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Blood Spare of Secret : The story of Creeds  作者: 千導翼
第二章 シャインティアウーブ編

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創破造壊

地下室内 ルークvs浦坂千波


 女はいきなり俺の喉元を狙って蹴りかかってくる。それを軽くいなして、カウンターを決めようとする。


 「...おっと...。」


 しかし、それを邪魔する形で氷の槍が地面から生え出てきた。俺は即座に真上に跳んで避けた後に、生えてきた氷の槍を蹴って後ろに下がる。そして、着地点に生えた氷の槍を折って、着地を同時に投げる。


 「ぬぅ..!!」


 「はいそこ隙!!」


 それを何とか蹴り壊した女の真下に瞬時に移動し、顎に向かって拳を勢い良く突き上げる。


 「かっはっ...!!」


 顎を打たれた衝撃で体が浮き上がり、俺はそこから態勢を戻し腹部に向かって内部に衝撃を伝えるように掌底を放つ。


 「うう゛ぉあ!!」


 「女だからって加減しねえよ。」


 女は大量に吐血しながら吹っ飛びそうになるが、即座に胸ぐらを掴み、そのまま俺の方に引き寄せて頭突きをする。


 「う゛あ゛!!!」


 女は悶絶した顔を知る由もなく、俺はそのまま胸ぐらから手を離して、少し跳んでから後頭部を掴んで床にぶつける。


 「ぐぉあああ...!!!!」


 「人間出来てないからな。」


 俺がそう軽口を叩いていると、今度は四方八方から大量の氷の槍が生成されて飛んでくる。それをすぐさま軌道をずらしていなす。だが量があって流石にいなしきれず、何本か体を貫く。


 「いって...!!」


 「...はぁ...はぁ...。女の大事な部分を...容赦なく攻撃するからだ...。」


 体が貫かれて身動きが取れない俺に向かって息も絶え絶えに女はそう言った。


 「喧嘩売ってきといて、それはちと贅沢じゃねえの?」


 女の言葉に俺はそう言って、力ずくで自分に刺さっている氷の槍を全て折って、刺された箇所から血が流れ出ている状態で女を見据える。


 「...ぁ...。お前は...痛みを感じないのか...?」


 女が俺に恐怖したのか、声を震わせながらそう尋ねる。


 「さっき言ったろ、いてえよ。滅茶苦茶いてえよ。でも...生きてる。じゃあ戦う。やらなきゃいけないこともあるし、約束があるし。それくらいは...守らなきゃな。」


 「...くぅっ...!!」


 「生身だったら勝てるって思ったんだろ? 清雅さんを手駒にしてりゃ勝てると思ったんだろ? じゃあ何ビビってんだよ? ほら、かかってこいよ...。これ以上にない武器がいるんだから。」


