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Blood Spare of Secret : The story of Creeds  作者: 千導翼
第二章 シャインティアウーブ編

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あの頃

幻覚空間 コーネリアス・クリード


 まだ、俺が人形だった時。まだ、心がなかった時。まだ、自分がどういう存在かを理解していなかった時。まだ、自分自身の罪を理解していなかった時。周りの人間の事を一切見ていなかったとき。


 「何を思う? 私のしたことは間違っているのか?」


 「間違っているのか? って...。自分が何をしたかもわかってないってか...?」


 青葉の声は怒りで震えている。これは俺の後悔の記憶だ。


 「ふざけんなよ...!! ふざけんなよ!!」


 青葉は片手で俺の胸ぐらを掴んで勢いよく壁にぶつける。


 「なぜ怒っている?」


 「それも...わからないってか...? そうかよ...お前を同じ人間だと思った俺が馬鹿だったよ。お前は...!! 人間じゃない...!! ただの...人形だ...!!」


 青葉はそう言いながら、鎖鎌の刃を俺の喉元に当てている。だが、俺は一切動揺せずに淡々と返していた。


 「人間か、人形か。それは大事なことなのか? 私たちは暗殺者だ。命じられたまま密かに対象の命を奪う。それだけ。感情など不要だ。」


 「...お前にとって、暗殺者って言うのは道具か? 何の感情も無しに淡々と機械的に命を奪う道具か? 俺にとっては違う。感情があるから、命を奪うと言うことの重み背負えるんだよ。感情があるから、対象を死なせるべきか生かせるべきかを選べるんだよ! 人間なんだからな...!!」


 「道具であることはダメなことなのか? 自分の意思などあるから、争いが起きるのではないか?」


 「そうかもな。でも、己の意思があるから、その争いを止めることだってできる。」


 当時の俺と青葉がそうやって口論しているところに、バンバが周りの惨状をみながら俺と青葉の間に割って入ってくる。


 「止めろ。もう終わった。戦いを続行する必要はない。クリードは迅速且つ静かに任務を遂行した。青葉と俺は他の奴等を気絶させることに固執して、すべてかっさらわれた。それだけだ。」


 「バンバ!!」


 「青葉。クリードは任務上では全くもって間違ってはいない。ただ、情がなかっただけだ。悲しいが、ここで争うことは無駄だ。抑えろ。」


 バンバの言葉を聞いて、俺はその場から立ち去った。今でもよく覚えている。あのときの青葉の刺すような視線とバンバの諦めたような視線が俺の背中に当たっていた。


 「...。」


 だが、当時の俺はこの時の青葉やバンバ、そしてつかさの気持ちが一切わからなかった。自分が間違っているということや、正しいということも考えるどころか、頭に浮かびすらしなかった。本当に、出来の悪い人形だ。


 「この後、長い任務が終わって...それから、本格的に暗殺者として活動するようになったんだったな。懐かしいし、いつかは省みなければいけない過去だが。こう見ると、本当に人間とは思えないな。」


 俺は空間の中で乾いたように笑いながら呟く。その後すぐに、首を振ってかつての後悔の念を振り払う。


 「...ここから出なければ。」


 俺がそう言うと、どこからか聞いているのか、また景色が変わる。写ったのは、全身を写す鏡。そこには白いドレスを着た清楚な見た目の俺が写っている。


 「ここは...。」


 俺が何かを言おうとすると、部屋に金髪で中性的な顔立ちの男が入ってくる。


 「準備はできたか?」


 「うん、行こう。」


 男の言葉に俺はそう答える。そうして出掛けた先は、いろいろな店で服や道具を買ったりして、映画を見に行き、お店で食事をし、元いた場所に戻る。幸せな時間を過ごした。これは、この景色は俺に心が芽生え始め、あいつと一緒に暮らしていた頃か...。そして、この日の夜にあいつは...殺される。

だが、止める手段はない。これは、所詮過去だ。向き合うには丁度良いのか?


 「いや、良くないな。向き合うことなんて何時でもできる。今はここを抜け出すことが先決だ。」


 俺はそう言って、辺りを見回す。そこには誰もいない景色が広がっている。声も出せた。


 「(この空間は他人の過去を複写することもできるのか。それとも、あいつは俺の正体を知っていて、過去を見せているのか。)」


 ガタン!!


