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Blood Spare of Secret : The story of Creeds  作者: 千導翼
第二章 シャインティアウーブ編

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ヒカリ

病院内


 俺と誠二さんは、銃を使ってた男を連れて病院に入った。すぐに、誠二さんが受付を済ませて、娘さんの病室に向かった。その時、銃の男が回りを見て首を傾げているのが気になったが、後にすることにした。


 コンコンコン


 誠二さんが、重い雰囲気でドアを3回ノックする。


 トントン


 すると、中から棚を指で叩く音が聞こえた。それを聞いて誠二さんは俺と銃の男を順に見た後に、ゆっくりとドアを開く。すると、ベッドに横たわっている長い黒髪とタレ目が特徴的な女性がいた。誠二さんの娘、清雅さんだ。


 「清雅、突然来てすまない。お前の状態を見に来てもらったんだ。ほら、昔には話しには出していたろ? ルーク市長だ。」


 誠二さんはすごく、すごく優しい声で清雅さんに声をかけた。そして、俺を見せるように、手で視線を移させる。そうして、俺の方を見ると、清雅さんは辛そうで、苦しそうで、でもしっかりとした笑顔を見せた。


 「こんにちは。この国、シャインティアウーブの市長を務めさせていただいています。ルーク・ギルデアと申します。今回はあなたのお父様である、富士浪 誠二様からご依頼を受けて、この場に参上した次第です。」


 俺は横たわっている状態の清雅さんに目線を合わせて挨拶をする。


 「....ありがとう....ございます...。...状態を...見るのなら....脱がなくては....なりませんね...。」


 清雅さんは枯れかけている声で、頑張ってお礼を言ったのちに、ベッドから起き上がろうとする。


 「いえいえ、大丈夫ですよ。横たわっている状態で大丈夫です。それに、服を着ている状態でも構いませんよ。僕にはこれがありますので。」


 俺は耳にかけているライレトを指差して、立ち上がりながらガラスをタッチする。


 「マーシィ。彼女の体の状態を俺に見せてくれ。」


 反応なし。病院に入ってからふざけてないと思うんだが。もう一度呼び掛ける。


 「マーシィ。別に変態的な理由はないぞ。不治の病と言われた難病を直してくれって言われてるんだ。俺はこの親子を助けなきゃならないんだ。だから応答してくれ。」


 「了解しました。ルーク様。」


 「...?」


 マーシィが俺の言葉に反応し、すぐさま俺の目に清雅さんの体を写し出す。もちろん本人にも、他2人にもそれは見えていない。だが、俺はマーシィに何かを違和感を感じた。だが、今はそれを考えるべきじゃないと判断して、清雅さんの体の状態を見る。


 「....なるほど...。」


 俺は小さい声でそう言うと、心配そうに見つめる清雅さんの方を見て、無言で頷く。


 「マーシィ...。閉じてくれ。」


 「了解しました。ルーク様。」


 「...。」


 俺は違和感の正体に気づき、マーシィにまた話しかけようとしたが、止めて見たことから判断したことを2人に話す。


 「娘さんは、細胞腐蝕症で間違いはありません。」


 「間違いは...ない...か。」


 誠二さんは神妙な面持ちで俺の顔を見る。


 「では、なぜ延命が成功していたのかという点は、これで説明がつきます。」


 俺がそう言葉を続けると、誠二さんは頭を抱えるように、片手で目から額を覆う。


 「あいつの言っていた通り。彼女が...冷凍系に関するスペアネルになる兆しのような状態にあるからです。」


 「冷凍系..? そこまでわかるのか。」


 「はい。ただ...確信はできません。」


 俺は誠二さんの質問に答えたのちに、清雅さんの方を見る。すると、清雅さんは不安そうな顔で俺の方を見ている。俺はそんな清雅さんに視線を合わせて、安心させるように言う。


 「大丈夫です。スペアネルになることが、必ずマイナスに繋がるという訳ではありません。スペアネルの再生能力によって、容態が緩和され、今よりも安全且つ楽に延命することができ、手遅れになるまでにかなりの猶予ができます。その間に治療法を見つければいい話です。」