 俺は感情を圧し殺した声で挑発するように言った。すると、女は悔しそうな表情をしつつも、下を向いて黙ってしまった。


 「?」


 急に黙った女に俺は違和感を覚えて、本当に何も喋っていないか耳を澄ました。


 「...!!」


 そして、すぐさま女の襟首を掴んで後方に投げ飛ばした。その瞬間、ついさっき女がいた場所に氷の槍が尋常じゃない速度で落ちてきた。


 「情報を渡さないために自害ってか? させねえよバカ。」


 「くっ...!!」


 「この一件を引き起こした奴が、まさかこんなあっさり捕まるなんてな。まぁ、これから大変だから、ちょうどいいが...。」


 「(まだ...終わってない...。)」


 俺はそう言いながら、女を拘束し担ぎ上げる。


同時刻 地下室内 七瀬愛翔 通信システム


 「このバリアすげぇ全然攻撃を寄せ付けねえや。」


 俺の回りを囲んでいるバリアに素直に感心していると、ライレトが急に聞いたことのない声を発し始めた。


 「通信システムの復旧を確認。ルーク専用AIシステム、M・E・R・C・Y起動しました。さて、あなたはルークではありませんね?」


 「...あ...はい。えっと...ルーク...さんは、今戦いに行ってて、アスカって人に連絡をしろと言われてまして...。」


 俺は発された声にたどたどしく答えると、AIマーシィは即座に検索を始めた。


 「通信繋がりました。アスカさんに繋ぎます。」


 「ルーク?」


 「すいません、違います。ルーク...さんは今戦いに行ってて、あなたに繋げば、片手間で助けに来てくれるということを言われまして...。」


 俺がアスカという人の声にそう答えると、しばらく黙った後にため息をついた。


 「場所は?」


 「来てくれるんすか?」


 予想してなかった答えに俺は少し驚く。


 「いえ、私は行きません。というか行けません。代わりに、私のAIが行きます。通信システムが復旧したのであれば、動けますからね。」


 「ありがとうございます。」


 「いえいえ、おきになさらず。もしきにするのであれば、ルークに一言伝言を頼みます。」


 「はい。」


 「一体今まで何処で何をしていたんですか? バーカ。...てね。」


 「...はい。」


 思ったよりも緩い言葉で少し気が抜けたが、助けが来るらしい。それにしても、急に何で通信システムが復旧したのか...わからない。


同時刻 シャインティアウーブ地上 天候はやや曇り アスカ


 通信システムが復旧したという連絡を受けた直後の私。


 「...。」


 「まぁまぁ、そ...そんな顔せずに...。」


 「はぁ...頑張ってハッキングしてた時間無駄になった...。」


 自分で言うのもなんだが、普通に落ち込んだ。


 「(って、言ってる場合じゃない。ハッキングする必要性がなくなったのなら、火星にいかないと。) ラブ、通信システムが復旧したから、アンドロイド体に移って、さっき連絡あった場所に助けに行って。ルークとも合流できると思うから。」


