お前は光琳の記憶の改竄をしている。つまり、この世界には記憶を改竄する力がある。そして、俺はそれに心当たりがある。」


 「何...!?」


 この発言に関しては流石に予想していなかったのか、落ち着いていたバンバの表情が崩れる。


 「だから、そいつらと関わりがあった場合、富士浪誠二さんは隠蔽したんじゃなく存在ごと忘れてしまったということになる。同時に、邸宅の内装と外装の違和感を感じないようにもされていた可能性がある。」


 「そいつら? 集団でそれを行えるやつなのか?」


 「いや、集団で行動してはいるが、こういう芸当ができるのは1人だけだ。」


 「そいつの名前は?」


 「月濤白夢。感情、性格、感覚、記憶、魂魄を操り、生み出し、消し去る力を持つ。人工的に作られたスペアネルであり、俺がいる前の何でも屋のNo.2だ。つまり、その当時のトップの相棒だな。」


 「...そこまで知識があってたてた予測ならば、移動中にでも話しておいてほしかったな。」


 「すまない。」


 俺の発言にバンバは苦笑いをしながら、一言告げると、俺は反射的に謝った。そうすると、清雅さんがお盆の上に緑茶を入れて持ってきた。俺たちはすぐに、テーブルに戻り清雅さんの淹れた緑茶をありがたく飲ませてもらい、俺が持ってきた菓子折りを清雅さんが開け、一緒に食べさせてもらった。


 「大変美味しゅうございました。」


 「満足していただけて何より。それに、私が持ってきたのに一緒に食べさせていただけるとは.....。」


 「いえ、1人で食べるのも寂しいですし。...あのう、クリードさん。」


 「何です?」


 「先程内装を見ていたのは、一体どういう...?」


 そう質問を投げられると、俺とバンバはアイコンタクトを取り、邸宅の違和感と、氷の女の話、そして可能性の話をした。


 「...なるほど...じゃあ、あの壁の奥に部屋がある可能性があって、それが氷の女...私の知らない家族のいたかもしれない...。」


 「はい。」


 清雅さんは立ち上がって、俺が疑った壁の前まで移動する。俺とバンバも清雅さんの隣に立って、壁を見つめている清雅さんを見ている。


 「この奥に広がっている空間を...私は見たいです。」


 「つまり...。」


 「壊して...ください。」


 清雅さんがそう言うと、俺とバンバは目を見合わせて、清雅さんを後退させて、バンバが壁を壊す。


 「...。パンチ1発か...。脆いな。」


 ちょうど奥に空間があるであろう壁のみが破壊される。散らばった壁材をある程度片したあと、俺は清雅さんを呼んで、奥の空間にはいる。


 「...。」


 当たり前だが、この邸宅と同じ和室だ。しかも、ごく普通の。


 「綺麗だな。ほこり1つ無い。」


 「壁で封鎖したときから時が止まっているようだ。」


 「時...か。」


 俺とバンバがそんな会話をしていると、清雅さんは部屋を見て回り、タンスをのぞき、なかに入っていたアルバムを取り出した。そして立ったままアルバムを開く。


 「...!」


 しばらくアルバムを見ていた清雅さんの指の動きが止まる。俺とバンバは一緒にアルバムを見ると、入学式の写真に富士浪誠二さんと富士浪花さん、そして、清雅さんの写っている写真があった。だが、父親である富士浪誠二さんと清雅さんの間に1人入るようなスペースがあった。


 「忘れてる...何か大事なこと...。」


 突然清雅さんはそう言って頭を抱えてその場に座り込む。


 「(思い出せそうで...何か...邪魔...される。)」


 「クリード。」


 「ん?」


 「写真を見てくれ。」


 俺はバンバに言われた通りに、清雅さんの背中を擦りながら写真を見る。


 「ん!?」


 そこには入学式の清雅さんの隣に、黒髪の水色と白のリボンをしているつり目の女子が消えたり現れたりしている。


 「ふあっ!!」


 俺たちがそう考えていると、そのまま倒れ込む。


 「バンバ布団を用意してくれ、寝かせる。」


 「医者呼ぶか?」


 「いや、消されているはずの記憶を強引に掘り起こしている結果だろう。大丈夫だ。」


 俺は清雅さんを抱き上げて、バンバの用意した布団に仰向けに寝かせる。


 「目覚めるまで待ちだな。」


 「ああ。」


 俺たちは清雅さんが目覚めるまでこの部屋の中で待つことにした。


夢の中

 

 知っている場所のようで知らないように見える場所が見える。


 「(ここは? あの部屋の中? 何か思い出せそうで...思い出せない。)」


 私がそう思って、1人きりになった部屋の中を見回す。すると...。そこには全く知らない人達がいた。


 「本当にいいのか? 白雹はくひ。」


 「いいって。一晩中考えたんだから...。」


 「そうか。」


 黒髪に水色と白のかんざしをしているつり目の黒を基調とした水色の花柄の和服の上に白いロングコートを着た刀を持った女性とショートボブの白髪で少し片目が隠れている女性が話をしている。その後ろで暗い表情をしている黒と白ツートンカラーのツーサイドアップをした女性と、灰色の髪に赤い目をした黒色肌の白いシャツとジーンズに黒いベルト、灰色の模様の入った黒いコートを着ている男性がいた。


 「(白雹...あの女性の名前? それに、あの見た目...似てる...お母さんにもお父さんにも、私にも...。)」


 「お父さんにも清雅にも悪いけど...まっ2人なら大丈夫っしょ。強いしな。それに、あたしのせいで迷惑はかけられない。大事なあたしの家族だからね。それに、お父さんは強いし、清雅は結構押しに弱いけど、やるときはやる子だしね。しかもあたしの妹だよ。」


 「わかった。再度確認するけど...いいよねベート、命。」


 「まぁ本人が言ってるし。」


 「一晩中考えてだした答えなんだろ? じゃあ俺たち口出せねえだろ。」


 「よし。じゃあ、始める。」


 「ああ。」


 お母さんの事に触れないってことは、もう亡くなったあとなんだろうな。


 「終わり。これで、あなたを知る人間のほとんどはあなたの存在を欠片も覚えていない。そして、この部屋を認知することができないようにしておいた。あなたに繋がる情報は全て知れない状態になった。」


 「ありがとう。」


 白雹...お姉ちゃんは笑顔でそう言う。そして、玄関前に移動した。そうしたらまた見知らぬ白と赤のツートンの髪の男性がいた。


 「白雹...君は...。」


 「告白は終わったかよ。緋愛ひめ。」


 「僕の話は...。いや...触れるなと言うことか。でも一応訊くよ。よかったんだね? これで。」


 「そりゃこっちの台詞でもあるぞ。」


 「...そうだね。」


 お姉ちゃんがそう言うと、男性は諦めたような表情で返したのちに、玄関前をあとにする。同じようにお姉ちゃんも行こうとした直前に、振り向いて私たちの自宅を見て言った。


 「じゃあね。私の家族。私の故郷。私の大事な大事な場所。富士浪白雹はこれから、白雹として生きていく。」


 私は無意識に離れていくお姉ちゃんに手を伸ばす。それと同時に、視界が暗くなっていき、私は目が覚めた。

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