 俺がそう言うと、ずっと黙っていた銃の男が首をかしげながら、口を挟む。


 「見つけりゃ良いって、そんな都合良くいくかよ。」


 「何?」


 男の言葉に、誠二さんは刺すような視線を向ける。俺はすぐに立ち上がって、誠二さんと男の間に立つ。


 「都合良くいくかって? まぁ確かに、これで救えたら、確かに都合がいい、でもそれの何が悪いんだ?」


 「悪いとは言ってねぇ、ただ時間の無駄だろ。今まで治せなかった病気を死ぬ前どころか、手遅れになる前に見つけて治療するなんざ偶然が重ならなけりゃ無理だろうが。そんくらい可能性が低いんだよ。あんた科学者だろうが、確率が低い方に懸けるなんざ馬鹿がやることだと思うんだが?」


 俺の質問に、男は戦っている最中とは違い、落ち着いた声で自身の疑問と共に答える。俺はそれに、自信満々且つ真剣に答える。


 「確率が低い方に懸ける...ねぇ。当たり前だろうが。それしかほぼ方法がねぇんだから。それになぁ、偶然が重ならなきゃ無理とか抜かしたが、じゃあその偶然まとめて引き当てて、必然にするだけだ。」


 「は?」


 「科学者っぽくねぇか? 知らねぇよそんなん。大体なぁ、今まで科学ってのは何を成し得てきたと思ってんだ? あぁ? それまで、あり得なかったことを現実にしてきただろうが! 今まで非常識とされてきたものを常識にした。それとおんなじだ。今の今まで、治療法どころか、まともな延命法すら見つからなかった病気、発症すれば死ぬことが当たり前だったものを、これから発症しても治せるのが当たり前にするんだよ!! クソ見てえな常識覆せないんだったら、俺は科学者なんて名乗らねぇ!!!」


 つい熱くなって、病室なのに大声を出してしまう。その様子を見ている誠二さんは無言で頷き、男は唖然としている。そんな中で、俺は我に帰って、咳払いをしたのちに、清雅さんの方を見て謝る。


 「すいません。びっくりさせましたね。申し訳ない。」


 すると、清雅さんは苦しそうだがしっかりと頷いて、笑って俺を見た。


 「では、一度戻りますね。」


 俺はそう言って、誠二さんと男を連れて病室を後にした。医者の人やナースさんに何か言われるのを覚悟したが、何も言われなかった。


病院前


 ドローンが落ちても焦らない住民、駅で待機している人がいないこと、電車内にも乗客はおらず、トンネルに入れば、真っ黒な影のような化け物、明らかに怪しい連中を連れて歩いているのに、住民はこちらに見向きもせず、まるで気づいていないかのようにしている。そして、捕まってから一言も発さないどころか、俯いたままの男。


 「お前の武器は、蹴りだけか?」


 感じた違和感をまとめた後に、俺は男に鋭い視線を向けながら訊く。相変わらず返事はない。意識がないのかと考え、顔を覗き込もうとすると、見せないように明後日の方向に顔を向けて見せないようする。


 「何も言わないことに理由があるのか、それとも時間稼ぎでもしてるのか。」


 俺が分かりやすく悩んでいる様子を見せても反応はない。こちらからアクションをしても、顔を以外のものはほとんど反応は無し。こんなことを外でやっているのにも関わらず、回りの人間はまた見向きもしない。


 「質問をしてみよう。答えなくても構わない。テゼルの盗賊団とは、ラファス・ドゥイレルが率いているのか? 俺たちがこうしている間、他では何が起こっている? または起こる予定だ?」


 俺が質問をすると、1つ目の質問で、男が反応を見せ、2つ目の質問で、ずっと見せなかった顔をこちらに向けた。


 「なぜ、名前を知っている?」


 「知り合いだったからな。」


 俺は男の疑問に適当に答えながら、ずっと見せてこなかった顔を見た。思ったことは、喋る際に見える口の中が光っているというところ、目は白目の部分が黒く、瞳孔の部分は白くなっている。だが、それよりも気になったのは、俺を見ているはずの目に俺の姿が写っていないこと。逆に見えるのは...。


 「女...? それも若い...。」


 俺がそう声に出すと、男はすぐさま目をつぶり、それ以上の情報を渡さないようにした。


 「ボスの名前を知っていたことがよほど驚きだったらしいな。」


 俺がそう言うと、男は深いため息をはいたのちに、口角をあげて俺の方を見る。すると、ちょうどよくルークと富士浪さん、銃の男が戻ってきた。2人は笑っている男を見ると、怪訝そうな表情を浮かべ、銃の男は眉間にシワを寄せて首をかしげた。


