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Blood Spare of Secret : The story of Creeds  作者: 千導翼
第二章 シャインティアウーブ編

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親子

20分前...


 全く見えなかった暗闇の中、突如として視界は晴れ、訪れたことのない廃棄された研究施設のような場所にいる事に気づいた。


 「ルーク君! クリード君! 七瀬君!」


 先程まで一緒にいた人の名前を呼ぶが、返事はなく辺りはただ静寂。


 「風の音すらしない。ここはどこだ? 見たことがない。戻ってきたのか? だが...」


 そんな事を言いながら、回りを見回すと、武器がないことに気づく。


 「(剣がない。いや、クリード君の言っていた通りならあるはずだ。)」


 そう考えて瞬きをすると、近くに剣が落ちていた。


 「(何がどうなっている?)」


 先ほどまでの幻の世界とはどこか違う異質な雰囲気に違和感を持ちながらも警戒しながら歩みを進める。


 「?」


 そうしてしばらく歩いていると、どこからか涼しげな風が肌に触れたのを感じた。


 「(こっちか。)」


 感じた方向に向かって、少し早く歩く。涼しげな風がどんどん強く感じるようになり、しだいに涼しいと言うより、冷たくなってきているのを感じる。そうしてしばらく歩いていると、真っ白なベッドの上に清雅が横たわっていた。


 「...!! 清雅!!」


 私は急いでそこに駆け寄ると、清雅の表情はとても安らかで、血色も良く見えた。まるで細胞腐食症の症状が元から無かったかのように...。


 「清雅。目を覚ましてくれ清雅。」


 私は一瞬、最悪の未来を予感し、眠っていると清雅に何度か話しかける。すると、安らかだった清雅の表情が、一転して苦悶の表情に変わる。


 「清雅!! 大丈夫か? 何をしてほしい?」


 必死になって清雅に声をかける。返事はしない。ただ苦しそうな表情で、呻き声をあげている。


 「細胞腐蝕! (いや待て...本物か? いや、偽物の可能性も...。)」


 私そう思って、袖を捲って見るが、細胞腐食進んでいるようには見えない。ここで、ルーク君とクリード君の言葉を思い出した。


 ーーー半端な力じゃスペアネルを幻の世界に閉じ込めることはできない。


 ーーー現実から俺たちの姿や声が透明になって認識できない状態にあると言う方が正しい。


 「では、清雅を移動することはできないはず...。」


 私がそう言うと、背後からパチ、パチ、パチと間を開けた拍手が聞こえた。私はその方向にゆっくりと振り向くと、我々を幻の世界に閉じ込めた張本人がそこにいた。だが、血色が大分悪い、目にクマもできている。随分と疲れきったような容姿だ。


 「まさかイレギュラーがいるなんて驚いたけど、まぁそこまで支障はない。娘さんは本物だよ。」


 「本物...。だったら今すぐ止めろ。」


 私は爆発しそうな怒りを抑えたような声で男に武器を向けながら言う。


 「止めろと言われてもな。お前の言うことを聞く必要がない。」


 「何?」


 「俺からしてみれば、その娘の命にも体にも興味はない。あるのは、能力だけだ。その為なら、使えるものはなんだって使う。なぜ自分だけ目覚めたと思う?」


 男は楽しそうな顔で訊いてくる。


 「精神性が安定していて、尚且つスペアネルだからこそ、俺の能力が本来効かない。だが、精神性が安定を失った場合、通常より干渉できるんだよ。だから、一時的且つ違和感なく認識をなくしてここまで連れてこれる。」


 「その言い方だと、クリード君の推察は正しいということを認めるようなものだが...。」


 「正しいよ。でも、別のこれの種が割れたところで俺には何の影響もない。お前の娘が手に入った時点で俺個人の目的はとうに果たしている。」


 「そうか。」


 その瞬間に、私は感じた。この男は今すぐにでも消すべきだと。何としても、娘をこの男に手に渡してはいけないと...。


 「白王双天流 第一秘剣 零晶閃!!」


 「!!」


 地を蹴るように駆け、剣を順手、鞘を逆手で居合い抜刀するように持ち、男の首を挟むように斬る。この秒間、わずか0.5。


 「!?」


 「...おっと危なかった。」


 「(何? バカな。確かに手応えはあった。なのに、傷1つなく、私の背後に移動しているだと?)」


 私が驚愕の表情を浮かべていると、男は挑発するように手招きし、流し目で娘の方を見る。


 「(この間にも娘に能力をかけていると言うのか!)」


 私が理解したことがわかったのか、男は頷きながら口角をあげて笑う。


 「白王双天流 第三秘剣 冷炎!」


 私は一瞬で男との間合いを爪、剣と鞘で下から切り上げるように回転させて打つ。


 「(当たった。確実に!!)」


 そう思った瞬間、視界から男が消える。


 「危ない、危ない。油断も隙もない。」


 またしても背後に男が立っていた。


 「(やはり、この世界の中では勝てんか...。)」


 私がそんな事を考えていると、男は見透かしたような声で答える。


 「ご安心を、もうあなたは覚めている。今現在起こっている事は紛れもない現実だよ。さっきの会話でわからなかったのか? じゃあまた疑問が生まれるな。何で手応えがあるのに、攻撃が当たっていないのか。」


