七瀬 愛翔
5分前
ーーー!? 富士浪...誠二...!? やられた...のか...? 娘に...?
知らない研究所みたいな場所で視界が晴れたと思ったら、叫び声が聞こえてきた。急いでその場に向かったら、富士浪 誠二が娘の目の前で血を流して倒れている光景が目に写った。
「くっそ...。まだちゃんと謝ってねえのに...。」
自分が遅れてきたことによる悔しさで、唇を噛む。力が強すぎて血が流れ出てくる。そうしていると、辺りが猛吹雪が発生した。俺は壁の窪みに掴まって吹き飛ばされないように踏ん張っていると、急にパタリと止んだ。
「え?」
すると、先程まで叫び声をあげていた富士浪 清雅がボーッと突っ立っている状態になった。俺は、あいつが何かしたのだろうと考えて、手元に持っていた銃であいつに向かって撃った。
現在
とある研究所
怖い。この言葉が心の中で叫びまくってる。ちょっと前まで、当たり前のように喧嘩してた男と、今度は敵として対峙している。
「目的?」
「あぁ。俺個人のなぁ。」
「個人だと? てめぇはボスのために動いてるんじゃないのかよ?」
「バカ言えよ。誰があんな自己中糞野郎の為に動くんだよ。」
俺の疑問に、こいつはボスを心底バカにした口調で返した。そして、見下したような目付きで提案する。
「てかさ、その銃下ろせよ。まさかお前、自分が優位に立ってるとか思ってねぇよな? こっちにはNo.2レベルのスペアネルがいるんだぞ? 大人しく俺と手を組んだ方が、長く生きられると思うがなぁ。」
「敵に銃口を向けるってことは、覚悟したってことだよ。」
「...あっそ。残念...。はぁ...バーカ。」
俺の返答にこいつはすげえ呆れた様子で吐き捨てるようにそう言ったあと、指を鳴らした。
「!?」
「...。」
完全に意識外から攻撃に少し反応が遅れて。右の手の平を氷の槍で刺し貫かれる。
「ぐぉ...。」
俺は痛みをグッと堪えて、攻撃してきた人間に銃口を向ける。
「なっ...!」
するとその方向には、富士浪 誠二の娘である富士浪 清雅がいた。
「清雅。そいつはお前の家族を奪った男だよ。今度は父親すら奪おうとしてくる。守らなきゃ、君が見た夢のようになるよ。」
「(急にボーッと突っ立ったのは、完全に能力にかかったからなのか!!) くそったれ!!」
俺は必死に氷の槍の嵐から逃げ惑う。試しに氷の槍に向かって銃を撃ってみるが、当たっても簡単に弾かれる。
「くそっ!! 弾が勿体ねえ!!!」
俺は銃をポケットにしまって全力で槍から逃げ続ける。だが、そんな矢先...
「!?」
下からも槍が勢いよく生えてきた。上から襲ってくる槍と下から突き上げてくる槍の猛攻に、俺は避けきれずに簡単に腕や脚、腹部が刺し貫かれた。
「く...か..は...。」
刺された場所から激痛が走り、動けば更に抉られるような痛みが走る。
「(いてえ...。でも、耐えろ...。カッケェ大人になるんだろ? これからの未来は変えるんだろ!?)」
心の中で俺は必死に発破をかける。そうでもしないと、痛みに負けて戦えなくなる。
「ぐ...ぐぉ...ぐぉあああああああああああああああああ!!!!!」
俺は必死に雄叫びをあげる。そうして、貫いている氷の槍を引き抜いて、地面に倒れる。
「(起きろ!!)」
心の中で叫んで、激痛で悲鳴をあげている体を無理矢理起こして、次の攻撃を何とか避ける。
「何かタフになったな。」
「うああああああああ!!!!」
俺は叫んで、あいつに向かって銃を撃つ。だがあいつは避けもしねぇ。当たらないって分かってるからか。
「当たんねえんだよノーコン野郎。ほら清雅、早くやらないと。逃げられて、家族以外の人間も危険にさらすことになるぞ。」
「...!?」
「何!?」
元から酷かった猛攻が更に激しさを増した。どれだけ必死に動き回っても、予測していたのか、先回りして攻撃をしてくる。
「!? くっ...。」
さっきが強引に引き抜いた箇所が銃を撃った反動と動き回っていた事によって出血量が多く、意識が朦朧としてきた。
「くっそ...起きろ!! 散々迷惑かけておいて、ダッセェ人生歩んでおいて。何楽になろうとしてんだよ!! 今は!! 必死こいて、頑張るときだろうが!!!」
