めぐるの修行生活?・不穏(六)
めぐる「主役の美少女めぐるでーす! お読み下さい! 読者様ー!」
宜しくお願い致します<(_ _*)>
さてさて、マリアさんから言質も取った。いざ、とゆーときは姫神様からも助言頂けることになった。
あたしは、グラグラと揺れる地面をゆっくりと這って行く。
テーブルや椅子を避けて、変なお姉さんのかなり近くまでやって来た。
けど、そのとき。
「おまん何しよら。危ないぜ?」
おっと、山上の太夫さんが、心配して声を掛けてくれた。
「ありがと。山上のおじーちゃん。でも、店の入口近くにいる女の人に、多少荒っぽくしても大丈夫って許可取ってるし、『姫神様』にも助言頂けることになってるから」
この町で太夫を名乗れる人は、みんなあたしの身の内に姫神様が存在するって知ってる。
偏屈で有名な山上の太夫さんも、身の内に姫神様が存在するあたしには比較的優しい。
「『姫神様』から助言頂けるんなら……まあ、大丈夫やろう。けんど気ぃつけよ?」
あたしは大きく頷いて、未だ泣き続ける変なお姉さ――いや、ユリアさんって言ったほーがいーかな?
まあ、そのユリアさんの側にそーっと寄り添う。
ユリアさんは壁際のソファーがある席に座って泣きやむ様子が全く見られない。
「うわぁぁん! 真理亜ちゃんのバカぁぁぁ~! 百合亜だって! 百合亜だって一所懸命頑張ったのにぃ~!」
……本当にマリアさんのお姉さんか? この人。
なんか精神年齢あたしより低く思えるけど……。
あたしは出来るだけ気配を消してるけど、ここまで近寄られて気付かないとは……。
「ユ~リアさん!」
ぽん。とユリアさんの肩に手を置く。
「え!?」
びっくりしたユリアさんが、一瞬泣きやんでこっち向いた。
『揺れがとまったぞ! 今じゃ、めぐる!』
(オッケー! 姫神様っ! 揺れ、とまったことあたしも気付いてたけど、ありがとうっ!)
頭の中で返事をしながら、マリアさんの首筋に手刀を叩き込む。
――トッ!
と、軽い音がして、ユリアさんの体から力が抜ける。
前に倒れそーになる体を支えて、後ろの壁にた凭れ掛けさせた。
揺れは完全に収まった。
「――姉さん!!」
マリアさんがこちらに駆けて来る。
「……姉さん」
ぽつりと呟き。マリアさんがユリアさんの体を抱き上げる。
そして――
「皆さん。御迷惑お掛けしました」
と、頭を下げて店から出て行こうとしたが――
「待って!」
と、マリアさんに声を掛けたのは、仙頭のお姉さんな太夫さんだった。
「……この町の回りに配置された式を回収してくれませんか?」
仙頭お姉さんな太夫さんは、マリアさんを見据えて言った。
「町役場の者として今の騒ぎは見過ごせません。おそらく先ほどまでの揺れで、町の人逹や建物にも大なり小なり被害が出ていると思います」
仙頭のおねーさん。太夫として言ってるんじゃなくて町役場の職員として言ってるんだ。
「もちろん、あなた方がこの町の為に良かれと思って配置したのは理解しています。
けれど、めぐるちゃんに眠らされた女性の物言いも、式の制御の不安定さも、このままでいいはずはありません。ですから式を回収して下さ――」
「解りました」
仙頭のおねーさんの言葉を遮って、マリアさんは答えた。
「私達が……とりわけ姉が皆さんに与えた不愉快さも不安も被害も、謝罪致します。
そして、この町の被害をこのままにしておいては、我が土御門の名折れになります。
私は一先ず隣町のビジネスホテルに姉を連れて戻ります。姉を落ち着かせないと、式の回収は出来ません。しかし、明日には回収に参りますので、それまで待って貰えませんか?」
仙頭のおねーさんの視線を真っ向から受けて、マリアさんは言った。
「じゃあ……皆さん。今日はこれでいいことにしませんか?」
仙頭のおねーさんが、店内の太夫さん達に問い掛ける。
「しゃあないな。それやったら今日はこれでえいことにしちゃろうか」
「そこの姉ちゃんにも謝ってもろうたしなぁ」
「けんど、許いた訳じゃあないきにな!」
「外の様子も見んといかんき(ダメだから)なあ」
「えらい揺れ方したきにのう」
と、口々に言いながら、太夫さん達は店から出て行く。
そして、外から――
「おい! なんじゃこりゃあ! 道路の一部が、へっこんじゅうぞ(陥没しているぞ)!」
店から出て行った太夫さんの驚きの声が聞こえた。
「……道路の一部が陥没……」
今聞こえたのは、仙頭のおねーさんの声……だと思う。
でも、今まで聞いたことないくらい低くて怒りが籠った声だ。
「せ、仙頭のおねーさん……落ち着い……て?」
一応、疑問符付きで言ったものの……寧ろ落ち着きながら怒ってるって言ったほーがいーかも知れない……。
「めぐるちゃん……大丈夫よ……私は落ち着いているから……っ!」
いや、微妙に落ち着けてない気がしなくも……ないかと……。
「そ、その……本当に申し訳ない。私が姉をとめられれば良かったのだけれど、見ての通りの性格で……本当に申し訳ない……この町の損壊分は、我が土御門が支払います。
陥没した道路も、他にもあれば遠慮なく申し出て欲しい……ああ、それと――」
マリアさんはお姉さんを肩に担ぎ上げ、ワンピースのポケットから財布を取り出す。
財布から出てきたのは、一枚の名刺。それを先頭のおねーさんに差し出した。
めぐる「お読み頂きありがとうございまーす!」
次話も宜しくお願い致します<(_ _*)>
(今回前書き後書きが短いのは私が弱っているからです(^-^;)