 「何...?」


 「ゆっくり考えてる暇はないぞ?」


 私が思考しようとする直前で男は娘を指差す。


 「くっ...!! 白王双天流...星霜! 残雪! 深雪! 氷月! 凍餓! 双白龍!!」


 自身の用いるあらゆる技で男に攻撃するが、全て手応えはある。しかし、一向に傷1つつく気配がない。その状態で時間は無情に流れていく。その現実が私の心を焦らせる。


 「(なぜだ。なぜだなぜだなぜだなぜだ。なぜ傷がつかない? 当たっていない? じゃあ先程からある手応えはなんだ? これが紛れもない現実と言うのなら、なぜ避ける動作を目視できない。攻撃が当たっているのを見ていないのか?)」


 焦りによって考えの視野が狭くなっていく。男の姿をジッと見る。


 「(...!) まさか...。」


 からくりに気づいた瞬間...細長いもので貫かれた感触とそれによる激痛が身体中に走った。


 「ぐはぁ...。」


 刺された影響か、私は口から大量の血を吐いた。


 「思ったよりもあっさりだったな。富士浪 誠二。」


 男の言葉を聞いて、私は誰に刺されたのかをこの目で確かめた。


 「清...雅...。」


 私は清雅の生み出した氷の槍によってすい臓を刺された。清雅の目に光がない。幻覚に完全にハマったのかと思いながら、私は愛する娘に、愛情を注ぎきれなかった娘の頬に手を当てる。そうして、もう一度名前を呼ぼうとする。だがその前に、私は清雅の眼前で倒れてしまった。


ーーーすまない。ダメな父親ですまない。父親らしいことしてやれなくてすまない。愛情を注ぎきれなくてすまない...。


 死ぬ間際になって、言いたいことが溢れてくる。だが、清雅には...聞こえていないだろうな...。


同時刻 シャインティアウーブ地下都市


 俺達は何とか、外にいた国民を地下都市まで避難させることに成功し、地下にいた軍人達に外の状況を伝えた。


 「外にNo.1格のスペアネルが1人、それをアスカさんが対応されている...と。そして、連絡が遅れたのは、国中にハッキングを仕掛けられて、通信手段をたたれたから...。それで、スペアネルと戦うための戦力が欲しいと言うことか。いや、もっと具体的に言えば、アスカさんレベルの人間が必要だと言っているのだろう。生憎、アスカさんほどの戦力は今国内にいない。外交でほとんど出払ってしまっている。それに、この少ない人数を分けて加勢にいっても大して役に立たない。かといって全員で加勢に行けばここの国民たちがどうなるかもわからない。下手に動けない。」


 「そんな...。」


 「じゃあ、また師匠1人で頑張ることになるんですか?」


 返ってきた答えに薫と光琳が顔をしかめている。


 「国を守る軍人さんたちがこんなに少ないわけないですよね? 数えても20人いるかどうかも怪しいです。」


 「…実は、君らが国民を連れて避難してくる前に、さっきからこの地下都市で変な化け物が徘徊しているという報告があった。だから地下都市の住人には建物内から出ないことを発令していたんだ。他の軍人達はそいつら対応に追われている。」

 

 「上への報告は...?」


 「何度も試したができなかった。それで君らの国中がハッキングされたという情報で連絡できなかったことに合点がいったんだ。」


 「...。」


 「だからすまない。加勢はできない。ここの化け物共を殲滅しないことにはな。」


 軍人達の言葉と新たな危機に薫と光琳は黙ってしまう。


 「殲滅すれば加勢に来れるのか?」


 「...それはもちろんだ。」


 「そうか...。薫、光琳。」


 「「はい。」」


 「俺は単身で加勢にいってくる。お前たちはここの軍人達と連携をとってその化け物共を殲滅しろ。特に光琳、対人戦じゃないのならお前の活躍どころだ。」


 「了解です師匠!」


 「了解です!」


 俺の指示に薫と光琳は武器を構えながら返事をする。


 「いいのか?」


 「よくなければこんな指示はしない。」


 俺はそう言って地下都市から出る。そして出入り口から少し離れたところから、空中で戦っている無月 アスカとあの女の方を見る。戦況としては少し無月 アスカがおされている。


