めぐるとお師(し)様(二)
めぐる「うふっ! どお? このあたしの目立ちっぷり!」
そりゃ主役の一人称だからねえ。目立つもなにも……。
めぐる「なんか文句でもあんの!?」
……いや、ないよ……。
え、では読者様方。お読み下さい宜しくお願い致します<(_ _*)>
めぐる「宜しくねー!」
今、この山奥の町にはお師様を含めて三十人の太夫(うちの流派で陰陽師のこと)がいる。
姫神様曰く――
『一時期は片手の指にも満たぬ人数まで減っておった故な。妾が時間を掛けてここまで増やしたのじゃ』
だ、そーだけど、この県のわりと大きめの神社にも、うちの流派の祭文とか伝わってるから、本当にそこまで減っていたかは解らない。
『わ、妾が嘘をついていると申すか!?』
すかさず姫神様から文句が入る。
「あ、いや、疑ってはいないけどさあ。姫神様が知らないところで、実はもっと人数いたかも知れないでしょ?」
『……』
あ、黙っちゃった。そうだよねえ。だって、うちの流派ってこの町だけじゃなく、他の町にも広がってるんだものねえ。
まあ、県内でもその筋で有名なのはこの町だけどさ。
あ、お師様の話し方はこの県の方言が凄く交ざってるの。
この町は県の中心辺りの山奥にある。
で、どの都道府県も大概そーだろーけど場所によって、方言の言い回しとか、使い方とか色々違って来るんだけど、それは置いといて。……この時代、方言ってものは段々、廃れ始めてる。
お師様や両親は、方言を使う世代だけど、あたしの世代になっちゃうと、あんまりキツめの方言は使わない。
特にあたしはなるべく方言を使わないよーに気を付けてる。
でも、イントネーションとかは、どーしても上手く変えられない。
だから、ニュースのアナウンサーとかが話す、標準語のイントネーションを聞いて、頑張って覚えるよーにしてる。
だって……姫神様が予言したんだもの。
あたしは将来。東京の高校へ行くことになる――って……。
そして、あたしは強い霊力を持ってる所為で、触れるだけで電化製品――特に精密機械を壊してしまう。
お師様が言うには、霊力が有りすぎるんだそーだ。
ま、それはともかく、結局、あたしはお師様の宝物部屋を掃除しなくていーことになった。
その代わり……基礎体力作りと称して、町中をランニングさせられることになってしまった……。
しかも、お師様が持っていたカセットテープとやらに録音するタイプのウォークマンを持たされてだ。
あたしの精密機械壊す体質は、大昔のガラケーとかゆー携帯電話なら、ギリギリ触っても大丈夫かなー? ってところだ。
『本当はそれすらも殆ど壊してしまうがのう』
「姫神様! 茶々入れないでよ!」
で、多分それより単純な造りのカセットテープとやらを使うウォークマンなら大丈夫だった。
カセットテープの中には、お師様が唱える祭文とか、うちの流派の歴史とかが録音されていて、ランニングの間中にイヤホンで、それを聞いて覚えろと言われた。
今日のランニングは終わってるし、今日までに覚えるよーに言われてた祭文も全部覚えてるのに。今度はランニング中に別のを新しく全部憶えろなんて無茶もいーとこだよ!
だって、このカセットテープとやら120分もあるのに、それに入っている祭文やら何やら全部一気に覚えろとか、酷いと思わない!?
あたしのおじーちゃんでも、今はお師様なんだから、そこは素直に従うけどさぁ……。
イヤホンから聞こえてくるお師様が唱えている祭文は――山の神の祭文だ。
『やまのかみのちちのおんなは、ら天の権ぜのおうともうす。ははのおんなはまきが黄金如来のおうともうす。これてんじくもくろが御山へ、天や上らせ……』
いつものことだけど、お師様の祭文の唱え方って、殆ど平仮名に聞こえるのよね。どーしてかしら?
それはそーと、ほぼ毎日ランニングやってるから、町の人は笑顔であたしに手を振ってくれたり、飲み物くれたり食べ物くれたりみんな優しい。
あ、佐藤のおばちゃんがあたしを呼んでる。
佐藤のおばちゃんはあたしのおかーさんの同級生。喫茶店「あけび」の四代目。
んで、あたしを呼んでる場所はその喫茶店。
ウォークマンの停止ボタンを押して、おばちゃんの元に駆け寄る。
「おばちゃん。なーに?」
すると、おばちゃんはなんだか困ったよーな表情であたしに話し掛けて来た。
「あのねえ。めぐるちゃん。悪いがやけど。文彦さん呼んで来てくれん?」
――え?
あ、文彦はおじーちゃん。つまりお師様の名前。でも……。
「お師様に用事ってことは何かあったの?」
あたしの問いに、おばちゃんは、こくり、と頷いた。
「また、あの人らぁがきちゅうがよね。めぐるちゃんも知っちゅうろう?」
あの人達――変な新興宗教の信者達。
おかーさんや佐藤のおばちゃんが、学生時代の頃に発足した新興宗教――なんて言ったかな?
えーと、えーーと。確か――新興宗教『真世理会』。だ!
数年に一回。こんな山奥にあるこの町まで勧誘――信者達に云わせると布教らしいけど――この町に県内で有名な陰陽師の流派が伝わっていると知って、最近は一年に数回、勧誘が来るようになった。
現在の太夫(陰陽師)はこの町には三十人だけど、喫茶店「あけび」から一番近くにいるのはあたしのお師様だ。
ってゆーか。
「おばちゃん。電話した方が早くない?」
一人一台携帯電話のこの時代。あたしみたいに特殊事情(精密機械壊す)でもない限り、大抵の人は携帯電話を持っているはず。
おばちゃんだって持っていたはずだけど……記憶違いかなあ?
「それがね。機種変更したばっかりでねえ。電話帳を呼び出せんがよね」
あー……あたしにはよく解んないけど、携帯電話あるあるだそーだ。
同じシリーズの携帯電話ならともかく、別シリーズにしちゃうと、慣れるまで携帯電話の中にある電話帳を見付け出せない。
つまり、携帯電話の機能を上手く使いこなせないみたい。
「めぐるちゃんは解ら――あ! ごめんねえ。携帯電話触れんがやったねえ」
おばちゃんが、しまった。と、ゆー表情であたしを見て、それから申し訳なさそーに謝罪してくれた。
「おばちゃん! 気にしなくていーから! あたし、お師様呼んで来るから――っと、今回はどんな人達が来てるの?」
すると、おばちゃんはとても悲しそうな表情になった。
「それがねえ。あたしの親戚が混じっちゅうがよね……」
そ、それは、なんとゆーか、あたしには、掛ける言葉が見つからない……。
「ええっと……おばちゃん。ごめんなさい! 余計なこと聞いちゃって……じ、じゃ! すぐにお師様呼んで来るからっ!!」
と、一礼して、あたしは逃げるよーにその場から走り去った。
急がなきゃ。親戚が相手じゃ、おばちゃんだって「帰れ」とは中々言い辛いだろーから。
めぐる「今度はランニングかぁ……ふっ、主役は辛いわね」
辛いとか思ってないくせに……┐(´・c_・` ;)┌
めぐる「あ、やっぱり解っちゃうー? えへへ(^ー^)」
そりゃ解るよ……。
えー、では読者様方お読み頂きありがとうございます。
次話もよろしくお願い致します!<(_ _*)>
めぐる「美少女めぐるちゃんのお願い! お星様とブクマちょーだい! ね?」
ずーずーしい娘だなあ( ̄▽ ̄;)