 俺が思案していると、外から物音が聞こえてきた。俺は扉を開けようとするが、触れることが出来ない。鏡を見てみると、俺の姿は写っていない。


 「まさか...。」


 俺は扉に手を当て、押してみる。すると手がすり抜けた。俺はそのまま扉を通り抜け、扉の外に出る。そこには、さっきまで自分だった白いドレスを着た清楚な見た目の女性と中性的な金髪の男が黒い外套を着た集団と相対している。


 「(いや、これを知っているわけがない。この出来事の関係者は全て俺が殺した。) ん?」


 体が動かない。


 「何だ...罰だというのか? だとしたら足りんぞ。」


 俺はそう思って、その光景の一部始終を見る。


幻覚空間 七瀬 愛翔


 真っ暗な空間、周りにいた人は皆いなくなった。突然すぎて一瞬理解できなかったが、あいつの仕業なんだろうとすぐに考えた。


 「何もねえ。空っぽの空間。俺みてえだ。」


 俺はそう呟いて、話し相手も景色も移り変わらない真っ暗な空間を方角もわからずに適当に歩き始めた。


 「あ?」


 しばらく歩いていると、次第に景色が変わっていき、見たことのない光景が目の前に広がった。2人の男女がいる。1人は青髪で少し女性っぽい顔立ちをした男、もう1人は、黒髪に青が混ざったような可愛らしい顔立ちをした女、一瞬だけカップルかと思ったが、話している距離感を見ると、兄妹のようだ。


 「あなたの名前は愛翔。苗字として、私とお兄ちゃんと同じ、七瀬って名乗っていいから。」


 女は俺の肩に手を置いて、目線を会わせて話してくれる。


 「(これは...俺の過去...?)」


 「これからは、私とお兄ちゃんが、あなたの家族だから...。もう1人じゃないから。」


 女は俺の目をの見て、そう言った。ふと、視線を移すと、男の表情が少し暗いのが見える。その俺の視線に気づいたのか、女は男の方に体ごと向けて両手を腰に当てて、少し拗ねたような声音で言う。


 「もう! 暗い顔しないでよ! この子が何か悪いみたいじゃん!!」


 「いや、そんな事は思っていない。ただ、無責任に約束をしないほうがと思っただけで。」


 「止めてよ。後の事話すの。」


 女の言葉に、男は申し訳なさそうで、でも何か割りきっているような声で言った。それに、女は腰に当てていた両手をダランと下げて、俯く。


 「どうしたの?」


 俺が不意にそう訊いた。すると、女は俺の方に見て事情を話そうとするが、声に出したくないのか、口をつぐんでしまっている。


 「物理的に1人にしないと言うのは、正直無理かもしれない。ただ、七瀬と言う苗字は君と俺たちを繋ぐものだと思ってほしい。今はわからないだろうが、いつか...わかるときがきっと来る。」


 女の代わりに男が俺と目を合わせて、真剣な表情で言い聞かせるように言った。そして、腕時計を見る。


 「もうそろそろか...。」


 「え? もう?」


 男の呟きに女は驚いたフリをしながら、立ち上がる。


 「あぁそうだ。」


 それがフリだとわかっていても、男は追求することなく、荷物をまとめてその場から離れる。その背中を見た女は、何か諦めたような表情をして、俺の方にまた来る。


 「じゃあ、とりあえず行ってくるね。もし、帰ってこなかったら、2階の部屋にある程度の地図とか資料があるから、使い方もあるから、それを使ってね。」


 「うん。」


 女の泣きそうな表情から必死に出している優しい声の理由を訊こうと思ったが、訊けなかった。訊くと、この女の覚悟を鈍らせる気がした。何の覚悟か、当時はわからなかったが、それでも...何かを感じ取った。


 「じゃあ...。いや、またね...!」


 女は俺に手を振って扉を閉めた。


 「...そしてこっから、帰ってこなかったんだよな。」


 俺はそう言いながら、手のひらには何もないのに力強く、何かを握りしめる。


 「何やってんだ俺は...。助けられておきながら、その事を一切合切忘れて、盗み働いてここまで生きてきたのかよ。そして、挙げ句の果てに、仲間だと思ってたやつに裏切られて、敵対してたやつに慰められる...。ダッセェ、超~ダッセェ。」


