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Blood Spare of Secret : The story of Creeds  作者: 千導翼
第二章 シャインティアウーブ編

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氷と光

シャインティアウーブ 地下 富士浪清雅 薫・光琳と対面


 私はあの人に言われた通り、初対面の男の人の前に氷の壁を作ったあと、移動中に名前を聞いていた橘 薫さんと入町 光琳さんらしき人を見つけた。2人は周りの大勢の怪我をした軍人と亡くなった人達と同じように横たわっている。


 「大丈夫ですか?」


 私は恐る恐る訊いた。すると、私の存在に気づいた橘さんと入町さんは体を起こそうとしたが、起こせず寝たきりの状態で


 「大丈夫です。」


 「全然動けるんで大丈...。」


 と言ってくれたが、2人とも辛そうにしている。


 「あなたは?」


 「私は富士浪清雅。あなた方の上司にあたる人物であるコーネリアスさんに、助けていただいて、今からはあなた方を守ることを頼まれています。」


 「守る?」


 「はい。わたしは、氷の能力を使えるんです。」


 私はそう言いながら手元で氷を作って見せる。橘さんは何度か頷いた後に深くお辞儀をする。


 「ありがとうございます。助かります。」


 「いえ、まだなにもしていませんし...。」


 「それでも、私はお礼を言うべきです。」


 橘さんは少し沈んだ声でそう言った。その様子に私は首を傾げていると、不意に光の弾が飛んできた。私は即座に氷の壁を張って、跳ね返す。


 「(荒い...。あの人ほどきれいに作れないな。)」


 私はそう思いながら、橘さんの方を見る。やっぱり、何か思い詰めたような表情をしている。何かあったのだろうか? わからない。


同時刻 シャインティアウーブ 地下 バンバ・無月アスカvs白澤光分身体


 俺と無月アスカが合流すると、2人に分かれていた女が1人になった。クリードが今どこにいるか具体的にはわからないが、恐らくスナイパーライフルでも構えているんだろう。もちろん、当てるためではなく陽動や攪乱かくらんの為に。


 「そちら側のボスと合流し、こちらのボスの作戦を話したい。」


 「わかりました。とりあえず、ルークの位置は絞れています。ただ、私の戦闘よりかなり動きが激しいので...地上に出ました。」


 「あぁそのようだ。急ごう。」


 「はい。」


 俺と無月アスカは女から目を離さずに、会話した後に女が攻撃を仕掛けようとしていることを察知し、俺と無月アスカは体を翻してギリギリで回避し、地上にいくための出口に感づかれないように、少しずつ移動する。


 「(直接攻撃をしに来てくれた方が楽なんだが...。)」


 「(こちらのボス...どこかの組織...?)」


 俺と無月アスカはアイコンタクトをして、女に攻撃をしかける。もちろん簡単に避けられて、反撃してこようとするが、その寸前でスナイパーライフルによる狙撃が邪魔をする。


 「チッ!」


 俺は近づいて右手に持っている剣を切り上げて攻撃するが、簡単に避けられ、それを先読みした無月アスカの射撃も難なく避ける。


 「やはり攻撃は無理か。」


 「さっきでも充分速かったんですけどね...。使い方が洗練されてる。」


 「狼牙光追ろうがこうつい!」


 回避した直後に女は両手の光から狼を作り出し、俺と無月アスカに向かって放ってくる。


 「「!!」」


 俺たちはすぐに狼の噛みつきを防いで、弾き返すがすぐに体勢を立て直して光速で追ってくる。切って対応しようとすると、光となってすり抜ける。どうやら相手が触れられるタイミングじゃなければ、こちらも触れられないらしい。面倒極まりない。


 「まずいっす。」


 「なに?」


 「あの子、分身体と本体が意識だけじゃなく肉体記憶も共有してるっす。だから、早く合流しないと、このまま戦闘を続けたら...手がつけられなくなるっす。知ってるでしょう? 本気のスペアネルランクNo.1の恐ろしさ。」


 「今でも大分恐ろしいけどね。(とりあえず、これをあの人に伝えよう。)」


 「光弾襲雨こうだんしゅうう。」


 光の狼に対応している中、容赦なく空中から光弾の雨を降らせてくる。そんな中、無月アスカが俺とすれ違い様に、本体が今、持続的に身体中を焼いている光だということ、目の前は分身体に過ぎないということ、だが、意識も肉体記憶も共有していて、無駄に戦闘を続けていれば、分が悪くなると言うことを言われた。俺はしつこい狼をまた弾いて、光弾の雨をなんとか避けながら2本の剣同士を叩いて音を鳴らし、クリードにモールスを送る。