俺は自分の頭を銃で強く殴る。それで頭から血が出るが、何か...すげえ頭がスッキリした気分になった。
「あの人の娘であるあんたは! 俺が助ける!!! そんで、てめぇの目的はぜってぇに果たさせねぇ!! そうでもしねえと...俺は前に進んじゃ行けねえ!!!」
俺は名前と今の目的を叫んで、銃を構える。 勝てはしなくても、負けもしねぇ。
同時刻
シャインティアウーブ内 バンバ・キルラエル
目では到底捉えきれない光の速度の攻撃を、2本の剣で何とか捌いている。が、時期に相手が俺の防御方法に慣れて、防げなくなってくるのも時間の問題だ。その間に通信機能の復旧をしてほしいが、どうもまだ時間がかかりそうだ。
「余所見してんじゃねぇ!!!!」
「うっ...!」
確認した一瞬の間に俺は防御をすり抜けられて、腹部から蹴り飛ばされる。そして、そのまま高層ビルの窓ガラスを割って中に入り、その中の壁に激突して蹴り飛ばされた勢いが止まる。
「(呑気に確認している場合じゃないというのに、バカしたな。)」
「光陽弾!!」
俺はその声を聞いたと同時に床を強く蹴って、移動して置かれていたテーブルや椅子を飛び越え、剣を手元で回転させながら無数の光弾を避け、弾きガラスを割って外に出る。そして、落下しながら体を丸くして回転させ、ポケットから音玉を数個取って、女の周りにばらまくように投げる。次の瞬間には音玉は一斉に爆発し、女の周りで耳に響く大音量の音波が発生する。
「!? るっさい!!」
女が耳を塞いだことにより、向かってきてた光弾の嵐は止んで、ほんの少しの猶予ができる。その間に地面に降り立って、ビルの影に身を隠す。
「はぁぁぁ...。何でも屋に入ってすぐに2対1かと思えば、今度は光のスペアネルのNo.1...。俺は運が悪いのか良いのか。もし俺くらいの年齢だったら、時間稼ぎなどできなかっただろう。見たところ光琳や薫より若く見えるが、あの成りだったら、学校に入ってないだろうな。精神年齢が成長する間もなく。肉体だけ育ってしまった感じか? ...!?」
愚痴をこぼしながら空を見てみると、先程作った雲が晴れてきている。
「(まずい。あの光が戻れば時間稼ぎの場合じゃなくなる。)」
「光剣。斬閃破!!」
俺は思考しながらも聞こえた声に即座に反応し、その場から素早く移動する。
「どこに隠れても同じだ!! 絶対に許さない!! あたしは...化け物なんかじゃない!!!」
だが、女は俺を見つけるや否やすぐに光の剣を持った状態で俺の眼前に現れ、
「輝刃!!!」
俺は光の速さで、防ぐ間もなく斬られる。そのままカウンターで攻撃を仕掛けてみたが、一瞬で距離を取られて空振りに終わる。
「直撃したのに、何で攻撃できるんだよ?」
「この程度の傷で動けなくなるようじゃ...。戦力としては弱いだろう? (今頃になって、強さを捨てた事を後悔することになるとはな...光速にまるでついていけない。)」
そう言ってみるが、雲が晴れればこの女の土俵で戦うことになる。光にさらされた場所で戦ったら今の俺では勝ち目はない。
同時刻
シャインティアウーブ内 無月 アスカ
協力してくれている男性があの女と戦って時間を稼いでいる間にハッキングを終わらせなければいけない。なのに、元々複雑だったものがより拍車をかけて複雑になっていてハッキングがなかなか終わらない。
「ラブ、あとどれくらい残ってる?」
「まだまだっす。俺も引き続きハッキング作業をしてますけど、俺がやってるときとおんなじで、取り返しても取り返してもすぐに上書きされちまう! こりゃリーフさんほどじゃないすけど、相当なやり手っすね」
「...厄介な協力者ね。」
「全くっす。」
私はラブと会話をしながら、ハッキングを続け、同時に協力者を捜すことにした。そうして、不意に空を見上げると...発生させた雲が晴れようとしていた。
「...くっ。運が悪い...!!」
私は冷や汗をかきながら、ハッキングを続けて上書きされる瞬間にそれを逆探知することに注力する。
「急がなければ...。」
あの光が完全に戻れば...今の装備じゃ勝ち目はない...!!