 「なんで笑ってんだ?」


 「いや、少々この女を甘く見ていたようだ。からくりがばれつつある。」


 「どういうつもりだ?」


 銃の男の疑問に蹴りの男は不適な笑みを浮かべたまま答えた。その答えに、俺は眉間にシワを寄せて疑うような目を向ける。なぜならば、俺がまだ答えを出していないのにも関わらず、突然それが合っているような口ぶりをしたからだ。


 「なに、気づいているんだろう? そこの2人とこいつに説明してみるといい。」


 「時間稼ぎをしているのか? あの女は誰だ。見る限り仲間というよりは、協力関係に近いものを感じたが...。」


 「答えると思うか?」


 俺の質問に、男は不適な笑みを張り付けたような顔のまま俺の目を凝視する。俺もその目を凝視しながらルークに訊く。


 「病院内でなにか違和感はなかったか?」


 「こいつを連れてるってのに、やけに看護婦さんや他の医師の人が落ち着いてた。それどころか、専門医がいるはずなのに、娘さんとの面会時には姿を現さないどころか、話すら出てこなかった。あと、俺のライレトに内蔵しているAI、マーシィっていうんだが、こいつ感情あるはずなのに、受け答えでの会話がなく、ただ「了解しました。ルーク様」って言葉以外全く発さないってことがあったな。」


 ルークは銃の男を指差しながら淡々と答えた。その答えに、俺はため息をついたのちに、感じていた違和感とルークの返答から考えた答えを言う。


 「ここは現実じゃない。お前が作り出した幻の世界。」


 「なに?」


 俺の発言に富士浪さんは戸惑い、ルークは意外にも冷静に頷き、銃の男は素で驚いている反応を見せる。


 「ちょっと待て、どういう意味だ。」


 銃の男が蹴りの男にそう尋ねると、男は上を向いて高笑いする。その姿に、銃の男は理解ができないと言う顔を浮かべ、ただ高笑いしている男を見ている。しばらくして、笑い疲れたのか元の声に戻って俺の発言に答える。


 「大正解だ。」


 「そんなはずはない。いつから幻だったというのだ! それに、では先程話した清雅は誰なのだ!?」


 考えていなかった事実に、富士浪さんは混乱し、俺に質問責めしようとすると、ルークが間に割って入って、富士浪さんを制止させる。


 「落ち着いてください。誠二さんがいつから幻の世界に来たのかはわかりませんが、俺とクリードは何となく想像がつきます。それに、娘さんは...ただの勘ですが、娘さんだけは幻ではないと思います。」


 「...だが、勘なんだろう? 確定ではないんだろう?」


 「はい。ですが、それを証明するためにもこの世界から現実に戻る必要性があります。なので、一旦冷静になってください。急いては事を仕損じるっていうでしょう?」


 ルークの言葉に、富士浪さんは心の中にある不安を抱えつつも、なんとか冷静になり、蹴りの男に目を向ける。俺はそれを確認したのちに、恐らく話すようになったであろう蹴りの男に質問をする。


 「まず、俺とルークが幻の世界に入ったのは、俺がドローンを見つけ、ルークが回収した辺りだろう。あの辺から回りにいる人間の様子が少しおかしかった。」


 「完全に入ったのは、お前等2人と出会った応接室だ。だが、その前にもこの世界に片足を突っ込ませておいた。」


 「いつだ?」


 富士浪さんが睨み付けるような目で男を見る。すると、男は深刻な面持ちを作り、声に出す。


 「残念だが、これ以上娘さんを延命させるのは...酷だ...。」

 

 「!?」


 俺とルークは何の事だかわからなかったが、富士浪さんはわかっているようで、わかりやすく驚愕していた。


 「この出来事の発端の...ほぼ最初からじゃないか。」


 「その通り、あの辺から既に始まっていたんだよ。」


 富士浪さんの言葉に、男は元の顔と声に戻って馬鹿にするように言った。


 「今まで会ってきた人間、俺とルークがドローンを見つける前と後では、話す内容が短くなっていた。あまりに長すぎると、相棒として接していた仲間に口の動きでばれる可能性があったからか。」