同時刻 地下 家屋の中 狙撃準備中のクリード


ー・ー・ー ー・ー・・ ー・ー・ ーーー ー ・・ ・・ー ーー・ ・・ー


 剣による金属音のモールス信号が聞こえた。


 「...さきにごうりゅう...。先に合流しろと言うことか。何かわかったのかもしれん。言われた通り...ルークと合流するか。」


 俺はスナイパーライフルを戻して、チェーンナイフで建物をつたって、振り子の勢いで地上に出る。そこで、戦闘中のルークを見つける。


 「あれで易々と合流したら死ぬな。何とかルークに俺を見つけさせるか。この光が気になるが...。」


 俺は光の届かない物陰に消えるように移動して、片目を閉じてスコープを覗く。交戦中の女の足に当たるように銃口を動かす。


 「.........。.........。.........!」


 そうして、絶好のタイミングで引き金を引く。その間に俺は、物陰をつたうように消えたように移動する。その中でルークと女の戦闘している光景を見る。すると、放たれた銃弾は、直線的に光速で移動していた女の足に直撃する。


 「案外鈍らないな狙撃の腕も。」


 俺がそうしていると女が俺が狙撃した場所に即座に攻撃するが、もうそこに俺はいない。急に攻撃を受けた女の様子と撃って来た方向をルークが見て、一瞬困惑したが、すぐにチャンスだと考えて、女を捕まえて、地面に一緒に落ちてくる。


 「ぐっ...ぅ...!」


 「はっ、脇があめえな。で...。」


 ルークが辺りを見回している。俺は女の足を撃ち抜いた銃弾を拾って移動しながら、銃弾を割って、中に短く端的に俺の作戦を書いた紙を入れて、見回しているルークに投げる。


 「いてっ...いや痛くねえわ。ん?」


 投げられた銃弾を拾う。拾った瞬間に銃弾は割れ、中から紙が出てくる。


 「ん? 女の能力を一時的に封じる。その為に、俺の仕事仲間と無月アスカ合流してくれ。クリード...。...流石に姿は見せてくんないのか。まっ、どういう風にやるかはわからねえが、言われた通りにやってみっか。」


 ルークはそう言って、女を捕まえた状態でバンバと無月アスカのもとに行く。


地下へ移動開始 ルーク


 「俺が移動している間にどっかでついてきてんのかねあいつ。幻覚のところから会ってないけど...。」


 俺がそう言ってアスカが交戦している近くで足をつくと、白澤光の分身体が光の粒子になってアスカのいるところに引き寄せられるように向かっている。俺もそれについていくように移動しようとすると、マーシィから連絡を受けた。


 「打開策が1個浮かび上がりました。」


 「おっと何だ?」


 「光界の範囲を狭めることです。」


 「閉じ込めるってことか? どうやって?」


 「氷です。」


 「...用は氷で球体の鏡をつくってそれに閉じ込めるってか? そこまで精巧な氷を作るんだったら、俺やアスカの武装じゃ無理だぞ。」


 俺がそう言うと、マーシィは少し言いづらそうに言った。


 「富士浪清雅さんの協力を得る。」


 「...すまん...他の打開策...。」


 俺が断ろうとした瞬間、突然俺の隣を横切る一瞬にクリードが言った。


 「本人は手伝わせて欲しいと言ってくれた。俺たちで閉じ込めるまで防備を固めれば良い。提案してくる。」


 「ちょおい!」


 止める間もなくクリードは消えた。


 「マーシィ。やっぱそれ採用で。こっから俺のサポートに専念頼む。」


 「了解。」


 「さて、ラストスパート行くか。」


 俺はそう言って、アスカのもとに向かう。


同時刻 光界本体 白澤光


 「?」


 シャインティアウーブの地下を建物の日陰に隠れながら移動している奴がいる。一瞬だけ日差しに出てるのはわかる。でも...姿が掴めない。


 「どうなってる?」


 移動しているのもわかるのに、どこを移動しているのかも、無機物なのか有機物なのかすら怪しいくらいわからない。生きてるものだとしても、少なくともあたしが直接会った奴じゃない。じゃあ地上から降りてきた奴? 地上から降りてきたのは女2人。これはわかってる。じゃあその2人のどっちか。