同時刻
地下都市
地下からでも、上の音がよく聞こえる。きっと激しい戦いが繰り広げられてるに違いない。私と光琳さんは避難させた国民の人たちはさっき話した軍人達に任せて、化け物を様子見している軍人達に合流した。その中で、私は光琳さんと猟兵分隊の軍人達の食料や薬での治療でのサポートと他の狙撃班の方たちが合図を送り次第、後退の指示を分隊の皆さんに伝える事を指示された。
「本当に大丈夫なんだな?」
「「はい。」」
分隊の軍曹さんからそう言われたが、私と光琳さんは力強く頷いて、私は携帯食料と止血剤の入ったリュックサックを背負い、光琳さんは弓と槍、刀の手入れを終え、いつでも戦えるようにする。それを見て、軍曹さん厳しそうな顔をしつつもこう言う。
「死にそうになったら何も言わんでいいから迷わず逃げるんだ。君らは本来は外から来た客人だ。逃げたところで誰も文句は言わん。」
「そんな。」
私が反論しようとすると、光琳さんが肩に手を置いて首を横に振る。その時、初めて自分が焦っていることに気づいた。故郷が滅ぼされたときのように、この国も滅んでしまうと思って、冷静じゃなくなってた。
「俺たちは自分たちの手で国を守るために軍人になったんだ。その為に命を散らす覚悟も家族と別れる覚悟もできている。だが、君らは違うだろう?」
「それは...」
そう訊かれて何も言えなくなった。それを見て、軍曹さんは力強く笑う。
「すぐに否定しないところを見ると、自分の命を軽く見ている若者じゃないと安心するな。なぁ?」
「ほんとっすね。」
「こんな少女達が俺達と肩並べて戦うっていうからどんな死に急ぎが来るのかとヒヤッとしたもんすけどね。」
「マジでな。しっかりと生きようとしてるの見て戦う前だっつうのに安心したわ。」
軍曹さんの言葉に他の軍人達も軽くそう言ってくれた。
「よし、話はこれで終わりだ。この地下都市に出た化け物は運が良いのか悪いのか、今は一箇所に集まっているって情報だ。俺達猟兵分隊はそいつらを更に中心に集めて、狙撃班の狙撃の嵐で一気にやるって感じだ。こんな街中で火炎放射器やら手榴弾は使えねえからな。下手したら地盤沈下してお陀仏になるからな。」
「いつもより指示がざっくりっすね軍曹。」
「うるせえ。難しい指示なんぞ出したら嬢ちゃんたちがいろいろ考えて動けなくなるかもしれねえだろうが。」
「でも、マジでやばい時は火炎放射、ガトリング、マテリアルライフル、手榴弾、使ってもいいっすよね?」
「もちろんだ。その際は俺が直接指示を出す。そうしねえと、責任が俺だけに向かねえからな。」
「了解っす軍曹!!」
この会話が今まで軍人として共に歩んできた部下と上司の関係に思えて、私もいつかクリードさんとこういう風な関係になるのかと少し考えた。
「よしお前ら! 生きて帰るぞ!!」
「「「「アイアイサー!!!!!」」」」
「少女達は絶対に死なせずに勝つぞ!!」
「「「「アイアイサー!!!!!」」」」
軍曹さんの命令に軍人たちは大声で返事をする。その気迫には私は圧倒されそうになるが、光琳さんはむしろ笑ってそれについていっている。そうして、私と光琳さんは狙撃班と分かれ、猟兵分隊と共に化け物のもとに向かった。
同時刻
とある研究所
「(周りが赤い...俺の...血か...。くっそ...ダッセェな畜生...。)」
「ほんと無駄にタフだったな。...相棒?」
さっきからずっと戦っていた光景が真っ赤な血に染まってる。俺は...5本の氷の槍で、身体中を刺し貫かれている。戦っていた時の出血と刺されている痛みで、意識が朦朧として、動けない...。
「(根性じゃ...どうにも...ならないってか...。そりゃそうだよな...そんな現実...単純じゃ...ねぇ...。)」
「清雅。止め刺さないのか?」
「(畜生...畜生...畜生...!!! 散々迷惑かけてきて...その償いも...まともにできなくて......こんなところで...死ぬのかよ...!!! ほんとお前...何のために...助けられたんだ...何のために...今まで生きてきたんだ...。マジで...役立たずだな...お前...。)」
今から死ぬんだろうなってわかる。だから、こんな言葉が心の中に溢れてくるんだ。ほんと、自分が嫌いだ。信じてた相棒や組織には早々に見限られてて、せっかく優しくしてくれた人は知らない内に死んでて、その仇を討つこともできなくて...。
「ほんと...何のために生きてるんだ? 俺マジで...。」
「...。」
そんな事を言った瞬間。氷の槍が頭に目掛けて放たれる。ここで終わりか...。つまんねぇ人生...。
.........?
槍が放たれてるはずなのに、どこにも刺さる感触がねえ。俺は目を開けて、向かってきているはずの槍を見ようとする。
「...!?」
「ご苦労、お疲れ。よくやった...。あとは...助かるだけだな。な!」
「ぁ...あんた...。」
目の前にいたのは、氷の槍を片手で受け止めて、俺の前に立っていたルーク・ギルデアだった。
「な...なに!?」
「あ? 何驚いてんだよ? 清雅さん操ってんだったら、俺にビビることないだろ。」
「(自力でどうやって...?)」