 「(鷹の姿は見えない。どこまで行ったんだ? あいつ...。それとも、鷹自体が捕まって連絡が取れなくなってるのか? まぁいい。) さて、頑張り時だ。...おい餓鬼!!!」


 その戦いに水を指すように俺は叫んだ。すると、2人とも俺の方を見る。


 「お前だ、お前!! 金髪の汚いお前!! そんな女1人相手に邪魔されて、まともに襲うことができてないじゃないか!!! 意外と......化け物も大したことないんだな!!!!!」


 「...なっ!?」


 俺の分かりやすい煽りの叫びに、無月 アスカはドン引きといった表情をする。一方、あの女の方は、表情が逆に無になっている。やはり、スペアネルからすると、化け物という言葉は逆鱗に触れるようだ。


 「今...なんつったあの男...。...あたしは...人間だぁ!!!!!」


 「!?」


 女はそう言った瞬間、光速で俺の方に突っ込んできた。俺はその前に剣を引き抜いて、すんでのタイミングで攻撃を防ぐ。


 「死ねぇ!!!」


 女は激昂し、光速で移動しながら光を駆使した攻撃を連続でしてくる。俺はそれ2本の剣で何とか防ぎながら、アスカの方に目を向ける。すると、意図を読んだのか、こめかみを指先で叩いて何やら通信を始める。恐らくだが、ハッキングを自分でしようとしているのだろう。


 「(ちょっと煽りすぎたか?)」


 俺は内心でそう思いながらも、バカに真面目に攻撃を防いでいく。相手の行動を見るより先に高速で動かなければ防げない。攻撃はできない。したところで当たるはずもない。防御に神経を注ぐ。


 「ラブ。今から私がハッキングを始めます。できるだけ早く全機能を取り戻して、加勢に行くために!!」


同時刻 とある研究所


 娘の眼前で倒れた富士浪 誠二の体から大量の血が流れ出ている。


 「まぁ、呼吸音はしない。絶命したか。」


 俺はそう言って、指を鳴らして富士浪 清雅を現実に戻す。


 「え? ......え?」


 富士浪 清雅は一瞬戸惑った後に、眼前で血を流して倒れている父親の姿を見て、膝から崩れ落ちる。そして、もう返事などしない父親に触れて揺らす。


 「お父さん。お父さん!! 起きてよ!! やだよ、お母さんもいないのに!! お父さんまで居なくなるなんてやだよ!!」


 必死に訴えるかけるように死んだ父親に向かって叫ぶ。俺はそれを尻目に、この部屋に置かれた大きなモニターを写す。


 「...?」


 「(絶望は最高の糧だ。幸せに逃げるための材料としてはな。)」


 モニターに写った映像を富士浪 清雅はじっと見つめる。そして、父親の死ぬ瞬間を目にする。


 「...!?」


 自分が父親を殺したという事実を目撃する。


 「ぁぁ...ぁぁ...ああ...ああ!! ああああああ!! 違う、違う!!! 私が...お父さんを...殺し...た...?」


 富士浪 清雅は自分が殺した父親から逃げるように距離を取り、頭を抱える。


 「嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!! 何で、私が!! お父さんを殺すはずない!!!」


 「清...雅...。」


 モニターに写る父親の最期の言葉が富士浪 清雅の耳にはいる。


 「お父さん...?」


 「すま...ない...。」


 それは謝罪の言葉。謝って欲しかったんじゃない。ただ一緒に生きていたかっただけ。謝るのは散々世話をかけた自分なのに。病気になってもいつも看病しに来てくれたことに感謝したかったのに。そんな人を自分が殺した。その現実に、富士浪 清雅は押し潰されそうになる。


 「...。...。」


 そして、押し潰されそうになった心はやがて耐えきれなくなり、爆発する。


 「いやあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」


 富士浪 清雅を起点に猛吹雪が発生し、辺りには一瞬で雪が積もり、壁は凍っていく。


 「安心しろ。富士浪 清雅...。これは...悪い、夢だ。」


 「!?」


 どこからともなく聞こえたその言葉が、富士浪 清雅の心に響く。


 「夢......これは、悪い夢...。」


 「そう、現実にはもっと幸せが待っているよ。」


 「幸せ?」


 「そう、夢のようなねぇ。」


 そう言った瞬間、富士浪 清雅の視界は闇に落ちる。そして、父親と母親が生きている幻を見る。


 「よし。」


 富士浪 清雅が完全に手中に落ちた思い、俺がそう言うと、背後から


 バン!!


 という銃声と共に、銃弾が俺を横切った。撃たれた方向に顔を向けると、そこにはかつての相棒が銃を向けて立っていた。


 「何をした?」


 「何って、目的を果たそうとしているだけだ。」


同時刻 シャインティアウーブ外


ーーーこの国、こんなに寒気したかなぁ?


 白い紳士服の男が顎に手を当てて、考えるような仕草をしている。

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