 「チッ...地下に光界を発動させたばかりで意識が地下に向いてたときだ。そのせいでわからなくなってるんだ。」


 いや、直接会ったのか? 分身とあたしを煽った男と戦っていた途中で氷の壁が張られて、その後に分身を蹴り飛ばしたものがいた。氷の壁は未だに移動はしていない。蹴り飛ばした奴か? 分身が再生したあとに見たのは、氷の壁を背にした男だけだ。すぐに移動したのか。


 「ん?」


 そう考えていたら、氷の壁の近くに何かが通った気がした。


 「!」


 すぐに分身体を送る。


同時刻 薫・光琳・富士浪清雅と合流


 俺はすぐに屋内に入り、寝たきりの薫と光琳の近くにいる富士浪清雅さんのもとに行く。


 「富士浪清雅さん。」


 「はい?」


 俺の声に反応した富士浪清雅さんに先程の話を伝える。


 「私の力が必要...。」


 「はい。あなたの力次第で、状況を好転させるどころか、一気に決められるかもしれません。協力をお願いできますか?」


 「...ここの守りは?」


 俺の発言に富士浪清雅さんは疑問に思ったことを言う。


 「ここは私が守ります。」


 俺は即座に回答して、スナイパーライフルを見せる。


 「ここからでも狙撃は可能です。それに、要は俺ですが、あなたが成功させてくれれば、投げ槍で行ける。」


 「では作戦は誰が伝えるんです? 私ですか?」


 「いえ、富士浪清雅さんには能力の行使に集中してもらいたい。」


 「では...。」


 薫は俺達のやり取りを見て、寝たきりの光琳を見る。


 「やらせてください。」


 「ん?」


 「私はまだ何とか動けます。」


 薫は負傷している場所に手を当てて強い目で俺に訴える。


 「わかった。」


 「でも...。」


 俺の判断に正気か問うように富士浪清雅さんは無茶な判断だと思ったのか止めようとする。もしこれで死なせてしまえばただの判断ミス。この判断には何の根拠もなく、付き合いが長くもない。なのに、俺個人の感情で薫の覚悟からくる可能性を信じてみたいと思った。危なくなったら引き返す。そんな判断をすることが難しいこの状況で...俺は、自分より一回りも下の子供に託そうとしている。


 「大丈夫です。絶対に失敗しません。」


 薫の目に更に覚悟が宿るのが見える。


 「よし、じゃあ作戦を言い渡す。バンバには少し伝えているが、この作戦の要は俺のもつこの槍だ。」


 俺は槍を取り出して、薫と富士浪清雅さんに見せる。


 「この槍で相手を刺せば、一時的に相手は能力を使えなくさせることができる。そこを取り押さえる。そして、それをより確実なものとするために、ルーク・ギルデアの出した案を採用させてもらった。それが、鏡のような氷の球体に閉じ込める。閉じ込めるのは、俺たちの体を焼く、あの光だ。それも、恐らく核となるような部分であるあの光を最も放っている箇所。その為の誘導を、バンバ、ルーク、無月アスカにやってもらう。閉じ込めた後に、身動きがとれなくなった奴をこの槍で刺す。」


 「はい。」


 「これを簡潔にしても良い。伝えてくれ。それと、行く前にこの盾を背負っていけ。これが、ある程度は守ってくれる。」


 俺は背中の盾をとって、薫の背中に取り付けて、薫の正面に戻る。


 「...了解。」


 薫は富士浪清雅さんを連れて、外に出る。すると、目の前に女の分身が現れる。


 「「!!」」


 2人は即座に身構える。俺は気配を、音を、空気の流れを、全て読み取り、消えるように、動く。


 「邪魔だ!!」


 女の声が辺りに響く、俺は2人と女の間に割って入り、素早く静かに女が振り上げていた腕を切り落とす。


 「....は?」


 「「え?」」


 女と2人は何が起こったのかわからないと言うような表情で動きが止まる。だが、女はすぐに俺に攻撃した。だが、攻撃はすり抜ける。なぜなら残像だからだ。そこに俺はもういない。いるのは...