 「おっし、了解っす!!」


 ラブはそう言って、通信を切った。私はすぐに、戦闘が行われている方向に向かって飛ぶ。


 「受けた恩は返します!!」


同時刻 バンバvsヒカリ


 光速で動き続ける女に俺は何とか対応しながら攻撃を仕掛けるが、当たる気配が全くない。


 「(疲れてきた。)」


 「乱光刃雨みだれひかるやいばのあめ!!」


 俺がそんなことを考えた矢先、攻撃を受け流していた武器を弾かれ、無防備になったところを切り刻まれる。


 「ぐっ...。」


 「光脚こうきゃく!!」


 続けるように顎を蹴りあげ上空に吹っ飛ばす。その後すぐに俺の目の前に現れ首を掴んで光速で落下し地面に叩きつける...。いや、突き抜ける。


 「うぁ....。」


 あまりの衝撃に俺は吐血しながら辛うじて離していなかった剣で応戦しようとするが、その手を踏まれてしまう。


 「良く生きてるねぇ。殺す気だったんだけど。」


 「(体がついていかない。まぁ負けなければいいのだから、別に大丈夫か。)」


 俺はそう考えて回りの見る。どうやら地下都市まで落とされたらしい。


 「さて、もう一踏ん張りかな?」


 「あ?」


 「ほら、まだ死んでないぞ?」


 俺がそう言った瞬間、女は光速で俺の顔面を蹴ってくるが、それに合わせるように俺は攻撃を加え、腹部に剣を刺す。


 「!!!!」


 女はその攻撃に悶絶してその場に膝をつく。俺も顔面を片手で押さえながら倒れそうになるが、踏ん張って女を見据える。


 「ぐっ.....ぐふぉあ....!!!」


 「どうした? まともに食らったことに驚いているのか?」


 俺の態度に女は腹を押さえながら立ち上がり、すぐに傷口を再生させる。


 「(こいつ...慣れてきてる。さきに攻撃を与え続けたからまだ優勢なだけで、次戦うことになったら...。)」


 「(警戒され始めたか?)」


 「....!!」


 そうしていると、急に上からアームのようなものが降りてきて、女を捕まえる。そして、地下都市から離すように外に連れ戻した。そして声が聞こえた。


 「選手交替です。」


 「本当にもう一踏ん張りだったな。」


 俺はそう言いながらその場に座り込む。剣を持つ力もかなり弱っている。


 「ちょっとだけ休んでも大丈夫だろ。」


 俺が一人でそう言うと、遠くの方で戦っている音が聞こえる。恐らく、光琳と薫が軍人達と共に化け物と戦っている音だろう。


10分前 地下都市 猟兵分隊と薫、光琳


 しばらく歩いていると、複数の影のような黒い化け物の集団とその中心に少し大きい化け物がいた。


 「軍曹。」


 「ああ。あれだ間違いない。」


 隣にいる部下の人がそう言うと、軍曹さんは静かに頷いて、他の軍人達に合図を出して、銃を構えさせる。その後に、狙撃班の位置を確認して、軍人達に散開の合図を送る。


 「敵を四方八方から取り囲んで周りの雑魚っぽい奴らを一気に片づける。そこであの目立つ野郎、あれを狙撃させる。」


 「嬢ちゃんは俺と一緒だ。そこの戦い慣れてそうな嬢ちゃんは反対側に行く隊について行ってくれ。」


 「了解です!!」


 私が戸惑っている内に光琳さんは小声で元気よく返事をして、反対側に向かう隊に行った。


 「食料や薬でのサポートは運搬係がそれぞれのところにいるからそいつらに言われたら、その仕事を頼む。それがない限りは、俺たちは戦闘に集中するから、狙撃班の合図は拡声器で俺に知らせてくれ。」


 「...はい!」


 「嬢ちゃん...リラックスだ。無駄な力は抜きな。そういう時こそ、変なミスをするんだ。」


 「...はい。」


 軍曹さんの冷静な言葉に私はハッとして深呼吸をした後に返事をする。


 「ん?」


 そうやり取りを交わしていると、さっきまで一緒にいた人たちが向こう側と右、左側で完了の合図を送っているのが見えた。


 「よし嬢ちゃんはここで待っててな。俺たちは今から戦闘に入る。運搬係と協力して食料と薬の管理は怠らず、合図をしっかり頼むぜ。」


 「はい!」


 「おう、いい返事だ。」


 軍曹さんはそう言うと、合図を送っていた人に、同じように完了の合図を送った後に、戦闘開始の合図を送る。その瞬間に、四方八方に散った軍人たちと光琳さんが化け物の集団に向かってショットガンを構えて撃ちながら向かっていく。


 「ヴァ!?」


 それに気づいたのか化け物を統率していると思われるリーダー格の化け物は周りの化け物に指示を出して向かわせる。


 「化け物退治は私の専売特許だぁ!!」


 光琳さんはそう叫んで、槍で化け物たちをいとも簡単に薙ぎ倒していく。


 「やるな嬢ちゃん! 俺達も負けてらんねえぞ!!」


 「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」


 光琳さんがついて行った隊の人たちがそう叫んで同じように化け物たちを倒していく。


 「おら東側助っ人ありの奴らに負けてんぞ!!」


 「西側! さっさと終わらして浴びるように酒飲むぞ!!」


 「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」


 右と左側にいた隊の人も各々部下を鼓舞する。


 「あの嬢ちゃんやるな。見立て通りだ。だが...国の為に命を賭して戦う軍人の底力を見せてやるぞ!!!」


 「「「アイアイサー!!!!!」」」


 軍曹さんも負けず劣らずの声量で鼓舞する。


 「すごい...。」


 そうして、あっという間に周りの黒い化け物たちを一掃してしまう。


 「私、サポートいらないかも。」


 私がそう呟くと、狙撃班の合図を出したのが見えた。私はすぐに拡声器を手に取って、


 「伏せ!!!!」


 と叫ぶ。その瞬間に、皆その場でしゃがむ。それとほぼ同時に狙撃班の人たちが化け物のリーダー格を撃ち抜く。そうして、複数の銃弾の嵐に穴だらけになった化け物はその場で倒れ伏す。