 握り締めた拳がみるみる自分の愚かさへの苛立ちと後悔に震える。


 「ダッセェのは嫌いだ。俺はカッケェ大人になりたかったんだ。いや、なりたいんだよ! さっさとここから出て、親がいて、愛されているあの女を! 助ける! この程度で俺の今までの人生のくだらなさは変わらねぇが!! これからの未来は変えてやる!!」


 俺はその苛立ちと後悔を、1つの大きな決断に変えた。


幻覚空間 ルーク・ギルデア


 突然、周りの人がいなくなった。ちょっと困惑したが、まぁ何かやられたんだろうなぁと思って、そのまま黙って歩き続ける。


 「ん?」


 そうすると、見覚えのあるドアが見えた。焦げてない、あの頃の明るく、安心んできる色のドアだ。


 「あ?」


 そう思っていると、ドアから出るように家が現れる。決して裕福とは言えない家、でも貧しくもない家。あの頃の、俺の唯一の居場所だった家。でも、もうない家。


 「...。」


 俺は静かにドアノブを捻って、ゆっくりと開ける。


 「おかえり。」


 「お? おかえり。」


 家の中には暖かな光に包まれ、料理をしている母さんと書類仕事をしている父さんがいた。俺は無意識にあの頃と同じように


 「ただいまぁ~。」


 と気だるげに返事をした。すると、母さんが料理をしながら俺に話す。


 「今日はあんたの好きな麻婆豆腐だからね。あっ、風呂も溜まってるから、先に入ってらっしゃい。出てきたときにはもう完成してるから。」


 「ぁあ、うん。」


 俺はあの頃と同じように返事をして、俺の部屋だった場所に行き、着替えをもって浴室にいく。


 「浴室に行くと、いつも嗅いでいた樹木の香りが一面広がって、凄く安心できたんだよな。」


 俺はそう言って、浴槽に浸かると、お湯に濡れた手で額に触れる。すると、この家の事、家族の事、あの時の事を鮮明に思い出す。


 「幸せな幻覚でも見せたら、抜け出そうなんて考えなくなるって感じか?」


 俺はそう言いながら、体を洗って、髪を洗い。そして、あの頃の服に着替え、浴室から出る。


 「あっ、早かったわね。でも、もう出来たわよ。後は盛り付けるだけぇ~。」


 「ふっ、そっか。」


 「どうした? 何か暗いな。また学校で何かあったのか?」


 母さんの言葉に対して、テンションの低い俺を父さんが心配する。あの頃と同じように。


 「違う違う、疲れただけ。理由として、今日怪我して帰ってきてないだろ? 大丈夫だよ。」


 「...そうか。」


 父さんは納得しつつも、深く訊かないでいてくれた。


 「はいおまたせぇ~。じゃあ、食べよう! いただきま~す。」


 「うん、いただきます。」


 「....いただきます。」


 12年ぶりの母さんの麻婆豆腐を口に頬張る。美味い。滅茶苦茶美味い。懐かしくて涙が出てくる。


 「え? ルーク? 何で泣いてんの?」


 「どうした? ちょっと辛かったか? でもお前、辛いの得意だよな?」


 「いや? 懐かしいと思ってさ。」


 俺がそう言うと、父さんと母さんは納得しないながらも、俺の言葉を信じて心配しないフリをする。


 「そうか、なら大丈夫だな。」


 「え? そう...ね。大丈...夫...ね。」


 その様子を見て、また思い出す。


 「俺は、こんな大事なものを失ったんだよな。」


 「え?」


 「え? どういう意味?」


 俺の言葉に父さんと母さんの順で反応する。


 「俺の父さんと母さんはもう死んでるんだ。俺の16の誕生日と中学の卒業式の日に。卒業して、リーフと一緒に少し寄り道しながら帰っていったら、家だった場所は完全に崩壊し、その中に惨殺されたリーフの両親と父さんと母さんがいた。そして、奇跡的に無傷だったアスカがいたんだ。」


 「リーフ? アスカ? 私はその2人知らないよ?」


 「そのリーフの両親というのも知らないし、第一俺たちは生きてるんだぞ?」


 俺の言葉に父さんと母さんは分かりやすく動揺している。でも、俺は続ける。


 「自分の両親が殺されたことに泣きわめくリーフと目の前でリーフと俺の両親が殺される一部始終を見ていたアスカが呆然としていた俺の元に駆け寄ってきて。泣きながらこう言ったんだよ。」