 「...背後だ...。」


 と言ったと同時に女の首をはねる。そして、数秒、女は切られたことに気づかず、首が地面に落ちた瞬間に、分身は自身の死を認識し、消えた。


 「行け。」


 「...はい。行きましょう。」


 「へ? あっはい。」


 「分身だから躊躇ちゅうちょなく切れるな。それとも、実際はまだこちらの方が...いや、考えるなこんなことを。」


 俺はそう言いながら、俺の芸当に目を丸くしている。光琳が目に入った。俺は光琳のもとに行って、スナイパーライフルを準備しながら、一言言う。


 「よく見てろ光琳。今から、お前の友人が隣に並び立つ一歩を踏み出すぞ。」


 「...はい。」


 光琳はそう返事をしながら、起こったことを整理しているような表情になる。


 「安心して走れ、薫。お前の障害は全て撃ち抜く。」


 俺は屋内3階に移動し、寝転がった体勢になってスコープを覗く。


同時刻 光界本体 白澤光


 「は?」


 何が起こったのかわからなかった。腕を切り落とされた次の瞬間にはもう首が飛んでた。だが、速度は別段に光に匹敵する早さでもない。


 「何で気づけなかった? 腕を切り落とされたときには目の前にいた。だが、切り落とされるまで目の前にいたことに気づかなかった。どうなってる? しかも、気づいたときにはもう、背後にいて切られてた可能性がある。いつあいつは移動し、いつ腕を切って、いつ背後に回って首を切った? わからない。」


 分身体に起こったことが理解できず、あたしは混乱し始めている。


同時刻 シャインティアウーブ地下 バンバ・アスカ・ルークvs白澤光分身体


 「とりあえず合流はできたが、どうする?」


 「アスカの話が本当なら、そろそろヤバイよ。」


 「どうすると言っても、富士浪さんが来ないことには、進展はしません。」


 俺たち3人は何とか、女...白澤光というのか、の攻撃を何とか捌きながら、分身体を取り囲むように一定の距離を保っている。だが、光の狼や降り注ぐ光の雨は勢いを増していて、他2人は気にしてないが、光界の熱攻撃で俺の体は焼かれ続けている。


 「(殺さないなぞ言ってられん。)」


 俺は武器を握りしめて女を見据える。


 「殺す。」


 「これでも、まだ倒れないか。じゃあ、光竜こうりゅう!」


 その状態で、分身体は巨大な光の三つ首のドラゴンを作り出す。そして、光のドラゴンは俺と無月アスカ、ルーク・ギルデアを視界に入れた瞬間に、光のブレスを放ってくる。2人はすぐに防御体勢に入るが、俺は2本の剣を高速で回転させて防ぐ。だが、その中で光の狼が俺の身体中に噛みついてくる。


 「邪魔だ。」

 

 俺は1本の剣を更に高速で回転させて残り1本で噛みついてくる光の狼を切り落とす。


 「マーシィ、防御体勢を解いてあの人の元に行く!」


 「ダメです! 死んだらどうするのです!!」


 「目の前で助けられるのに、自分だけ助かるのはごめんだぞ俺は!!」


 「ルーク!」


 ルーク・ギルデアが防御を解いて、勢いよく俺の前に現れて、噛みつこうとする狼を吹き飛ばして、降ってくる光の雨とブレスを同時に防御し始める。


 「すまんな。」


 「いや...この程度...! ...余裕...だよ...!!!!」


 俺は何とか立ち上がるが、このままでは全滅は時間の問題だ。


 「ルーク。流石にここまで来たら...!!」


 「殺すってか...? でも...それも視野に...入れるべきか...。」


 通信で2人がそう会話をしているのが聞こえる。


 「(俺が限界近いのを見せてしまったからか。だが、合流後の戦闘の中で聞いたあの話。) ここで、殺すことになれば...聞いた意味がないな。」


 俺はそう言って、今は左手に持っている一撃絶骸の剣を握る。


 「(これを使うか...?)」


 そう思っていたら、遠くからこちらに走ってくる足音が聞こえた。


 「ん? ...薫...!?」


 そこに、見知らぬ女性を連れ、創破造壊の盾を背負った薫が走ってきた。見知らぬ女性は俺とルーク・ギルデア、無月アスカを取り囲むように巨大な氷の壁を張った。


 「氷...。」


 「ぐっ...!!」


 氷の壁のお陰で光の攻撃が防がれている間に、薫が俺たちに対して、クリードの作戦を伝えた。


 「投擲槍って...当てられんの?」


 「行ける。余裕だ。」


 「私たちは、光界の範囲を狭めるために、一番光を放っている本人の意識が濃いと思われる箇所...核を氷の球体で閉じ込めるための誘導と、分身体の排除をすればいいのね?」