 「意外と早く終わってよかったですね。」


 光琳さんはそう言うが、軍曹さんの表情はまだ硬かった。


 「どうしました?」


 「まだ終わってない。」


 「え?」


 「ただの勘だが。」


 軍曹さんがそう言った瞬間、光琳さんの背後から影のような化け物が湧いて出てきて、襲い掛かるのが見えた。


 「光琳!!」


 「!!」


 私がそう叫んだと同時に、軍曹さんがすぐに光琳さんを押し退けて庇う。


 「ぐっ...。」


 「軍曹!!」


 そのせいで軍曹さんの腕が吹き飛ぶ。


 「撃て!!」


 しかし、軍曹さんは怯むことなく指示を出し、それとほぼ同時に他の軍人さん達が化け物を撃つ。


 「すい...」


 「無事か!?」


 「...はい。無傷です。」


 「そうか、それは良かった。だが勘は当たった。まだ終わっていない。」


 軍曹さんがそう言った瞬間に、倒したはずの影のような黒い化け物たちが一つになっていく。


 「軍曹はとりあえず撤退を!」


 それを見た部下の人がそう提案する。


 「馬鹿ぬかせ。まだ片腕残ってる戦える。眠ってる暇なぞないわ。」


 「しかし...。」


 「この国の為にお前たちより長く戦っている俺が逃げて、これからも国を守っていくお前たちを残せるかと言ってるんだ。なぁに心配するな。化け物退治専門の助っ人もいる事じゃないか。逆に勝機があるんじゃないか? なぁ?」


 軍曹さんは辛そうな顔も声もせずに、さっきと同じような態度で光琳さんに訊く。それに対して光琳さんはさっきの油断を一度頭の隅に置いて、自信を持った顔で


 「もちろん!!」


 と返事をする。それに軍曹さんは笑って、片手でショットガンをリロードして、口でショットガンを咥えて、片手で私に合図を出す。


 「...。」


 私はその合図を同じように双眼鏡を構えている狙撃班の班長に送る。すると、それを理解したのか班長はグッドサインを出して、狙撃班の人たちに伝えているのが見えた。


 「さぁかかってこい化け物。俺の腕は高くつくぞ。」


同時刻 研究所内部 白い紳士服の男vs暴走している富士浪清雅


 氷の槍だらけの施設の中、僕は能力を暴発している彼女に対して防戦一方で対応している。


 「くっ...。(さっきから槍しか造形しない。あれじゃ壁を張れるかわからない。同じ能力ならば冬眠ハイバーネーションは効かない。だからといって、下手に攻撃すれば殺してしまう。彼女が誰からを殺してしまう前に、早く止めないといけない。)」


 「ぐぅぅぅぅぅううううああああ!!!」


 僕がそう考えていると、彼女は突然絶叫する。


 「!」


 周りの氷の槍が形を変え、束になり龍のような形状になり、僕に噛みついて来た。そのまま僕を持ち上げようとしているが、僕は足元を氷で固定して全身に噛みついている龍の口を軽くこじ開けて、片手で持ち上げた後に、壁に投げつけて粉々に壊す。