 「ごめんなさい。ごめんなさい。私が生きたいと思ってしまったから。すぐにここから出なかったから。2人のご両親は狙われて、殺されてしまった!! ごめんなさい。ごめんなさい。助けてもらってしまったばっかりに、本当なら関係のない2人を巻き込んでしまった。ごめんなさい。ごめんなさい!!」


 「ってさ。」


 「「......。」」


 俺の様子に動揺していた父さんと母さんは真剣に耳を傾けている。この頃の2人じゃ状況もわからないだろうし、息子が馬鹿を言い始めたと思うはずだろうに、真剣な表情で耳を傾けてくれている。


 「別に、アスカは何も悪くない。リーフももちろん悪くない。悪いのは...あの時責任感がなくて浅はかだった俺だ。アスカを助けようと思って助けたのも俺、リーフの両親も、父さんも母さんも巻き込んだのは俺。なのに、家を襲撃してくるなんて考えてなくて、呑気に、いつものように、「今日の晩飯何かなぁ~」なんて考えて寄り道しまくって...帰るの遅れて...。その間にリーフの両親と2人が命がけでアスカを匿ってんのに...襲われてんのに、その場にいなかったんだよ。」


 「「...。」」


 父さんと母さんの顔が苦い表情に変わっていくのが見える。


 「2人を失って、リーフに両親を失わせて、自分の意思で助けたはずのアスカに謝られて、やっと気づいたんだよ。...「俺は何の覚悟もなしにここまでの事をしたんだな」ってさ。甘い考えで、その場しのぎの善意で...。結果的にリーフとアスカに辛い思いをさせて、4人もの犠牲を出したんだなってさ。助けたとき、俺は謝られて欲しかった訳じゃないのに...友達の泣いている顔を見たくなかったのに...。」


 「誰にだって間違いはあるさ。卒業式前なら、まだお前中学3年生だろ? まだ間違えながら学ぶ歳だ。」


 「悲観しすぎない。底知れない前向きさがあなたの魅力でしょ? ね?」


 俺の様子に何かを感じたのか父さんが肩に手を置いて、母さんは後ろから包容してくれる。


 「...うん。それから、リーフとアスカを引っ張っていける人間にならなきゃいけないなって思った。表では普通でも、裏ではしっかりと物事を考えなきゃいけないなって思った。でもな、2人凄くてさ。俺に負担かけないようにって、努力して引っ張ってるって思ってたら、いつのまにか並び立ってるんだよ。」


 「うん。」


 「そして、何だ? お偉いさんにでもなったか?」


 「え?」


 父さんがそう言った瞬間、あの頃の俺じゃなく、今の俺に変わっていて、服も元のものになっていた。


 「お前、将来こんな立派になってるんだな。」


 「そうねぇ。ちょっと筋肉質になってて、より一層男前になってるわね。」


 父さんと母さんは微笑みながら、嬉しそうにそういってくれている。


 「これ、敵の罠じゃ...。」


 俺がそう言おうとすると、母さんが指先を口に当ててさえぎる。


 「俺達は死んだのだろう? なら、ここで油を売ってる場合じゃないな。」


 「行ってきな。居なくても、あんたの居場所にあたし達はいるよ。何たって、親だからね。」


 父さんと母さんがそう言った瞬間。背後のドアが開く。ドアの先は入ってきたときのような暗闇ではなく、白い光を放っている。俺は席を立って、ドアの方に体を向ける。


 「...。」


 俺は父さんと母さんの方を見る。すると、父さんと母さんは笑顔で頷いて、俺の背中を押す。そのお陰で俺は家から出る。ドアが閉まっていく。その中で父さんと母さんが大きな声で言う。


ーーー行ってらっしゃい!!


 その言葉を聞いた瞬間、俺は12年ぶりに両親にこの言葉を言う。


ーーー行ってきます!!


 そして、ドアが閉まる。それを見届けた後、俺はより光の強い方向に向かって走る。


どこかも分からない研究所の中...


 「ぐはぁ...。」


 「思ったよりもあっさりだったな。富士浪 誠二。」


 「清...雅...。」


 口から血を流し、意識を無くした娘の眼前で倒れる氷の槍ですい臓を刺された富士浪 誠二が横たわっている。

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