 「はい。お願いできるでしょうか?」


 「やることが見えたんだ。余裕だよ。」


 「強がらない。補充した燃料もかなり減ってきています。一度の失敗も許されません。」


 「失敗しなければ良い。簡単だ。薫、氷の球体ができるまで、富士浪清雅さんを守ってくれ。」


 俺はそう言いながら、普通の矢と金色の装飾のついた青い弓を薫に預ける。


 「何も言わずに撃て、ある程度の狙いが定まれば、大抵当たる弓だ。ただ、撃つときは無言で撃て。」


 「はい。」


 「頼んだぞ。薫。では、時間はない。一気に方をつける。」


 「あんた大丈夫なのか?」


 ルーク・ギルデアが俺を気遣う。俺は薫の方を見た後に


 「部下や弟子の前でくらいカッコつけたいだろ?」


 「...ちげえねえ。ごめん。野暮だったな。アスカは、大丈夫か?」


 「大丈夫じゃないですよ。でも、今更戦闘から退くなんてできない。」


 「まっ、そりゃそうか。うし...行くか。」


 ルーク・ギルデアのその声と共に、俺たちは動き出す。


直後 富士浪清雅 氷の球体を生成開始 薫 護衛開始


 「氷球。」


 富士浪さんは地下と地上合わせて最も光を放っている箇所の回りに薄い氷の壁を何層も重ねるように作っている。当たり前だが、まだ気づかれてはいない。バンバさんたちの方を見ても、分身も竜も狼も雨も降っている。早くやらないと。富士浪さんは目を瞑って、氷を作るのに集中している。でも、鏡のように精巧な氷を作るのに、苦戦している。


 「(ただの氷じゃなく、鏡の氷をしかも球体で作れっていきなり言ってるんだから、かなり無茶だ。でも、私にできることは、この人を全力守るってことだけ。余計なことは考えない。)」


 「クッ...ぅぅ...。(あの人のように瞬時にあの精度の氷を作れれば...。)」


 私は周囲を警戒していると、富士浪さんを襲う攻撃が来ることを感じ、その方向に即座に弓矢を射る。放たれた矢は、富士浪さんを貫こうとしていた光弾を相殺した。


 「ふぅぅぅ......。(こちらに光弾を撃ってきたってことは、もうバレたかもしれないってこと。集中しろ...。守りきれ、何があっても...!)」


 私は深く息を吐きながら、感覚を研ぎ澄ます。


 「......(作戦の要は私...私が何がなんでも成功させない限り...この戦いは終わらない。)」


 何層も重ねられている薄氷の壁は確かに、多少光を遮ることはできている。そのお陰か、バンバさん達の方が、戦いに気持ち余裕ができてきている気がする。


同時刻 バンバ・ルーク・アスカvs白澤光分身体


 ルークが攻撃を続けているが、依然として分身体は動き続けていて、攻撃が当たらない。アスカは俺を執拗に狙ってくる狼を対処しており、俺は、回りの建物を無視して狙ってきている三つ首竜から防戦を貫いている。その中、微細に氷が形成される音が聞こえてくる。流石にまだばれてはいない。そんなことを考えていると、三つ首竜がブレスを放つ準備を始めた。


 「掴まって!!」


 俺に向かって手を伸ばしているアスカがそう叫んだ。俺はバックステップして手に掴まると、その勢いで、三つ首竜の真上まで移動した。狼共は空中を走るように俺とアスカを追ってくる。


 「すまない。だが、ここで降ろしてくれ。」


 「え?」


 「背中に乗ってあのしつこい首を切り落とす。その後、胴体を両断だ。」


 「乗れるんですか?」


 「建物が再生し続けているからわかりづらいが、ちゃんと回りの建物を壊しながら狙ってきていた。光なのになぜか実体はある。」


 「わかりました。武運を。」


 「あぁ」


 俺はそう会話を交わした後に三つ首竜の背中に降ろされ、着地する。同時に、アスカの方を見るが、俺を狙ってくる狼の動きを先読みして銃を撃って、近づかせないようにしている。