 「どうしたもんか。」


 防戦一方では状況は変えられないとわかっていても、下手に動けば殺してしまうという懸念。それが僕の行動を制限する。


 「....!!」


 僕は自分の頬を勢い良く叩く。


 「(何で止めに来た? 自分の意思とは関係なく何かを傷つけてしまっているところをみたくなかったからだろ?) じゃあ...迷うなよ...。」


 僕はそう言いながら、本格的に能力を使うことを決めた。


その頃 地下室内 七瀬愛翔 ルーク 合流


 女を担ぎ上げて戻ると、愛翔が俺の足音を聞いていたのか、俺の事を見ていた。


 「何だよ?」


 「いや...思いの外早くてビックリしてる。」


 「まぁ...変な異名つくぐらいには強いからな俺。」


 俺がそう答えながら女を雑に壁に置くと、愛翔は苦笑いを浮かべながら俺をまだみている。


 「まだなんかあんの?」


 「伝言で...「一体今まで何処で何をしていたんですか? バーカ。」だって...。」


 「うん...ちゃんと後で説明...する前に謝らないとな...。」


 アスカの伝言に俺は分かりやすく苦笑いを浮かべてさっきから一言も喋らない女の方に体を向ける。


 「さて...洗いざらい話して貰おうか。」


 俺の言葉に、女はため息をついて話し始める。


 「あたしは細胞腐蝕症だ。」


 「やっぱな。」


 「発症したのは12年前。余命2ヶ月だと宣告された。あたしはそれからやっていた事を全て諦めて、自暴自棄になり毎日やけ酒をあおっていた。そんな時だ....あの男と出会ったのは...。」


12年前


 「本当に呑んでいやがる。見たところ随分な上玉じゃねえか。」


 「誰?」


 あたしに聞こえるような声で言った男にあたしは嫌悪感を隠さずに訊いた。すると、男はニヤリと笑ってあたしの隣に座ってきた。


 「俺の名はラファス・ドゥイレル。とある盗賊団の頭をやってる。」


 「へぇ。それが何?」


 「お前、俺の盗賊団に入れ。そうしたら...その病気...治す方法を教えてやるよ。」


 「やだよ。」


 急な話にあたしは胡散臭さを感じてすぐに拒否したんだ。そしたら、男があたしの腰回りに手を回してきて、顔を近づけて耳元でこう言った。


 「悪いが...拒否権はない。お前は今日から...俺のものだ...。」


 「は?」


 その言葉に私は危険を感じて突き放そうとしたんだが、その瞬間に意識を失った。次に目を覚ましたときには、服を脱がされた状態でベッドの上に横たわっていた。そしてすぐに起き上がったときには、男が服を着ている最中だった。


 「あんた...。」


 あたしは即座に何をされたかを悟って、男を睨んだ。そしたら、男はあたしの方を見て、心の底から嬉しそうな顔で笑った。


 「は? 何を笑ってんだ?」


 「いや? こんな反抗的な女を抱いたということが嬉しくてなぁ。」


 「!?」


 あたしは心底悔しそうな顔をしてたと思う。その状態でシーツを強く握った。すると、男があたしの隣にまた座ってきて。またささやくように言った。


 「歯向かっても意味ないぞ? その体はもう俺のものだ。時が来たら体が強く俺を求めるようになる。どれだけ拒んでも、お前の体とその脳がそれをさせてくれないからな。お前はもうこれから一生...俺のものだ。」


 「...は?」


 突然あたしの前に現れて勝手に抱いた挙げ句、これからの自由を奪われたというのだ。残り短い人生をこいつに捧げないといけなくなったことに心底腹が立った。


 「大丈夫安心しろ。その代わりとして、お前の細胞腐蝕症の進行をかなりおさえてやった。お前の寿命は12年まで延びた。それと、俺の超能力を少しだけ分けた。幻覚と幻聴を見せ聞かせるものだ。別に催眠とかじゃないぞ? 便利すぎるからな。」


 「...12年の間に何をさせたいんだよ?」


 「お? 話が早いな。お前の住んでいるあの国には、氷の女がいる。そいつは富士浪グループの令嬢だ。12年でそこに近づいて、信用を勝ち得てから俺のもとに持ってこい。どんな化け物だろうと。物にしちまえば...もう抗えない。俺は今、貴重な戦力が欲しいんだよ。あのバラガラなんつう得たいの知れない化け物をぶっ殺すためにな...。」