 「は?」


 銃の男は俺の言葉に、少しイライラした様子で笑みを浮かべている男を見る。


 「ん? ショックか? 信用されていなかったことが...。まぁ最も...最初から死ぬ予定だったやつをわざわざ信用してやる義理はない。」


 「は? 最初から...死ぬ...予定...? どういう意味だ!?」


 予想していなかった相棒の言葉に、銃の男は相棒へのイライラより、今の現状にイライラしているように見える。


 「どういう意味とは? そのまんまの意味だが?」


 「てんめぇ...!!!」


 銃の男は勢い良く胸ぐらを掴んで持ち上げる。その顔には怒りとそれを後押しするような憎悪が感じられた。


 「何をキレてる? テゼルの盗賊団に入ったとされた時点で、まともな扱いなぞ期待していなかっただろう? それとも...家族のいないお前が、あいつ等を家族だとでも思っていたのか?」


 自分の相棒だったはずの男のその言葉を聞いた瞬間、銃の男は手を離してその場で膝から崩れ落ちた。その様子をルークはじっと見たあとに、何かを振り払うように首を振って男に訊く。


 「さっきの反応からして、会話をバレないようにあえて短くしていたと言うのは本当だとしよう。じゃあ、娘さんの...清雅さんは本物だな?」


 「何?」


 「なぜそうなる?」


 男が答えるよりも前に、俺と富士浪さんがルークの方に顔を向けて首をかしげる。すると、ルークは身振り手振りしながら説明する。


 「まず、違和感としてあまりにも話しかけられなかったって言うのはある。同時に、話しかけてきた人は、内容は短いし、すぐに終わらせようする感じがあるんだが、何か取って付けたような感情を乗せた話し方をするんだよ。でも、清雅さんにはそれを全く感じなかった。」


 「...。」


 富士浪さんはルークの言葉に真剣な面持ちで耳を傾けている。一方、蹴りの男は額に手を当て、目をつむっている。俺は静かに短剣に手をかける。


 「清雅さんは苦しそうで、辛そうなのに一生懸命話していた。取って付けたような感情じゃなく、本当感じていることを言葉に乗せてな。しかも、大抵の奴等が話しているとき以外、ほとんど表情が変わらなかったのに、清雅さんはあまり喋れない代わりに表情を動かしていた。」


 「...確かに、娘と他のものはそこが決定的に違うな。」


 「そしてもう1つ。清雅さんはスペアネルになる兆しがあると言うこと。これが本当に関係しているかどうかは、正直わからない。でも、もし関係していると言うのなら、清雅さんを完全にこの幻の世界に入れることはできない。なぜなら、お前はスペアネルじゃない。だから、半端な力じゃスペアネルを幻の世界に閉じ込める...催眠や幻術に落とすことはできない。」


 ルークの言葉に、蹴りの男はまた高笑いをしながら、立ち上がりきつく縛っていた縄をあっさりとほどいた。そして、高笑いを止めてすぐにルークの目を見て答える。


 「大正解。そして、大失敗だ。俺からすれば、大成功かな?」


 「何?」


 「目をつむっている間に、現実を何かを起こしたな。」


 「何だと?」


 返された答えに、ルークは眉間にシワを寄せて首をかしげる。俺は短剣を抜いて、男に切りかかる。すると、男は軽く宙返りをしてそのまま空を飛ぶ。


 「ここは俺が作り出した幻の世界。そんな攻撃が当たるとでも? あと、なぜわかっていたのに、その時に俺に斬りかからなかった? 絶好のチャンスだったろうに...。」


 「お前を殺せば、この世界から出られなくなる可能性がある。それに、ここはお前が作り出した世界なんだろう? つまり絶好のチャンスも何もないわけだ。」


 「現実で何してんだよ!!」


 ルークが少しキレ気味に訊く。すると、蹴りの男は指を鳴らして、現実の状況をそのまま映像で写し出す。そこには、シャインティアウーブの上空で1人の女が太陽に立っていた。


「さて、シャインティアウーブの市長。己の国が火の海になるところを見ると良い。」


 「...何だと?」


 「さて、暴れて良いぞ。ヒカリ。」


 男がそう言った瞬間、女は太陽の光より神々しく体から光を放ち始め、光の球体となった瞬間...


 「死ね。」


 無数の光線がシャインティアウーブに降り注いだ。

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