 「おらぁ!!」


 そんな中、光速で動き続ける分身体にルークが攻撃を当てた。同時にアスカは光の狼を全て殲滅し、残りは俺は光の三つ首竜の首を全て切り落として、胴体を両断するだけになった。


 「!!」


 2本の剣を力強くもった状態で飛び上がる。三つ首竜は全ての頭を俺に向けてブレスを発射しようとしている。


 「すまないな。全てこちらに頭を向けてくれて、お陰で...。」


 俺はあえて剣を振り下ろさずに、背中にまた着地した後に、首がお留守になったところを一薙ぎで一気に切り落とす。その後に、切り落とした箇所から尻尾まで剣を突き刺した状態で一気に尻尾まで走り抜けて、三つ首竜のだったものを両断する。


 「(動きがほんの少し鈍くなっている。だが、それに気づいてはいない。何かをされているのは感づいているようだが、さっきまでの優勢が急に崩れたことに動揺して、それどころではない。)」


 「おらおらおらぁ!!!」


 その後、ルークの方を見ると、あの勢いのまま、攻撃を当て続けている。次に、回りを見渡してみると、何層も重ねられた薄氷の球体が着実に、光界の核に近づいている。その影響か、分身体の体が少し薄くなっている。


同時刻 光界本体 白澤光


 「なぜか、視界の範囲が狭まっている。何かに邪魔をされている。」


 あたしは何が光を遮っているのかを見る。


 「...氷...!! じゃあやっぱり、あの女が何かをしている。すぐに殺す!! 乱咲光弾刃雨らんざきこうだんじんう!!」


 あたしは即座に乱光刃雨と光弾襲雨の複合技を放つ。確実にやるために、どれだけ先読みしても、これに対応することはできない。


同時刻 富士浪清雅 薫


 「!! (何かが来る!!)」


 私は危険を感じた方に弓を引こうとする。でも、引けない。なぜなら、危険を感じる方向が全方位だから。


 「(完全にバレた...!! 光速じゃ、誰も助けにはこれない。それに、一瞬の出来事なんてすぐにはわかりっこない!! 私がやるべきこと....守ることだ!!!)」


 私は弓を捨てて、背負ってた盾を富士浪さんの近くに突き立てて、一番攻撃が来ると感じる背中を覆うように体全体を広げて守る体勢に入る。光が産み出されるのを感じる。もう来る。


 「クッ...。」


 任されたことなのに、恐怖で逃げたくなる。でも、逃げたら、全部終わりだ。何がなんでも、守るんだ。邪魔をさせない。私は目をつむる。その行動に意味はないのはわかっている。でも、目をつむる。