 最後の言葉を言うときだけ、ずっと同じようなトーンで話していた男の声に、感情がこもった。


 「だから、もし連れてきた暁には、お前の細胞腐蝕...完全に治してやるよ。それと、監視されてたら気分が悪いだろ? あと経過報告するのも面倒だろうから、毎日俺に会ってもやることやったら即座に帰っていい。その間に裏切って逃げたきゃ逃げてみろ。何か反撃の手筈でも考えてみればいい。できるもんならな?」


 「随分と余裕なんだな?」


 「そりゃあ、俺の女にしたんだからな。もう抗えない。」


 男はあたしの目を見て、そう答えた。その瞬間に、あたしは考えることを止めて、行動した。最初の頃は肝心の氷の女が見つからず、苦労したがな。だから、勝手にまだ成っていないんだと考えて母親を失ったばかりの娘に目をつけた。


現在


 「でも、近づく準備期間だった2年間、体を好き勝手されるのが、どれだけ感情を圧し殺しても嫌になっていった。だから、あたしは無駄だとわかっていても、抗うことを決めた。そのために、お前の言った通り、富士浪清雅に少量の毒を盛り続けた。氷の女に完全覚醒すれば、あの程度の毒、致命傷にはならない。そして、富士浪誠二にはそれを心配する不利をして、親から見た様子を調べた。そうやって行動していって、やっと能力の発現の兆しが見えた。そうして、氷の女をあいつのもとまで持っていって、派手に暴れさせてあいつを殺してやろうと思った。死んでしまうとしても、そっちの方がいい。勝手に自由を奪って、あたしを好き勝手した復讐だ。あぁ、ちなみにお前の考察ほとんど当たってるよ。第一印象で頭が悪そうだと決めつけたあたしの失敗だね。」


 女は思い出しながら心底ムカついた表情から自分自身に呆れたような顔で俺にそう言った。その事実を知った愛翔は目を見開いている。


 「清雅さんにどうやって誠二さんを殺させた? 俺の考察が正しいんだったら、お前が清雅さんを操る方法はないはずだ。」


 「あの子はね。15歳で精神的成長が止まってるんだよ。病院で寝たきりだったからね。だから、まだもう少し精神が弱いのさ。だから、父親に迷惑をかけているという罪悪感を増幅させるような幻覚を度々見せて、心の中の不安を大きくしていった。それで、一時的に言うことを聞かせられるようになって、それを完全なものにするために...そして、自分の惨めさにムカついて、殺した。」


 「ようは今の自分と勝手に比較して、恵まれてたと感じたから殺した...か。てめえはてめえだろうが、比較したところで違う人間なんだからはなから無駄なんだよバカが...。勝手に比較して、勝手に恨んで、命を奪われた方はたまったもんじゃねえよ。」


 俺はそう言いながら、質問を続ける。


 「あの金髪のボロボロの女とは何処であった?」


 「あの女はあいつのところに行く途中で会った。随分と痩せ細ってたから、ちょっと飯を与えたら、無愛想に感謝してきて、それにあたしが「感謝するくらいならあたしに協力してよ」ってダメ元で言ってみたら。まさかの了承を得てな。」

 

 女は何か疲れきったような表情で答えた。一言で言うともうすぐ死にそうだ。


 「お前、今日が最初で最後のチャンスだったわけか。」

 

 「そ。もうあたしは死ぬしかない。ここまでやっておきながら...本当にくそみたいな人生だったな...。普通に生きてると思ったら不治の病にかかって、全部投げ出したら、それすら許さないことになって、あたしがこんななのに、周りの幸せそうなやつを見たら....心底自分が惨めでムカついて八つ当たりする。本当くだらない...。」