 「(来る!)」


 ーーー氷柱流群アイシクルシャワー


 しかし、その攻撃は一切こちらには来ず、襲ってくるはず光の攻撃が全て氷で相殺されていた。


 「あれ?」


 私が目の前の光景に驚いたが、富士浪さんかと思って気を取り直しながら富士浪さんの隣に立つ。


 「すみません。ありがとうございます。」


 「いや、今の私じゃないよ。」


 「え?」


 「でも...。(正確に氷を作る技術。力み過ぎるのはよくない?)」


 富士浪さんは何か掴んだような顔をする。すると、氷の球体の生成速度が微かに上がっているの見える。


 「何が。」


 富士浪さんがそう言うと、


 「球体を作り終えたら、あの女の子の本体を浮き彫りにして分身体を消すために、冷気の霧で光を分散させましょう。」


 「はい...。」


 何かを言われたのか、ただ返事をした。すると、球体上の薄氷の壁の生成速度が目に見えて速くなっている。


 「(凄い。さっきまで難しかった精度の高い氷が作りやすくなっている。どこからか誰かが補助してくれている。多分...さっきのクリードさんと一緒にいた...。)」


 冷気の霧によって、光は分散され、バンバさん達の動きが止まっているのが、見えた。分身体が消えたのかもしれない。


同時刻 バンバ・ルーク・アスカvs白澤光分身体


 ルークが攻撃の連打を叩き込んでいると、突然冷気を帯びた霧が回りを包み込み、分身体は霧散した。


 「うぉ! 寒っ!!」


 「これは...富士浪清雅さんが作った...。」


 「いや、明らかに出力量が違う。それに、氷の球体を作りながら、この量の霧を発生させられるほどの冷気を放つなぞ、一朝一夕でできるものじゃない。」


 俺がさも当たり前に、喋っていると、武装しているのにも関わらず寒そうな2人が首をかしげながら俺の方を見ていた。


 「あんた...寒くねえの?」


 「北極点で1ヶ月くらい暮らしていた頃と比べると、全然だぞ。」


 「はぇ~...よく死ななかったな。」


 俺の発言にルークは呆れるように驚いていた。すると、回りの光界が解かれる。


同時刻 光界本体 白澤光


 「(まずい。分身体が消された。クソッ! 後少しなのに...寸前で敵が増えてる!!)」


 あの3人と交戦していた分身体は突如現れた霧で消滅し、新しい分身体を作っても、すぐに散乱して消滅する。その間に、氷の壁があたしに近づいてきている。


 「仕方ねえ。」


 あたしは光界を解いて、肉体に戻り、氷の球体が完成する前に逃げようとした。


 「(光速なら一瞬で逃げれるんだよ!)」


 「悪いが、させねえよ。」


 「!!」


 逃げようと思った先に鎧のコアのようなものを右の二の腕に押し当てた状態の金髪の男がいた。あたしは即座に反対方向に逃げようとしたが、判断が遅かった。


 「出力最小...単発式...絶零ぜつれい...烈白れっぱく...光轟砲こうごうほう...。」


 男がそう言いながら、右手を開いて白い光のビームのような砲撃を銃弾で言う一発分、撃ってきた。それを避けられず、あたしは直撃し、もとの場所に吹っ飛ばされた。


 「よし、一気に閉じ込めよう。」


 「はい...!!」


その瞬間に何層も重ねられた鏡面の氷の球体に閉じ込められた。


 「ぐぉ...ぅ...ぁ...。」


 あたしは光速でそこから脱出を図ろうとするが、撃たれた箇所が痛んで、動けない。


 「何だ...あら...。この体が再生能力が無かったら...死んでた...。つうか、あれ光だろ。何で、あたしに...光の攻撃が効いてるんだ...!?」


 でも、脱出しなければ、まずいと直感的に判断し、血反吐を吐きながらも、必死に立ち上がって、脱出を試みる。...でも、光速で脱出しようとすると、鏡面に弾かれて、抜け出せない。


 「クソッ...。こうなったら。」


 あの一発で限界が来た体の全てを使って、この氷を壊すことに決めた。その瞬間、剣と剣がぶつかるような音が大きく聞こえた。


同時刻 クリード


 剣による合図が聞こえた。恐らくバンバだろう。だが、見てわかるくらい、巨大な氷の球体に女が閉じ込められているのは、ここからでもよく見える。


 「邪なるものに傷つけられ、苦痛を味わい尽くしたものよ。今一度、己という人間を見定めよ、そのような概念にとらわれることなく、己の心で見定めよ。邪概心苦じゃがいしんく。」


 俺は赤黒い光を放つ槍を全力で投げる。槍は勢いよく、女のもとまで飛んでいき、氷の球体ごと女を貫く。


 「あがっ...。」


 その衝撃で女は気を失い、割れた氷の球体から落ちる。それを無月アスカが受け止めて、地上に降りる。


その頃 バンバ ルーク アスカ合流


 全員合流後、気を失っている女を心配そうにルークが見る。


 「死んでないよな?」


 「力を使ってる最中は殺傷能力はない。死んでない確実にな。」


 不安そうなルークに対して、俺がそう説明すると、アスカが俺たちの方を見て頷く。


 「おぉすげぇ。ってか便利だなあの槍。これで一時的に能力使えないってんだろ? これなんだよ。」


 「神器ジンギの1つだ。」


 「は? 神様が使う?」


 「そうじゃない。9つの神殺しの武具、略して神器ジンギだ。」


 「なんだそれ。」


 「聞いてもあまり関係ないぞ。」


 「じゃあいいや。とにかくすげえんだな。」


 ルークはそれ以上詮索せずに感心すると、俺は膝から崩れ落ちるように、地に倒れた。


 「お、おい。」


 「...大丈夫だ。今になって限界が来たんだろ。」


 そんなところに、薫と富士浪清雅さんが走って近づいてきているのが見えた。


 「バンバさ~~~ん!!!」


 薫の無事な声を聞いて、戦いは終わったんだと実感した。

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