 女はそう言って、目を閉じた。微かだが呼吸音は聞こえる。気を失っただけのようだ。


 「何か相談してくれりゃ、何とか出来たかも知れねえのに...。何で1人で背負ってんだ。...いや、俺が言えた立場じゃねえか。12年前とか、もろだしな。」


 俺はそう言いながら、女の拘束を解いて、横たわらせる。


 「治す対象は変わったが、まっ、死んで償うよりかはいいだろ。」


 「...。」


 かつての相棒の辿ってきた人生に唖然としているのか、愛翔は一言も話さなかった。すると、遠くから近づいてくる音が聞こえて、俺は咄嗟に身構える。


 「...とうちゃ~く。おっす、ラブでぇす!」


 「...おっ? ご苦労さん。」


 「お、ルークさん。アスカさんちょっと拗ねてましたよ。」


 「...すぐに謝りに行くさ。でも、その前にまだやることがある。」


 俺がそう言うと、ラブは愛翔と浦坂千波を抱えながら少し考えるような仕草をして、愛翔のつけている俺のライレトをとって俺に渡して訊く。


 「富士浪清雅さんのことすか?」


 「まぁな。」


 「何か、誰か戦ってましたよ?」


 「え?」


 予想していなかった返答に俺は情けない声を出した。


 「まっ、とりあえず行きましょう。」


 「お、おう。そうだな。(幻覚...解けてないのか?)」

 

 ラブは愛翔の傷が開かない程度に早く移動し始め、俺もその後を追う。


 「あっ、そういえば...金髪の女性見なかったか? ここでな。」


 「ここで金髪の女性? ...あ、見ましたよ。」


 「どこで?」


 「いや、何か盾構えてました。」


 「盾? ってか自力で起きたのか。」


 少し忘れかけていたクリードについてみると、一緒に行動していた時には持っていなかったように見えた得物についての言葉が出てきた。


 「で? 他になんかしてたの?」


 「いえ、俺を見つけるなりなんなり、こう言ってきましたよ。」


 「ん?」


 「「お前は真っ直ぐ光のやつ方に向かってくれ。俺が、娘の方を止めてくる」だそうで...。」


 その言葉を聞いて、俺は走らせていた足を止めて、一瞬考える。


 「よし、アスカの元に向かおう。」


 「え? いいんすか? 信じるんすか?」


 「あぁ。あと俺、もう結構見せ場作ったし、そろそろメインどころにも頑張ってもらわないと...。」


 「いや...ルークさん...メタいっす。」


 「気にすんなって。」


 俺とラブはそんなやり取りをして、アスカに元に一直線に向かう。


その頃 研究所内部 クリード


 幻の世界が解け、現実に戻ってきた感覚がある。


 キィー!?


 俺が突然現れたように思ったのか、鷹が驚愕したように鳴いた。俺は即座に音によるモールスを鷹に伝える。


 「これをバンバ達に報告しに行ってくれ、位置はわからんから、迷ったらとりあえず俺のところに戻ってこい。」


 すると、鷹は鳴いて返事をして飛び立った。それを見届けた後に、青を基調とした白金の盾を構える。


 「さて、反撃するか。」


 そして、今の状況そして国の情景を細かく思い浮かべる。


 「´(見えた。) この一帖いちじょう、ありとあらゆる万物事象に干渉するものなり。」


 俺が静かにそう唱えると、構えている盾は青と白が交じり合い、水色の光を放ち始める。


 「解き放たれば、あらゆる万物、事象を破り、壊す。そうして、再びそれらを創り造る...創破造壊そうはぞうかい。」


 その後、俺は唱えながら、体を一回転させながら盾を上に持ち上げて、勢い良く地に振り下ろす。次の瞬間、水色の光は国全体を覆い尽くす。


 「よし...これで準備完了だ。さて...遅れた時間を取り返すか。」


 俺はそう言って、盾をしまって富士浪清雅のいる方向に向かって走り出す。

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